SFといえばロボットだが、なぜかハインライン作品にはヒューマノイド型ロボットは登場しない。しかし、数少ないながら強い個性のロボット/コンピュータが登場する。
なんといっても、「月は無慈悲な夜の女王」に登場するマイク(マイクロフト・ホームズ。高選択性・論理的・複合評価性監督機・マーク4号・L型)。彼/彼女は、ワイオと話す時にはミシェールとなる。月世界議長アダム・セレーネとして月革命を指揮し、シモン・ジェスターとして批評詩を発表する。しかし、マイクの本体は月世界行政府の地下深くに存在する巨大なコンピュータである。
同様に、「愛に時間を」に登場するミネルヴァ(その後、人間に生まれ変わる)とその妹のアテナも巨大なコンピュータなようだ。
「愛に時間を」では小型化が進んで、ラザルス・ロングのスペース・ヨットのドーラ、「獣の数字」で多元航宙機のゲイ・デシーバがどちらも乗り物に納まっているが、やはり人間の頭サイズにはとても納まっていない。
いずれにしてもアシモフ作品などに登場するヒューマノイド型ロボットではなく、超人的な運動能力、作業能力を発揮するわけではない。なぜヒューマノイド型ではないのか? それは、ハインラインがアクション的な能力よりも電子頭脳が人間の知性にどこまで近付けるかを書きたかったからではないだろうか? それゆえにハインライン作品に登場するロボットはある程度大きな電子頭脳とならざるを得ず、部屋、または、乗り物として登場する。
現在、世界最速の地球シミュレータは5Tflops(テラ・フロップス。1Tflopsは1秒間に1兆回の計算性能)の実効性能の実現を目指して開発された。つまり、ピーク性能は40TFLOPSだが実効効率はその12.5%を目標として開発されたわけだが、実際には全球大気大循環シミュレーションで26.58Tflops、核融合3次元流体シミュレーションで14.9Tflops、乱流直接数値シミュレーションで16.4Tflops、Linpackベンチマークテストで35.68Tflopsという驚異的な実効効率を達成している。
この地球シミュレータはベクトルプロセッサ8台で主記憶を共有する計算ノード640台を単段クロスバーネットワークで結合した分散主記憶型並列計算機システムであって、50m×65m×17mという大きな建物の中を占めている。
さて、この地球シミュレータの1000倍の能力、つまりペタ・フロップス級のスピードが出れば人間の脳と同じ能力が実現できるという説があるとのこと。この性能を達成するためには超電導素子とか光演算素子とか有機素子などいくつかの革新的技術が必要であるという。つまり、マイクのようなコンピュータが実現するとしても、とてもヒューマノイド型サイズに納めることは、非常に難しいといえそうだ。