■バブルリング

by JAMSTEC 山田 稔

海人のビューポート
 
2003年10月23日更新

 その昔 私はダイバーでした。水中の世界を極めようと思いつくままいろんなこともしてみました。 そんな中でやったのが水中で空気のリングを作るものです。有名な水中写真家 アル・ギデングスの写真に「エヤーリング」と言うのがあってつぶつぶの泡がドーナツ状になっているものでした。

 昼休みにJAMSTECのプールで何回かやっているうちに完璧な泡のリングが出来るようになり、渦輪の研究者へ写真など送っていろいろな現象も確認できるようになりました。「バブルリング」と命名して写真や作り方を書いて送ったところ、記事は1982年の米国、イギリス、フランスの潜水雑誌で大きく取り上げられました。

 しばらくしてデイズニーからも来ないかと手紙も来るほど大きな反応がありました。当時もイルカが真似した等の話題(サンフランシスコ)もありましたが 最近もイルカのバブルリングが何かと話題になっています。

 私は、ヒトは水中の侵略者だが唯一先住民のイルカに教えた遊びがバブルリングである、と思っています。

 イルカのバブルリングのホームページアドレスを紹介します。
=>シルバーリングの不思議(ともきゅーさんのDolphin Ringより)
 これによると、イルカは別の方法でバブルリングを作ってきたようですが、ホントに昔からイルカがやっていたのでしょうか? 謎は深まります。

=>Dolphin Bubble Ring Sculpture Gallery of Photos
=>the RingMachine
=>バブルリングイルカより)
=>イルカのバブルリング遊びからしら萬朝報より)
=>バブルリング(リオさんの水中遊びRIO'S FREEDIVING homepageより)【相互リンク】
=>バブルリング(綾里さんの李上庵より縁側>バックナンバー>バブルリングへ)【相互リンク】

●きっかけ
 なんといっても有名な水中写真家アル・ギデイングスのエヤーリングの写真ですね。泡だらけではありましたが、リング状になっているのがはっきり写っていました。ダイバーの吐いた息がこんな形になると言うものでした。

 見た瞬間にこれはやれる!もっと綺麗なリングを作れる!!と感じました。水の中でできることをいろいろ試していた頃なので敏感になっていた時期でもあります。これはスキンダイバー誌に掲載されていたので、世界中のダイバーが見ていた写真です。世界中のダイバー100万人に負けぬように!

●着眼
 早速、JAMSTECのプールで試してみました。ただ真似たのですが数回で写真のようなのが出来ました。水面に上がるのを見ていると流れに弱い、水面と平行に吐き出すのがコツ、吐出量は少なく、吐出圧は高くなど感じがつかめるようになりました。
 暫くして完全なドーナツチューブのリングが完成し、水面に向かって膨張しながら径を大きくしてゆっくり浮上していったのです。感動のシーンでした。続いて2つ作ると、後の輪が中に抜けて追い越します。
 横で同時に作ると輪が繋がり大きな1つになります。回転によって形状を維持しようとする力が出ています。

●応用
 原理が判ったので、一緒にやっていた高橋仁さんと装置の開発にも取り組みました。息だけではいろいろなガスが試せない、機械にやらせて楽しようと考えたのです。装置も手作りのバルブで送気圧を調整したり、電磁弁を使ったりして何とか出来るようになりました。そして特許を取りました。
 液体に高速でガス溶解させる。噴水のような観賞用。に使える。

●専門家への報告
 バブルリングは流体力学の分野では渦輪(かりん)と言います。
 渦輪の研究者を調べてみると東京女子大学、名城大学、東京理科大などで主にスモークリングでの研究でした。これら研究者にバブルリングのいろいろな現象(リングの追い越し、結合、形状維持の動き、水面でのバウンドなど)を報告しました。中でも引退された権威の先生から「目が不自由で悔しい。目が見える時に見たかった」と奥様代筆のお手紙は涙ものでした。他の先生からはいまだ方程式では解けない現象との評価でした。ともかくこれまで数センチの渦輪から直径2mにもなる大きな渦輪に皆驚きの印象を頂きました。

●日本のダイバーへ
 こんなに面白いリングをもっとみんなにとダイビングワールドに紹介記事(1981年秋)を書き、特に作り方を丁寧にマニュアル化し「バブルリング」と名付けました。 これでテレビや雑誌に結構出ました。また、日本のダイバーもバブルリングを楽しんでくれるようになりました。

●外国のダイバーへ
 スキンダイバー誌などにもその後のエヤーリングが載らないので、外国のダイビング雑誌に投稿し1982年5月6月号に大きく紹介されました。バブルリングの名が紹介され、芸術的なバブルリングの完成、小利口な日本人が水中にも進出、など書かれましたが作り方もしっかり紹介されました。

●デイズニーからの誘い
 スキンダイバー誌に日本の山田稔だけ紹介されたのですが、デイズニープロダクションから手紙が来て、フロリダオーランドに建設中のエプコットセンター(大人のデイズニーランド)で使いたいので来て欲しいとのことでした。私は300m潜水の計画の最中でもあり、アメリカの特許申請もまだだったので断りました。
 装置もそうですが、ブロンドの美女にバブルリングを教えそびれたのは今考えても残念で〜す。

●イルカに
 外国の雑誌に載ってから、アメリカでダイバーがやっている様子を見てイルカが面白がってやりだしたとの情報が届きました。
 これまでイルカがバブルリングをやっているとの記事は無かったのですが、82年以降になって複数の場所から連絡がありました。これはダイバーがやり、次にイルカがやったと言っている根拠です。さすがにイルカの場合は我々のやり方を越えて頭や尾など使って作る数段上のテクニックも最近でてきています。
 イルカのものはこれまでの渦輪の原理をも越えていて、とても素晴らしい技術です。ただ一つ野外でやっているものは無いようなので、飼育プールの中だけで見られるバブルリングは、やはり「捕らわれの身」であるイルカの気晴らしの遊びのようで、可哀想な気がします。


相棒の高橋 仁さん
バブルリング(渦輪/ボルテックスリング)は、液体中の液体の渦、液体中の気体の渦あるいは気体中の気体の渦が存在し、内側から外側に回転しその形状を保ちます。自然界ではイルカや鯨などが海中で空気を吐き出す場合にまれに発生します。

 それを見たJAMSETC潜水技術部(当時)のプロフェッショナルDeep Sea Diver(水深300mでのHe-O2を呼吸してのSATダイビング(飽和潜水)の第一人者)である山田稔さんが減圧時の余興で口での製造法を取得し、ついで機械での発生装置を発案、同潜水技術部のガスエンジニア高橋仁と、来る日も来る日も3mのプールの中で開発に及んだものです。(液体中で渦輪を作る装置;特許1513016)
 鴨川シーワールドや海遊館などでのアトラクションデモの他、工業的な利用分野としての、 液体への気体の攪拌効果による、気液混合装置、湧昇流発生装置などとして用いら れましたが、現在稼動しているものはありません。

 製作の要点は、ノズルでして、材質がシリコン或いは生ゴム、水中で逆流水の入らない構造の ノズルとON-OFF動作の機構にあります。基本的には水中開閉弁方式と外部開閉方式がありますがノズルの直近での開閉がベターとなります。
 即ち強力な回転を与えることがバブルリングの成立条件となります。
  *バルブの開時間は0.2sec〜0.5secあたりが渦輪の成立条件です

 気体の供給圧力は水深圧+100〜150mmaq(ノズル部)更には目的の渦輪容積からなる一回分のバッファタンクがあれば有利です。尚、気体も空気,CO2、O2などが考えられ、そのガスの物性によっても多少の設定を変える必要があります(CO2は水中に溶解し、極端に減衰します)
 生成間隔は、ガス量で決定されますが、短間隔では、前のリングを下側から追い抜く(すり抜け)ことが可能です。又、並列で発生させると成長に従い接近し、ついには1つのリングとなります。

 我々は当時ディスプレイとして、リングが光り輝く装置も開発しました。
 光の屈折で驚くほど気体の渦輪はミステリアスに輝きます。
 古い資料ですが、過去作ったパンフレットやVTR(VHS)もどこかにあると思いますし、ノズルも水深3〜5m用のものも1〜2個ならあると思いますが、まことに恐縮ですがこれから作るとなると、金型や防水型電磁弁、作動用タイマー制御装置など(手動では困難)製造するに困難の状況です。

うまく出来るかどうか疑問ですが、別紙に手作り{案}を添付します。
 (See attached file: 山田さん手作りバブルリング発生装置030925.doc)
 日本炭酸瓦斯(株) 技術開発部   高橋 仁

手作りバブルリング発生装置(案)(Wordファイル・ダウンロード)


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