「かいよう」は、半没水型双胴船という特殊な船型をした研究船で、当初は300m飽和潜水技術「ニューシートピア計画」のための海中作業実験船として 1985年5月31日に三井造船千葉事業所から海洋科学技術センターに引き渡された。
ニューシートピア計画の終了後は、海洋観測や地層探査のための研究船として活躍している。
■飽和潜水技術と海中作業実験船
日本では海洋科学技術センターにおいて「シートピア計画」と称して、海底に居住区画(ハビタット)を設置した飽和潜水実験が1972年から1975年にかけて水深30m及び60mで実施された。
ところが、ハビタット方式では水深の増大につれてダイバーへのサポートの制約が大きくなるため、船上加減圧室(DDC: Deck Decompression Chamber)内で居住し、水中エレベータ(Submersible Decompression Chamber)で作業場との間を往復する「SDC/DDC 方式」に切り替えられることとなり、そのための海中作業実験船として「かいよう」が建造された。
「かいよう」は水深300mまでの沿岸域でのスラスタによる定点保持(DPC: Dynamic Positioning System)の能力を持ち、かつ、動揺の少ない船型として半没水型双胴船型(SSC: Semi Submerged Catamaran、別名 SWATH: Small Waterplane Area Twin Hull)が採用された。
SSC は、それまで米海軍の Kaimalino(190総トン)、日本のシーガル(670総トン)など数隻の建造実績があるのみで、それらを大幅に上回る 2,849総トンという外航の可能な大型 SSC は「かいよう」が初めての試みであり、この建造経験を元に、その後、自衛隊の海中音響計測艦や海外の大型旅客船が建造されている。
この船型は前進速度が増大するにつれてダウントリムになる傾向があるため、ロワーハルの前後内側にフィン(固定)が装備されている。
当初の計画では、シートピア計画の終了後、ただちに普通の単胴船型の海中支援船が建造される構想だったが、「しんかい2000」/「なつしま」システムの建造が先となってしまった。このため、海中支援船の建造計画が大幅に遅れ、船上のSDC/DDCシステムだけが先に建造され、そのあと、「かいよう」の建造となった。
その間、深海調査ニーズの高まりとともに、日本初のマルチナロービーム音響測深機及び「ドルフィン-3K」母船としての機能も要求されたため、動揺性能と海中雑音低減の観点から、世界初の外洋航行可能な半没水型双胴船型が採用されることになったもの。
未経験な特異船型であるため、就航後しばらくは船体構造にクラックが発見され、補強されている。船体連結部の下を覗き込めば、その補強の跡が分かる。