■「ちきゅう」案内

間違っているかもしれない掘削船用語(組織・体制)

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2004年11月9日更新

■運用パターン
 「ちきゅう」は6ヶ月を一つの井戸を掘る標準期間としており、その間、洋上に定点保持する。乗組員は昼夜2直体制、1ヶ月乗船し1ヶ月休暇。洋上での交代は乗員も研究者もヘリコプターを利用する。
 その他消耗品の補給と掘削廃棄物の陸揚げにはサプライ・ボート(「ちきゅう」の場合は5,000総トン規模、DPS装備)が2週間の間隔で訪れる。消耗品で多いのはDPSのための燃料であり、次にバライト、ベントナイトなどの泥水材料、セメントなどの粉体。

■組織
 ●「カンパニー」と「ドリコン」と「サードパーティー
 石油業界では、掘削サイトを調査し、掘削計画(Well Plan)を作り資金を出すのが「カンパニー」、通常、掘削リグを保有し掘削業務を請け負うのが「ドリコン」(ドリリング・コントラクター)、泥水エンジニア、ROV、サプライボート、ヘリ、検層(ロギング)などの下請けを「サードパーティー」(サブコントラクター)という。
 「ちきゅう」の場合は少し違った運用形態になる。

■乗組員(クルー)
 ●船長と船長直属
マスターキャプテンOIM(オフショア・インステレーション・マネージャ):船の運航上の最高責任者で船員組織のトップ。OIMは石油リグでの呼び名。「ちきゅう」ではマニュアル上はマスターとなっているが、実際にはみんなは「キャプテン」と呼ぶことになりそうだ。
セーフティー・オフィサーセキュリティー・オフィサー:セーフティー・オフィサーは事故発生時に現場に急行して指揮をとる。セキュリティー・オフィサーは海賊・海上テロ時の現場指揮者。
ストアーキーパー(マテリアルマン):船上の在庫(掘削消耗品、スペアパーツを含む)管理を担当。
ドクター:医師
 ●掘削部門
ドリリングスーパー(ドリリングスーパーインテンデント、掘削監督):掘削部門の最高責任者。ジャッキアップ型リグでは掘削作業員は船員ではないが、「ちきゅう」では船員と扱われる。
ツールプッシャー(掘削班長, 掘削主任):2組(昼夜)いる掘削チームのリーダー
ドリラー(まれにハンドルマン):ドリラーズハウスでCYBERBASEを操る。
アシスタントドリラー:同じくドリラーズハウスでドリラーを補佐する。
デリックマン(ポンプマンを兼ねる):デリックの高所作業と泥水関係設備の操作を担当。「ちきゅう」ではデリックに登ることはあまり多くない。
フロアーマンラフネック:掘削作業員の一番下っ端。石油業界ではラフネックと呼ぶが「ちきゅう」ではフロアーマン。
コアテクニシャン:コアバーレルをメンテする。「ちきゅう」ではコアバーレルのハンドリングはフロアーマンたちが行う。
 ●技術部門
チーフ・エンジニア(機関長)
- セカンド・エンジニア/サードエンジニア
- オイラー(アシスタント・エンジニア)
チーフ・エレクトリシアン:6600Vという普通の船(せいぜい3000Vまで)よりも格段に高電圧な電気設備を担当。
- エレクトリシアン
チーフ・メカニック:掘削装置や機関のメンテを担当。
- サブシーエンジニア:ライザー管、ライザーテンショナー、BOPなど海中に吊り下げる設備のメンテを担当。
- ハイドロ・エンジニア:普通の船よりも格段に高圧な油圧機械と担当。
- インストルメント・エンジニア:制御システム、ネットワーク、センサー類などをメンテする非常に優秀かつ大変なポスト。

 ●航海部門
チーフ・オフィサー(チョフサー):「ちきゅう」ではキャプテンが非番の時の代行。ただし最終権限はいつでもキャプテン。
DPO(DPオペレーター):ダイナミック・ポジショニング・システムの操縦を担当。とっさの判断を要する重い責任を持つ。「ちきゅう」ではセカンド・オフィサー(2等航海士)がDPOになる。
・ボースン(甲板長)/デッキ・フォアマン(甲板部監督)/クレーン・オペレーター:甲板作業(係船、荷役、クレーン操作、掘削廃棄物の運搬、泥水材料の運搬など)の責任者。石油リグではクレーンマンと呼ぶ。普通の船ではクレーン・オペレーターはボースンの下の者が担当するが、掘削リグではクレーン・オペレーター(クレーン・マン)が甲板作業を指揮する。
- ラスタバウト(Roustaboute)/エーブルシーマン(Able Seaman)/:甲板部員。石油リグではラスタバウトと呼ぶ。
 ●ケータリング部門
パーサー(事務長)/無線局長(Radio Officer):パーサーは医師、厨房、居室サービス等の部門を統括。レディオ・オフィサーを兼ねる。当直時は無線設備に張り付く。ハリコプターとの交信も担当。パーサーの当直外は、別の当直(サード・オフィサー)が無線に張り付く。といってもVHFはブリッジ内に鳴り響いている。
・コック
チーフ・スチュワード(司厨長)(女性ならスチュワーデス):ケータリング部門を統括。
- スチュワード/スチュワーデス:掃除、シーツ交換、洗濯等。「ちきゅう」の食堂はビュッフェ形式なので給仕はしない。
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 ●非船員部門(その他の定員)
OSI(オペレーション・スーパーインテンデント、顧客側監督):サイトを選び、泥水計画、ケーシング計画、ビット計画、ウェル・ヘッドの設計など掘削孔をどのように掘るかを計画する責任者。この下にウェルサイト・ジオロジストウェルサイト・エンジニアがいる。
チーフ・サイエンティスト:研究者の代表者。国際共同だと2国から代表研究者を出す場合があり、「コチーフ」(Co-chief Scientist)と呼ぶ。
- スタッフ・サイエンティスト:クルーズレポートの取りまとめなど科学運営組織に所属する研究者。
- ラボ・オフィサー:サイエンスサービススタッフのヘッド。
- キューレター:サンプルの管理責任者で、コアの半割からミニコアを切り出して配布する。ミニコアの配分はコチーフが決めるが、研究者の常識的でない要求に釘を刺すことも。
- ヨーパースン(Yoeperson):事務員。昔はタイピストの意味があった。
・サブコントラクター(サードパーティー)(必要なタイミングに乗船する)
- ロギング・エンジニア:泥水検層担当(マッド(Mud)・ロガー)とワイアライン検層担当(ワイヤライン・ロガー)がいる。
- マッド(Mud)・エンジニア:泥水の性質を調整しメンテする。
- セメンター:ケーシングを裸孔にしっかりと固定する等のためのセメンチング作業を担当する。
- ROVオペレーター:ライザー管やBOPを監視・点検・操作する。ROVは石油掘削ではバックアップのため2台搭載するが、「ちきゅう」は1台か。
- 掘削廃棄物処理エンジニア:掘削廃棄物処理システムを運転・メンテする。
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 ●緊急体制
 火災、衝突、ブローアウト、ドリフトオフなどの緊急時には通常と違う体制が採られる。
 まず警報がなるとアラームレスポンスチームが急行し、センサー誤作動でないことが判明すれば、船長、ドリリングセクションリーダー、チーフエンジニア、OSIからなるコマンドチームとそのサポートチームが全体指揮を行い、現場にオンシーンチームリーダーが急行して現場指揮を執る体制が組まれる。
 消防作業や浸水防止作業などは3組のインターベンションチームが派遣され、落水者など救助などはレスキューボートチームが派遣される。治療はファーストエイドチームがあたる。
 退船時(エヴァキュエーション)には4組のライフボートチームが全員を退船させる。どんな場合もウェルコントロールとそれに必要なDPSを維持するために、ウェルコントロールチームエンジンルームチームは持ち場をぎりぎりまで守る。


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