人魚モノというと,海中世界が登場するものもあれば,不老不死がテーマのもの,さらには「言葉が話せない」というモチーフだけで海ともまったく無関係な話も多い。この作品も舞台は陸上だが,一応,水棲生物としての人魚が登場する。
アンゼルセンの童話タイプでも,半魚人タイプでも,上半身が魚で下半身が人間という魚人タイプでも,人面魚タイプでもなく,魚の特徴を備えたヒューマノイド型らしい。不老不死で,セイレーン伝説のように滅びの歌を歌い,普通の人間はそれを聞くと死んでしまう。
具体的な姿ははっきりしないが,上半身は人間によく似ていて,下半身は金属に似た艶やかな鱗に覆われているが,魚のような尾ではなく,もしかしたら2本足かもしれない。というのは,陸で舞を舞うことができるから。といっても陸上ではゆっくりとしか動けない。
淡い色のながい髪,どこを見ているか分からないガラス玉のように光る大きな目,口にはギザギザとした細かい歯の列があり,細長く尖った舌がある。口から真珠を吐き出す。結石の一種らしいが,人魚の体内で男の精液が結晶化したという説もある。
人間の男と交わって子供を生むこともでき,必ず双子を産み,一方が海に帰り,一方が陸に残る。陸に残る子供は誕生直後は肌が鱗に覆われたようにも見えるが,成長すると人間と変わらない。健康だが不老不死ではない。
さらに”闇のもの”,人魚より深いところに棲むモノも存在するらしいが,こちらは最後まで分からないまま。ひょっとすると人間には知覚できない存在かもしれない。実は,人魚の声は人を大量殺戮もするが,”闇のもの”と闘う武器ともなるのではと匂わせるところもある。
ストーリーは,二人の不老不死の人魚を土蔵に閉じ込めた村があった。少年が人魚の世話役に選ばれ,年に一度の人魚の祭りがあり,少年が人魚を舞わせて村の運命を占う儀式がとりおこなわれる。
ヒロインは,歩き始めたばかりの頃にさらわれ,その村にいた過去がある。5才の頃,人魚のお祭りで大火事があり,数少ない生存者の一人として両親の元に戻る。そのヒロインの記憶に,ミナモリという少年のヴァイオリンにあわせて舞う人魚の姿があった。少女はそれから17年後,水守恭司というヴァイオリニストのCDを耳にする・・・。
追加項目:講談社ノベルズ/2008,2