■固体地球−年代決定法

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2009年1月11日更新


(出典:中村・福澤(1999)、中村敏夫・鈴木毅彦「第四紀の堆積物と年代」、月刊地球、Vol.22、No.10、2000)
放射性同位体を用いた年代決定法
鉛Pb210法(海底・湖底堆積泥、0〜200年)
炭素C14法(生物遺体、有機態炭素、土器付着炭化物、木炭のC14/C12比を液体シンチレーション又はAMSで計測。0〜6万年)
ウランU234法(サンゴ、ジルコン、火山ガラス、1000年〜50万年)
カリウムK40-アルゴンAr40法(火山岩、1万〜10億年)がある。
 まだ実用化していない方法に、
ベリリウムBe10法(Be10/Al26比法)(海底・湖底堆積物、1000〜1000万年)
ヨウ素I129法(海底・湖底堆積物、1万〜1億年)がある。
その他Cs137(数百年前まで)

放射線による損傷を計測する年代決定法
熱ルミネッセンスTL法(火山灰、貝化石、微化石、1000〜30万年)
光励起ルミネッセンス法(レス、水成堆積物、微化石、1000〜30万年)
電子スピン共鳴ESR法(歯牙化石、石英、1000〜300万年)
フィッショントラック法(火山灰、ジルコン、1000〜300万年)がある。

化学変化を利用した年代決定法
黒晶石水和法(黒晶石、火山ガラス、1000〜3万年)
アミノ酸のラセミ法(貝化石、微化石、1000〜500万年)がある。

安定同位体比による年代決定法
氷床コアの酸素安定同位体18O
 水分子は炭素16と水素1でできているが、わずかながら炭素18や重水素からなる重い水分子も存在する。
 南極やグリーンランドには何万年にわたって雪が降り積もった氷床がある。その雪の起源は、最も大きい水蒸気の供給源である熱帯の海をはじめさまざまな緯度の海で蒸発し、大気循環によって運ばれたものである。それは途中で凝結して降水したり、海から新たに水蒸気の供給を得たりしながら高緯度にまで運ばれ、最終的に凝結して氷床に降り積もる。
 その間、海から蒸発する時に水蒸気中の重い水分子の割合が減り、降水時には重い水分子がより凝結しやすいので水蒸気中の重い水分子の割合がさらに減少する。その割合は気温または海水温が低いほどより小さくなる。このため氷床中の酸素同位体比や水素同位体比は熱帯の水蒸気供給源から氷床までの気温や海水温となんらかの関係があると考えられるが、なぜか18O比は氷床の気温と直線関係があるらしい。
 Dansgaardらによると、
δ18O(‰) = Ts(0.67±0.02) - (13.7±0.05)
(Dansgaard et al., 1971, 1973; Johnsen et al., 1989; Johnsen et al., 1992)
出典:Isotopic Composition of Modern Precipitation in Longyearbyen, Svalbard
復元可能な年代:1000〜100万年
氷床コアの重水素Deuterium含有量
 雪中の重水素含有量と年平均表面温度と雪の形成温度の間に直線的な関係があることから、氷床コア中の重水素含有量からその場所における過去の気温を復元。
底生有孔虫化石の酸素安定同位体18O
 海水が蒸発すると、水蒸気中に軽い16Oからなる水の割合が多くなる結果、氷床が増える寒冷期の海水には重い18Oからなる水の割合が高くなり、氷床面積、海水準と相関がある。
 一方、有孔虫が海水中の炭酸イオンを取り込んで炭酸カルシウムの殻を作る時にも酸素同位体比が変化し、水温が低い方が重い18Oからなる炭酸カルシウムの割合が大きくなる。温度変化の少ない深海底で育つ底生有孔虫の殻の酸素と同位体比が用いられる。1000〜100万年
岩石表面のベリリウム10Be同位体比
 岩石表面が宇宙線にさらされてベリリウム10を生成することから、岩石が海面上に露出していたり、加工されて露出してからの年代が分かる。太陽活動が弱まったり地球磁場が弱まると地表に到達する宇宙線が増えることから、過去の太陽活動を復元することができる。

その他の年代マーカーと比較する年代決定法
人工放射性物質の濃度変化(海底・湖底堆積物、0〜50年、核実験起源の放射性同位体の濃度変化による)
年輪年代法(樹木年輪、0〜1万年)
氷縞粘土、年縞堆積物(湖底堆積物の視覚・化学物質の濃淡で年数を数える。0〜1万年)
生物群集パターン法(海底・湖底堆積物の貝、浮遊性生物などの種の分布による。0〜3万年)
火山灰層位法(テフラ層序法?)(海底・湖底堆積物、0〜100万年)
堆積物組成変動パターン法(海底・湖底堆積物の粘土鉱物組成を調べる。0〜100万年)
古地磁気法(溶岩、海底・湖底堆積物、0〜500万年)
微化石層序法(海底・湖底堆積物の花粉、珪藻、プランクトンの種の分布による。1000〜10億年)がある。
その他岩相層序

炭酸塩補償深度
 ある深さ以深では炭酸カルシウムが溶解してしまう。この深さを「炭酸塩補償深度」(CCD:Carbonate Compensation Depth)という。炭酸塩補償深度は、海洋環境によって異なり、同一海域でも時代に よって海洋循環の変動などにより補償深度も変化する。

=>「超領域科学としての海洋研究」平成11年度報告書((財)日本科学協会。うち第4章(超領域科学としての海洋研究94-1-1( 事例研究)a(海洋資源)に補償深度の解説がある。)

アルケノン」(長鎖不飽和アルキルケトン)と「地磁気エクスカーション
 大西洋などでは炭酸塩の殻を作る有孔虫の死骸が深海でも融解せずに堆積していて、そのC14炭素同位体比で年代(過去数万年が限度)を、18酸素同位体比で水温変化や氷床の消長を、殻の形状で水温 を復元できる。
 これに対し、太平洋や北極海の深海では炭酸塩の殻が溶けてしまって有孔虫の殻による解析ができな い。代わりに、ある種の円石藻類が持っている「アルケノン」(長鎖不飽和アルキルケトン)というアミノ酸を使って水温を決定する。すなわち、アルケノンには炭素数37で不飽和度2のものと3の ものがあり、その割合が表層水温とプラスマイナス0.5度Cの精度で直線性があるという性質を利用する。
 この方法は円石藻類の増殖時期が年2回あることから、水温も2つの値を取ることから、これまでのデータの見直しが行われているようだ。
 炭酸塩の殻がない場合のもうひとつの水温復元方法は、放散虫のケイ酸塩の殻の形状から推定する方法で、0.5度の精度で水温を推定できるという。
 炭酸塩の殻がないコアの年代(数万年より以前)は、地磁気勾配の変動(エクスカーション)を利用する。


■サンゴ中のカドミウム/カルシウム比と酸素同位対比
 海水中のカドミウム存在度は栄養塩類の存在度と相関が高いため、エルニーニョ発生時のカドミウムの減少がガラパゴス島のサンゴの骨格に記録されている。このほかバリウム、シリカと栄養塩類の相関もよいが原因はよく分かっていないとのこと。
 表層海水の酸素同位対比は降水量に比例して通常の海水値よりも小さくなる。激しい降水で表層海水が安定成層状態になると上下混合が起こりにくいので、サンゴの酸素同位対比に降水量の変動が記録される。


■変動指標
「海洋底堆積物中の有孔虫殻の酸素同位体比O18/O16」
「氷床コアの水のO18/O16」
「氷床コアにトラップされた大気中のCO2、CH4濃度」
「湖沼底堆積物の粒度組成、含水率(堆積物密度)、珪藻殻量、帯磁率」、

「レザバー効果」

多田隆治(1999):地球環境変動予測における高精度年代決定の重要性、月刊地球特集号、号外26、pp.207-210

=>Kazuo's Home Page(山形大学。年代学いろいろ、同位体地球科学(K-Ar法、U-Pb法、Rb-Sr法、Pb-Pb法)、SHRIMP、加速器質量分析など)西村屋選

■データセット
 NOAA PaleoclimatologyClimate ReconstructionsIce Core Data Sets古海洋海水準A海水準B
 ●過去2000年間の気温の変化

北半球平均気温の推移(西暦200〜1980年)、黄:40年移動平均、赤:10年移動平均(Mann, M.E. and P.D. Jones, 2003

南半球平均気温の推移(西暦200〜1980年)、黄:40年移動平均、赤:10年移動平均(同上)

 ●過去4万年間の酸素同位体比/気温

黄:グリーンランドのδ18O(North GRIP - Greenland Ice Core Chronology 2005 (GICC05) 20-year resolution、出典:NGRIP dating group, 2006、西暦2000年からの相対年)
赤:グリーンランドの気温℃(GISP2 - Temperature Reconstruction and Accumulation Data、出典:Alley, R.B.. 2004
青:南極大陸のδ18O(EPICA Dome C - Stable Isotope Data to 44.8 KYrBP、出典:Stenni, B., et al. 2006、西暦1950年からの相対年)

 ●過去12万年間の気温の推移

黄:グリーンランドのδ18O(North GRIP - 50-year Averaged Oxygen Isotope Data、出典:North Greenland Ice Core Project members. 2004
赤:グリーンランドの気温(North GRIP - MIS3 CH4, d15N, and Temperature Data、出典:Huber, C., et al. 2006

 ●過去80万年間の気温の推移

黄:南極EPICA Dome Cの重水素比から求めた海水温℃の変化(Orbital and Millennial Antarctic Climate Variability over the Past 800,000 Years、出典:Jouzel, J., et al. 2007
赤:南極Vostokの重水素比から求めた海水温℃の変化(Vostok Ice Core Deuterium Data for 420,000 Years、出典:Petit, J.R., et al., 2001

 ●その他
 ・EPICA Dome C(南極大陸):CO2、2万年
 ・Vostok(南極大陸):CO2、12万年CO2、25万年

●海水準変動
Waelbroeck, C., et al., 2002: Sea-level and deep water temperature changes derived from benthic foraminifera isotopic records. Quat. Sci. Rev., 21(1.3), 295.305.
Waelbroeck, C., et al., 2005: A global compilation of late Holocene planktonic foraminiferal δ18O: Relationship between surface water temperature and δ18O. Quat. Sci. Rev., 24, 853.858.

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