■女性ダイバーの活躍


アディーナ・オチート。143m潜った時の画像。
山田 海人(かいと)
海人のビューポート
 
2008年2月12日オープン

 海人のビューポートへようこそ!
 今回は主に米国のダイバーの中でも女性ダイバーに注目してみようと思います。屈強な男性ダイバーの中に混じって沈着・冷静に海中での仕事をこなし、潜水の各分野で大活躍している素晴らしい女性達を紹介します。

 今、イギリスの大手潜水会社ではフルタイムのダイバー200名のうち、3名の女性ダイバーがいます。

米商業潜水訓練学校の研修生
1.女性科学者
シルヴィア・アール
(Dr. Sylvia Earle)
 シルヴィアは海洋生物学者でこれまで潜水調査船「アルビン」「ジョンソンシーリンク」大気圧潜水服「ジム」 に乗船して深海の調査に参加してきた。またダイバーとしても活躍し、テクタイト計画のアクアノートとして飽和潜水も経験してきた。その後はNOAAの主任研究者を勤めたほか、ナショナル・ジオグラフィック誌で幾度も活動が紹介されている。
=>Sylvia Earle, PH.D.
=>Home Page for Sylvia Earle
シンデイ・ヴァン・ドーバー
(Dr. Cindy Van Dover)
 シンデイは1985年に初めて潜水調査船「アルビン」に乗船し、熱水噴出孔と化学合成生態系のエキスパートである。シンデイはRutgers Universityを卒業したのち、ウッズホール海洋研究所で博士号を取得した。生態学者として活動している間に「アルビン」のパイロットになれば深海での観察回数が容易に増えると考え、パイロットに挑戦し資格を得てパイロットにもなった経験がある。現在はデューク大学の海洋生物研究所の所長を務めている。
=>Interviews: Chief Scientist Cindy Van Dover
ユジニー・クラーク
(Dr. Eugenie Clark)
 日本人の母親を持つことで日本でも有名なユジニー博士はサメを研究している魚類学者である。これまでダイビングによる現場での調査でスクリップス海洋研究所、アメリカ自然史博物館などで研究に貢献し、3冊の本および160以上の学術論文を発表している。ナショナル・ジオグラフィックから賞を受け、現在、メリーランド大学の上級研究者として活躍している。
=>Dr. Eugenie Clark Home Page
ローレル・クラーク
(CDR Laurel Clark)
 2003年2月のスペースシャトル・コロンビアの事故で亡くなったローレルはアストロノートとアクアノートを経験した海軍の潜水医官であり航空医官である。
スーザン・バンガザー
(Ph.D, Susan Bangasser)
 スーザンは1970年〜80年代に女性ダイバーの生理的に安全な潜水、潜水による妊娠への影響など女性のための安全な潜水へ大きく貢献した。さらに潜水の問題を解決するためのホットラインを確立し、女性ダイバーの悩み・不安に応えた。
シモン・クストー
(Simone Melchior Cousteau)
 ジャック・イブ・クストーの夫人でビジネスパートナー、最初の女性スキューバダイバー。5才の頃、父親の仕事で神戸に居住し日本語を覚えている。カリプソ号の実質的な船長として全男性クルーの母親、治療者、看護婦、精神科医の役割を40年間にわたって果たした。
=>Simone Cousteau, the Soul of the Calypso
キャロライン・フィフィ
(Dr. Caroline Fife)
 キャロラインは"Catalina Marine Science Laboratory"のダイバーとして"Hydrolab II"の支援ダイバーの経験があり、また、水素・酸素の混合ガスのテクニシャンとしても"Divers Alert Network"をサポートしてきた。そして現役の潜水医学の内科医としてNASAの業務を行い、"Undersea and Hyperbaric Medical Society"初代の女性代表となった。
リーナ・ボーマ
(Ph.D, Rena M. Bonem)
 リーナは1971年に潜水のライセンスを得て、後にYMCAとPADIのインストラクターになった。2001年には"Baylor University"の地質学と海洋生物学の教授となり、サンゴ礁の研究を行っている。そして"American Academy of Underwater Sciences"の終身会員となった。
アディーナ・オチート
(Dr. Adina S. Ochert)
 英国のバイオメディカルの主任研究者であり、医師であるアディーナは海底考古学の研究のために水深145m、水温6℃での潜水調査にダイバーとして参加し、世界で最も深く潜った女性ダイバーとなった。
(本ページトップの画像)
トニー・カレール
(Dr. Toni Carrell)
 トニーは、五大湖、太平洋西部などで活躍した水中考古学者である。彼女はまた、パラオで米海軍のダイバーと共に水中考古学の調査を行った。
スー・モーラ
(Ph.D Sue Morra)
 スーは1978年に女性として最初にPADIコースのdirectorsとなったダイバーで、現在は"Saint Francis College"の教授となってフロリダキーズとカリブ海でサンゴ礁の生態学を研究している。
ホリー・マルテル・ブルボン
(Dr. Holly Martel-Bourbon)
 ホリーは1985年にボストンのニューイングランド水族館の科学的なダイバーとして採用され、以来17年間水族館で海洋保全の活動を行ってきた。今ではマサチューセッツ州の漁業部門の潜水の安全管理者として活躍している。

2.冒険家など
オードリー・メストレ
(Audrey Mestre)
 オードリーは13歳のときにスキューバダイビングを始め、80mの潜水記録を高校生のときに作った。その後1997年にフリーダイビング(素潜り)を始め、1998年に115m、2000年に125m、2001年に130mの記録を作った。
ジェニファー・カーター
(Jennifer Carter)
 ジェニファーは、記録破りの高さ12,500フィートからスカイダイビングをして、さらにタイタニックの12,500フィートまで潜水を達成した初めての女性。ほかにもエミー賞(1978)の受賞、ナショナル・ジオグラフィックのシャークス、IMAXの映画、飽和潜水の経験、ネス湖の伝説の怪物の捜索などの活動を行った。
ヴァレリ・ムア
(Valerie S. Moore)
 ヴァレリは西側の女性ジャーナリストとして最初にロシア海洋調査船や潜水船「ミール」に乗った。ヴァレリはこれまでキャメロン監督のフィルムでタイタニックの調査などにオペレーションの責任者として数多くの実績がある。また、潜水船のパイロット達が参加している"Deep Submersible Pilots Association"のメンバーにもなっている。
イーバリン・ドゥーダス
(Evelyn Bartram Dudas)
 イーバリンは1961年以来潜水を行い、沈船「アンドレア・ドリアAndrea Doria」まで潜水し、混合ガス潜水を最初に行った女性。今でも洞穴ダイバーとして活躍している。
ロッテ・ハス
(Lotte Hass)
 ロッテの父はドイツの有名な水中写真家のハンス・ハス。ロッテは1949年から潜水を始め、ハンス。ハスの撮影チームの唯一の女性として紅海の海をドレガーの閉式回路潜水器で潜り、水中モデルとなった。そして多くの水中映像を共同製作し、本を出版した。2000年にはロッテは「潜水のファーストレディー」と呼ばれるほどになった。
コニー・ジョンソン
(Connie Johnson)
 コニーは1956年から87年までスキンダイバー・マガジンの編集長を務めた。こうしてスポーツ・レジャーとしての潜水の活動を執筆し、新たな海洋レジャーの発展に大きく貢献した。
ヒラリー・ビダー
(Dr.Hillary Viders)
 ヒラリーは1975年以降積極的に潜水を経験し、多くの提案と記事を投稿し、潜水界に貢献した。そして「女性ダイバーの殿堂:WDHOF」を創立し、初代代表に就任した。2002年にはスキンダイバー・マガジン誌の「潜水で最も有名な女性」に選ばれている。

3.米海軍
メアリー・ボーニン
(Mary J. Bonnin)
 メアリーの潜水経験は二十数年もあり、空気潜水、混合ガス潜水の資格に加えて、マスターダイバーと呼ばれる米海軍唯一の女性ダイバー。メアリーはこれまで1,000人以上の海軍のダイバーを訓練しており、"naval diving safety authority"と呼ばれる潜水の安全のトップを務めていた。また、"Naval Undersea Museum"にはMary J. Bonninの部屋が特別に設けられている。
マリー・ナッフェル
(Capt. Marie Knafelc, MD Ph.D,)
 マリーは1980年海軍に入って以来、スキューバ、混合ガスおよび飽和潜水の資格を得るとともにダイビング、ライフサポートシステム、飽和潜水の減圧スケジュールの評価を行ってきた。さらに潜水艦の乗組員の健康面、心理面などの診断・治療の責任者を経験してきた。
ダイアン・カレン・リン
(Capt. Diann Karin Lynn)
 カレンは1977年に海軍に入り、土木部門のCivil Engineer Corpsに勤務し、83年には海軍のdeep-sea diving schoolを卒業して、飽和潜水のダイバーの資格を得た。そして潜水とアンダーウオターシステムの専門となり、1997〜2000年には250人のダイバーとエンジニアのトップとなった。2007年7月には海軍を退任し"Marine Technology Society"の副会長に就任している。
デブラ・ボーデンシュテット
(Commander Debra Bodenstedt)
 デブラは海軍でスキューバと他給気混合ガスダイバーの資格を得た。1983年から海軍のダイビングとサルベージ部門の将校の任務に就いた。そしてスペースシャトル・チャレンジャーの事故ではダイビングユニットの指揮官およびダイバーとして活躍した。さらに潜水艦救難艦のオペレータの資格を得た最初の女性である。
カレン・コアノビッチ
(Cdr Karen Kohanowich)
 カレンは海軍兵学校生として1983年に海軍のサルベージ混合ガス潜水を修了し、実験潜水ユニットで1000FSWの飽和潜水を担当した。西太平洋、北大西洋、カリブ海では深海潜水システムを運用し成果をあげた。また、1993年には"Pisces IV" 潜水船のパイロット資格を得た。カレンは海軍の海洋学者としてNOAAで海洋政策の調整の任務にも就いた。そして2005年7月には海軍を退役し、NOAAのUndersea Research Program.の推進役となった。
レネ・ヘルナンデス
(CDR Rene S. Hernandez, Ph.D.,)
 レネは1975年に潜水をはじめ、大学では海洋生物学を専攻していた。1976年にはNOAAの調査船で海洋調査を行い、NOAAのダイバーになった。その後、神経科学でPh.D.,を取得し1988年に海軍に入り、高圧酸素の生理学者として潜水における神経科学を研究を行った。
ビクトリア・アン・カッサノ
(Capt. Victoria Anne Cassano, MD,)
 ビクトリアは1977年に潜水をはじめ、医学校に通うため海軍に入った。その後ダイバーの資格を得て、英国の飽和潜水チームと共同で活動し、混合ガス・飽和潜水の資格を得た。また、海軍の潜水船"dolphins"のパイロットの資格を得た最初の女性です。現在Uniformed Services Universityの助教授として活躍している。
ベティ・ブッシュ
(CDR Bette Bush)
 1988年海軍のオフィサーとして潜水作業をリードしてきた。1998年にはUSS SALVORの部隊指揮官になり、さらに海難救助船も指揮してきた。この時、日本、韓国海域でサルベージなどの実績もある。2003年には可動可能な潜水ユニットを仕切る二人目の女性士官となった。
ドナ・トビアス
(Donna M.Tobias)
 ドナは1975年に海軍で最初の深海ダイバー(ハードハット)となった女性である。そして潜水艦の捜索と回収の任務に就いた。これらの経験から海軍のスキューバダイバーの学校の教官としてスキューバダイビングインストラクター、再圧室のオペレータ、潜水艦からの脱出訓練インストラクターを務め、その後、現場で使われている一人用再圧タンクの評価を担当した。
バーバラ・ボビー・ショウリー
(Capt. Barbara Bobbie Schoolley)
 バーバラは25年間の任務の後、2005年に海軍を退任した。バーバラは1983年以降ダイビングと回収の将校として、1996年にTWA 800便の回収、2000年にUSS COLE爆撃機の回収など、2002年まで多くの潜水作業で指導的役割を行ってきた。特に1997年〜99年まで潜水およびサルベージの女性初のスーパーバイザーとして活躍した。退役後はイリノイ州立大学からのサイエンスの名誉博士号を受けている。

4.プロフェショナルダイバー
スーザン・ロング
(Susan Long)
 スーザンの夫はDUI社(温水加温服システムなど潜水装置の製造販売)の起業者であり社長である。スーザンもDEMAの管理者として潜水産業に大きく貢献してきた。そして2007年にはスーザンは潜水業界を支える大事な人材となった。
コニー・リン・モーガン
(Connie Lyn Morgan)
 コニーは父親が潜水会社を経営していたことから潜水産業の中で育った。1971年には潜水のライセンスを取得し、スクリップス海洋研究所のオフィサーとも親交があった。後に潜水ヘルメットで世界的に有名なカービー・モーガン・ダイブ・システムズ社の社長として活躍している。
タマラ・ブラウン
(Tamara Brown)
 タマラは1982年に潜水を経験し、以来父親の行っていたコマーシャルダイビングを学んだ。1987年には潜水研修の実務を引き継ぎ、橋脚の検査、水中の非破壊検査、水中溶接、ROVオペレーション、安全教育などコマーシャルダイバーの養成を行ってきた。

今回、ご紹介できた女性ダイバーの方々はほんの一部に過ぎません。もっと有名な方、もっと活躍された方がいます。欧米だけでなく、日本でも益田安規子さん、須賀潮美さんをはじめ多くの方々が潜水界で輝いています。

(おわりに):
皆さんどうだったでしょうか? ここに紹介した女性ダイバーの方々を見ていますと、モチベーションが高く、知的で、活動的で、探究心が強く、チャレンジ精神は旺盛で、しかも能力が高い、数行の説明では収まらない実績があります。
 私も書いていて、女性ダイバーの魅力に惚れぼれでした。何かキラキラと世の中を明るくしているような存在です。

出典:
Women Divers Hall of Fame

Military Women Divers

         
海人のビューポート