「みらい」の徹底解剖

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=>「みらい」は荒天域や氷海域に迫れるか?

■荒天域への対応

 「みらい」は荒天域での観測作業を安全に行えるように、以下のような考えうる限りの対策を講じている。
 ●大きな乾舷と深い喫水
 ●十分な予備浮力と横揺れ周期の設定
 ●ハイブリッド減揺装置
 ●Aフレームクレーン及びギャロース
 ●アクティブ型スウェルコンペンセータ
 ●ロータリージョイント(キンク防止)
 ●船位保持能力とジョイスティックコントロールシステム
 ●ヒーブダンパー付き作業艇ダビット

■氷縁域への対応
 氷縁域(結氷域周辺)での観測のため、次のような対策を講じた。

 ●耐氷構造(アイスクラスIA)

 ●着氷時の復原性
 ●外気温対策(−15℃)

■多目的な観測船としての対策
 これまで述べてきたように、「みらい」は赤道から氷縁域までにおいて世界で唯一の能力を持った観測船である。このために、1隻しかないこの「みらい」に非常に多くのミッションが求められると考えられる。その能力を最大限に発揮できるように、ハードとソフトの両面から効率性についてもできるだけの対策を講じてきた。

 ●観測効率の向上
  a)観測設備と研究室配置の最適化

  b)ミッション交換の迅速化
 ●船体固定観測設備による航走中の観測
 ●観測技術員の活用

■洋上の研究室
 地球規模で観測を行う「みらい」は観測航海が長期にわたることから、必要な洋上の研究環境を確保している。
 ●研究室
 ●船内データ管理システム
 ●衛星データ受信設備

■水中放射雑音低減策
 「みらい」はマルチナロービーム測深機、ドップラー流向流速計、音響航法装置などの水中音響機器を用いるため、水中放射雑音の低減が不可欠である。
 このため、まず、翼面の負荷の減少とプロペラ没水深度の増大によりキャビテーションを減らすため、1軸から2軸に変更することとなり、これによって後部船体はほぼ新造に近い大改造となった。
 また、主機関としてディーゼル電気複合推進システムを採用し、主機等の2段防振支持や制振材の使用、ハイスキュード可変ピッチプロペラフォワードスキュード・サイドスラスタの採用など、さまざまな水中放射雑音低減策を講じている。

 このほか、ソーナードームに気泡が流入してマスキング効果を生じないように、模型試験によりドーム位置、形状を決定している。特に「みらい」は従来の観測船よりも喫水が深いため、海象条件の悪い海域でマルチナロービーム測深機による観測を行う場合、雑音の少ない良好なデータが期待されている。

 一方、船体前半部に旧船体を流用したことで大きな船首首飾り渦が生じること、また、耐氷プロペラとしたことから、プロペラのキャビテーションは発生しやすい欠点があるが、それでも航海速力16ノットで水深1万mまでのマルチナロービーム測深機による観測を可能とするとの設計目標をクリアしている。


■機関関係
 観測船では長時間にわたる低負荷運転を強いたり、負荷を大きく変動させたり、運転モードを頻繁に切り替えたりする。このため、「みらい」では以下のように機関及び発電機の組み合わせをさまざまに変えることができる構成とするなど複雑なシステムとなっている。

 このような複雑なシステムに対し、省力化及びヒューマンエラー防止のため、運転モードの自動切り替え等が可能な総合機関制御システム(MICOS)を採用している。

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