■竜涎香(りゅうぜんこう)とは

by 山田 海人(かいと)

海人のビューポート
 
2004年2月19日オープン

深海から生まれた高貴な香料

     竜涎香(りゅうぜんこう)とは

出典:AMBERGRIS(Randy D. Ralph)

 昔、ローマ人やギリシャ人は、海岸に流れ着くもので貴重なもの、高価なもの、そして利用価値の高いものとして琥珀(こはく)と竜涎香を挙げていました。これらは黄色く、琥珀色している外観から共通点があるので何か同じ物から出来ていると考えambergrisと名付けていました。
 また、マルコポーロの東方見聞録にも竜涎香の記載が見られます。
 一方、中国では、深海にひそむ竜が安息の眠りの中で香り高い“よだれ(涎)”をたらすと考え、これをイメージして竜涎香と名付けていました。
 日本でも、古代から竜涎香を知っていてお香の材料にしていました。それを西洋人の耳には、kunsurano fuu(原文のまま)、「クジラの糞」という言い方も聴いています。


マッコウクジラの腸から見つかった竜涎香の塊

 この竜涎香は、大海原に浮いていたり、海岸に打ち上げられていたものがあり、色は黄色味を帯びた灰色、灰色、黒色などがあり、それぞれgolden、grey、black等の等級がつけられており、黄色みがかった灰色のものが最高級品と言われています。
 マッコウクジラの体内で作られたものですが、他の動物性香料と違い、排泄物臭や刺激臭がありません。温和な乳香様のバルサム臭があり超高級な香料として金とほぼ同額で取引されています。竜涎香の値段で高い時期は1948年頃で、金の8倍にもなったようです。

 竜涎香はマッコウクジラが餌にしている深海のダイオウイカなどのイカ類の未消化部位(カラストンビ)に腸からの分泌物が取り巻いたものが排出されたもの(糞)です。排出された当初はカラストンビが埋め込まれた大理石のように明るく蝋のようで灰色の塊ですが、太陽にあたり空気に触れると急速に酸化して硬くなります。ですから長く海面に漂っていたものほど良質になると言われています。


マッコウクジラの腸から出てきたイカのクチバシ

 竜涎香の香りは高貴であるとともに永く良い香りを保つことで知られており、40年前に香りを付けられた本の良い香りが残っていた。手に付けられた香りが日に数度の手洗いを経ても数日間香りが残っていた。と記載されています。

 竜涎香の香りは1820年に 2人のフランス人の化学者、ジョゼフ-ビエナイム カレントとピアー-ジョゼフペレティアは、最初に竜涎香の主要な香りの成分を分離して人工的に香りを作り出すことに貢献しました。

 これまで竜涎香の多くは、アフリカ、インド、日本、スマトラ、ニュージーランド、ブラジルなどの洋上及び海岸で発見されています。捕鯨が盛んになってからは捕獲したマッコウクジラの腹部から竜涎香を取り出すことが多くなり、捕鯨国日本及び旧ソビエトが最大の産地となりました。しかし、腹部から取りだした竜挺香は決してよい匂いとはいえず、長期間海上を漂流したものが珍重されています。


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