■ノートPCでMIDI演奏するには?

 
2004年7月25日更新

Q.ノートPCでMIDI演奏するには?

A.
1.音楽データのいろいろ

 音楽データには、実際の演奏をデジタル録音したもの(音楽CD、WAV、圧縮処理されたMP3、動画付きのAVI、MPEGなど)と、音程、強弱、長短、音色、テンポ、各種効果などの作曲データを数値化したもの(RAY、MIDIなど)があります。

 前者が言わばFAXで情報をやり取りするようなもので、音楽でも音声でも効果音でもなんでも録音された通りに再生する(もちろん、音質の良し悪しはありますが)が、データを自由に手直しするのは難しいし、音楽など長いものになるとデータ量はどんどん多くなります。
 具体的には、Windowsを起動した時にジャジャーンと鳴るWAVデータがそれです。

 一方、後者は電子メールで情報をやりとりするようなもので、ワープロのようにデータを自由に手直しできる大きな長所があるため、作曲・演奏という音楽表現の手段にもなりうる点が、大きな違いです。また、長時間、大編成の演奏でも比較的少ないデータ量で再生できます。
 その代表的なのが、MIDIです。

 MIDIがWAVなどと大きく違うのは、例えば、紙ロールに空けた穴に従って自動演奏する昔の自動ピアノみたいなもので、同じデータでも、演奏する楽器(音源又はソフトウェア・シンセサイザー)によって、音色や効果が異なってくる点です。

 それから、音程、強弱、長短、テンポ、音色などMIDIのフォーマットや音源で用意されている音色の範囲でしか演奏できないことで、本物の楽器と完全に同じようには表現できません。これはむしろ、MIDIは本物の楽器の代わりではなく、独自の楽器と思った方がいいでしょう。

2.MIDI音源のいろいろ
 MIDIは音源の種類によって音色などが異なってくるということは、すなわち、MIDIデータを聴くにはデータ作成者の用いたのと同じ音源で聴かないと、本当に作成者が意図した通りの演奏とはならないということです。

 MIDI音源の種類で代表的なものが、現在ではローランドのGS音源とYAMAHAのXG音源です。両者はまったく別物という訳ではなく、GM(General MIDI)という規格にどちらも従っていますが、それぞれ別個に機能強化していったため、少し違ったものになってしまいました。

 GS音源の代表がSC-55(Mk-II)やSC-88(Pro)で、音楽データではGS系が多かったのですが、XG音源はゲーム用音源の代表であるSound Brasterのドーターボードに採用されたこともあって、根強い人気があります。

3.MIDIフォーマットのいろいろ
 一方、MIDIデータのルールそのものは、スタンダードMIDIファイル(普通は拡張子がMIDですが、STD、MFF、RMIというのもあるとか)として広く標準化されています。

 ただし、作曲ソフト(「シーケンサー・ソフト」と呼ぶ)がそれぞれ独自の工夫を凝らした各種のMIDIフォーマットがあって、
・レコンポーザ用(RCP、R36、G18、G36)
・ミュージ郎/バラード用(SNG)
・マイクロミュージシャン/HELLO! MUSIC!用(MM2、MM3)
・Singer Song Writer用(SSW)
・芸達者用(SEQ)
ほか私の知らないのが一杯あります。
 でも、いずれのシーケンサー・ソフトも、MID形式で保存できるようになっていますので、その点では安心ですね。

4.パソコンで音を鳴らす方法(一般論/デスクトップ)
 パソコンで音を鳴らすには次のようなものがあります。
(1)ビープ音+内蔵スピーカ?
 ピポッでお馴染み。このビープ音によるゲームBGMが懐かしい。最近はこの内蔵スピーカ?が省かれて、イヤホンや外部スピーカを繋がないと鳴らない機種もあります。

 DOSでは、このビープ音の音程を上下させることでMIDIを再生するドライバがありますが、Windowsでは見掛けません。
 代わりに、サウンドカードの中にこの内蔵スピーカ?でWAV音を鳴らせるものがありますが、音がしょぼくて実用的ではないようです。そうそう、DOSの音声画面リーダーVC2も、この内蔵スピーカ?で音声を合成できますが、やはり実用的ではありません。

(2)FM+PCM音源ボード?(26(K)互換、86互換、Sound Braster、118)+ステレオ・スピーカ?
 26(K)ボードがFM音源3ch+SSG音源3ch。86ボード(PC-9801-86)になってFM音源6ch+SSG音源3ch+リズム6chになりました。

 ゲームで必須。WAV音の再生と、MIDIについてもFM音で再生できるよう機能拡張されています。PC-98では「86ボード」というのが定番でした。
 「86ボード」自体にステレオ・スピーカ?は付いてましたよね?。外付けのアンプ付きスピーカ(パワード・スピーカと呼ぶこともある)で聴くともっと音が良くなります。

 ちなみに、MIDIの親類でRayというDOS専用音楽・映像環境は、この86互換音源でしか聴けません。

 118音源はこんな形をしています。
=>NEC PC9801-118
 118の偉かったところはオンボードでMIDI基盤が乗るところでこんな形になります。
=>MIDI音源ボード搭載118音源

 ほかに純正ではPC-9801-73というボードもありました。98初の標準CD-ROM搭載機PC-9801GSの音源部分を別売にしたもので、DSP搭載が乗っていました。定価\90,000と高価なため普及せずDSPを削るなどのコストダウンしたものが86として発売されました。

(3)MIDI音源(マルチチェンバーPCMシンセサイザー?)+外部スピーカ?
 この言葉はあまり厳密ではありません。86ボードもMIDIは再生できるからです。でも、普通はPCM音源でMIDIを再生できるモジュールのことをMIDI音源と通称しています。

 MIDI音源には次の種類があります。
a)拡張FM音源(86ボードなど)、PCカードもあり
b)外付けMIDI音源モジュール(SC-55、SC-88、MUなんとか)、PCカードもあり
c)118ボードやSoundoBrasterに内蔵させるドーターボード

 オンボードのMIDI基盤(ドーターボード)についてはこちらが詳しいです。
=>ドーターボードサウンドカード博物館より)
d)ソフトウェア・シンセサイザー

5.98ノートでMIDIを鳴らすには?
 全4.のうち、98ノートで使える音源について具体的な内容に入ります。

(1)内蔵サウンドカード+内蔵ステレオ・スピーカ
 9821ノートでもNp、Na、Nb、Nx、Nr、Nw、Lsなどの機種は、サウンドカード(拡張FM+PCM音源)を内蔵するようになりました(合ってるかな?)。
 このうち、DOSゲームの定番音源である86ボードと互換なのは、Na7とNxだけ。ただし完全互換ではなく、86音源部分互換音源。PCM部分はWSS準拠となっていてPC-9801-86のPCM音源とは互換性がありません(overtop2さん)。
 なお、PCカードのキュービックのWaveMasterCardだと86互換性がかなり高い。
=>株式会社キュービジョン

 その他の9821ノートは、Windows上でWAV音を再生するほか、MIDIを拡張FM音源で再生することができます。

 音色はかなりGS音源やXG音源に比べてリアルではないですが、音程、長短、テンポなどは正しく再生されるし、CPUへの負荷も少ない。

 これを利用するには、スタートボタン/設定/コントロールパネル/マルチメディアのMIDIタブで、「・・・FM MIDI・・・」みたいなのがあれば、それを選べばOKです。

 Windowsを起動したら、ジャジャーンというWAV音が聴ける環境だったら、それでMIDIが鳴るはずです。

(2)外付けMIDI音源モジュール+アンプ付きスピーカ
 音質の点でもCPUへの負荷の点でも最も理想的なのは、外付けMIDI音源モジュールとアンプ付きスピーカを購入して98ノートに繋ぐ方法です。

 昔は、外付け音源を98ノートに繋ぐには、なんらかの方法でMIDIインタフェースボード(MPU-PC98IIなど、Sound BrasterなどにもMIDIインタフェースが付いてたような)を取り付け、それに外付け音源を接続する必要がありました。
 110pin拡張バスを持つ古い98ノートであれば、ノート用MIDIインタフェースボード(MPU-401N)も売られていました。

 その後、シリアルポート(RS232C)から安価なアダプタを介して接続できるようになり、ノートでも高品質の音を手軽に楽しめるようになりました。

 外付け音源でお奨めは、対応データの豊富さではローランドのSC-88(各種バリエーションあり、SC-88 Pro が最高峰?)ですが、YAMAHAのMU・・・も根強い人気があります。

 実際に鳴らすには、外付け音源を購入する際、お持ちの98ノートのシリアルポートの形状に合わせた接続コードかアダプタも、お店の人と相談して購入します。

 中古音源を買う時に注意しないといけないのは、Windows用のシリアルポート用ドライバも入手すること。このシリアルMIDIドライバは、Windows3.1には標準添付されていないので、音源モジュール又はシリアルポート対応のシーケンサーソフトに添付のものをインストールする必要がありました。

 このシリアルMIDIドライバは、音源毎、メーカー毎に異なるものではないので、ローランドかどこかのWebページからPC-9800シリーズ用をダウンロードすればOKです。

 Win95/98ではシリアルMIDIドライバは、現在でもメーカーのサイトからダウンロードする形になっています。
=>ローランドシリアルMIDIドライバ

(3)ソフトウェア・MIDIシンセサイザー
 さて、「FM音源」と「PCM音源」という用語が出てきています。FM音源は合成音によっていろいろな音色を模擬しているのに対し、PCM音源はデジタル・サンプリングした音をベースにしています。

 サウンドボードを内蔵している9821ノートはPCM音源を持っているので、ソフトウェア的に外付けMIDI音源と同じ働きをさせられないか? ということで生まれたのが「ソフトウェア・MIDIシンセサイザー」です(うーん、大分怪しくなってきたぞ。

 以前のCPU能力ではとても無理と思われてきましたが、WinGrooveで実現し、MMX Pentium が登場してからは、GS音源(SC-88)やXG音源(MU・・)と互換性のあるソフトウェア・シンセサイザーが試用版又は市販品として提供されています。

 私は知らなかったのですが、CASIOの通信カラオケ付属のものがあるようで、昨晩ダウンロードしようとしたけど時間が掛かりすぎて断念しました。

 このソフトウェア・シンセサイザーは、内蔵のPCM音源を使って鳴らすわけですから、Windows起動時にジャジャーンと鳴る環境であれば、インストールしたら、直ちに鳴るはずです。他になんのドライバも必要ありません(よね?)。

6.98ノートにあらかじめ備えられている音源
 Meさんのスペック表によると以下の通り。

(1)なし(Beep音のみ)
全ての9801ノート、9821Ne、Ne2、Ne3、Ns、Nd、Nd2、Ld、Nm、Lt、Lt2  DOS上では、再生ソフトMIMPIV4を使えばBeep音でMIDIを再生してくれます。上記機種のうち110pin拡張バスをもつものについては、拡張ボックスにMPU-PC98IIなどのMIDIインタフェースボードを取り付け、あるいは、110pinに直接MPU-401Nを接続して、外付けMIDI音源モジュールを繋ぐことになります。

 Windows上でBeep音でMIDI再生できるドライバ又はソフト・シンセは存在しないので、上記の拡張バス接続の方法、又は、PCカードのMIDI音源を接続するしかありません。

 WAVEを擬似的にBEEPで鳴らすソフトなら、シェアウェアですがあります。
  nifty:FWINMM/LIB/02/43 SPKQQ .LZH スピーカドライバSpkQQv3.41 95ok!

 PC-9821 Ne + MS-DOS Ver6.2 + Windows3.1で使うと、鳴るタイミングがワンテンポ遅れます。

 WinGrooveでMIDIファイルを再生する代わりに、WAVEファイルに変換してから、SPKQQを使って、WAVEファイルとして鳴らすことは可能。ただ、WAVEに変換すると、HDDの容量をかなり食うので要注意です。
 44.1KHz 16bit STEREO で、5分間で60MB近く使います。BEEPで鳴らすのならば、22.1KHz 8bit MONO で十分だと思いますが、それでも、5分で 7MB 程度は必要でしょうか。

(2)PCM音源のみ
9821Np、Nf、Nb7、La7、La10、La13、Ls12、Ls13、Nr12、Nr13

 DOS上では、上記のほか、FPD 2.50(nifty:FGALAV/LIB/4/730)というドライバによってPCM音源でMIDIを再生してくれます(FPDの対象PCM音源:86ボード、CS4231(Np、Nfほか)。FPDの演奏データは独自形式ですが、MMLリスト又は標準MIDIファイルから変換できるコンバータが付いている)。

 Windows上では、WinGrooveというソフト・シンセサイザーによってPCM音源でMIDIを再生してくれます。そのほか、ローランドやYAMAHAからそれぞれGS音源及びXG音源と互換のソフト・シンセサイザーがありますが、MMX-Pentiumが装備されている(4)のノートPCでないと苦しいようです。

 とにかく、Windowsを起動するとジャジャーンとWAV音が鳴る環境であれば、WinGrooveのインストールは問題なくうまくいくはずです。ジャジャーンと鳴らなければ、スピーカの音量が最小又はミュートになっているなど、コントロール・パネルのマルチ・メディアでの設定を確認下さい。

 また、WindowsでもFPDLiteというFPD98(シェアウェア。nifty:FGALAV/LIB/4/1150〜1153)の最小限の再生機能のみを取り出したフリーソフトウェアを利用することもできます。但し、音源データとしてMS-DOSのFPDやFPD98のデータ(データの再配布は不可)を流用する必要があるほか、演奏に関してもFPD独自形式のファイルかWAVファイルしか再生できません。

 ですから、手軽にMIDIを楽しむというのであれば向いていませんが、DOSでFPDを利用していた人であればいいかと思います。

(3)PCM音源+FM音源
Nx、Na7、Na9、Na12、Na13、Na15、Nr15

 このうち、Nx及びNa7は、前述のとおり、98DOSゲームの定番かつRayご指定音源である86ボードに部分的に互換。

 Nr15に搭載されている音源でもRayは動きます。音についても(本体スピーカーがチャチなので薄っぺらい音ではありますが)スピーカーを接続して聞く分には86音源と同じ感じです。また、WindowsのDOSプロンプトではそのままで拡張FM音源が利用できますし、DOSでもAVSDRV.SYSを組み込むことによって拡張FM音源を利用することができます。

 Rayは、WinのDOS窓(DOSプロンプト)でも、DOSモード上でAVSDRV.SYSを組み込むことででも使えます。ただ、DOSプロンプトのウィンドウモードでは
・画面描写が追いつかない
・テンポが微妙にずれる場合がある
という欠点がありますが、ただ音楽を聴いて楽しむだけであれば十分です。
 フルスクリーンモードでもテンポが微妙にずれる場合がありますが、ほぼ完全に動作します。

 Windows上では、もしFM音源がマルチ・ティンバー音源だったら、MIDI再生するドライバがどこやらにあるようです。GS音源又はXG音源互換のソフト・シンセや外付けMIDI音源モジュールにはかないませんが、CPUへの負荷は少ないです。

(4)PCM音源+ソフトウェアセンセサイザー
Ls150、Nr150、Nr166、Nr233、Nr266、Nw133、Nw150

 Windows上ではローランドとYAMAHAのMMX対応ソフト・シンセサイザーでPCM音源によるMIDI再生ができますが、MMX-200MHzあたりでも、フルオーケストラになると再生が苦しくなります。やはり、外付けMIDI音源モジュールやWinGrooveがお奨めです。

(Special Thanks:ARENAさん、ばけちゃん、どんだんずさん、overtopさん、ぴ〜まんさん)
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