(初出:2009/5/12)

捕鯨推進は日本の外交プライオリティbP!?
──IWC票買い援助外交、その驚愕の実態──


(1)水産ODA──アナクロな札束外交の象徴
(2)捕鯨支持国とそれ以外の国との間で見られる顕著な援助格差
(3)日本に捕鯨支持という踏絵≠踏まされる開発途上国
(4)捕鯨援助で本当に利益を得ているのは誰か
(5)補足:各捕鯨支持国の解説

(5)補足:各捕鯨支持国の解説

■東アジア後発3国
 カンボジア、ラオス、モンゴルは、東アジア諸国の中でも所得水準の低い後発組として位置付けられている。データブックの東アジアの項でも、「メコン地域諸国とモンゴル」を名指しで挙げ、重点的に支援していく旨記載されている。つまり、この3カ国は、日本の援助比率が高い東アジアの中でも、さらに一段の高待遇を受けているわけだ。2007年には日本・メコン地域パートナーシップが打ち出されたが、その中でもODAの拡充が掲げられている。2007年にはカンボジアと、2008年にはラオスと日本との間で投資協定が結ばれた。両国とも、ちょうどその1年前にIWCに加盟している。ラオスのブアソーン・ブッパーヴァン首相は訪日の際、IWCへの参加を日本との友好関係の証として持ち出したうえ、ODA支援の要請と結び付けている(Wikipediaの「国際捕鯨委員会」参照)。
 カンボジアとラオスを流れるメコン川にはカワゴンドウ(別名イラワジイルカ)と呼ばれるハクジラの仲間が生息している。昨年放映されたNHKのエコツアー企画番組でも紹介された。メコン川流域に生息するカワゴンドウの個体数は、わずか10頭余りにすぎない。もはや風前の灯である。激減した原因の一つは、流域で行われる漁業による混獲。もっとも、現地の人々は手漕ぎの小舟と投網に頼っており、漁法は昔から変わっていない。人口増加と商業化の影響はあるが、彼らに責めを負わせることはできないし、現在では禁漁区も設定されている。ラオスはカンボジアとともに東アジア最貧国ではあるが、それでも住民は何とか野生動物との共存を図ろうと努力している。
 もう一つの原因、餌となる魚(現地の人々の主食でもある)の減少を引き起こした主因と考えられるのは、中国が建設した上流の巨大ダムである。メコン川はラオスの国家・国民にとって生命線というべき河川だが、経済的に中国に依存している関係で異議を申し立てられずにいる。もはや絶滅が確実視されているヨウスコウカワイルカと同様、カワゴンドウもまた大規模開発の犠牲になろうとしている。
 科学的プライオリティの著しく低い日本の調査捕鯨の予算は、絶滅寸前のこうした鯨種の救済のための対策費用にそっくり回すべきだ。あるいは、IWC票に化けるだけの水産ODAを振り向けるのでもいい。アジアの開発途上国ラオスの住民と環境の利益に資するのだから、名目も十二分に立つだろう。そうすれば、日本国民としても税金が無駄にならずに済むし、野生動物保護に多大な貢献をした国として世界から絶賛を浴びることは間違いない。
 ところが、政府はそれとはまったく正反対のことをしている。カワゴンドウは2004年のCITES締約国会議で絶滅危惧種に指定されているが、輸入を含め自国が利用する可能性などまったくないにも関わらず、日本はどういうわけか留保している。同盟国に配慮≠オているつもりなのだろうか? 自国の沿岸に生息するスナメリやジュゴンなどの稀少な海洋生物に対して十分な保護策を打ち出すことの出来ていない国らしく、ラオスやカンボジアにもカワゴンドウをもっと追い詰めるよう勧めているのだろうか? 「日本に倣って消費的利用の道筋を絶やすな」、そのために「たとえ個体群の生息数が十数頭になろうが絶対に絶滅危惧種とは認めるな」とけしかけているのだろうか? ひとつはっきりしているのは、日本の水産庁には稀少動物を保護する姿勢など微塵もないということである。
 カンボジアとラオスは仏教国であり、命を等しく尊重し、むやみな殺生を戒める素晴らしい文化を持っている。年間2千万トンも食糧を廃棄する途方もない命の無駄を出しながら、なおかつ南極の野生動物までも屠ろうとする、仏の天罰覿面な国を庇ってやる筋合いはない。
 両国はIWCでの日本との腐れ縁をきっぱりと断つべきである。カネで国際会議での票を買うなどという行為は、そもそも他のASEAN諸国と同等・対等の国とみなしていない証拠である。仮に援助額を減らすなどと脅しをかけてきたら、国際社会にそのことをきちんと訴えるべきである。もっとも、農水省からの出向者以外の外務官僚は、捕鯨文脈と無関係にASEAN後進国への援助の重要性をきっちり認識しているはずだから、捕鯨擁護をやめたとて何ら心配は要らない。
 IWCにおけるもう1国の東アジアの朋友、モンゴルは内陸国でEEZも当然ない。鯨類はもちろん生息していない。OFCFによる内水面漁業に関する技術協力は行われたようだが、数億円単位の水産ODAを供与しようと思っても無理だろう(キャリア官僚なら理屈を考えられるかもしれないが・・)。永らく牧畜で暮らしてきたモンゴルの人々は、「海洋生物資源の持続的利用」というお題目を耳にしてもピンと来ないに違いない。漁業国・水産物消費国が責任を持てばいいことである。日本のように、自国の沿岸の漁業資源の管理さえまともに出来ない国があれば、同じ地球市民としてさすがに口を出さないわけにいかないかもしれないが……。
 野生動物としてのクジラについての正しい知識や捕鯨問題に関する関心を、彼らは果たしてどれだけ持ち合わせているだろうか? モンゴル政府がIWCに加盟して日本の商業捕鯨/調査捕鯨を支持していることを、どれだけの国民が知っているだろうか? モンゴルの市民の中には、「魚を殺すのはかわいそう」という声も多いかもしれない(実際にそういう方はいらっしゃる)。自国の政府が、よその国が南極のクジラを殺し続けるのをせっせと応援していると知ったら、さぞかしびっくりするのではないか?
 日本は魚やクジラを殺す文化を、南極の自然や異文化圏の人々に一方的に押し付けるべきなのだろうか?
「取引規制の受け入れ拒否・ワシントン条約で水産庁」(2004年12月22日、共同通信)
「ワシントン条約 (4)我が国の留保」(外務省)

■中東(モロッコ)
 中東で現在ただ1カ国の捕鯨支持国モロッコは、日本との間で漁業協定を結んでいる。モロッコのIWC加盟は2002年で、その直前の2000年と2001年に103億ドル及び101億ドルと、10年間の平均の倍近いODAを供与している。日本にとっては強力な水産同盟国という位置付けになるだろう。しかし、鯨類を持続的に捕殺利用する可能性がゼロである以上(その気があるならとっくに捕鯨をやっていていいはずだ)、IWCでの日本支持は、専ら最多の水産ODA受取国としての謝辞と、今後の支援継続への期待を意味するものだろう。しかし、それではとても対等の外交関係とはいえない。
 モロッコは、日本ではタコの最大輸入元として知られていた。日本で食卓に上るタコの約7割は輸入物で、モロッコ産はそのうち4割を占めることもあった。しかし、その後モーリタニアや台湾に抜かれ、比率も20%台に落ち込んでしまった。というのも、底なしの日本の需要に合わせた乱獲の結果、モロッコのタコの漁獲量は2000年をピークに激減、2003年にはモロッコ政府自身が禁漁措置を発動している。
 モロッコを抜いて現在日本のタコ輸入相手国1位となっているのは、同じアフリカの大西洋岸に面するモーリタニア。やはり日本の水産ODA供与国兼捕鯨支持国である。モーリタニアでは輸出量が漁獲量を上回っていたりするため、統計データの信憑性そのものに疑問が投げかけられている。
 日本によるIWC票と引き換えの水産ODA供与が、水産資源の保護とサステイナブルな漁業の確立にまったく役立たなかった証拠である。持続的利用と相容れない無分別な乱獲を助長したとさえいえるだろう。
「魚種別に見る水産資源の現状と問題/タコ」(WWFJ)
「分野別分類/農林水産物の輸出入」(農林水産省)

■アフリカ諸国
 アフリカの捕鯨応援団リーダーを務めるギニアについては、(2)の「捕鯨援助の特徴5」を、トーゴと山際衆院議員の訪れたコートジボワールについては、(3)の「捕鯨援助の特徴9」をご参照。
 ここではアフリカの飢餓と捕鯨問題について少し触れておきたい。
 (4)で紹介した牧山参院議員の国会委員会質疑の中で、議員は「アフリカでは3秒に1人尊い命が失われており、特に小さい子供が亡くなっている」と述べておられる。衛生問題もさることながら、深刻なのは飢餓である。世界では年間500万人もの児童が重度の栄養失調により亡くなっており、また栄養不足のために障害を負ったり感染症にかかる子も大勢いる。
 一方で、日本は年間2千万トンに及ぶ膨大な食糧を廃棄している。これは日本の食糧全体のおよそ4分の1にあたり、世界の食糧援助の年間総量を上回る量でもある。国民1人当りでは世界最悪といわれる数字である。しかも、この数字は家庭及び小売・外食産業からの廃棄量の推計であり、実際には生産段階の、底引網などにかかる食べられるが市場がないため捨てられる魚や、生産調整のためにブルドーザーで潰される野菜、JAの規格外という理由で野積みにされる野菜など、さらに多くの量の"命"が利用されることなく無駄にされている。和田浦で外房捕鯨の社長に「日本は白人と異なりクジラを余すことなく利用してきた」と吹聴されたアフリカ諸国の外交官たちが、日本の正体を知ったなら、さぞかし驚いて声をなくすことだろう。
 昨年のIWCサンチアゴ年次総会に際しては、アフリカと中米の捕鯨支持国から「世界的に食糧が足りないのだからクジラを食べさせてくれという主張」が提案されると日本のマスコミが報じたことがあった。ロードマップを含めた具体的な提案が本当になされたのか、現実性の欠片もないただのシュプレヒコールに終わったのかは確認できていない。ただし、飽食の先進国による高級嗜好食産業に比べれば、それなりの正当性は認められるだろう。
 もし、鯨肉が第三世界の深刻な飢餓を解消するというのなら、いままさにそうしたこどもたちを救うために本当に必要だというのなら、筆者は捕鯨に反対しない。ただし、当然のことながら経済的にも合理的・現実的な方法で供給される必要がある。一体誰が、どうやって、実際に西サハラや東アフリカで飢えに苦しむこどもたちのもとへ鯨肉を届けるのか? 誰が流通システムを整備し、そのコストを負担するのか? どう考えても非現実的であろう。ついでにいえば、食文化の押し付けである。同じコストをかけてごく一般的な食糧援助を行えば、はるかに多数のこどもたちの命を救えることだけは疑いの余地がない。さらに、現行のIWCによる商業捕鯨管理方式であるRMPを仮に適用した場合の南極海のクロミンククジラの捕獲数の上限は、全6海区で3千頭程度とされており、科学調査を名目とする日本の調査捕鯨計画は既にその枠を目一杯使い切っている計算である。先進国1国のみで、である。経済大国の多額の国庫補助を受けた国策企業体が高級嗜好品を市場に供給するというスタイルをとりながら、なお採算がとれずに負債と経常赤字を抱えているという公海母船式捕鯨の現実を目の前にすれば、「南極産の鯨肉がアフリカを飢餓から救う」などという戯事は、冗談にしてはあまりにたちが悪すぎる
 それとも、いざというときに日本人だけは公海のクジラを屠って凌げばいいと考えているのだろうか? 水産ODAを通じて日本がIWCへの参加を呼びかけているアフリカ諸国は、分担金の拠出さえままならない経済状況で庶民の生活水準は日本人とは比べ物にならないほど低い。飢餓はまさしく現在進行形の問題である。南極のクジラを資源として利用できるのは世界で唯一日本のみであるという現実を、日本政府の担当者はそれらの諸国に対して一体どのように説明しているのか?
「食と環境との関わり」(上岡東京農業大学准教授/東京都消費生活センター)
「食糧危機とクジラ」(拙ブログ記事)

■中米(カリコム諸国)
 アンティグア・バーブーダの高所得国入りについては、(2)の「捕鯨援助の特徴3」を参照されたい。アンティグア・バーブーダなどカリコム諸国の租税回避はOECDなどで問題視され、米国も是正を求めているが、合意は得られていない。日本の水産庁はマネーロンダリングに悪用されやすい制度を影から支えていることになる。このままでは外務省も同罪である。
 訪日したドミニカの環境大臣アサートン・マーチン氏が主張するように、欧米からの観光収入が大きな外貨獲得源となっているカリコム諸国が、IWCで日本の南極における大規模捕鯨を強力に擁護し続けることは、決してプラスにはならない。カリブの海はまた、北大西洋の各種鯨類個体群の繁殖海域の一つでもある。持続的産業としてまともに成立した試しのない商業捕鯨などより、既に各地で行われている持続的な非消費的利用のノウハウを移植し、慎重に環境保護と成長の両立を図る方がよほど賢明であろう。
 ところで、ODAデータブック2008年のドミニカの欄には、他のどこの国にも書かれていない不可解な解説が付け加えられている。
 米企業コルゲート・パーモリブ社のココナツを利用した石鹸、洗濯用洗剤等生産工場が2007年9月に閉鎖され、農産物以外の輸出品生産手段を失い、同時に多くの失業者を出した。
 同社は大手ヘルスケア用品メーカー(日本でも歯磨き粉で知られる)であり、確かに無責任な話ではあるが、昨年一年間に外資系企業が撤退を決めて閉鎖に追い込まれ失業者を出した工場は世界で一体どれくらいあったろうか? そのうち、日本企業の現地生産工場はいくつだろうか? 来年発行のデータブックに同様の記述を散りばめることになれば、書棚一つでは足りないかもしれない。国の統計資料に、突然特定企業を名指しで登場させたのは、一体どのような企図に基づくのだろうか? 「日本の水産ODAに頼っていればこんなことにはならないのだ」とでも言いたいのだろうか? ドミニカの欄も、やはり執筆担当者は農水省からの出向者に間違いなかろう。
 途上国であれ先進国であれ、経済構造の改革は決して平坦な道のりではない。「バナナを中心とするモノカルチャー経済からの脱却、エコツーリズムを中心とする観光業や小規模な製造業主体の経済構造への移行を進める」ことは、今なおドミニカにとっては正しい方向性であろう。日本を含めどこの国だろうと採算性・現実性のない大型商業捕鯨にさえ手を出さなければ、何をやってもマシかもしれないが。
 カリブの島嶼国のいくつかではゴンドウの捕獲が行われている。日本の水産庁は、これをもって捕鯨支持国が自らの国益のためにIWCに参加しているのだと嘯く。しかし、実際には彼らが捕獲しているのはIWCの規制対象外の種であり、大型鯨類を対象にした公海上の商業捕鯨/調査捕鯨及び原住民生存捕鯨を管理するIWCとは無関係である。
 人口が数万ないし数十万程度と日本の小さな市くらいしかない開発途上国に、十分な小型鯨類の保護・管理を遂行する能力があるとは、筆者には思えない。日本の太地で行われている生態学的にきわめて問題の大きいイルカ・ゴンドウの追い込み漁も含め、小型鯨類の捕獲をすべてIWCの管轄事項とし、国際的に厳密な規制を課すべきだというのであれば、日本の主張にも多少の説得力はあろうが。
 関係筋からの話では、中米の某国に同盟入り≠アテにして水産ODAを供与したところ、プロジェクトが完成した途端「寝返られた」と嘆きの声が聞かれるとか。ODAを政治的買収の道具にしておきながら、「寝返られた」という感覚がそもそもおかしいのであるが……。もっとも、水産庁にさんざん文句を言われて外務省が閉口したという意味での嘆きかもしれない。
「ドミニカの概要と開発課題」(ODAデータブック2008)

■大洋州
 水産ODAの過去、太平洋諸国と日本との歴史的関係については(1)をご参照。
 ソロモンにおける援助協調に関しては(2)の「捕鯨援助の特徴5」で触れたとおりだが、ここでも補足しておきたい。この地域でODAの拠出が多いのは、日本、アメリカ、オーストラリア、ニュージーランドである。日本によるODAの露骨な政治的利用に対しては、3国が結束して「援助と引き換えに票を売ってはならない」と各国を諭すべきだろう。ソロモンのように援助協調を活発化させ、国際倫理に抵触するODAの悪用に目を光らせることも必要だろう。ただし、札束を見せびらかして懐柔するような日本と同じ手口を使うことには賛同しかねる。
 ODAに関しては、援助調整・協調とともに、良い意味での競争原理を働かせることはあっていいかもしれない。すなわち、DAC諸国間で当該国の市民のためにより優れた援助を競い合うのである。オーナーシップとパートナーシップ(本来説明の必要はないと思うが、IWC票買い水産ODAではまったく逆のことを平気でやっているので断っておくと、オーナーが被援助国の開発途上国、パートナーが供与国の先進国である。くれぐれも間違えないように!)の原則のもと、被援助国がしっかり主導権を持ち援助国側のプロポーザルを比較検証・選択するくらいのことがあってもいいのではないか。
 IWC代表を務める森下丈二参事官自身が認めるように、日本は先進国でありながら乱獲により沿岸の各種漁業資源の枯渇を招いている国である。欧州で導入されている消費・流通も一体化させた先進的な漁業管理制度であるMSCのような厳格な認証制度を導入する気もない。日本の水産庁による現行の漁業管理方式であるTAC(漁獲可能量)制度は、同じ捕鯨国のアイスランド・ノルウェーを含む他の漁業先進国より周回遅れのオリンピック方式となっている(三重大の水産学者勝川教授は「それ以前の問題だ」とさえ指摘している)。反捕鯨国であるオーストラリア、ニュージーランドの水産行政の方が、経済性と資源保護を両立させる施策では日本よりずっと進んでいるといえよう。
 基本的に日本の水産ODAは、漁業者よりゼネコンの利益を優先して自然海岸をほとんどコンクリートで埋め固めてしまった国内の漁業整備施策を海外にまで敷衍しただけのものである。持続可能な漁業の発展に必要な援助プロジェクトとして、日本とオーストラリア/ニュージーランドのどちらがよりすぐれた提案を示せるか、大洋州島嶼国が競わせてみるのも一興だろう。
 同様のことは地球温暖化対策についてもいえる。米国も豪州もこれまで温暖化対策には後ろ向きだったが、両国とも政権交代により積極姿勢を打ち出したため、中途半端な方針しか示せない日本はこのままでは追い抜かれかねない。
 個人的にはもちろん筆者も日本人として外務省を応援したいが(そのためにはクールアース・パートナーシップも内容を伴ったしっかりしたものにしてもらう必要がある)、水産庁に口を出させていては到底勝ち目はないだろう。
「MSC漁業認証取得に関心のある漁業関係の方へ」(WWFJ)
「海のエコラベル「MSC認証」は反捕鯨団体WWFが推奨するためか嫌われている」(化学者の方の個人ブログ)
「日本のTAC制度はオリンピック方式ではない」(勝川俊雄公式サイト)
「水産庁のNZレポート」(〃)
「オーストラリア」(〃)
「オーナーシップとパートナーシップ」(外務省)
「鯨論・闘論[ご意見:33]への森下参事官の回答」(日本捕鯨協会運営「鯨・ポータルサイト」)

■要注意の捕鯨支持国候補
・外房捕鯨見学会参加国
 アルジェリア、サントメ・プリンシペ、ブルキナファソ
・昨年の外務省主催セミナー参加国
 アンゴラ、コンゴ共和国、赤道ギニア、ガーナ、マラウィ、ミクロネシア、バヌアツ
・ASEAN後進国
 ベトナム、ミャンマー
・近年の水産ODA供与国
 カーボヴェルデ、セーシェル、サモア、フィジー
 このうち、昨年に引き続き興味を示し水産ODAも供与されているアルジェリア、水産ODA供与と債務救済もあるマラウィ、水産ODA供与額の大きいミクロネシア辺りが危なそうである・・。フィジーも軍事政権となり対豪関係が悪化している引き抜き要注意国。外務省がガバナンスを重視するしっかりした外交方針を貫かず、捕鯨支持同盟への取り込みしか頭にない水産庁に主導権を渡し、フィジーやミャンマーなどに対する安易な票買い援助を許してしまえば、日本の対外的な信用をますます貶める結果を招くだろう。

■終わりに
 日本の水産庁がまずやるべきことは、自らの襟を正し、自国近海の水産資源の保護管理を厳格に行う能力があることを世界に対して証明することである。海洋生物資源の持続的利用を推進する諸国連合の旗手を名乗り、南極の野生動物を勝手にテストケースにする資格は、少なくとも今の日本にはない。公海における大規模な調査捕鯨の単独強行は、日本人として非常に恥ずかしいことである。
 農水省から外務省への出向者がすべて、調査捕鯨と捕鯨援助によって甘い汁を吸っている水産・食品関連業界、コンサル・ゼネコン業界の便宜を国際協調より優先させているわけではない。中には、元外務省漁業室長で現在農水省国際研究課長をされている鈴木亮太郎氏のように、元外務副報道官の谷口氏と同様、捕鯨問題に関して優れたバランス感覚をお持ちの方もおられる。
 水産・コンサル・ゼネコン業界団体、あるいは永田町界隈で鯨肉パーティーを開いている政治家たちからの圧力もあるだろうが、真の国民の利益のために賢明な外務・農水官僚が英断を下してくれることを期待したい。
「捕鯨をめぐる問題――調査捕鯨問題を中心に」(『ジュリスト』2008年10月15日号)

TOPページへ戻る
バナー