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2005年12月2日更新
そこで16S rDNAに着目し、微生物群を培養することなく16S rDNAを抽出しそれぞれ増殖させて遺伝子解読を行えば、微生物群全体の構成が得られる。これを「遺伝子系統樹解析」という。
全塩基配列を解読するゲノム解析によると、16S rDNAは1つの細菌に1つとは限らず、バクテリアの場合、いくつかのコピーを持つことが知られている。よく知られている大腸菌で7コピー、深海から分離した好圧菌(圧力大好き細菌、大気圧では生きられないものもある)では12コピーもある。古細菌(アーキア)ではシングルか2コピーである。
環境の変化に対して、ひとつの16Sがだめでも、マルチにコピーがあれば生命は維持していくことができるという利点が考えられるが、深海底という一見安定な環境に適応している好圧菌の16Sがなぜ多コピーなのかは、よくわからない。深層海流大循環(一回り2千年)で、いろいろな環境を経験しているからとの説もある。アーキアの場合は、多くの場合種の競争の少ない特殊な環境下にのみ生きられるので、他の環境への適応は必要なく、少ないコピー数で充分やっていけると考えられている。バクテリアでも、マイコバクテリウム(肺炎を起こす菌、最初に全ゲノム解析がなされた。ゲノムサイズは、約50万塩基で小さい)は哺乳類の細胞の中でしか(寄生)生きられないものは1コピーしかない。
これらのコピーは完全に同一ではないがほとんど同じ配列なので、遺伝子解析のうえではあまり困らない。もし仮に全く異なる16SrDNAを同一ゲノム内にあったとしても16SrDNA解析法では別の微生物と見なしてしまい、全解読してみないと分からない。
例えば、アーキアのうち好塩菌(塩湖や塩田の表面を赤く染めるやつ、フラミンゴが赤いのは好塩菌を食べているから)は実際に同一ゲノム内に全く異なる16S rDNAを2個持っている。(by 加藤ちさん)