■ハインライン全作品の紹介

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2002年3月10日更新(出版年順です。本の出版情報は ふぉとま さんのWebページをご覧下さい)

■感化の時代(1939〜1942年)
■成功の時代(1947〜1958年)
■疎外の時代(1959〜1987年)


■感化の時代
【1939年】
●1939年:第2次世界大戦勃発

生命線」(1939、"Life-Line"、井上一夫、『月を売った男』/矢野 徹、『デリラと宇宙野郎たち』より)
 ハインラインのデビュー作。人の誕生と死の時期を計測できる装置を発明した男の物語→イクシーの書庫

疎外地」(1939、"Coventry"、矢野 徹、『動乱2100』より)
 危険人物として矯正されるよりも疎外地に隔離されることを選んだマッキンノン。自由に生きることの難しさを厳しく問う。→イクシーの書庫

不適格」(1939、"Misfit"、矢野 徹、『動乱2100』より)
 「メトセラの子ら」で登場するミスター計算機ことアンドリュー・ジャクソン・リビイが初登場。地球ではまったく認められていなかった青年リビイが宇宙での任務でその天才的な計算能力を持つことを人々は気付く。→イクシーの書庫
【1940年】
鎮魂歌」(1940, "Requiem"、井上一夫、『月を売った男』/矢野 徹、『地球の緑の丘』より)
 「月を売った男」(1950)の後編にあたる。月に行くことに強烈な情熱を燃やしてきた企業家ディロス.D.ハリマンは、はたして月に行けたか?→イクシーの書庫 西村屋選

もしこのまま続けば」(1940、""If This Goes On−""、矢野 徹、『動乱2100』より)
 宗教専制時代、現人神である予言者に身を捧げる運命の少女シスター・ジュディスに、いつしか恋した親衛隊員ジョン・ライルは、彼女を救うために革命軍に身を投じ・・・。→イクシーの書庫

「光あれ」」(1940、"'Let There Be Light'"、井上一夫、『月を売った男』より)
 太陽エネルギーを利用した新たな発明の物語。原子物理学・電子工学者のアーチボルト・ダグラスと、生化学・生態学者でマリリン・モンローのような外観を持つマリー・ルー・マーチンの研究者同士の粋なロマンスが絡んでいて心地よい。西村屋選

道路を止めてはならない」/「道路を止めるな」(1940、"The Roads Must Roll"、井上一夫、『月を売った男』/『デリラと宇宙野郎たち』より)
 コンベア・ベルト式の機械化道路の上に都市が形成された「道路都市」での事件→イクシーの書庫

爆発のとき」(1940、"Blowups Happen"、矢野 徹、『デリラと宇宙野郎たち』より)
 「月を売った男」(1950)の前編に当たる。原子力ロケット燃−手の付けようもないほど危険なハーパー=エリクソン式アイソトープ人工燃料−とエネルギー衛星というものが誕生したいきさつが分かる。ストロングとディクソンも登場→イクシーの書庫
【1941年】
■ハインライン、ここで借金を完済。●1941年、真珠湾攻撃、太平洋戦争勃発。
失われた遺産」(1941、"Lost Legacy"、矢野 徹・田中融二、『失われた遺産』より)
 超心理学者のフィリップ・ハクスレイ博士、女子学生のジョーン・フリーマン、脳外科医のベン・コバーンの3人は、ある透視能力者の交通事故による脳手術がきっかけで、超能力の存在を知る。シャスタ山で思いもよらぬ秘密を知る・・・。→イクシーの書庫

歪んだ家」(1941, "−And He Built a Crooked House−"、矢野 徹・他、『輪廻の蛇』より)
 立方体(3次元)を切り開くと6つの正方形(2次元)に展開されますね。4次元の超立方体は8つの立方体に展開できて、3次元の世界で家として住めるハズ(本当?)。こういう発想から建てた家で起きたことは?

帝国の論理」(1941, "Logic of Empire"、矢野 徹、『地球の緑の丘』より)
 金星の労働者として売られてしまった男→イクシーの書庫

かれら」(1941, "They"、矢野 徹・他、『輪廻の蛇』より)
 自分以外は全て自分とは違う何かであると思い始めた男

犬の散歩も引き受けます」(1941、"Lost Legacy"、矢野 徹、『地球の緑の丘』より)
 ジェネラル・サービス社に持ちかけられた実現不可能と思えるような仕事。→イクシーの書庫

時を越えて」(1941、"Elsewhen"、矢野 徹・田中融二、『失われた遺産』より、抄訳?「次元旅行」内田庶)
 多次元宇宙物。アーサー・フロスト博士は、いろいろな<時の相>に旅行する方法を発見し、5人の学生を自宅に招いてある実験を行う。5人はそれぞれ違う世界に・・・。→イクシーの書庫

時の門」(1941、"By His Bootstrpsm"、福島正実・他、『時の門』より)
 ボブ・ウィルソンは突然部屋の中に出現した見知らぬ男ジョウから時の門をくぐるように言われる。タイムパラドックス物。→イクシーの書庫

宇宙の孤児』(1963(雑誌での公表時期は1941年)、"Orphans of the Sky", 矢野 徹、抄訳「さまよえる都市宇宙船」福島正実)
 地球から何世代にもわたってケンタウリを目指す巨大な宇宙船。回転によって疑似重力を得る何層もの甲板を持つ円筒形の世界。反乱によって過去の事実を知る者を失ってしまい、円筒の外の星々を見たことのない子孫たちにとって、「船」が世界の全てであり、「地球」や「ケンタウリ」や「宇宙」という言葉は「天国」としか言えない存在であり、「天文学」や「基礎物理学」の本は単なる伝記・神話に過ぎない。
 そんな世界でヒュウ・ホイランドは双頭のミュータントであるジョウ=ジム・グレゴリイに出会う。

【1942年】
金魚鉢」(1942、"Goldfish Bowl"、福島正実・他、『時の門』より)
 信じられないくらい巨大な竜巻「水柱」と光の玉の謎を解明しようとする2人が知った真実とは・・・。これも結構怖いです。→イクシーの書庫

ウォルドウ」(1942、"Waldo"、冬川 亘、『魔法株式会社』より)
 自由落下軌道で暮らす重症無筋力症の天才発明家ウォルドウが魔法としか思えない不思議な現象の解明に取り組み始めたところが、・・・→イクシーの書庫

ジョナサン・ホーグ氏の不愉快な職業」(1942, "The Unpleasant Profession of Jonathan Hoag"、矢野 徹・他、『輪廻の蛇』より)
 エドワード・ランダルとシンシア・クレイグの探偵夫婦の元に持ちこまれた奇妙な依頼。うーん、結構怖い物語。夜に大きな鏡を寝室に置くのはやめておこう。

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■ハインライン、ここで絶筆宣言。その後、再開して「成功の時代」へ。
●1942年:マンハッタン計画に着手。1945年:広島、長崎に原爆投下。日本が無条件降伏。
【1947年】
地球の緑の丘」(1947、"The Green Hills of Earth", 矢野 徹、『地球の緑の丘』より)
 宇宙航路の盲目詩人ライスリングの伝説となった物語→イクシーの書庫

宇宙操縦士」(1947、"Space Jockey"、矢野 徹、『地球の緑の丘』より)
 せっかくの結婚記念日に仕事に呼び出される宇宙操縦士。仕事に追われて残業続きのお父さんに読んでもらいたい。→イクシーの書庫

宇宙船ガリレオ号』(1947, "Rocket Ship Galileo"、山田順子)
 ジュヴナイル物、「月世界征服」の名前で映画化。少年ロケットクラブの3人が、著名な原子物理学者である叔父さんに見初められて、月ロケットの開発に取り組み、月への一番乗り競争に挑んだところが・・・

コロンブスは馬鹿だ」(1947, "Columbus Was a Dope"、福島正実・他、『時の門』より)
 60年もの恒星間飛行に妻子と出かけようとする恒星宇宙船ペガサス号の機関長アプルビイ教授と知り合った2人の商売人の会話。→イクシーの書庫

帰郷」(1947, ""It's Great to Be Back!""、矢野 徹、『地球の緑の丘』より)
 地球での生活に恋焦がれていた月生活の夫婦が、地球に帰りついたところ・・・→イクシーの書庫

猿は歌わない」(1947、"Jerry Was a Man", 矢野 徹・田中融二、『失われた遺産』より)
 短編集。遺伝子工学の発達により知能を持たされた労働猿ジェリーの運命は・・・。→イクシーの書庫

【1948年】
栄光のスペース・アカデミー』(1948, "Space Cadet"、矢野 徹)
 ジュヴナイル物、太陽系パトロール隊の一員となることを目指す4人の若者を待ち受ける猛訓練と、金星での事件→イクシーの書庫

未知の地平線』(1948、"Beyond this Horizon"、斉藤伯好)
 ハインライン最初の単行本。遺伝子操作が可能となった未来で、エリート種のエリートのハミルトンは反逆集団による暴動に巻き込まれ・・・。→イクシーの書庫

坐っていてくれ、諸君」(1948, "Gentlemen, Be Seated", 矢野 徹、『地球の緑の丘』より)
 月の地下トンネルで何か事故が起こり、親指くらいの穴が開いた。それを・・・。→イクシーの書庫

月の黒い穴」(1948, "The Black Pits of Luna", 矢野 徹、『地球の緑の丘』より)
 月面見学で弟が行方不明に→イクシーの書庫

宇宙での試練」(1948,"Ordeal in Space", 矢野 徹、『地球の緑の丘』より)
 高所恐怖症になった宇宙飛行士→イクシーの書庫

深淵」(1948、"Gulf", 矢野 徹・田中融二、「超能力戦隊」、「ノヴァ爆発の恐怖」)(『失われた遺産』より)
 探検家・講演家・作家のジョセフ・ギリアド大尉/ジョウ・グリーン/連邦保安局秘密捜査官ジョセフ・ブリッグズは、あるマイクロフィルムを運ぶ途中で、慈善事業家の顔を持つが残虐なケイスリー夫人に捕まる。監房で出会った謎の男グレゴリー・ボールドウイン/ケトルベリイ(薬缶腹)と脱出するが・・・。やがてジョウは若い女性ゲイルの訓練によって新人類としての能力に目覚め、ノヴァ爆弾を解除するためケイスリー夫人のドームに潜入し・・・。「フライデイ」の前作。→イクシーの書庫

【1949年】
レッドプラネット』(1949, "Red Planet", 山田順子,「赤い惑星の少年」塩谷太郎)
 ジュヴナイル物。火星では厳しい冬を越すために火星年で北極近くと南極近くの間を年2回移住しなければならない。少年ジム・マーロウと火星生物ウィリス、親友のフランク・サットンは、ローエル・アカデミーでの寄宿生活を始めるが、新校長のハウとカンパニーの総支局長ゲインズ・ビーチャーは移住禁止政策の実施を目論む。その秘密をコロニーの人々に知らせるために、寄宿舎を脱出するが・・・。
 人類が火星に降り立ってから50年後の世界。先住民である火星人は星間旅行も可能だったがなぜだか星間旅行をやめてしまった。ウィリスは地球名:火星ラウンドヘッド、通称:バウンサー、学名:エリオセファロオウシタックス・ブロン・・・、火星語名:”世界を望むものは仲間となれ”、”若く望みある者”又は”希望”。→イクシーの書庫 西村屋選

デリラと宇宙野郎たち」(1949、"Delilah and the Space-Rigger", 矢野 徹、『デリラと宇宙野郎たち』より)
 荒くれどもばかりの宇宙ステーション建設現場の通信士の交代要員が女性グロリアと分かって大騒動。→イクシーの書庫西村屋選

わが美しき町」(1949, "Our Fair City"、矢野 徹・他、『輪廻の蛇』より)
 生きているつむじ風キトンと腐敗市政に挑む新聞記者

果てしない監視」(1949, "The Long Watch", 矢野 徹、『地球の緑の丘』より)
 「栄光のスペース・アカデミー」(1948)で伝説の男となっているダールクィスト中尉の物語→イクシーの書庫
【1950年】
●1950年6月に朝鮮戦争が始まり、東西対立が激化。
ガニメデの少年』(1950,"Farmer in the Sky",矢野 徹)
 ジュヴナイル物、父ジョージとの2人暮らしの少年ビル・ラーマーは、父の再婚相手のモリーと娘ペギーと一緒に、メイフラワー号で木星第3衛星ガニメデに植民する。地震によるヒートトラップの故障が招く寒冷化の危機を乗り越えて。西村屋選

短編集『魔法株式会社』(1950、"Waldo, and Magic Inc."、冬川 亘)
 ハインライン傑作集3→イクシーの書庫

短編集『月を売った男』(1950)
創元版,全5篇

月を売った男」(1950、"The Man Who Sold the Moon", 井上一夫,『月を売った男』/矢野 徹、『デリラと宇宙野郎たち』より)
 月面旅行を熱望するハリマン・ストロング・アンド・ハリマン産業(新世界住宅社、スカイブラスト運送、エンティポディーズ運輸、アンデス開発社、道路都市会社、ベルト運輸、食料トラスト"クィズィーン社"、両大陸娯楽会社、トランス・アメリカ銀行など)の社長ディロス・デヴィッド・ハリマンは、エネルギー衛星の喪失という逆境の中で、政府に頼らずに月ロケット開発に乗り出す。
 堅実な共同経営者ジョージ・ストロングとともに、月の領土権、採掘権、月映画の放映権、ダイアモンド、月の噴火口の命名権、月光クラブの会員証、月に行って帰ってきた切手、月表面を広告に使う権利など、ありとあらゆるアイデアを絞って開発資金を集める。→イクシーの書庫西村屋特選!

短編集『デリラと宇宙野郎たち』(1950、矢野 徹)
 ハヤカワ版、未来史1
(著者紹介)ハインラインと妻ジニーの秘密が明かされている。ファン必読。→イクシーの書庫
【1951年】
栄光の星のもとに』(1951, "Between Planets"、鎌田三平,「宇宙戦争」塩谷太郎 )
 ジュヴナイル物、地球生まれの父,金星生まれの母の間に宇宙間で生まれた主人公ドナルド・ハーベイ(ドン)は、火星にいる父母に届けなければならないある物を持ったまま惑星間戦争に巻き込まれ、金星で一文なしに・・・。ドンとイザベル・コステロ(おばあちゃん)の関係がさわやか。→イクシーの書庫西村屋選

人形つかい』(1951, "The Puppet Masters", 福島正実、「タイタンの妖怪」中尾明抄訳)
 秘密捜査官サム(エリフ・ニヴェンズ)、おやじ(アンドリュー)、妹役で赤毛のメアリ(アリュケーア)の3人が謎の不時着UFOを調査するが、人間をあやつるナメクジ状生物の存在を知る。上半身裸体作戦がコメディにならずに、人類存亡の壮絶な戦いとして、ひしひしと迫ってくるところが凄い。映画「ブレイン・スナッチャー−恐怖の洗脳生物(1994)」はこの「人形使い」が元ですね。西村屋選

短編集『地球の緑の丘』(矢野 徹)
1951, 未来史2、全11篇
【1952年】
宇宙の呼び声』(1952、"The Rolling Stones"、福島正実/森下弓子)
 ジュヴナイル物。「月は無慈悲な夜の女王」(1966)の後に読むとよい。あのヘイゼル・ミード(のちにヘイゼル・ストーン)が自称95歳の祖母で登場。
 ルナ・シティの元市長でSFシナリオライターのロジャー・ストーン氏、その妻で医師のイーディス博士、そろそろ年頃の一人娘で祖母の名を継いだミード、霜防止酸素再吸入バルブを発明した悪たれ双子のカスターとポルックス、思考を読む能力があるらしい4歳のローウェルの家族が、ローリング・ストーン号で月、火星、小惑星を舞台に冒険を繰り広げる。西村屋選
 ところでロックバンドのローリングストーンズは1962年に結成、1963年にレコードレビュー。

大当たりの年」(1952、"The Year of the Jackpot", 『時の門』より)
 数理統計学者ポティファー・ブリーンは街中で突然裸になってしまった女性ミード・バーストウを助ける。奇妙なことがとどまるところを知らずに増大し、何が起ころうとしているのか・・・。「ジョナサン・ホーグ氏の不愉快な職業」に似た雰囲気の怖さがある。→イクシーの書庫
【1953年】
スターマン・ジョーンズ』(1953、"Starman Jones"、矢野 徹)
 ジュヴナイル物。航宙士で偉大な数学者を叔父に持つ農夫の少年マックス(マクシミリアン・ジョーンズ)。父亡きあと、義母を世話していたが、粗暴な新しい義父の出現に家出を決意。偽免許で恒星間貨物船に乗り込み、そこで天才的な記憶能力を発揮。船長の操船ミスで宇宙の迷子となってたどり着いた地球型惑星チャリティーで待っていたのは・・・。西村屋選

短編集『失われた遺産』(1953, 矢野 徹・田中融二)
 ハインライン傑作集1、全5編

短編集『動乱2100』(1953, Revolt in 2100, 矢野 徹)
 未来史3、全3篇→イクシーの書庫

血清空輸作戦」(1953, "Sky Lift"、福島正実・他、『時の門』より)
 冥王星で死に至る伝染病が蔓延。三百人近い命を救うには3.5Gという高重力で9日間加速・減速を続けて血清を運ぶしかない。主人公のジョウ・アプルビイは「コロンブスは馬鹿か」の機関長と同姓だが別人。子孫かも。→イクシーの書庫

夢魔計画」(1953, "Project Nightmare"、福島正実・他、『時の門』より)
 米国中の大都市に仕掛けられた原子爆弾の点火を押さえるために・・・。超能力者物→イクシーの書庫
【1954年】
●1954年3月に第5福竜丸がビキニ環礁での水爆実験で被爆。
ラモックス(ザ・スタービースト)』(1954,"The Star Beast"、大森 望、「宇宙怪獣ラモックス」福島正実抄訳)
 ジュヴナイル物。宇宙探検の名門、スチュワート家の息子のジョン・トーマス・スチュワート11世、ガールフレンドのベティ・ソレンセン、ペットで宇宙怪獣のラモックスは深い絆で結ばれている。人類よりも遥かに進んだ科学技術を持つフロシー星人が地球を訪れ、行方不明のフロシー星人の少女を返さなければ地球を破壊すると宣告する。宙務省常任次官のヘンリー・グラッドストーン・キクはこの難問をどう処理するか?
 主人公ジョン・トマスとベティの関係が面白い。いつも尻にしかれている主人公だが、結婚式ではベティがぜんぜん化粧していなくて、また、赴任先の地位もベティが目論んだ特命全権公使ではなく大使館付二等書記官だった。いや、男を立てるベティの操縦術が見事なのか。→イクシーの書庫
【1955年】
ルナ・ゲートの彼方に』(1955,"Tunnel in the Sky"、森下弓子)西村屋選
 ジュヴナイル物、ゲートが星々を繋ぐようになった未来。外世界の探検家を志すロディ(ロデリック・L・ウォーカー)は、担当教官のB・P・マトスン助祭から不適と言われながら最終サバイバル試験に挑む。予期せぬ異常により見知らぬ惑星に取り残されることとなった数十名の青少年少女たち。謎のストーバーの警告とは? やっと築いた独立自治政府の行方は?。民主主義と専制主義の間で政治システムの在り方を考えさせる作品。
【1956年】
太陽系帝国の危機/ダブル・スター』(1956,"Double Stars"、井上 勇/森下弓子)西村屋特選!
 ヒューゴー賞受賞。売れない俳優ロレンゾ・スマイス(本名ローレンス・スミス)が宇宙ヨット「トミー・ぺイン号」の機長ダック・ブロードベントから特殊な演技の依頼を受ける。火星人の急襲を受けて宇宙に。それは誘拐された太陽系帝国元最高大臣、現野党党首で大統領候補のジョン・ジョジフ・ボンホートの代役というものであった。
 女性秘書ペネロピー・タリアフェロ・ラッセル(ペニー)の特訓を受けて、火星人との縁組式という太陽系帝国の運命を左右する使命に挑む・・・。

宇宙(そら)に旅立つ時』(1956,"Time for the Stars"、酒匂真理子、「宇宙兄弟の秘密」片方善治抄訳)西村屋選
 ジュヴナイル物。<生活圏計画>のもと、双子のテレパスの一方が恒星間飛行に旅立ち,地球型惑星を探索。相対性効果によるタイムラグによる通信困難を乗り越えながら・・・。「夏への扉」にも通じるテーマが含まれている。
 トムとパットの双子は<長期展望財団>の<遺伝子研究所>のテストを受けて、テレパシー能力があることを知る。スキー事故で体が不自由になったパットが地球に残り、トムが恒星間トーチ・シップ<ルイス&クラーク>に乗り込むこととなり・・・。→イクシーの書庫

 <生活圏計画>で出発した12隻のトーチシップ:
・<ルイス&クラーク/エルシー>(主人公が乗船)
・<ヘンリー・ハドソン>(最初に出発)
・<リチャード・E・バード>(2番目に出発)
・<ヴァスコ・ダ・ガマ>(キャス・ワーナーの兄弟が乗船)
・<レイフ・エリクソン>(最初の結婚式があげられる)
・<ピンタ>(最初の赤ん坊が誕生)
・<マルコ・ポーロ>(ファートニー3姉妹のうちミス・アルファが乗船)
・<サンタ・マリア>(ファートニー3姉妹のうちミス・ベータが乗船)
・<マゼラン>
・<ノーティラス>
・<クリストフォロ・コロンボ>
・<ニーニャ>

 <エルシー>に搭乗する12人のテレパス;
・トム(トマス・ペイン・レオナルド・ダ=ヴィンチ・パートレット):主人公。パートナーは地球にいる双子の兄のパッド(パトリック・ヘンリー・ミケランジェロ・パートレット)
・バーナード・ヴァン・ハウテン
・メイ=リン・ジョーンズ:中国系ペルー人、ホーン−エイス、22歳ぐらい。
・ルパート・ハウプトマン
・アナ・ホロシェン:美人
・グローリア・マリア・アントニータ・ドカンポ:女性
・サム・ロハス
・ブルーダンス・マシューズ(ブルー):女性、パートナーは地球にいる姉。その姉に支配されている。
・ダスティー・ローズ:12歳、自称14歳、絵の天才で唯一画像が受信できるが、性格は最悪。
・ミス・ガンマ・ファートニイ:自称30才のオールドミス、変人、パートナーは三つ子の2人で<マルコ・ポーロ>と<サンタ・マリア>に乗船。
・キャス・ワーナー:45歳、感じのよい物静かな男、パートナーの兄弟が<ヴァスコ・ダ・ガマ>に乗船
・アルフレッド・マクニール:65歳以上、愛すべき老人、黒人、パートナーは地球にいる姪の娘セリスタイン・リジャイナ・ジョンソン/シュガー・パイ。

 訪れた星域;
・鯨座タウ:地球から11光年。太陽の3/10の明るさ。惑星コンスタンス:トカゲに似た肉食動物:鯨座ティラノザウルス、流行病
・水瓶座ベータ:地球型惑星はなく、海もない。アンモニアの海を持つ<地獄>で燃料補給。
・鳳凰座:<いなか駅>
・鯨座ベータ(デネブ・カイトス):太陽の37倍の明るさ。惑星エリシア:表面の90%以上が海。両生生物の原住民、巨大な怪獣
・鳳凰座アルファ:
【1957年】
●1957年:ソ連、スプートニク衛星の打ち上げ成功。
夏への扉』("The Door into Summer"、福島正実、「未来への旅」福島正実抄訳)
 ローカス賞受賞。冷凍睡眠とタイムトラベルがテーマ。親友と恋人に裏切られた女中型ロボットの発明家ダニエル・ブーン・デイヴィス(ダニイ)、誇り高き猫の護民官ペトロニウス(ピート)、親友の継娘フレドリカ・ヴァージニア・ジェントリー(リッキー)が登場。
 ダニイとピートが6週間戦争の前に住んでいたコネチカット州の家には、ピート専用のも含めて12の扉がある・・・。この書き出しは出色。また、猫好きの方はぜひ英語で読むことをお奨めします。Now! とか who! とか No! など猫語が分かるようになります。
 この作品については、ももねこさんの「宇宙猫の尻尾」で徹底解剖されていて必見! 西村屋特選!

銀河市民』(1957,"Citizen of the Galaxy"、野田昌宏)
 ジュヴナイル物。9惑星連邦の主星サーゴンの奴隷市場で、少年ソービーは、老乞食《いざりのバスリム》(父ちゃん)に買い取られて新しい生活を始める。秘密の任務を持っていたバスリムが殺され、ソービーは催眠記憶によって託された伝言を銀河連邦宇宙軍に届けるため、追手から逃げる・・・。惑星ロシアン、フィンスター、トスIV、ウーラムーラを巡り、ヘカテから銀河辺境区へ、そして地球(テラ)を舞台として奴隷売買組織の謎に迫っていく。→イクシーの書庫西村屋特選!

象を売る男」(1957, "The Man Who Traveled in Elephants"、『輪廻の蛇』より)
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地球の脅威」(1957、"The Menace from Earth"、『時の門』より)
地球からやってきたある美女ミス・ブレントウッド、彼女がなぜ月の少女ホーリイ・ジョーンズにとって「地球の脅威」なのかは、読んでのお楽しみ。→イクシーの書庫西村屋選
【1958年】
スターファイター』("Have Space-suit, Will Travel"、矢野 徹・吉川秀実、「大宇宙の少年」)西村屋選
 ジュヴナイル物、大学進学資金に困る少年キップ(クリフォード・ラッセル)が、月旅行の懸賞当選を目指して大作戦を展開。惜しくも当選は逃したが、送られてきた宇宙服を完全な状態にまで整備した。その宇宙服オスカーを手放さざるを得なくなったある日、エイリアンから円盤で逃げてきた《おちびさん》(パトリシア・ワイナント・ライスフェルド)と宇宙警察官の《ママさん》に出会う。3人ともエイリアンの円盤に捕らえられて月に連れ戻され・・・。冥王星、さらには、ヴェガ、小マゼラン雲までを舞台にして、人類の運命が若い2人に委ねられる。→イクシーの書庫

メトセラの子ら』/『地球脱出』(1958(雑誌への公表は1941年より), "Methuselah's Children". 矢野 徹)
ラザルス・ロング登場。長寿族、ハワード・ファミリーの存在が普通人に知られ、迫害から逃れるために恒星間飛行に。

ポディの火星旅行/天翔(あまかけ)る少女』("Podkayne of Mars :Her Life and Time"、中村能三)
 ジュヴナイル物、火星の少女で深宇宙探検隊長を夢見るポディと天才の悪ガキの弟クラークが、大叔父で火星共和国上院議員のアンクル・トムと一緒に地球への旅へ。途中に立ち寄った金星で惑星間の陰謀に。西村屋選

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【1959年】
■ハインライン、「疎外の時代」へ。リアリズムよりも文明批評に重点を置いた作風に。
宇宙の戦士』("Starship Troopers"、矢野 徹)
 ヒューゴー賞、ローカス賞受賞。ジュヴナイル物と分類されている。日本でアニメ・ビデオ化。賛否両論が渦巻いたとか。モビル・スーツの原型がここに。映画「スターシップトゥルーパー」は原作とは似て異なるもの。
 兵役経験者だけが公民権を持つ未来。誇り高い事業家で政治や軍隊とは無縁の伝統を持つリコ家の息子、ジュリアン(ジョリー)・リコは、親友のカールと同級生で美人のカルメンシータ・イパニェスとともに地球連邦軍に志願する。
 キャンプ・キューリー、キャンプ・スプーキーでの機動歩兵としての厳しい訓練教育を終えるが、その間に<クモども>との異星間戦争が勃発し、ブエノス・アイレスが全滅する。ジョリーは<ウイリー山猫隊>の一歩兵として兵員輸送宇宙艦<ヴァリイ・フォージ>に乗り込み<クモども>の母星に報復攻撃を仕掛ける。そこで敗走後、ジョリーは<ラスチャック愚連隊>に配属され<ロジャー・ヤング>に乗り込み・・・。
 クモども(擬蜘蛛類、シュウド・アラクニック)は惑星クレンダツウを母星とする。この惑星には人間そっくりの原住民<痩せっぽちども>がいる。
 モビルスーツの原型、パワードスーツ/強化防護服が登場する。
 この作品は、リベラル派的作品の多いハインラインとは思えない全体主義礼賛に貫かれている。軍事という人類社会にとって否定できない一面を客観的に描こうとしたのか、はたまた、ハインラインの確信犯的な本音なのか?
 本作品の続きを読みたければ、オースン・スコット・カード「エンダーのゲーム」をどうぞ。

短編集『輪廻の蛇』(1959, 矢野 徹・他)
全6篇

輪廻の蛇」(1959, "−All You Zombies −"、『輪廻の蛇』より)
「私生児の母」であった男の話。タイムパラドックス物。

短編集『時の門』(1959, 福島正実・他)
ハインライン傑作集4、全8篇→イクシーの書庫
【1961年】
自由未来』(1961, "Farnham's Freehold"、浅倉久志)
 建築・敷設工事請負業の経営者ヒューバート・ファーナム、妻でアル中のグレイス、息子で父親に反発する弁護士のデューク、娘のカレン、若い黒人のハウスボーイのジョゼフ、客人で結婚に失敗したバーバラ・ウエルズの6人が核戦争によって核シェルターごと未来に吹き飛ばされる。
 ハインラインらしい不屈の精神の表れている前半に対し、後半はちょっと怖いシュールな雰囲気。親子の断絶、夫婦の断絶、人種間の断絶、東西体制間の断絶をシビアーに描きつつも、ゼロからの再出発というハインラインの基本メッセージが込められている。→イクシーの書庫

異星の客』(1961, "Stranger in the Strange Land"、井上一夫)
 ヒューゴー賞、ローカス賞受賞。エンヴォイ号による第1次火星探検隊の8人が消息を絶ってから1/4世紀を経て、チャンピオン号が火星に到着。そこで第1次探検隊員の遺児で火星人によって育てられたヴァレンタイン・マイケル・スミスが発見された。
 地球に来たスミスを、自由世界連邦事務局長ジョセフ・エジャートン・ダグラスは策謀を巡し病院に隔離するが、看護婦ジリアン・ボードマンと新聞記者ベン・カクストンがスミスを連れて老学者作家ジュバル・ハーショーの家に逃げ込む。そこでスミスは不思議な能力を発揮し・・・。「レッドプラネット」、「宇宙の呼び声」、「ダブル・スター」で火星人文明を予習してから読むといいかも。
【1962年】
サーチライト」(1962, "Searchlight", 『地球の緑の丘』より)
 月で行方不明になった盲目の天才少女ピアニストを捜索するために考え出した方法とは?→イクシーの書庫

●1962年:キューバ危機。1963年:ケネディー暗殺。
【1963年】
栄光への道』(1963, "Glory Road"、矢野 徹)
 パラレル・ワールド物。勇敢な男性を求める広告に応募したオスカー・ゴードンと絶世の美女アスターが絶対不可能な試練に立ち向かう→イクシーの書庫

●1965年2月にベトナム戦争で北爆開始。
【1966年】
月は無慈悲な夜の女王』(1966, "The Moon is a Harsh Mistress"、矢野 徹)西村屋特選!
 ヒューゴー賞、ネビュラ賞受賞。2075年、流刑地として地球に搾取されてきた月世界。元坑夫で左腕を亡くして計算機技師となったマヌエル・ガルシア・オケリー(マニー)、政治的追放者のデ・ラ・パス教授、月面で太陽風による放射線被爆の過去を持つ政治活動家ワイオミング・ノット(ワイオ)が、意思を持ったコンピュータ、マーク(高選択性・論理的・複合評価性監督機・マーク4号・L型)と協力して独立運動を。感動の名作。

データブック(人物、場所、組織、年代、誤記・誤植)


●1969年:アポロ11号月面着陸
【1970年】
悪徳なんかこわくない』(1970, "I will Fear No Evil"、矢野 徹)
 ローカス賞、星雲賞受賞。大富豪でスミス・エンタープライズ社(傘下に海洋牧場会社、ジェネラル教科書会社など)の社長であるヨハン・セバスチャン・バッハ・スミスは、94歳の高齢と病気で身体の自由を奪われていた。彼は再び自由を取り戻すために、脳死状態となった人間に自分の脳を移植する賭けに出た。
 しかし、その身体とは、彼の最も大切な秘書ユーニス・ブランカが暴漢に殺されて得たものだった。彼が目覚めてその事実を知って激しいショックを受ける。スミスが長年信頼してきた主任弁護士であり、ユーニスの愛人だったジェーク・サロモン(72歳)も心に大きな傷を抱くことに。ところが、生まれ変わったスミスは、自分の中にユーニスの人格も生きていることに気付く・・・。→イクシーの書庫
【1973年】
愛に時間を』(1973, "Time Enough for Love: The Lives of Lazarus Long"、矢野 徹)
 ネビュラ賞受賞。パラレル・ワールド物。「メトセラの子ら」の続編。ラザルス・ロング(ウッドロウ・ウィルスン・スミス、、ラファイエット・ヒューバート博士、アーロン・シェフィールド船長、アーネスト・ギボンズ、ハッピー・デイズ)の生涯。→イクシーの書庫
・「おじいちゃん(アイラ・ジョンソン)の話」p.50〜
・「ドム・ペドロ・シルヴァの話」p.55〜
・「"さまよえるユダヤ人"(サンディー・マクドゥーガル)の話」p.59〜
・「物ぐさすぎて失敗できなかった男の話」p.89〜
・「駆落ちをやめた話」p.119〜
・「ファティマにいた時の話」p.160〜
・「火星の"やかまし屋"(ノイジー)の話」p.174〜
・「そうでなかった双生児(リータとジョウ)の話西村屋特選
・「ある養女(ドーラ)の話西村屋特選

 長いから読むのが大変だけど、うち以下の2つの物語だけでも読む価値あり。
「ある養女の話」
 そもそも恒星間旅行の実現のために長寿人種を作る計画が発端だったと思いますが、ラザルス・ロングという主人公が大変な長寿です。当然、普通人種とは結婚生活は営めません。
 ところがある時、火事で逃げ遅れた家族から唯一救助できた少女ドーラを養女にする。やがて大きくなったドーラはラザルスに恋をし、悲劇的な結末を知っているラザルスは拒むが、拒みきれずに2人は結婚。未開地に入植してからドーラが年老いて息を引き取るまでの2人の生活を描いたもの。

「そうでなかった双生児の話」
 ある奴隷市場で売られていた双子の男の子と女の子をラザルスが買い取る。二人は遺伝子操作によって作られ、結婚して子供を作っても問題ないことを知ったラザルスは、二人にまっとうな商売をして生活することを教える。二人は大変な苦労を厭わず商売を成功させ、ラザルスにこれまでの恩を金額に換算して返済に来る。それをことわるラザルスに、二人は奴隷として買い取られた時のボロキレ姿になって現れ・・・。

●1975年にベトナム戦争が終了。77年:試験管ベービー、79年;スリーマイル島原発事故。80年:ジョンレノン射殺。
■ハインライン、一時重態。頚動脈にバイパスを付ける脳手術に成功して、奇跡的に回復。
【1980年】
獣の数字』(1980, "The Number of the Beast"、矢野 徹)
 ローカス賞受賞。パラレル・ワールド物。ゼブ(ゼバディア・J・カーター)があるパーティーで一目惚れしたD・T(デジャー・ソリス)、彼女の父ジェイク・バロウズ博士、ゼブの叔母ヒルダと連続体飛行機ゲイ・デシーバーで異星人集団からの攻撃を逃れて並列宇宙を飛び回る。ラザルス・ロングとスター・ヨット<ドーラ>も登場。→イクシーの書庫
【1982年】
フライデイ』(1982、"Friday"、矢野 徹)
 ネビュラ賞受賞。遺伝子操作によって生み出された人工人間で戦闘伝書士のフライデイ・ジョーンズの活躍と苦悩。序盤部分はハインラインのリアリズムが成人向け小説と紙一重となり得ることを示している。先に「深淵」を読んでからこの作品を読むこと。→イクシーの書庫
・フライデイ・ジョーンズ/マージョリー・フライデイ・ボールドウィン:ハートレイ・M・ボールドウィンとエンマ・ボールドウィンの養女、システム・エンタープライズの戦闘伝書士(のちに参謀部本能的分析係)。「深淵」のジョセフ(ジョウ)・グリーンとゲイルの遺伝子を継ぐ。
・ハートレイ・M・ボールドウィン:ボス:隻眼。ミスタ・二本杖、システム・エンタープライズの会長/専務取締役、「深淵」ではグレゴリイ・ボールドウィン/薬罐腹(ケトルベリイ)
・アンクル・ジム・ブルーフィット:
・ストロー・ボス:指揮者。少佐。孤児院育ち
・ジェレミー・ロックフォード/ロックス(ロッキイ):
・ショーティ:
・マック/ピート/パーシヴァル:班長。元ミュリエル・シップストーン研究所が雇った擬似軍隊の情報将校
・イアン・トーミイ:機長
・ベティー:イアンの妹
・フェデリコ(フレディー/チャビー)・ファルネーゼ教授:ベティーの良人、遺伝子技術者
・ジョルジュ・ペロー:遺伝子技術者、室内装飾、いろんな種類の芸術家、メンデル奇形学教授、協同生産研究所と託児所の主任科学技術者、カナダ人
・ジャネット(ジャン):イアンの妻、建築家
・アンナ・ヨハンセン:フライデイの救出隊の一人。システム・エンタープライズの機密係書記
・バート:同じく。システム・エンタープライズの兵站と会計に属す
・シルヴィア(ゴールディ)・ハーヴェナイスル:同じく。システム・エンタープライズの正看護婦。
・グロリア・トモサワ:フォング&フィネガンのシニアー・パートナー、セレス&南アフリカ手形引受銀行の副頭取
・フランクリン(フランキー)・モズビイ:探知会社、シップストーン無制限会社の手先
・シズコ/ティリー/マティルダ・ジャクソン
【1984年】
ヨブ』(1984、"Job: A Comedy of Justice"、斉藤伯好)
 ネビュラ賞、ローカス賞ファンタジイ長編部門受賞。ハインラインは敬虔なキリスト教徒だった(矢野徹氏)とはいえ、彼は宗教を容認しているものの、批判的立場であることは「フライデイ」でも述べている。
パラレルワールド物。プロテスタントの牧師アレックス(アレクサンダー・ハーゲンシャイマー)が南海の島での火渡りに挑戦したら、別の世界に転移して、そっくりの男アレック・グレアムとなっていた。アレックの恋人だった美女マルガレーテ(亜麻色の髪/金髪)とさらに多次元世界での転移を繰り返していく・・・。
 「神の正義」と「最後の審判」の批評と見て読むのもよし、ハインラインの裸一貫、皿洗い人生哲学論の集大成として読むのもよし。魅力的な美女たちを楽しむもよし。→イクシーの書庫
- p.2: アレックス・ハーゲンシャイマーと妻アビゲイルの世界。機船と硬式飛行船がある世界。ポリネシア
- p.12: 火渡りで転移。マルガレーテ・スヴェンスダッテル・グンデルソン(デンマーク人)とアレック・グレアムがいた世界。蒸気船があり、飛行船はない世界。裸へのタブーがない。
- p.80: 船が氷山と衝突して転移。複葉プロペラ機アエロプラーノのある世界。メキシコ王国。マサトラン。ドン・ハイメの料理店〈パンチョ亭〉
- p.142: 地震の被災地。アリゾナ州ノガレスにグリーンカードで入国。テレビジョン、信号灯、ジェット機のある世界。カウガール氏のレストラン〈ロンのグリル〉、ルーク(名目上のボス)。
- p.174: ご褒美のホット・ファッジ・サンデーを食べる寸前に転移。カンザスのトゥーソンに移動。
- p.204: 飛行機械がある世界。スティーヴのトラックでグランツからアルバカーキーへ。レストラン〈リムロック休憩所〉、ヘイゼル(ウェイトレス)、ステーションワゴン(クライドとベシー)でギャラップへ
- p.211-214: この間、数回の転移。ロケット、ホログラムがある世界。巨獣ビヒモス(ジェリー・ファーンズワース、キャサリン/ケイト/ケティ・ファーンズワース、シビル)
- p.247: 空中船デイリジブルがあるアレックスの世界。
- p.255: 空中船のないマルガレーテの世界。
- p.268: 自動車がない世界。
- P.282: 最後の審判
【1985年】
ウロボロス・サークル』(1985、"The Cat Who Walks Through Walls: A Comedy of Manners", 矢野 徹)
 パラレル・ワールド物, ラザルス・ロングも登場。
 「月は無慈悲な夜の女王」(1966)のマニー、マイク、ヘイゼル・ストーンたちのファンは、次に「宇宙の呼び声」(1952)を読み、それから、本書を読むとよい。シュレディンガーの猫ピクセル登場。→イクシーの書庫
【1986年】
●1986年:スペースシャトル「チャレンジャー号」爆発、チェルノブイリ原発事故。87年:ブラック・マンデー
【1987年】
落日の彼方に向けて』(1987, "To Sail Beyond the Sunset", )
 パラレル・ワールド物。ラザルスロングの母モーリンの物語。ピクセル登場。→イクシーの書庫

■1988年5月、ハインライン、肺気腫で死亡。80歳。
●1989年:ベルリンの壁崩壊。90年;ドイツ統一。91年ソ連崩壊。92年;EC設立条約調印、リオで地球環境サミット。

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