第5回ノーチラス号&海中世界デザインプロジェクト

N-con展示風景
※モアーズ審査:宮武一貴、奥様、長谷川正治、西村
作品番号 作品名 カテゴリー 出品者名 説明
A2 深海探査母船モビィ・ディック

海中航行船部門
井上直
(東京)
 今回は未来の船に挑戦してみました。6000m級の大型深海調査船であり、深海探査ロボットの母船である。深海にとどまったまま長期間活動することができる。
 いつものようにバルサとプラ板を主な材料にフルスクラッチしました。時間切れで探査ロボットは出来ていません。舷側の張り出しのようなところに取り付ける予定でしたが。
 突貫作業で完成させて4/10・11のはるこん(大宮ソニックシティ)に展示する予定ですので、お近くの方はお立ち寄りください。

開田:綺麗なシルエットのデザインですね。先端の球殻部分が全体のスケール感を強調しています。全体を見ても、航空機でも宇宙機でもない、潜水艇としての新しいフォルムだと思いました。

藤崎:6000m級深海調査船で、この形態である必然性がよくわかりませんでした。宇宙船でもいいのでは?

モアーズ審査※:宇宙船に見える。宇宙船が海中にいるという意外性があるならいいが、違和感ではだめ。海のものだって誰が見ても納得するポイント、海の記号・言語があればいいのだが、宇宙戦艦の記号・言語を持ちすぎている。

A2 海中リゾートエクスプレス ”ノーチラス”
海中航行船部門
崎川洋一郎
(東京)

期待賞

 海洋をリゾートとして開発し、リゾートでありながらも海洋の大切さを 理解してもらう観光潜水艦として開発された、海中リゾートエクスプレス ”ノーチラス” です。
 海洋を汚さず壊さず、観光して楽しむ施設が充実しています。節で分離できるので運営も自由であり、また視界をかせげる構造。
 今回、コンテスト初参加で、今後、作品表現を磨き上げ、船体構造や観光方法のアイディアを盛り込み発展させていく予定です。

開田:まだアイデアスケッチなので、イラストか立体として完成されたイメージを見てみたいです。連結部分の構造やユニット単独ではどう取り扱われるのかなど、実際の運用に沿ったブラッシュアップを期待します。

モアーズ審査※:これから発展させる出発点とのこと。物語が見えるのがいい。海底火山があり、海中都市があり、海中都市サイズの巨大な連結した潜水船のこれからの姿を見たい。

A3 ブラックウィドウ(Black Widow)
海中航行船部門 高田 ぜんこう
(大阪)
全長:950mm、全高:100mm、全幅:80mm
木製、樹脂仕上げ、無可動
★自慢:おもりを仕込んであり、きれいに浮かびます。

開田:合成写真が良いですね。パースが整理されればもっと迫力が増すと思います。潜水艦の運用目的が書かれていないのですが、軍用の潜水艦なのでしょうか。機能の伺えるディテールが施されれば、もっとデザインが生きてくると思いました。

藤崎:単なる潜水艦にしか見えませんでした。

モアーズ審査※:高レベルの実力を持っている作者が、わざとダサい、レトロな味を狙っており、かつての「やられメカ」がお好きなのが伝わってくる。

A5
風洞実験施設とMonoceros(モノケロス号)

海中航行船部門 鈴木 史武
(東京)

最優秀作品賞

 潜水艦のデザイン検証に風洞実験を行う事があるという話を聞き、そこからイメージを膨らませた作品です。中の潜水艦は昨年のコンテストに応募したもののモックアップという設定です。

開田:潜水艦のイメージにあった背景設定ですね。ドックの絵は夕焼けが映えてとても魅力的です。風洞実験という場面設定も面白いです。設定も含めてバランスの取れたデザインで、背景にある世界観まで伺えるようです。

藤崎:CGが美しい。でも、それ以上の印象はとくにありません。

モアーズ審査※:とにかくCGはすばらしく、魅力的。潜水艦と風洞試験という組み合わせが縮尺模型試験なのか実物大の海中トンネルなのか、いろんな空想をかきたてる。その一方で作者自身「武器はほとんど持っていない」と注釈していながら、戦闘を行う潜水艦のイメージにとらわれているのは、「ノーチラス号」というコンテスト名の問題でもある。

A6 ネモ船長のノ−チラス号

参考展示 Reitsuki Kojima(USA)  ジュール・ヴェルヌは「海底二万里」(1870)を執筆する際、ノーチラス号の図面を作成し、それに基づいて執筆したと信じられている。その図面は失われたが、船内及び外観を原作に忠実に復元したのがこのノーチラス号。用途不明の小部屋が3箇所あることまで明らかにしている。
A7 「海底世界一周」のHydronaut号

参考展示 Abyss curators group  MGM映画「海底世界一周(Around the World Under the Sea)」(1956)に登場する原子力潜水艇Hydronaut号。世界中の地震発生帯に50基の海底地震計を設置することをミッションとしている。
 実はSubmanautという本物のディーゼル・電気推進の潜水艇を用いて撮影された。この現物はDaniaにあるサウスフロリダ州最大のアミューズメント・センター”The Grand Prix Race-O-Rama”に保存されている。
B1
GALSTEC AUV-EX5/自律航行型無人探査潜「おとひめ」

サポート部門 鈴木 賢一
(東京)

次席賞

 「意思を持ち、思考し、そして生き物のように動く機械」
 より高度な自己判断能力を持ち、想定外の不慮の事態に対しても後方からの支援無しに自律対処が可能な次世代型人工知能開発のための運用実験を主目的に、従来のスクリューや水流ジェット方式と異なる、魚のように泳ぐヒレ推進システムの信頼性や耐久性の実証試験、並びにその可動機構を海水と水圧から保護すると共に水との摩擦による抵抗を減らすために船体全体を覆う超高密度ポリマー樹脂の皮膜(被膜)の実用性や耐久性の実証実験も目的として開発された無人探査実験潜。

開田:かわいいです。航行する動画を見てみたくなりました。これは実験機ということですが、これをベースにした発展型としての実用機も作って欲しいです。目的に応じたユニットなど、色々とデザインが広がりそうです。

藤崎:JAMSTECの「うらしま」をメスにしたようなデザインが、安易と言えば安易。でも個人的には好みです。くびれがあったりして流体力学的にも効率の悪そうな形ですが、何となくロマンを感じました。

モアーズ審査※:一見、剛体のように思ってしまうが、つぶさに見ると、尾びれが空中で垂れ下がっていたり、腰が左右に曲がっていたり、翼がねじれていて、弾性体であることがわかる。尾びれや背びれが稼動する構造を見せずに弾性のある外皮で覆い、曲げやねじれがよく見なけりゃ分からないぐらいに微妙である。赤と白の塗り分けも剛体っぽく見せている。
 作者が意図してそうしているのであれば、それを押し通すのもいいが、もしそうでないなら、もうちょっと弾性体であることを見えるようにしたほうがいい。
 色と形がキンギョみたいだがイルカみたいにして欲しかったという意見もあり。

B2 深海作業ロボット リムル型 プロトタイプ
サポート部門 がる〜も
(京都)
 HSRS海底高速鉄道株式会社 海洋資源開発部門所属の深海作業ロボットです。地下資源掘削機などのプラントを設置する作業を行います。細かな作業が必要なため人型の形体をしています。

開田:手足に推進器が組み込まれているというのは、合理性はともかくとして、アイデアが面白いですね。せっかく人型をしているのですから、作業で扱う専用ツールなども見てみたいです。

藤崎:手足にスラスタをつけたところが面白い(だけど不便そう)。あとは普通のロボット。

モアーズ審査※:日本人はメカを人型にしたくなる(審査委員長自身が宇宙戦艦を人型にしてしまった張本人)。しかし人型でないものにも個性・キャラクター性を持たせることは可能である。ビルでさえ個性を持たせることができる。宇宙戦艦ヤマトの敵役のアンドロメダの原案は形はかっこよくてもキャラクター性がヤマトに届かなかったところ、松本零士はほんのわずか手を加えるだけでキャラクター性を際立てた。ディーテールを深めることがキャラクター性を持たせることに反する場合があるが、デザインにキャラクター性を持たせることは矛盾せずプラスになる。
 本作品のデザインとユーモアのセンスはよいが、手足の推進方式が立ち姿のまま水中を移動する立泳ぎになっているのはつらい。せっかく流体抵抗を考えたコックビットの水中姿勢が進行方向に対して斜めになっている。そこを納得させていないので、せっかくのユーモアが生きてこない。


B3 Quest 7000

参考展示 Abyss curators group  江東区市民センターでの西村の講演資料をもとに製作された次世代の有人潜水調査船。
C1 海底居住基地 Tektite Habitat
参考展示 Asterion Coen(仏)  1969年より米国領バージン諸島の水深13.1mに4人が60日間滞在。長期宇宙滞在の実験を兼ねて、科学研究を目的とする初の海底居住実験。1970年には初めて全員女性5人の潜水チームも組み入れられている。初めてサンゴ礁生態系の長期間にわたる研究にも使用される。
C1 ダイオウイカ
参考展示 Kaikou Splash(英)  近くの人にまつわりついてくる。