◆主な参考文献◆

タイトル 著者・編者 発行者
『海の哺乳類』
『鯨類資源の研究と管理』
『クジラはなぜ跳躍するか』
『動物大百科2・海生哺乳類』
『鯨とイルカの生態』
『クジラは昔陸を歩いていた』
『鯨とイルカのフィールドガイド』
『土佐の鯨』
『クジラの心』
『WAVE13・特集クジラ』
『クジラの世界』
『ザ・クジラ』
『南氷洋捕鯨史』
『南極行の記』
『日本の捕鯨』
『日本捕鯨史話』
『熊野の太地・鯨に挑む町』
『クジラの海』
『オルカ』
『海からの使者イルカ』
『イルカの夢時間』
『雑学 海の神秘と不思議』
『海の不思議がわかる本』
『南極科学館』
『トップ・ガンの死』
『モルロワの証言』
『海と魚と原子力発電所』
『サメ・ウォッチング』
『イカはしゃべるし、空も飛ぶ』
『死んだ魚を見ないわけ』
『地球の生きものたち』
『海底牧場』
『クジラの季節』
『クジラの挽歌』
『白鯨』(上下)
宮崎信之/粕谷俊雄編
桜本和美他編

D.W.マクドナルド編
D.E.ガスキン著
大隈清治著
笠松不二男/宮下富夫著
岩本久則著
J.マッキンタイアー編

イブ・コア著
原剛著
板橋守邦著
西脇昌治著
高橋秀男著
福本和夫著
熊野太地捕鯨史編纂委員会
岩合光昭撮影
水口博也著
藤原英司著
ジム・ノルマン著
中江克己
D.グロウブズ著
国立極地研究所編
ドウス昌代著
GPインターナショナル編
水口憲哉著
V.スプリンガー/J.ゴールド著
奥谷喬司著
河合智康著
D.アッテンボロー著
A.C.クラーク著
V.B.シェファー著
S.キャリガー著
メルヴィル著
サイエンティスト社
恒星社厚生閣
日経サイエンティスト社
平凡社
東京大学出版会
PHP研究所
東京大学出版会
アドランド
平凡社
ペヨトル工房
創元社
文眞堂
中央公論社
北泉社

法政大学出版局
平凡社
小学館
早川書房
朝日新聞社
工作舎
日東書院
HBJ出版局
古今書院
講談社
連合出版
農山漁村文化協会
平凡社
講談社
情報センター出版局
早川書房
早川書房
文化放送
三笠書房
新潮社(岩波版もあり)

解  説

 95年発行の本作は、文章がボロボロだったこともあり、まったくの鳴かず飛ばずでありました(--;; おかげで、数々の名作・良書を世に送り出している出版社に大変なご迷惑をおかけしすることに・・。それでも、内容的には、『指輪』に比肩するなどとおこがましいことはいえませんが、H・○ッターに負けない厚みを持つ作品であると、自負しております。
 この改訂版は、特に冒頭部分を中心に、現在の著者の力量で可能な限り文章を読みやすくしたものです。もっとも、ただでさえ出版界が厳冬期を迎えているうえに、ラノベブームにみられるごとく読者の要求水準がとんでもなく先をいってるので、再版への道のりはかなり厳しいですニャ〜。。犬猫をモチーフにした新作(現在Web公開中)を発行し、これを足がかりに執筆活動を継続できればと思っているのですが……。本作の英訳版発行に興味のある出版社・エージェントの方、いらっしゃいましたらご連絡ください。英訳・再版のスポンサーも募集中m(_ _)m
 初版発行から十年が経過し、この間のクジラにまつわる新たなトピックとして、新種のツノシマクジラが(偶然!)発見され(こちら参照)、祖先としてパキケトゥス説が定着する等のネタが加わりました。改訂版で一部反映しています。ツノシマクジラの発見は、人間の科学というものが、クジラについて、海について、いかに解っていなかったかを如実に示すものでありました。この他の分類学上の大きなトピックとしては、従来の南半球産ミンククジラをクロミンククジラとして北半球のミンクと別種の扱いに、ニタリクジラは2種(従来のニタリクジラと仮称イーデンクジラ)に分けることに。このうちミンクとクロミンクについては、ザトウやシロナガスと同様に両半球に岐れた個体群の間で、形質・遺伝的により大きな隔たりが見られるようになったということでしょう。ミンクの亜種ドワーフミンクについては、南極海付近に回遊しながら、クロミンクより北半球産のミンクに近縁であるなどの知見も得られています。この辺りはさも調査捕鯨の成果であるかのようにいわれていますが、ツノシマクジラを含む他の全ての生物の分類学上の発見と同様、大量の致死的調査などまったく不必要です。
 クジラの祖先については従来メソニクス(くらいしかいない)だろうと言われていたのですが、最近では偶蹄目との共通祖先としてパキケトゥスが最有力候補とされています。パキケトゥスは現生のカバに近い動物(捕鯨関係者は「ウシに近い」と強調したいところでしょうが)。また、鯨目が翼手目や鰭脚(亜)目のように複系統である可能性はほぼなくなったようです。マッコウクジラは他の小型歯鯨類(イルカとネズミイルカの仲間)よりヒゲクジラに近いとの説も。クジラと(日本人でも愛着を抱く人の多い)イルカを遠ざけたい一部の人たちには、おもしろくない仮説かもしれませんが。
 その一方で、南半球産ミンククジラの繁殖海域・社会行動に関する知識は未だにほぼ空白のままですね(著者はとっくに解明されてていいはずだろうと思ってたのですが……)。おかげで、クレアの出身の〈小郡〉の設定や〈抱擁の海〉におけるエピソードなどをほとんど書き直さずにすんでしまいました。。
 毎年開かれるIWCのマスコミにおける扱いも年を追うごとに小さくなりました。それだけ世間の関心が低くなったことを示しているのでしょう。政府・業界も躍起になっているようですが、やはりいちばん困るのは子供を採り込もうという動きです。授業や給食を媒介に"捕鯨擁護思想"を刷り込もうとする動きには、寒気を覚えるばかりです(こちら)。
 もっとも、日本人が生きたクジラやイルカと接する機会も大幅に増え、十年一昔の感があります。「日本でホエール・ウォッチングが果たして定着するか?」という心配は、まったくの杞憂に終わったといえそうです。いまや座間味などは、ザトウの遭遇率のきわめて高いことで世界的に有名なポイントとなっていますし。一方で、もう一つ気になる動きがインターネットを介した鯨肉のやりとりです。消費・流通の実態が非常に見えにくくなったことは、密輸・密漁に直結する問題だけに厄介です。
 野生生物を取り巻く環境が日々悪化し、問題が山積している中、本来であれば捕鯨問題は前世紀のうちに片が付いているべきトピックでありました。飽食の国日本がいまもなお南極の野生まで貪り続けていることは、この国に住む人間として内心忸怩たるものがあります。筆者としては自分の息のまだあるうちに、少なくとも公海上における捕鯨活動がなくなり、クジラが野生動物としての本来の生をまっとうできるようにと、そのことばかりを願ってやみません。


追記:
新作は評論社(編集者)とのトラブルが原因で惨憺たる結果に終わりました。現在他の3作とともに犬猫をモチーフにしたジュヴナイル小説集としてHP上で無償公開しています。クジラは登場しませんが、興味のある方は探してみてください・・。

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