■SFの定義
日本の大衆向けSFに多く見られるパターンは、ゴジラ・シリーズとウルトラマン・シリーズに代表される。その根元は、水戸黄門の印籠や金さんの桜吹雪のイレズミ、あるいは、プロレスとの類似性が極めて強い。力道山のカラテ・チョップ、ジャイアント馬場の16文キック、アントニオ猪木のコブラツイスト、吉村の回転エビ固めなど、窮地に立ったところで一発逆転するパターンは、よほど日本人は好きらしい。ウルトラマンのスペシウム光線、宇宙戦艦ヤマトの波動砲もそうである。
一方、欧米では、サクセス・ストーリーが基本であるが、意外に、「みにくいアヒルの子」と「シンデレラ」に象徴される血筋モノ又は玉の輿モノも多い。「スターウォーズ」しかり、「ハリーポッター」しかり。
それに対し、特定の強大な敵の登場しない作品に、「海底2万哩」、「原潜シービュー号」、「シークエスト」、「海底牧場」がある。相手が自然の脅威だったり、宇宙人だったり、毎回、小物が登場している。海洋SFものに多いのが面白い。海洋SFは大ヒットしないゆえんかもしれない。
東西冷戦構造の崩壊によって、強力な科学技術を持った敵国は地球上から存在しなくなり、ハリウッドでの映画作りでは敵キャラの設定に苦労しているという。しかし、テロ集団でも、2001年の同時多発テロは、フィクションの世界が想像もできなかったような恐るべき大量殺人を引き起こせることを証明した。
スタンリー・キム・ロビンズのマーズ三部作では、地球からの独立戦争よりも、火星の厳しい環境との戦い、そして、多様な異なる思想を持った民族間の葛藤に大部分のページをさいており、新しいSFの形を提示している。