■ダイオウグソクムシは深海の掃除屋
- Giant isopods -

by 山田 海人

海人のビューポート
 
2007年1月19日オープン

 未知の深海には我々人間には計り知れない不思議な生態をしている深海生物がいます。
 今回の紹介するのは、ダイオウイカ同様に大きさで私たちの常識を圧倒するダイオウグゾクムシです。皆さんの豊かな想像力を駆使して大きなダイオウグゾクムシの棲む深海の世界をイメージしてください。

1.ダイオウグゾクムシとは
 ダイオウグゾクムシは、ダイオウイカと並んで深海生物の巨大症deep-sea gigantism)の例としてよく引用されています。何と猫ほどの大きさがあるのです。こんな大きなダンゴムシがいる海へは潜りたくない!と嫌がる女性もいますが、一方で子供達の興味を一身に集めていることも事実です。
 こんなに大きなダイオウグゾクムシが最初に発見されたのはメキシコ湾の沖合いで1878年(オス)に発見されました。そして最初のメスが捕獲されたのは1891年のことでした。

 学名:Bathynomus giganteus, A. Milne Edwards, 1879
 和名:ダイオウグゾクムシ  英語名:Giant isopods
 体長:45p  体重: 1.7s
 分布:大西洋 インド洋
 水深:170〜2500m

 陸上に生息しているダンゴムシと同じ等脚類で、十数枚の炭酸カルシウムの甲羅(segments)が重なるように身体を保護しています。最初の甲羅には頭部があり、大きな三角形の目、2対の触角がついています。身体の腹側の後半は遊泳脚があってこれで海中を速く泳ぐことができます。
 ダイオウグゾクムシは、深海の海底で海面から降ってくる有機物を食べている重要な腐食動物スカベンンジャーscavengers)です。つまり、"海底の掃除屋"として海底、いや、大きく言えば大陸棚をきれいにする役目を担っています。

2.ダイオウグゾクムシの生態
 深海のスカベンジャーであるダイオウグゾクムシは、海底に棲んでいます。高い水圧、そして太陽の光が届かず暗く、4℃を下回る冷たい海底で一生を過ごしています。
 棲んでいる底質は、軟泥などの身を潜ませられる場所で、暗い海底で物を見るために発達した大きな三角形の目を持っていて餌を探します。ダイオウグゾクムシは肉食性ですから、餌は死んだ生き物(クジラ、イカ・タコ、魚、クラゲ。ナマコ、カイメンなど)ですが、傷ついたり、弱った生き物も襲って食べているようです。動きの遅いヒトデを捕食していた例も報告されています。
 ダイオウグゾクムシは大きな遊泳脚を持っていますので、移動は飛ぶように速く移動できます。小さな虫が餌を食べている音を聞きつけると、水の中から飛び出して餌めがけて飛んで行きます。餌の魚周りではいつも数匹が上空を飛んでポジション争いをするほどです。餌を食べるときは泥にしっかり餌を押さえつけて、大きな口でほおばるように食べていきます。
 甲羅の中は大半が消化系ですので大食漢です。トロール船の網の中でも一緒に捕獲された魚を食い散らかして漁師に嫌われている程です。
 深海の生き物の特徴かも知れませんが、ダイオウグゾクムシは飢餓に強く、飼育中に8週間も餌を食べずに活きた例もあります。深海の海底で最も多く棲んでいるのがダイオウグゾクムシですが、遊泳力があって潜水調査船よりも速いので、潜水船からは意外に観測されませんが、カニ籠などのトラップをしかけておくと捕獲できます。

3.繁殖
 ダイオウグゾクムシはどのようにして繁殖しているのでしょうか?
 少ない情報を調べてみましたが、繁殖期は冬と春の数ヶ月間がピークのようです。これは夏場に餌が少ないことが理由かも知れません。
 卵はダンゴムシと同じようにメスの腹部にある薄い膜に覆われた保育のうに産卵されています。この保育のうで安全にふ化が行われますが、腹部にあるので、メスが死んだ魚などお腹一杯に食べると腹が出てくるので、保育のうがせり出して破れ、卵を落としてしまうこともあるようです。

おわりに
 ムシの嫌いな方には申し訳ないのですが、冒頭に書いたようにダイオウグゾクムシが恐くて、こんなのが棲んでいる海へは潜れないとおっしゃる方がいます。ダイバーがダイオウグゾクムシに襲われた例があるのか調べてみましたが、被害はありませんでした。
 ダイオウグゾクムシはスカベンンジャーですので人は襲いません。もし、網にかかったダイオウグゾクムシを見る機会があったら、鋭い口で指など咬まれないようにだけ注意して下さい。

Giant isopod(EatLiver.com)

Giant isopod(Wikipedia)

Deep sea giant isopod(flicker)


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