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今回はビーチコーミングの極上のお宝であり、深海生物であるダイオウイカと深海まで潜るマッコウクジラが作り上げる深海の高貴な香り竜涎香(りゅうぜんこう)のQ&Aをお届いたします。
- 1.竜涎香の名前はどうしてついたのですか?
- 竜涎香は”りゅうぜんこう”と読みます。龍涎香と書く場合もありますが、竜涎香と書く方が多いようです。他の呼び名は「竜糞 りゅうふん」「鯨糞 げいふん」とも呼ばれていました。英語ではAmbergris(アンバーグリス)と呼ばれています。
龍は「水の神様」と言われて、中国では龍は深海の深い深淵と呼ばれるところで寝ていると言われています。その龍のうたた寝をしている時のよだれの香と書いて竜涎香と言われています。
ほかにも天に昇る竜が空を飛んでいる時に、よだれをたらして、そのよだれの滴が竜涎香となったという話もあります。
- 2.竜涎香とは何ですか?
- 竜涎香は特殊な病気を持ったマッコウクジラからできる特殊な脂肪、胆石のようなものと言えばいいでしょうか。まだ不明な物質で、どうしてできるのは分かっていませんが、マッコウクジラが食べている餌のダイオウイカなどに関係があります。ダイオウイカなどの身は消化されていますが、竜涎香の塊にはときどきカラストンビと呼ばれるイカやタコの未消化な口が入っているのです。肛門から排泄しずらいカラストンビを包んでしまうために竜涎香の物質が生まれた可能性があります。もしもそのまま消化系に残ってしまうと腸を傷つけ、潰瘍など引き起こすかも知れません。
- 3.竜涎香を作るマッコウクジラとは?
- マッコウクジラは、歯クジラの一種で地球上最大の肉食哺乳動物です。
歯クジラにはエコーロケーションという音で獲物などを探す能力があり、1時間ほどの潜水時間の間に千メートルから三千メートルも潜って大好物のダイオウイカを探して、格闘して、口から飲み込んでしまいます。また、音を圧縮してダイオウイカに当てるとしびれて動きが鈍くなる武器も持っています。
日本の近海には深海が多くあってダイオウイカも生息しているので、マッコウクジラも多く生息しています。
- 4.最近オーストラリアで竜涎香が拾われて話題になったのは本当ですか?
- 日本でも新聞・テレビでも話題になりましたが、2006年1月にオーストラリアの南部で15キロもの竜涎香が見つかりました。竜涎香は1グラム20米ドルもするので、見つけた人が日本円で三千万円もの収入を得たと一躍竜涎香が有名になりました。
- 5.日本でも大きな竜涎香は見つかるのですか?
- これまで和歌山県で20キロ、沖縄で100キロもの大きな竜涎香が見つかっています。昔のことですが珍しい話題として古文書に残されています。
いずれも見つけた人は思わぬお宝に生活が豊かになったと書かれています。
- 4.竜涎香は何に使われるのですか?
- 竜涎香は、お香の王様と呼ばれ、とても高価なお香の材料です。日本のお香屋にはお店のお宝として竜涎香が大切に保管されています。薬としても使われていて、「チフス」「腸閉塞」「下痢」に効くほか、昔は万能薬とも言われていました。特に竜涎香は香りを長持ちさせる効果があります。
また、強精薬として使われたり、惚れぐすりの媚薬としても使われていました。古代ローマ時代から竜涎香は使われていた文化があるので、今でも根強い需要があります。
- 5.竜涎香はどのようにしてできるのですか?
- 竜涎香は、マッコウクジラの腸の中で何かの拍子に時々生まれる脂肪・蝋状の固体です。他のクジラでは生産できないものです。捕鯨時代には捕獲されたマッコウクジラの腸からも採られていて、少しずつ竜涎香の出来る理由が研究されはじめています。
- 6.竜涎香はどこで見つけるのですか?
- 竜涎香を排泄するクジラは、マッコウクジラとコマッコウクジラの2種類だけです。マッコウクジラから排泄された竜涎香は脂肪質で浮力があり、海面に浮いています。
海面では数年から十年余り海面を漂っていて太陽にさらされ、空気に触れて酸化し、波に揺られて品質が徐々に良くなっていきます。ですから長く漂っていた竜涎香が高く取引されています。採られているのは海面に浮いていたものが拾われる場合と、海岸に打ち上げられてビーチコーマーなどに拾われる場合があります。捕鯨が行われていたころは捕鯨船で捕獲されたマッコウクジラから採られていたこともあります。
竜涎香が打ち上げられる海岸はニュージーランド、アフリカ、日本、インドなどの海岸で、日本では黒潮に寄せられる沖縄、九州、四国など太平洋沿岸です。十七世紀の琉球は、世界で最も品質のよい竜涎香を多く産出する国として有名でした。
- 7.竜涎香を見つけてる人はビーチコーマーだけって本当ですか?
- 捕鯨が禁止されてから竜涎香を供給できるのは海岸に打ち上げられる竜涎香だけになりました。しかし、竜涎香の知識のない人が見つけてもゴミなのかお宝なのか分りません。竜涎香を知っているビーチコーマーが今では唯一の竜涎香の提供者です。
この竜涎香のQ&Aを読んで頂いた方には、竜涎香の知識が十分に伝わると思いますので、海辺を散歩する際には頭の片隅に竜涎香を意識して散歩して下さい。ひょっとすると貴方も竜涎香の発見者になるかも知れません。
- 8.人工の竜涎香はあるのですか?
- 現在は化学の進歩であらゆる自然物が合成でできるようになりました。1820年にフランスの化学者が竜涎香の人工合成に成功してからも、スイスなどいろいろな研究者が人工合成に成功し、人工的な竜涎香も出回っています。
竜涎香の香料は、アルコールなどで薄められたものですが、価格は自然の竜涎香の香料が1パイント(1pint=0.47リットル)当たり9.75ドルです。それに対して、人工の竜涎香は0.47リットル当たり1.09ドルと1/10の価格ですが、人工香料の中では破格の高さです。
こうして竜涎香の香りを最近は比較的安く楽しむことができるようになってきました。
- 9.竜涎香らしき塊を見つけましたが、現場で竜涎香と判断するテスト方法はありますか?
- 簡単なホットワイヤー法は、数センチのワイヤーとライターで行えます。
イ)竜涎香と思われる塊に向けて約15秒間熱したワイヤーを約1センチほど差し込みます。
ロ)本物の竜涎香であれば、黒く、不透明な、樹脂状の液体がワイヤーの周りに生じて沸騰するようにまとわりつくでしょう。
ハ)それを抜いて冷える前に指で触れると皮膚にべとつきタールのような状態になります。
ニ)ワイヤーを抜いた跡は、溶けたタールの小さなくぼみができます。
ホ)そのワイヤーを再度ライターの炎で燃やします。すると塊とおなじ芳しい香りのある白い煙を出し、炎を消すとゴムを燃やしたようで、しかも芳しい香りがします。これが竜涎香となります。
ヘ)この方法が現場でも簡単に竜涎香と判断できる方法です。
- 10.竜涎香と識別する他のテスト方法はありますか?
- ホットワイヤー法で確かめられた竜涎香を再度確認するテストとしてアルコールに溶かす方法があります。
イ)メチルアルコールを熱した中に竜涎香の少量の一片を入れます。
ロ)竜涎香の一片が溶けることを確認して、火を止めて冷やします。
ハ)冷えたメチルアルコールの表面に結晶が浮いていれば竜涎香と断定できます。
- 11.竜涎香は病気のマッコウクジラから産出されると聞きましたが本当ですか?
- 竜涎香ができる理由はまだ分かっていませんが、胆石のようなものとして病気にかかったものから産出されると言われていました。しかし最近の進んだ免疫学などの解析から、病気にかかっていない健康な個体から竜涎香が発見されました。このテキサス沖で見つかった健康な個体からの発見で病気にかかった個体からの産出説は否定されて、竜涎香は健康なマッコウクジラから産出すると言われるようになりました。
また、オスのマッコウクジラだけが竜涎香を産出すると言う説もありましたが、これも間違った説と分かり、メスもオスと同様に竜涎香を産出することが分かっています。
- 12.竜涎香を売ったり、買ったりすることに制限はありませんか?
- 今資源として減っているクジラ類を保護する意図でクジラ関係のもの、例えば骨や歯などの売買が禁止されている国が幾つかあります。そこでは竜涎香は“糞”といえどもクジラ関係のものとして売買が禁止されています。竜涎香の売買が禁止されている国はオーストラリア、アメリカなどです。
- 参考:
- =>-- A m b e r g r i s --