■ライザー掘削とは?

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2003年1月14日更新

 ライザー掘削とはなんだろうか。
 海底下の科学掘削には、柱状試料(コア)を採取できるように中空のドリルパイプの先端に刃が付いたものが用いられる。このドリルパイプを回転させながら、同時にドリルパイプ内に流体を送り込んで削り屑を孔外に排出しながら地中を掘り進む。非ライザー船ではドリルパイプ内に海水を注入し、削り屑はドリルパイプの外側を通って海底面に排出される。
 それに対し、ライザー船では代わりに高比重・高粘性の特殊な流体(「泥水」と呼ぶ)を使用する。この泥水は海底面に排出するのではなく、船上まで回収し再び循環させる。この泥水循環を行うために、掘削船と海底面の掘削孔との間を直径数十cmの「ライザー管」で接続する。ドリルパイプはこのライザー管の内側を上下するわけである。

 泥水循環がなぜ大深度掘削に有効なのか? それはまず高粘性の泥水に孔壁を強化する作用がある。また、高比重の泥水で地層内圧力をバランスさせることで石油・ガスの噴出を押さえることができる。たとえ石油・ガスが噴出しても、海底面上に噴出防止装置が設けられていて、直ちに遮断することができる。
 ライザー管は単に泥水の戻り流路となるだけでなく、掘削孔を恒久的なものとするためのケーシングという鋼管を挿入したり、ドリルパイプの刃先を交換したり、計測装置を孔内に降ろしたりすることを容易にもしてくれる。

 このライザー掘削船の技術的難易度は、第一にライザー管の長さ、すなわち、ライザー掘削可能な水深による。すなわち、ライザー掘削船にとって最も厳しい状態は、緊急時に長大なライザーを海底の噴出防止装置から切り離して吊り下げた時である。荒天中での船体動揺がライザー管の不安定な挙動を増幅して破壊に至らせてしまう。

 これまでの石油掘削の記録は、穏やかなメキシコ湾で2001年に<Discoverer Spirit>が2964.6m、やはり穏やかな西アフリカ沖で 2001年にSaipem社の<Saipem10000>が2,791m。
 海洋科学技術センターが建造中の地球深部探査船「ちきゅう」(総トン数:57,500トン、満載排水量:59,500トン、載貨重量:27,200トン、VL:25,500トン)は、日本周辺の厳しい海象条件のもとで水深2,500mを当初目標とし、マントルに到達するために、最終的に水深4,000m海域において、海底面からさらに7,000mの地殻深部まで掘削することを目標とする。

 現時点で想定されるスケジュールは、2005年度中に海上試験及び慣熟運転を開始、2006年度に部分的に研究掘削(国際運航)を開始、それから5年以内に水深4,000m級ライザーに移行、さらに5年以内にモホ面貫通を目指している。


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