「甲賀しぐれ」
 伊賀と甲賀の厳しい対決が続く中、伊賀の服部小兵太は仲間の伊賀十が身体中から血を吹き出して死んでいるのを見付ける。同じ術でやられたのはこれで5人目だ。伊賀十の手のひらには、「甲賀、しぐれ左京」と書かれてあった。

 伊賀の首領、三太夫は、小兵太と夜叉王の二人に、謎の術「甲賀しぐれ」の使い手である甲賀者のしぐれ左京を倒して伊賀を守るよう命ずる。

 左京は、夜叉王が仕掛けたワナにひっかかり、炎と毒の池と草の中の刃に取り囲まれ、出口は夜叉王のいる正面のみ。毒の刃にやられて木に逃れた左京はまんまと夜叉王のワナにかかり、とどめをさされたと思いきや、炎の輪の外に出る。そこで「しぐれ!」と叫ぶと、何かが空から降り、夜叉王は絶命する。

 駆けつけた小兵太は、夜叉王が絶命寸前に地面に書いた「しぐれ、夜タカ」というダイイング・メッセージを見付け、また、以前、信長に呼ばれて堺に来たポルトガル人の持っていた硫火水(硫酸)と同じ臭に気付く。

 夜叉王の毒がまわって身体が火のように熱く、のどが焼け付いて声が出せなくなった左京を、小兵太は川で待ち受けていた。水中での戦いで小兵太は有利に戦い、水上に逃れた左京に対し、小兵太は「しぐれ!」と叫ぶ。するとタカが一羽飛来し、左京に何かを浴びせた。
 甲賀しぐれとは、普通は夜に飛ばないタカを使って敵に南蛮渡来の硫火水と毒針を浴びせる術だったのだ。声の出せない左京の代わりに小兵太が「しぐれ!」と叫んだため、タカは左京を敵と間違えてしまったのだった。小兵太は三太夫に報告するため去っていった。

「伊賀あらし」
 徳川家は三つの隠密を抱えていた。服部半蔵率いる伊賀同心、柳生十兵衛率いる柳生同心、そして、根来一法師率いる根来(ねごろ)百人組だ。

 江戸で天狗と名乗る謎の男が出現。忍法「天狗百鬼、古天狗七羽の陣」によって伊賀組の鳥羽幻心ら3人がやられる。これで殺された仲間は10人にのぼる。その時、同行していた六兵衛もやられ、半蔵の前に天狗が現れる。天狗は天狗百鬼のうち飛鳥天狗とびきりの術で天空に消え去る。

 江戸城西黒門内にある服部半蔵の屋敷に柳生十兵衛が現れる。半蔵が見付けた幻心に刺さっていた毒針(手裏剣?)を見て、十兵衛は根来の仕業と決めつける。半蔵の手下の八条は、徳川三隠密のなかで最も信望を受けている伊賀同心を妬んだ根来か柳生の仕業ではないかと言う。

 その夜、伊賀者に化けた柳生十兵衛の前に天狗が現れる。十兵衛は古天狗七羽の陣を破り、天狗に一太刀を浴びせるが、十兵衛も天狗の下駄に仕込まれた針で左目を失う。

 半蔵は八条を引き連れ、根来百人組の組頭の一法師の屋敷を尋ねるが、そこでは一法師が病にふせていた。その部屋の空気はまさに病人が長く寝ている部屋のようによどんでいたのだった。半蔵は、八条に天狗の幻術の謎解きをする。風の吹かない霧の夜、天狗のうちわに仕込んだ毒の粉が相手の視力と脳の働きを弱め、幻術を掛けやすくするというのだ。

 その時、八条がよろめく。半蔵に連れられて歩き回ったため、十兵衛の刃を受けた傷に耐えられなくなったのだ。半蔵に天狗と見抜かれた八条は、半蔵の仕込みやりにやられる。八条は幕府の目を盗んで不正を働こうとする大名に金で操られていたのだった。

「二つ伊賀」
 永禄5年の秋、鈴鹿峠伊賀上野の伊賀忍者の里。木下籐吉郎の軍勢の焼き討ちと鉄砲隊攻撃を受け、生き残った者はわずか3分の1。そのうち無傷の者は百地三太夫、七里、戸沢白雲斎ら数えるほど。
 翌日、伊賀屋敷の三太夫の元に籐吉郎が現れ、なんと伊賀一族に織田の味方になれと言う。伊賀一族の安泰を考える七里に対し、徹底抗戦を唱える白雲斎は屋敷に火を放ち、生き残りの半数を連れて伊賀を去り、甲賀を名乗ることを宣言。伊賀を分裂させるという籐吉郎の計略がまんまと成功したのだ。

 二十里離れた九度山中で名にも知らず修業していた小兵太の前に、甲賀者となった猿の左助が現れる。小兵太に戦いを挑む左助だが、同じ釜の飯を食った仲間を敵にしたくない小兵太は、左助の陣羽織を使った変わり身の術により姿を消す。

 焼き討ちから三ヶ月後の伊賀の里、三太夫は忍び込んだ甲賀の運天を倒す。運天は伊賀への果たし状を持っていた。それには伊賀、甲賀から7人ずつを選んで雌雄を決しようというもの。甲賀からは由利鎌之助、地蔵の土鬼、裏の五寸、七法師、八つ風、猿の左助、霧の才蔵が選ばれた。かつての伊賀十人衆のうちの7名を占める強敵だ。残る十人衆のうち伊賀十は焼き討ちで死に、伊賀に残るは法因坊のみ。
 三太夫から6名の人選を任された七里は、自分、法因坊、伊賀八兵衛、伊賀七兵衛のほか、自分の弟で双子の五里と三里を選ぶ。残る一人は三太夫が小兵太を選ぶ。

 三太夫への返書を白雲斎に届けようとする五里の前に裏の五寸が現れる。五寸が次々に投げつける一尺五寸のカシの棒に手傷を負った五里は、爆煙で五寸の気をそらせて姿を消す。五寸は土鬼を呼んで五里を探す。一方、五里の残した爆煙を見付けた小兵太と三里も五里を探す。

 手傷を負ったまま逃走する五里に、土鬼の放つ炎が襲う。その明かりを遠方に見て気を取られた小兵太は左助に背後から襲われる。左助の手加減で死を免れた小兵太は、左助とやむなく対決する。姿を消した小兵太は左助の背後を取り、借りを返す。五分五分となった二人の対決だが、三里が駆けつけ、左助は逃走する。

 体力の衰えた五里を襲う土鬼。五里はシカの垂体を吹き付けて明かりを消し、土鬼の背にも吹き付ける。隠れる五里に対し、土鬼は草原に火を放つ。その時、垂体の匂いに惹き寄せられた野犬たちに襲われた土鬼はその場を引き揚げる。

 火に囲まれた五里は土遁の術でからくも逃れ、小兵太と三里に助けられる。そこに現れた七里、法因坊、伊賀七、伊賀八が相談し、今度は小兵太が白雲斎に返書を手渡すことになる。

 小兵太は日が暮れるのを待って左助と鎌之助が見張る甲賀屋敷に忍び込む。返書を白雲斎に届けることに成功するが、大凧で脱出するところを鎌之助に気付かれ、手傷を負わされる。逃走する小兵太の前に八つ風が現れ、忍法「白雪の舞、一の変化白魔つむじ」が襲う。小兵太は伊賀忍法「紙千枚三色」のうち「一色狼火千螢」で応酬する。紙に仕込まれたしびれ薬にやられた八つ風は崖から転落死する。

 転落死した八つ風を見付けた左助、鎌之助、才蔵は、それぞれ手分けして小兵太を追跡する。一方、三里と伊賀八も小兵太の救出に向かう。そこで遭遇した才蔵を追跡する三里は得意とする水上で熾烈な闘いを開始する。小兵太は山小屋で木こりに化けて傷を癒しているところ、鎌之助がやってくる。正体を見破られた小兵太は、鎌之助の火炎アリ地獄から脱出し、術の応酬の末、からくも逃げる。鎌之助は七法師、左助、土鬼を呼び、小兵太を追いつめる。水辺に来た小兵太は、七法師に水中に引き込まれ、ペキニヨ(ピラニア)攻撃を受ける。

 一方、三里は才蔵の忍法「霧隠れ影分身」に襲われるが、伊賀水遁秘術「登り竜」で反撃し、才蔵に深い傷を与えて力尽きる。傷の癒えた五里は胸騒ぎを覚えて急行するが、三里を看取り、才蔵への復讐を誓う。川を流される才蔵を見付けた五寸は、やってきた五里に甲賀棒術「裏なし五寸」を見舞う。

 小兵太はペキニヨ攻撃を毒で逃れて反撃し、七法師は自らのペキニヨに食い尽くされる。小兵太が消耗しきったところに土鬼がやってくる。縄術に捕らえられた小兵太は幻術で土鬼を惑わし、からくも土鬼を倒す。七里は気を失った小兵太を背負い、伊賀八とともに伊賀屋敷に急ぐが、途中で伊賀八が左助と鎌之助に襲われ、鎌之助と相打ちとなる。左助は死んだ伊賀八に変身する。

 三太夫と七里のいる伊賀屋敷で3日間眠り続けた小兵太。そこに伊賀七、左助が化けた伊賀八、そして五里が戻ってきたが、血の臭いがしないことに気付いた七里は五里を切った。それは五里を倒した五寸が変装したものだった。

 伊賀は五里と三里を失い、残るは三太夫、七里、伊賀七、小兵太。甲賀は鎌之助、八つ風、土鬼、七法師、五寸を失い、残るは伊賀八に化けた左助と傷付いた才蔵だけ。

 寝床の小兵太は左助の声に気付くが、薬が効いて身体が動かない。伊賀七は兄者の伊賀八が偽物であることに気付くが、法因坊がやられる。三太夫の殺害に失敗した左助は逃走し、それを伊賀七が追う。精神力で身体が動くようになった小兵太も七里とともに追うが、左助にやられた伊賀七を発見する。

 七里と二手に分かれた小兵太の前に左助が現れ、一騎打ちを挑む。左助の「猿飛びの術」に対し、小兵太も木の中に消える技で左助に毒針を見舞う。とどめをさそうとする小兵太の前に才蔵が現れるが、戻ってきた七里が才蔵を倒す。最後に残った左助も自分の身体に火を放って絶命する。

 やがて天下は信長から秀吉の時代に、そして徳川の天下に移り、小兵太はのちに服部半蔵と名乗って徳川家に仕えることとなる。

「疾風影太郎」
・ナゾの黒鳥の巻
 山形幻斎の率いる「竜の部落」は正義を尊び、湯煙虎太夫の率いる「虎の部落」は自分の利益のためには手段を選ばない。竜の部落の光影太郎は虎の部落を探りに向かうが、その途中で、五郎という名の鷹を操る「タカの風丸」と名乗る忍者の挑戦を受ける。風丸のタカ寄せの術に対し、煙幕で応戦する影太郎・・・。

 その頃、虎の衆が竜の部落を急襲し、見張りの三蔵と半蔵がやられる。応戦する玄斎、小鼠小六、古良阿保太、源次らは熾烈な闘いの末、煙幕を使って姿を消す。竜の部落を占拠した虎の衆は玄斎が発明した「流れ飛車」を見付け、その操作方法を知るために、姿を隠して見張る。

 一方、煙幕の中で互いに攻撃の機会を狙う影太郎と風丸。影太郎の落とし髷の忍法にひっかかった風丸は崖から谷川に転落する。竜の部落からの黒いのろしに気付き、影太郎は部落に急ぐ。そこでは大勢の仲間が殺されていた。影太郎は無事だった流れ飛車で玄斎らを探しに森の中を疾走する。

 流れ飛車の操作方法を一通り知った虎の衆は、一斉に風太郎を襲撃する。虎の衆に取り囲まれた風太郎は、相手が分銅とひも手裏剣しか使わず、投げ武器を使い果たしたことに気付く。分銅とひも手裏剣では四方から同時に集中攻撃することはできないことを利用して、影太郎は、攻撃とは反対側の敵を次々と倒して脱出を図るが、吹針左吉の吹き針を腕に受け、分銅の集中攻撃を受ける影太郎。
 その時、風丸のタカ寄せの術が影太郎を救う。借りを返すまでは風太郎を他人に殺させるわけにはいかないという風丸は、気を失った影太郎を連れ去る。

 左吉に操縦されて持ち去られる流れ飛車と、勝利の祝宴に湧く虎の部落を密かに目撃した小六と阿保太は、影太郎に自分たちの居所を知らせる秘密の印を木に刻む。

 その夜、山中の一軒家で意識を取り戻す影太郎は、謎の男に腕を切開され吹き針の毒を抜いてもらったことを知る。3日後、温泉で傷の癒えた影太郎に、謎の男は自分の正体が風丸であることを明かす。風丸の居合い抜きの刃をとっさにかわす影太郎に、よくそこまで腕を上げたなと言う風丸。その時、虎の衆が2人を襲撃。2人は縁の下に掘られた抜け穴を伝って脱出する。

 その頃、ある岩場のほら穴に隠れれていた玄斎らも虎の衆に襲われ、阿保太もやられて逃げ道をふさがれる。そこに影太郎と風丸が現れ、影太郎は虎の衆の首領である湯煙虎太夫をついに倒す。首領を失って逃走する虎の衆・・・。

 実は、風丸と影太郎は、幼い頃、虎太夫らに滅ぼされたある部落の生き残りとして竜の部落に流れ着いたのだった。玄斎老から忍術を学んだ風丸は、影太郎を玄斎に預け、江戸で忍者として生きていたが、成長した影太郎の実力を確かめに舞い戻ったのだった。
 平和な日が戻り、竜の部落の復興を確かめた風丸は、一人、無情な忍者の世界に帰っていった・・・。

・やみの竜王の巻
 イノシシを仕留めた影太郎と(死んだはずの)阿保太。そのイノシシに、若葉城の城主、安藤出羽の守の一女ルリの放った矢が刺さる。追っていた獲物を影太郎らが横取りしたと言うルリ姫。ルリ姫の家来に取り囲まれた影太郎らは逃げるが、ルリ姫は何者かに目つぶしをぶつけられる。家来たちの弓矢に追われる影太郎らは、人がり新左と名乗る殺し屋の網に捕らえられる。新左は、家来らに2人を百両で売り渡す。

 若葉城では、目つぶしの毒で顔をひどく腫らしたルリ姫が苦しむ。出羽の守は、牢の影太郎らに、ルリ姫の顔を元に戻さない限り死刑だと宣告する。
 その深夜、何者かが牢に鍵を投げ込む。それを使って牢を出ると、牢番や見張りがたおされている。影太郎らを見付けた別の見張りも何者かが投げた万字形の十字手裏剣にやられる。次々に現れる追っ手から逃れて城門にたどり着くと、そこでも見張りが万字手裏剣に倒されている。城外に脱出した影太郎らの前に、新左が現れ、影太郎らの武器を返す。

 影太郎は、ルリ姫の目つぶしの罪をなすりつけたくせに逃がしてくれる新左の本当の狙いを詰問するが、新左は百両をせしめたお礼だとうそぶいて走り去る。

 あとをつける影太郎は、新左が実は国中を荒らし回っている「やみの竜王」であり、竜の部落と若葉城を襲撃しようとしていることを知る。影太郎らの報告を受けた竜の部落の玄斎は、竜王が出羽の守に城の兵士を竜の部落に差し向けさせ、手薄になった城を攻め落とす計略であることを見抜く。

 案の定、出羽の守に竜の部落が城を乗っ取ろうとしていると騙し、兵の出陣後に竜王の手下が城を奇襲するが、そこに駆けつけた影太郎ら竜の一族によって城は救われ、やみの竜王は捕らわれ、出羽の守の疑いも晴れたのだった。

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設定に凝る、最後の決戦を1ページで済ませる尻切れトンボ、設定で登場するくせに本編に出てこないキャラ(虎太夫の娘、黒百合)、揺らぎ(死んだはずの阿保太)など小澤先生の特徴が現れている(笑)。

「はやて竜之助」
 鈴を柄に仕込んだ伊賀の宝刀(朱ざや)を背負う竜之助は、甲賀の忍者たちに襲われ、分銅に打たれて追いつめられたところを、同じく伊賀の宝刀(白ざや)を持つ謎の赤覆面の剣士に助けられる。しかし竜之助は覆面剣士に戦いを挑み、朱ざやの太刀を抜く。すると風が吹き、嵐が巻き起こるが、それを白ざやの太刀が鎮めてしまう。

 嵐を呼び起こす朱ざやの烈剣と、すべてものを鎮める白ざやの静剣。宝刀どおし抜きあえば魔力は効かないため、お互いの腕の勝負となる。覆面剣士の「音なしの剣法」によって、竜之助は烈剣を落としてしまうが、覆面剣士は「音なしの剣法」を身に付けなければ伊賀の宝刀を守れないぞと、烈剣を残したまま去っていく。

 静剣が去って再び烈剣は嵐を呼ぶ。立ちすくむ竜之助は何度も雷に打たれるがなんともなかった。驚いた竜之助は伊賀部落の叔父、幻斎の元に急ぐ。
 一方、去っていった覆面剣士をさきほどの甲賀忍者の首領が追う。覆面剣士は「木の葉縛りの術」をかけられて、しびれ薬にやられてしまうが、からくも首領を倒す。

 竜之助が伊賀部落に戻ると、部落は甲賀忍者らによって火の海となっていた。竜之介は火を消そうと烈剣で嵐を呼ぶが、なぜか烈剣は応えない。そこに宝刀の鈴の音が近付く。それは甲賀忍者、鬼火の幻鬼が持つ黒ざやの魔剣だった。

 朱ざやの烈剣、白ざやの静剣、黒ざやの魔剣は、もともと伊賀部落に代々伝わり、長男の幻斎が魔剣を、次男の幻四郎が烈剣を、三男の幻八郎が静剣を預かっていた。幻四郎、すなわち竜之助の父は、ある大名に召し抱えられ、伊賀部落を離れてていた。
 ところが宝刀には魔力だけでなく、莫大な黄金の在りかが隠されているという噂が広まり、幻斎はある大名の手下に襲われて魔剣を奪われ、幻八郎も静剣とともに谷底に落ちて行方不明となってしまった。幻四郎も何者かに闇討ちされ、竜之助に烈剣を伊賀部落の幻斎に届けるよう頼んで、息絶えてしまったのだった・・・。

 竜之助と幻鬼は息詰まる戦いを続け、竜之助の手裏剣に対し、幻鬼は甲賀流火攻めの術で竜之助を水中に追いつめるが、そこに生き残った伊賀忍者の反撃を受けて、幻鬼は逃走する。そこで覆面剣士に倒された首領を見付け、仇を取るため、仲間を呼び集める。4人は覆面剣士を、残りの5人と幻鬼は伊賀部落に向かう。

 烈剣を守るため、伊賀部落を逃れた竜之助は、追手を次々と倒すが、幻鬼の分銅に捕らわれ、あわや殺される寸前、覆面剣士に助けられる。覆面剣士はなんと谷底に落ちて視力を失った幻八郎だった。3つの宝刀を取り戻した竜之助と幻八郎は伊賀部落の再興を誓う。

「忍者決闘記」
 関ヶ原の戦いのあと、徳川家康が天下を統一しようとしていた頃、諸国の大名は身を守るため、「草」と呼ぶ忍者を金で雇っていた。

 伊賀でも甲賀でもない忍者こがらし一平は、先生の吹雪源太から忍者としての様々な修業を受ける。もう一平に教えることのなくなった源太は、山を下りる日、一平に自分の道を自由に選べと言うが、一平は源太と一緒に行くことを選ぶ。

 一平らは徳川を倒す野心を持つ城主のいる鷹遠城にやってくる。そこで小六という忍者に腕を試され、他の2人とともに鷹遠城に雇われることとなる。与えられた仕事は、家康が派遣した隠密の黒雲を討ち取ることだった。黒雲とは、何十年も前から名前が知れ渡っているが、誰もその正体を知らない強敵なのだという。

 一平と源太は黒雲と対決することを決意するが、ほかの2人は恐れて深夜に脱走する。小六は前金を持ったまま逃走した一人を殺し、源太に小六と一平の頭となって指図してくれと頼む。一平は昨晩逃走した一人が殺されているのを発見する。その胸には365人目と書かれたドクロの絵があった。そこに謎の怪剣士が現れ、危うく366人目の犠牲者となるところを、からくも脱出した。

 その夜、黒雲参上の貼り紙が城門に貼られる。城を見回る小六の前に怪剣士が現れ、小六は一か八か身を切らせることでからくも命を失わずに済む。その直後、城主の部屋の中に黒雲の警告文が貼られる。しかし、黒雲の影すら認められることなく3日が過ぎる。

 その夜、厳重な警備の中、一平は、小六が正面から手裏剣で心臓をやられて死んでいるのを発見。それほど油断していた相手は誰なのか、一平は源太を疑う。もしやと城主の元に急ぐが、城主はすでに殺されていた。一平は怪剣士と源太が対決しているところに出くわす。

 一平は、怪剣士に倒された源太を抱き起し、黒雲であることをなぜ隠していたのかを問う。源太は、常に人をだまし自分をだますのが忍者だ。お前にはもっと夢のある世界に生きて欲しいと言い残して息絶える。

 怪剣士、草切り新左は、剣の極意を極めるため、千人の忍者を切とうとしていた。しかし、もう忍者ではない一平は切らないと去っていた。残された一平は、本当に忍者を捨てて希望のある世界に生きようと決心した。

「風は七いろ」
 天正18年6月、北条氏直の小田原城を攻める豊臣秀吉は、城を見下ろす石垣山に一夜城を築く。それを見た北条の軍勢は、ハリボテの城にもかかわらず、戦意を喪失していく。風魔小太郎と弟の三郎は北条の血筋を残すため、身重の萩の方を城から大凧で脱出させる。追っ手を一人で引き受けた小太郎は最後を遂げるが、萩の方は三郎と風魔の里に辿り着き、そこで元気な女の子、吹子を産む。しかし、その新しい命と引き替えに、萩の方は逃避行の無理がたたって死んでしまう。

 翌月の7月、北条氏直は秀吉の軍門に下り、氏直は高野山に幽閉され、180年にわたって関東を治めてきた北条の領地は秀吉の部下、徳川家康の手に移される。
 それから十数年後、吹子はたくましい乙女として育つ。豊臣に代わって天下を統一した家康は、江戸城で伊賀の隠密、服部半蔵を呼び、小田原城から姿を消した風魔一族の調査を命じる。

 息子の半蔵(父の名を継ぐ)は、箱根芦ノ湖で泳ぎを競う2人の裸の乙女(吹子と霧子)を見付け、風魔の里のありかを尋ねるが、2人は木々の間を軽々と飛び去る。風魔の里を探し当てた半蔵の前に、風魔三郎が立ちはだかる。応戦の末、半蔵は三郎を取り押さえるが、まだ敵か味方か決めかねている半蔵に、今度は吹子の風魔忍法吹姫変幻「野菊矢車の陣」が襲う。
 花びらの刃に塗られた眠り薬によって半蔵を眠らさせたと思ったら、それは三郎だった。吹子は、背後に忍び寄った半蔵を振り切ることができない。首領の風魔一条に会わせろという半蔵に、死んでも会わせるわけにはいかないという吹子。半蔵から「お前のような綺麗な娘がますます美しくなる年頃に、あっさり命を落としてもかまわぬとは惜しい」と言われ、顔を赤らめる吹子。そこに霧子が助けに来て半蔵は姿を消す。

 風魔一条は一族を呼び集め、吹子の秘密を探ろうとする半蔵を討ち取るよう命じ、吹子には命を粗末にせず、女の世界で勝負しろと教える。

 その夜、お茶を点(た)てる吹子の前に半蔵が現れ、吹子の美しさに驚き、自分にも茶を点ててくれという。とっさに手裏剣を手にした吹子だが、半蔵のずうずうしさに呆れつつ、お茶を点てる。密かに髪の毛から椀に移した眠り薬が効いたのを確かめて一条を呼ぼうとした吹子だが、半蔵には通用しなかった。観念して、琴をつま弾きつつ半蔵の話を聞く。半蔵は、将軍家康がようやく戦乱をなくし、世の中に活気がみなぎるようになった折り、風魔一族が再び世を乱そうとしているかを調べに来たという。

 琴の音と吹子の美しさに油断した半蔵は、幻術に掛かってしまう。しかし吹子はとどめを刺せない。吹子の琴の音の違いに気付いて天井裏に忍んでいた霧之助らが襲うが、からくも半蔵は脱出する。一条は右京、霧之助、三郎に半蔵の追跡を命じる。敵に情けを掛けて一条に叱られた吹子も霧子とともに追跡する。

 一条は、半蔵と互角のうでと見込んだ千条と夜叉風に半蔵の行動を推理させる。半蔵が江戸近くでわざと吹子たちに追いつかせると読んだ2人は、現場に急ぐ。保土ヶ谷で半蔵に追いついた吹子たち5人だが、まず右京が、そして三郎が半蔵にやられ、霧之助と霧子もしびれ薬に倒れる。残る吹子は、分身の術によって半蔵を追いつめたかに見えたが、逆に、分身が千条と夜叉風であることを見破られ、半蔵に連れ去られてしまう。

 霧子と霧之助を手当した千条と夜叉風は、追跡を再開し、農民に化けた半蔵がわらの束に隠して吹子を背負っていることを見抜く。わらの中の吹子に気を取られた千条はしびれ薬にやられ、夜叉風は半蔵との戦いに傷付く。半蔵は吹子の元に立ち戻るが、そこで身体の動かぬ千条は、吹子が北条氏直の忘れ形見であると同時に、氏直と養子縁組した家康公の孫でもあることを半蔵に明かす。そして吹子の運命を半蔵の判断に委ねる。

 ろかい舟の中で気を取り戻した吹子。半蔵は、家康公の孫という微妙な吹子の立場、そして、風魔一族に世を乱す意図のないことを知り、吹子の幸せを願って姿を消す。半蔵を想う吹子の声が川面にむなしくすいこまれていった・・・。

「一匹伊賀」
 伊賀の出ではないのに伊賀忍法を身に付けた一匹伊賀のコロク。なぜか源造ら根来(ねごろ)の忍者たちに付け狙われるが、忍法ハリコロクで倒す。そこにキリの左源太が現れる。苦戦するコロク。まだまだコロクの腕が自分に及ばぬをとを確かめた左源太は、いったん姿を消す。
 左源太は見込んだ者に自分の術を全て教え込み、腕を磨かせたうえでそいつを討ち取ることによって、自分の術が衰えることを防いできた。コロクも左源太に伊賀忍法を教えられてきたのだった。

 コロクに三千両の値が付いていることを知った左源太は、再びコロクを倒しに現れる。コロクのさまざまな術を破る左源太。しかし、自分の術を過信した左源太は、ケシの花を使ったかげろうの術に破れる。
 コロクの身体には、浅井一族の復興のための三千貫の秘蔵金の在処が彫り込まれていたのだった。浅井家に大きな恩を受けているコロクは、それを復興までの50年間守り続けることを決意する。

「千太千六」
 つむじの平八の前に立ちはだかる千太。風を利用する平八の術を避けるため、千太は風上に回るが、背後の木に打ち込まれたつぶてからのしびれ薬にやられる。とどめを打とうとした平八は、思いも寄らぬ千太の分身によって倒される。

 ユリ姫の元に戻る千太。ユリ姫は自分のために多くの命が失われていくことを悲しむ。ユリ姫を守り抜くと宣言する千太に、ユリ姫は「いつか千太まで自分のために死ぬかもしれないわ。もう逃げるのがいやになったの。自分さえ死ねばもう人が死ぬこともなくなるでしょ。」と訴える。

 平八を失ってもなおもユリ姫を付け狙う3人の忍者の前に謎の浪人が現れる。ユリ姫に賭けられた千両の賞金が目当ての浪人は、2人を倒す。逃げ隠れた残りの忍者はユリ姫の隠れ住む小屋に忍び寄るが、千太分身の術によって倒される。そこに現れた浪人。それはユリ姫の城の家来のほとんどを殺してきた人切り新左だった。

 千太を殺されてまで逃げたくないと言うユリ姫を当て身で気絶させ、千太分身の術で新左との戦いを始める。本物を討ち取ったと思った新左の背後から太刀が新左の身体を貫く。「これはどういうことだ」といぶかりながら事切れる新左。「千六」と呼ぶ千太。千六の傷は浅かった。千太と千六は双子で、千太分身は、ユリ姫を守るために考えた苦心の忍術だったのだ。

 一ケ月後、千六の傷は癒え、ユリ姫の城の謀反も、忠臣たちの働きで収まる。ユリ姫は城に戻ることとなり、千太、千六に別れを告げる。


●「風丸」(1963、別冊少年サンデー)

 吹雪風丸と千吉は、老人に変装した忍者に火頓の術で襲われる。風丸は、間一髪で相手の正体を見破って倒すが、何者かに千吉をさらわれてしまう。犯人は、300人もの伊賀忍者の頭である服部半蔵の手下と見られた。

 風丸の師匠で、今は仏師の天童は、風丸を連れて半蔵の屋敷を訪れ、千吉を返してくれるよう頼むが、拒絶されてしまう。千吉は、豊臣秀吉の孫で、豊臣家の血筋を引く最後の生き残りの秀也で、風丸らにかくまわれていたのだ。

 風丸は、水攻めにされる千吉を救うため、単身、半蔵屋敷に向かう。風丸は、伊賀組六一衆の神子幻斉、軍太夫、百地ら5人を倒し、千吉を救出し逃走するが、退路で待ち伏せする服部半蔵の手裏剣を受けてしまう。半蔵はわざと急所を外し、将来大物となる可能性を持つ風丸と千吉を見逃す。


●「丹下左膳」(1967、少年キング)
 片目片腕の素浪人、丹下左膳は、浅草のほおずき長屋で、ちょび安(安太郎)、お美代の2人と暮らしている。ちょび安の父、柘植(つげ)の新兵衛は、公儀隠密の命により妖刀の「乾雲(けんうん)」を手に入れ、江戸に帰り着くが、柳生七忍の一人、土遁の術の使い手である土蜘蛛堂内に倒され、左膳に乾雲を委ねて息絶える。

 乾雲は、名工、関の孫六が1本の豪剣から打ち分けた兄弟剣の片割れ。もう一本の「坤竜(こんりゅう)」を持つ柳生道場の当主、柳生源三郎が、乾雲を手に入れるために堂内らを差し向けたもの。堂内らはちょび安をさらい、柳生寺で左膳を待ち受けるが、左膳に撃退されてしまう。

 乾雲を狙って、自源流変位必殺剣の使い手である人切り新左、そして、左膳の敵ではないと言う謎の乞食坊主、泰軒(たいけん)も現れる。 乾雲を携えた左膳は、浅草寺で坤竜を携えた柳生源三郎に出会い、死闘を繰り広げるが、深手を負い、危ういところを泰軒に救われる。左膳は、江戸屋のおかみ、お藤とつづみの与吉にかくまわれるが、傷もまだ癒えぬ間に、人切り新左に居場所を嗅ぎ付けられ、からくもあみ出した必殺剣、独眼左流水の剣によって新左を倒す。

 傷が癒えてちょび安たちの元に戻ろうとする左膳は、柳生四つ風子に襲われ、与吉の助太刀もあって撃退するが、三たび対決した堂内に乾雲を奪われてしまう。しかし、その乾雲は、何者かがすり替えた偽物だった。 源三郎は、柳生道場の剣豪7人を左膳の元に差し向けるが、撃退されてしまう。そこに柳生七忍のもう一人である伊賀一法師が現れ、ちょび安を偽物とすり替える。

 さらに謎の浪人、疫病神の闇太郎が左膳の前に現れ、偽物のちょび安を見抜き、本物のちょび安をさらった一法師を秘法しじまやぶりで倒す。一方、左膳は、柳生の屋敷に乱入するが、牢に捕らわれてしまう。それを知った泰軒は、与吉に命じて左膳を牢から脱出させる。実は、泰軒は大岡越前守の隠密であり、乾雲を偽物にすり替えた張本人だった。

 左膳は、再び源三郎と対決する。一方、闇太郎は、乾雲を持つ泰軒から乾雲を奪い取る。実は、闇太郎は、柳生家の宝刀を盗んだという汚名を着せられて殺された伊能直介の息子、兵馬であった。そこに現れた源三郎、源三郎、兵馬、泰軒、左膳が入り乱れての対決が始まる・・・。