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冷たい夜の潮風に、ネコくんはこごえて毛皮をふくらませました
「つかれたらおやすみ
ぼくが子守歌を歌ってあげよう
クジラの子はたいていひとりっ子だから、みんなあまえんぼうなんだ
お母さんクジラは1年くらいあかちゃんクジラにおちちをのませ
海で生きていくために必要な知恵をいろいろと教える
ぼくたちクジラは大きくなるまでに何年もかかるから、なかなか数がふえない
だから、お母さんクジラはこどもをとても大事に大事に育てるんだ
そして、こどもをねかしつけるときには歌を歌ってあやしたのさ
お母さんほどうまくはないけど、歌はいまでもしっかり覚えている・・・
ウォ〜〜ン・・キュルルクルゥ〜・・・」
ネコくんは体をまるくして横になりました
こうして体をぴったりくっつけていると
クジラさんの心臓が波のように規則正しいリズムで打っているのが聞こえます
そういえば、ネコくんも小さいころお母さんに子守歌を歌ってもらったものでした
クジラさんの心臓の音はネコくんたちに比べてずっとゆったりしていますが
ネコくんはまるでお母さんに抱かれているときのようにくつろいだ気分でした
海の上の星はよごれた空気にじゃまされることなく
赤白黄色の光を競いあっています
鏡のようにないだ海の面に
いくつかの明るい大きな星が自分の姿を映しています
ふたつの波の伴奏で クジラさんの静かな子守歌を聞きながら
ネコくんはいつしか海のように深い眠りに落ちていきました
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