■耐圧ガラス球の圧壊

by 山田 海人

海人のビューポート
 
2006年12月3日オープン

 深海の調査などに使われているのは“耐圧ガラス球”と呼ばれる球形のガラス製品です。

 JAMSTECでは、この“耐圧ガラス球”を浮力用(トランスポンダー、海洋観測機器など)と計測器を入れた耐圧容器(海底地震計、海洋観測機器、深海カメラなど)に使っています。

 JAMSTECの耐圧ガラス球はアメリカ製とノルウェー製です。これらの耐圧ガラス球は、基本的に半球型のガラスで、ガラスは幾何学的にも真球度が高い製品で、半球をあわせてシーラントストリップを巻き、さらにプロテクトテープを巻くだけで水漏れがありません。ガラスの性質上、水圧が掛かることによって強度が増すという優れた性質をもっています。

市販されている耐圧ガラス球
 JAMSTECで使っているのは、例えば米国Teledyne BENTHOS社の17インチブイでは、外径 43.2cm、内径 40.4cm、空中重量 17.7kg、浮力 25.4kg、耐圧 6,700m、厚み 28oです。これだけの厚みで水深6700mの水圧に耐えられるのです。
 このように多くの国々で耐圧ガラス球が使われる理由は、内部が透明である扱い易い無公害比較的安い水圧に強い点などがあります。

深海で壊れた耐圧ガラス球
 JAMSTECでは、深海の高い水圧(たぶん6000〜7000m)で圧壊(あっかい)した耐圧ガラス球を回収することができました。
 耐圧ガラス球は通常ハードハットと呼ばれるプラスチックカバーの中にありますので、圧壊した耐圧ガラス球の壊れた素材がこのハードハットの中に残っていたものです。それを見て一堂が驚きの声を上げました。何んと!透明なガラス球は細かい白い粉に変わっていたのです。
 船上などで耐圧ガラス球が割れると、当然ですが透明なかけらになるので、深海では細かい白い粉になるとは想像もできませんでした。
 写真を幾つかご覧下さい。小麦粉のように細かい粉になっています。

写真 1: 撮影 山口 裕子

 顕微鏡写真もご覧下さい。この白い粉を拡大してもガラスのかけらではありますが、あまりに細かく透明感はありません。ガラスの素材であるシリカ(硅素)に戻ってしまったようです。
顕微鏡写真  撮影 山本 浩文

 どうして白い粉になったかと考えてみましょう。

透明なガラス球から白い粉へ
 船上などで耐圧ガラス球が割れるのは、耐圧ガラス球に“点“で力が掛かって割れています。つまり透明なガラスの一部が壊れて、透明ガラス部分がそのまま分かれています。
 ところが深海では耐圧ガラス球の”面”全体に水圧が掛かってきます。均等にガラス球全面に掛かって耐えられなくなると、一瞬に圧壊するのです。この過程でガラスの表面そして中層、そして内面まで衝撃が拡がるように伝わり、表層から内面まで順次剥がれるように細かく粉砕した状態になるようです。
 このように深海の水圧は上下左右から均等に包むように水圧が掛かって行くことが、この“白い粉になったガラス”で確認することができます。


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