(初出:2005/9/15)

2006年度農水省概算要求にツッコむニャ〜
農水省概算要求総括表 (単位:億円)
区分 17年度予算額 18年度要求額 対前年度比
1.公共投資関係費 14,448 16,741 115.9%
2.義務的経費 7,975 7,712 96.7%
3.裁量的経費 7,249 8,542 117.8%
総額 29,672 32,996 111.2%
 8月末の締切に合わせ、26日に来年度の一般会計概算要求の資料が農水省HPに発表されました。ざっと目を通してみたいと思いますニャ〜。
今回はファイルサイズの比較から入ることにしました。農水省は一括D/L用PDFで8.1M。まあ、ブロードバンドが普及した昨今ではそれほど巨大とはいえませんが。それに対して国交省は、「画像を多数使用しているためサイズが大変大きくなっております」とのコメントはあっても、サイズの表記がなく一括ファイルもなし。HP担当者のスキル(というより世代?)の差か、この辺は農水省に軍配を挙げていい気はしますが・・。いずれにしろ、押しの強さでこの2省が東西の横綱といえるでしょうね。顧客に必死に売り込もうと、パワーポイントのプレゼン資料をどっちゃり持ってくる新米営業を彷彿とさせますが・・。要求額最多のはずの厚労省なんてご覧なさい。全部合わせても1M弱、Adobeのお世話にもなってない。まあ開き直るのも当然だろうけど。環境省は7.7Mとサイズは農水に匹敵し、細目の詳細な説明に紙面を費やしていますが、総額がねえ。。他省庁は総括表の単位が億なのに、環境省だけ百万ですよ(--; 泣ける(T_T)
 さて、この東西の横綱こそ、大規模公共事業の仕切り屋の双璧でもあるわけです。公共投資は今年度当初予算の3%カットが必死なわけですが、果たして国交省17%増、農水省16%増の要求額を提示していますね。対前年度比は例年ほぼ同じで、一種の慣例になってしまっているのかもしれません。
 その公共事業の内訳を見てみますと、一点気にかかる点があります。全体として15%を超える伸びを示す中で、災害復旧だけわずか1.5%しか増えてないんですよね。地震や台風の被害を改めて目の当たりにさせられたこの年に。防災を名目に行われてきた旧来型の公共事業が、現実の自然災害に対応しきれていない中では(しかも人災と呼ぶべき部分が多々あるにもかかわらず)、迅速万全な復旧体制の確立に予算を振り向けたほうが、社会的損失を抑えられるのではないかと思うのですが・・。
 参考資料の中には、キビシイ財政事情における概算要求基準の図が(他省同様)添付されていますが、そこにこう書かれています。「その他の経費については、一体のものとして見直し、大胆なメリハリ付け」マスコミ報道にあった、177もあったいわゆるバラマキの補助金を7つの交付金にひっ括ったことを指しているようですが……それはメリハリのハリだけだろ〜。Wの省の方針を見ても、わずか3行の表があるのみで、どういった理由でこうしたメリハリを利かせたのか、何一つ見えてはきません。重点分野を何%増やしたと数字を見せられても、「こいつは重点分野に(ムリヤリ)押し込める」という従来の官僚の発想からどれだけ進歩があったといえるか。まさに"重点4分野への重点化(バケ)"になってなきゃいいんですけどね。。そしてクロス・コンプライアンス・・これって全然クロスしてないじゃん(--;; 政策評価もチェック欄を設けて線引くだけにならないことを祈るのみだニャ〜。。
 その他個別に見ていきます。農・林・水の三本柱の主柱である農のトップ項目に"食"を持ってきて消費者重視の姿勢を打ち出しているのは、最近の風潮を反映したものといえるでしょう。気になった点は2点。食育ってのは、どうも「1日30品目」に代表される旧態依然の栄養観に裏打ちされているように見えること。結局消費拡大が本音と受け取れること。少子高齢化に向かう日本の構造変化と農業の再編がリンクしきれてない感じ。輸出に活路を見出すことを一つの解答と考えている節がありますが・・。一方で高付加価値を謳い、一方でロボット導入を始めとする旧い二次産業的観点のコスト削減を謳うのは、食育・地産地消の推進ともかけ離れています。もう一つの基本政策である、万遍ないバラマキ農政から企業経営型農業の肩入れへのシフトもそうですが、今後日本の農業は自己分裂的性格をますます深めてしまうのではないでしょうか。
 続く林業、見出しがすっかり地球温暖化防衛隊になっちゃってますね(--; こっちのツッコミは前回と基本的に変わってませんので、2003年度版をご参照。。
 そして水産。正直、コイズミ流構造改革がいちばんなじまない産業が漁業なのではないかという気がします。今回の選挙でも漁村の投票率・自民得票率がとりわけ低かったのでは(分析してませんけど。まあ、どこに入れても期待は持てないというムードだったろうけどニャ〜)。それだけに、補助金に関する記載が目立ちます。さて、項目として目を引くのは原油高対策とノリですね。原油高騰は水産業だけの話じゃありませんけど。ノロウィルス騒動に見られる食の信頼回復については、農業・水産とも共通の課題として取り組むべきものなのですから、もっと連携とれてもいいと思いますが。相も変わらずつくり育てる漁業の推進を掲げていますが、(水産業の自責も、バラストその他による他責も含む)海洋外来生物の問題は、とりわけ養殖業にとって大打撃をもたらしかねない危急の問題であるにもかかわらず、あまり深刻さがうかがえません。まあ、よその国に被害を与えているほうが大きいか・・。ノリは韓国産との価格差を見れば(しかも最近は質も上がってるし)、焦るのも当然でしょうが……諫早の海をつぶしさえしなければ、消費者も国産ノリを選択しただろうにニャ〜。。

 ようやく本題・・・今年度の資料では政策評価の見直し事業の一つとして調査捕鯨が挙げられています(YのP13)。
評価対象事業名:海洋水産資源開発費補助金のうち鯨類調査捕獲事業(事業担当課:水産庁遠洋課)
【政策評価の概要】
〈有効性および効率性の改善〉
・必要性は認められるものの、今後はさらに科学的な調査結果を効率的に積み重ねるとともに、国内外への広報を有効的・戦略的に行うなど、有効性及び効率性の改善が必要である。
【政策評価結果の反映状況】541(541)百万円
・平成18年度予算においては、南極海鯨類捕獲調査での捕獲頭数の拡大、捕獲対象鯨種の増加を行い、科学的知見の効率的な集積に努める。また、国内外への広報をより一層充実させるために、鯨類調査捕獲事業の中に広報活動を設ける。
 結論からいうと、現状維持で国庫から5億円を支出し続けるということですが、政策目標もその評価もまったく具体性に欠けますね。日本の政策評価の悪いお手本というところでしょうか。
 調査捕鯨は基本的に、鯨肉を市場に供給し続けるために耳垢栓だけかっぽじって調査の体裁を取り繕うもので、そのスタイルが変わることはありません。下線部分がまさに必要性なわけですね。書かれていませんが、世論喚起度とIWCにおける声の大きさがきっと政策"指標"(何ホーンとか・・)だったに違いありません。。「国内外への広報を有効的・戦略的に行う」このフレーズはまさに科学的調査とは無縁なものです。「国内外への広報をより一層充実させるために、鯨類調査捕獲事業の中に広報活動を設ける」要するに、調査捕獲事業という名目で広報宣伝費を賄うのですね。コマーシャルとかパンフレットとかイベントでコンパニオンのお姉さんに払うバイト代とか何とか・・。こんな前例ないんじゃないの!?(--;; そういうのを"どんぶり勘定"というんでしょ!!?? 国民としては詳細な内訳を、最低でも広告費にどれだけ使ったのかは明らかにしてもらいたいものです──。