■観測技術−地上での気象観測

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2005年7月15日更新

渦相関法」と「超音波風向風速計」と「赤外線(吸収)アナライザー

 乱流フラックスを最も精度よく計測する方法としては、現在のところ「渦相関法」が使われている。これには「超音波風向風速計」と「赤外線(吸収)アナライザー」(赤外線ガス分析計)が用いられ、潜熱を直接的に計測できる。船上での乱流フラックス計測は船体動揺のせいで困難だったが、最近、「みらい」で同装置の計測値に動揺補正を加えることによって、計測可能となった。
 赤外線はH20だけでなくCO2にも吸収されるので、同様の装置によってCO2乱流フラックスも測定できる。

雨量計」と「スノー・パーティクル・カウンター
 「雨量計」は、特に強風下の降雪量の測定精度が悪い。これは風速の増大に伴って捕捉率が低下する一方、地吹雪の影響も加わるからである。ツンドラ地帯ではさすがに森林が発達しないので、いよいよ強風の日が多く、これが極域の正しい水循環像を描くことを妨げている。
 ある程度の風速までであれば、積雪状況との比較から風速補正式が得られている。また、強風地帯での雨量計には、風よけを2重に巡らせたものが国際標準として採用されている。しかし、地吹雪の生じるほどの強風下についてはまだ補正式が得られておらず、雪フラックスを直接計測する「スノー・パーティクル・カウンター」などを使って研究が行われている。

ラジオゾンデ」と「GPSゾンデ」と「エアロゾンデ」と「ドロップゾンデ
 ヘリウムで膨らませた風船を飛ばし、大気の気温、湿度、気圧等のプロファイルを求めるのが「ラジオゾンデ」。同じ構造だが、自動追跡型方向探知機で追尾することにより、もっぱら大気の流れを得ることを狙ったのが「レーウィンゾンデ」。最近はGPSで追尾する「GPSゾンデ」が登場している。
 小型無人飛行機で大気中の気温、湿度、気圧等を計測するのが「エアロゾンデ」(小型無人気象観測機)。遠方ではオーブコムによる衛星通信を使う。飛行高度が5kmが限界のため、熱帯地方の雲・降水観測用としては能力不足。
 飛行機からセンサーを投下して気象要素を観測するものを「ドロップゾンデ」という。

ドップラーレーダー」と「バイスタティック・システム」と「ウィンド・プロファイラー」と「大気ソーダー」と「シーロメーター」と「赤外放射計
 いずれも、地上から大気中の気象要素を遠隔で計測するもの。
 発射したマイクロ波が雲の中の雨粒に当たった時の反射強度から降雨強度分布を求めるのが「気象レーダー」。それに加えて反射波のドップラー・シフトから雲の中の風向風速も求めるのが「ドップラーレーダー」。当然のことながら、2〜3台のドップラーレーダーで同時観測しないと、厳密な風向風速分布を得ることはできない。また、晴天域の風向風速も得られない。
 JAMSTECには可搬式Xバンドレーダー(現在、パラオ共和国アイメリークに設置、半径150km)、「みらい」搭載Cバンドレーダーがある。
 「ドップラーレーダー」のマイクロ波が雲を透過して複数の受信機で受信し、コンピュータ合成することによって、より広範囲に雲中の風向風速分布を得るのが「バイスタティック・システム」。

 マイクロ波を上方に発射すると、大気の乱流による屈折率変動によって、ある種の散乱(ブラッグ散乱, Bragg scattering)が生じる。雨滴など微粒子に対してはレイリー散乱(Rayleigh scattering)が生じる。このわずかな散乱波とそのドップラーシフトから、風向風速のプロファイルを得るのが「ウィンド・プロファイラー」。観測点の上空のみに限られるが、晴天でも観測できるのが長所。RASS(Radio Acoustic Sounding System)という音波装置を組み合わせることによって、気温の鉛直プロファイルも得ることができる。
 JAMSTECは現在、パラオ共和国アイメリークでウインドプロファイラ観測を実施中。
=>ウィンド・プロファイラーの原理(CRLのサイト)
 小型可搬のL-バンドのレーダーで、高度3〜4km以下という比較的低空の大気を観測するのが「境界層レーダー」。 逆に、VHF帯を使った大型レーダーで高度1〜25kmの対流圏・下部成層圏、高度60〜100kmの中間圏、下部熱圏及び高度100〜500kmの電離圏領域の観測を行うのが「MUレーダー」。

 音速が大気中の温度によって変化することを利用して、気温逆転層を探知すると同時に、ドップラ効果を使って風速の上下成分をも測定するのが「音波レーダー」又は「(ドップラー)ソーダ」(SODAR: Sound detection and ranging)。

 大気から地表に帰ってくる赤外線を多周波で検出することによって、気温と湿度のプロファイルを求めるのが「赤外線放射計」。
 (何から?)雲底高度を求めるのが「シーロメーター」。

=>MUレーダーの公式サイトMUレーダーの詳細

=>ソーダの解説(通信総合研究所)

=>M's Project(miyabiさん。渦相関法による乱流フラックス観測)* 西村屋トップページ>地球科学技術の耳学問>観測技術