■2006年地球シミュレータ成果報告会の地震・固体地球関係の報告を以下に紹介しておきます。
●地震については以下の4つのアプローチが行われているようです。

想定する地震が発生したらそれがどのように日本列島内を伝播するかをシミュレーション。中越地震で関東平野が長時間揺れたことの再現に成功。
 東南海?地震が発生した場合の以前の計算では伊豆半島より東は揺れなかったが、地震探査で分かったプレートと付加体データを厳密に反映させたモデルで再計算すると、関東平野が大きく揺れることが判明して政府の地震対策会議?にデータを提出したとのこと。

アスペリティ(プレート同士が固着と高速すべりを繰り返す領域)に(1)応力が溜まり、(2)破壊が生じて、(3)滑るという地震サイクルを準静的にシミュレーション。今回、釧路・十勝沖では三箇所のアスペリティーが個別に滑ったり連動したりする様子を再現していた。
 「すべり応答関数」という部分の計算の収束性が悪く、計算手法を改良しようとしている最中。これを南海・東南海・東海に適用するのにもう2年はかかるとのこと。

 「準静的に」というのは断層面付近のみ有限要素法FEMで、その他は差分法で計算するというもの。全体を三次元FEMで弾性計算するGeoFEMという計算コードも開発済みだが、それを日本周辺に適用するにはさらに時間がかかる。ESでは能力不足かも。

地殻内で微小な亀裂が進展して断層が滑るという過程を、階層連結シミュレーションという手法でシミュレーションしようというもの。まだまだこれからのようだ。

 面白かったのは、こういう成果を外国でも適用したら国際的によりアピールするのではというコメントに対して、古村さんの回答。日本では
・多数の地震計・GPS等の観測網がある。
・多数の歴史的データ、古文書がある。
・多数の地震探査による地下構造データがある。
・大規模シミュレーション手段がある。

 この4つのお陰で初めてこういうシミュレーションができ、しかも、頻繁に地震が起こってくれるお陰で検証も容易。こんな場所は世界でも日本だけという話。

 もうひとつ面白かったのは、松浦先生が目指す「予測」の意味。いつ頃地震が起こるという予測は無理だが、現状を表すモデルを作っておいて、それに計算機上でちょっと攪乱を与える。十分応力が溜まっている場所では地震が(計算機上で)起きるし、そうでない場所では地震が起きない。それで危険度を示すことならできるとのこと。

地殻活動予測シミュレーションモデル(東大理学部 松浦充宏ほか、pdfファイル)/インタビュー