■潜水船の着水・揚収

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2003年12月13日更新


■着水揚収システムの構造
 「Aフレームクレーン」(A/F)は通常は内側の収納位置にあり、「Aフレーム起倒装置」(油圧シリンダー)で振り出しする。
 A/Cの先端から「ペンダントフレーム」(P/F)がぶら下がっている。P/Fには4つの「ショックアブソーバー」が付いている。P/Fは「振れ止め用ディスクブレーキ」(まるでギロチンの刃のように見える)で振れを止めることが出来る。

 潜水船を吊り揚げる「吊揚索」(組みひものように編んだ太い繊維索)は前部吊揚索と後部吊揚索があり、「ホイスティングウィンチ(ホイスト)」で巻き上げる。ホイストは前後単独で巻き上げ・巻き出したり、同期させて巻き上げ・巻き出したりできる。ホイストを巻き出す(緩める)時はA/Fに付いている「ピンチローラー」(ゴムのボール状ローラーが2個向かい合っている)で吊揚索を挟んで巻き出す。ホイストとA/Fの間にはヒーブを吸収する「ラムテンショナー(ラムテン)」がある。吊り揚げ張力は張力計で計測できる。
 ホイストとA/F起倒装置は1つの油圧ポンプで切り替え式。

 吊揚索の先には「吊揚金物」があり、これを潜水船上面の「突起金物」に勘合させる。このためには、吊揚金物を引っ張る「ガイド索」の先端フックを潜水船の突起金物に接続し、「ピンチローラー」を作動させると、吊揚金物がガイド索に引っ張られて突起金物に勘合させる。
 「ガイド索ウィンチ」はA/Fに付いていて、洋上の潜水船の揺れに追従するようオートテンションを効かせることができる。
 吊揚金物が突起金物に勘合した後、吊揚索を巻き上げ、再上昇位置に来ると、P/Fに付いている「プランジャー」で吊揚金物を固定できる。

 母船船尾には潜水船を曳航するための「主索」があり、「キャプスタン」で巻き込む。

 潜水船を格納庫と後部上甲板の間を移動させる「移動台車」がある。潜水船と移動台車の間、移動台車と上甲板の間にそれぞれ固縛装置(ラッシング)がある。

■乗組員の配置
・後部操舵室:司令(総指揮)、船長(キャプテン、母船総指揮)、一航士(チョフサー、現場指揮)、一機士(機器遠隔操作)、甲板部員(母船操舵)
・後部上甲板:甲板長(ボースン、上甲板指揮)、三航士(甲板作業)、三機士(甲板作業)、操機長(運転機器監視)、甲板部員、機関部員、運航員(潜航準備作業、着水揚収作業)、事務部員(応援)
・船橋:二航士(全般見張り)
・総合指令室:通信士(航法管制)、運航員(航法管制担当)
・無線室:通信長(無線指揮)
・機関制御室:機関長(機関指揮)、二機士(機関当直)、機関部員(機関当直)
・ギャレイ:司厨長
・作業艇:艇長、艇員、スイマー(二航士がすることもある)
・潜水船:船長(潜航長、パイロット)、副操縦士(潜航士、コパイ)

■母船から潜水船を着水させるまで
(準備)
・着水前に行う潜水船のチェック
(潜水船の船内では)
・「絶縁抵抗計」、ON確認
・「放電量計」、ON確認
・「DC28V応急電源NFB」、ON確認
・データ収集装置用ノートパソコン、収集開始、データ収集装置、ON
・「バッテリーメイン」、ON確認
・「1番バッテリーNFB」、ON
・「2番バッテリーNFB」、ON
・「1番バッテリーMC」、ON
・「2番バッテリーMC」、ON
・「主推進NFB」、ON
・「補助推進NFB」、ON
・「動力NFB」、ON
・「通信NFB」、ON
・「通信DC」、ON
・「通信AC」、ON
・「AC115V電源切換」、INV、母船に「電源切り替えた」の連絡
・「DC28V電源切換」、INV、
(船外で電源ケーブル取り外し)
・「無線機」、ON
・「TV操作部」、ON
・圧力検出器、深度計、主推進首振りサーボアンプ、分圧計、ON確認
・分圧計キャリブレーション、O2、O2、気圧を記録
・「油圧」、ON、時刻を記録、母線の絶縁確認
・「送風機切換」、送風を確認
・ジャイロコンパスの運転確認
・トリムタンクをUPに調整
・前方探査ソーナー「メインパワー」、ON、「パソコン」、ON、"MS100"のメイン画面が表示
・ショット投棄試験:「ショットバラスト」を保持、「投棄量計」をリセット、「ショットバラスト」、10kg投棄
・「マニピュレータ」、ON
・「スーパーハープカメラ」、ON
・「ハッチ閉鎖
・酸素放出開始、時刻を記録
・無線機「感度確認、ジャイロ整合」、「DC28V」、絶縁確認

(この間、母船側も着水揚収装置のチェック)
・パイロットが母船に「各部異常なし、着水用意よし」と連絡。

・収納状態のA/Fを10〜15度上昇させる(P/Fが潜水船の垂直安定ヒレに衝突しないように。「しんかい6500」ではこの操作は不要)
・作業艇に艇長とスイマーを乗船させ、海面に降ろす。船橋に「スイマー、スタンバイできた」と通報。
・操縦権を船橋から後部操舵室に切換え
・整備長「潜水船引き出し用意よし」の報告後、台車のラッシングを開放、潜水船を格納庫から後部上甲板に移動させ、台車をラッシング、A/Fを収容状態に戻す。
(乗船者は艇庫内か後部上甲板で潜水船に乗り込む)
・甲板作業者が潜水船にタラップを掛ける。

(吊揚金具取り付け)
・A/Fからの前部ガイド索の先端フックを潜水船上面の突起金物に接続する。接続後、ガイド索ウィンチのオートテンションを効かせる。
・前部ピンチローラーで吊揚索を挟んで巻き出し、吊揚金物をガイド索に沿って降下させ、潜水船上面の突起金物に勘合(ラッチ)させる。
(後部吊揚金物も同様)
(吊り揚げ準備)
・前後吊揚索の索長を合わせ、ホイストを同期モードに切り替え、ホイストを3トンまで巻き取り
・パイロットより「潜水船着水用意よし」の報告後、潜水船を曳航する主索を潜水船前部に取り付け、潜水船と台車の間のラッシングを開放。
・母船は1〜1.5ノットで船首方位を適切な方向に維持する(主索を外すまでの間)。
・吊揚索を巻き込み、緩みがなくなった時点で停止して、吊揚金物を点検。
・甲板作業者を潜水船から降ろし、タラップを外す。
・台車と潜水船の間のラッシングを外す。
(潜水船吊り揚げ)
・前部吊揚索と後部吊揚索の索長を合わせ、ホイストを同期モードにして巻き込み、ラムテンショナーが一杯に縮み、潜水船が台車を離れる。
・1.5m吊り揚げると、P/F付きショックアブソーバーに潜水船が押し付けられて動揺が抑えられる。
・最上昇位置に達したら、P/F付き固定装置のプランジャーで吊揚金物が固定される。
・吊揚索を少し緩め、プランジャーによる固定を確認。
・ラムテンショナーが一杯に伸びるまで吊揚索を緩める。
(振り出し着水)
・A/Cを一杯まで振り出す。その間、P/Fの振れ止め用ディスクブレーキを適宜効かせたり緩めたりする。
・曳航用の主索を適宜緩める。
・司令「潜水船を着水させる」の号令
・吊揚索をラムテンショナーが一杯に縮むまで巻き込み、吊揚金物が固定装置のプランジャーから離れ最上昇位置に達すると、プランジャーを外す。
・吊揚索を徐々に巻き出し、潜水船がショックアブソーバーから離れると、潜水船が揺れ出す。さらに巻き出して着水させる。着水しても1〜3トンの張力を残す。
・チョフサー「スイマー、潜水船に移れ」の号令
・吊揚索を単独作動とし、まず後部吊揚索を緩め、スイマーが吊揚金物を外す。
・吊揚索を速やかに最上昇位置まで巻き上げる。
・後部ガイド索ウィンチのオートテンションを解除し、ガイド索を手動操作で緩め、スイマーが外す。
 (前部吊揚索も同様)
・潜水船は主索で母船に曳航される状態(1〜1.5ノット)。

(潜水船の船内では)
・絶縁抵抗計測(母線、#2バッテリー、#1バッテリー、AC115V、DC28V)、抵抗値を記録。
・「高度ソーナー」、ON、動作と深度を確認
・トリクタンクをDOWNに調整
・ペイロード電源をON
・「ガンマ線測定装置」、AC/DCコンバータ電源をON、パソコン電源をON、ガンマ線記録アイコンをクリック、Rで記録開始
・スーパーハーブカメラ用ベータカム録画装置の音声レベルゲージを確認
・温度警報装置
・流向流速/CTD/DOの電源をON、表示部確認、データ収集パソコンの動作、緯度を確認
・水中通話機:「電源切換」、ON、"LCL" & "MA"点灯確認、"FUNCTION","22","RCL"
・「前方探査ソーナー」、作動確認、パソコン"RUN"
・水中データ伝送電源をON、送信モードを自動、送信出力と送信を確認

・母船は主索を徐々に繰り出し、約30m離れたらスイマーが主索を外す。主索は母船に取り込まれる。

(潜水船の船内では)
・母船からの「主索外した。スイマー引いた」の連絡を受けて、「推進装置選択SW」、主補に、「コンソールボックス切換SW」、コンソールに。
・水中通話機の感度確認
・母船に「各部異常なし、潜航用意よし」を連絡。
・母船から「潜入せよ」の指令を受けて、「ベント弁全開○時○分」と母船に報告

・スイマーは潜水船周りの状態を確認のうえ、作業艇に移乗し、潜水船の全没まで周囲を警戒。
・作業船は母船に帰投。


■浮上した潜水船を揚収するまで
(揚収準備)
・着水揚収装置の作動チェック
・A/Fを一杯まで振り出し、付近の航行船舶・漁船を見張り続ける。
(作業艇降下)
・甲板長「スイマー、スタンバイできた」の連絡。
・潜水船が300mまで浮上したら、作業艇を海面に降下させ、操縦権を船橋から後部操舵室に切換え
・潜水船の浮上予測位置に対し、母船を潜水船の曳航に適した位置に置く。

(潜水船の船内では)
・「水中投光器」、全灯OFF
・「画像伝送装置」、OFF:「アンプ電源」、OFF、送信モードを"試"に
・水深300mで「水中データ伝送」、OFF
・「ベント弁」、閉鎖確認
・「TVカメラ」、定位置(右一杯、下げ一杯)に
・「ガンマ線測定装置」、パソコン"S"で記録終了、"ESC"でWindowsのメニュー画面、Windowsを終了、AC/DCコンバータ電源をOFF
・「温度警報装置」、OFF
・前方探査ソーナー、"STOP"でソーナー停止、パソコン終了、"main power"をOFF

・潜水船が30〜40mまで浮上したら、主索を作業艇に渡す。
・潜水船が浮上。チョフサー「作業艇、潜水船に向かえ」の号令。

(潜水船の船内では)
・浮上したらバラストタンクをブロー。母船に「浮上した。異常なし。○時○分」と報告、時刻を記録
・「気蓄器」、残圧を記録
・絶縁抵抗測定(母線、#2バッテリー、#1バッテリー、AC115V、DC28V)、抵抗値を記録
・ショットバラストが投棄位置にあることを確認
・「水中通話機」、33-RCLのあと電源OFF
・「高度ソーナー」、OFF
・「音響方位探知器」、OFF
・「流向流速/CTD/DO電源SW」、"緯度"点滅状態を確認してOFF
・「補助タンク注排水」、OFF
・「深度計」、OFF
・トリムタンクをUP一杯に調整

(引き寄せ)
・作業艇が潜水船に到着したらスイマーは主索を潜水船に取り付け、潜水船上に移乗する。

(潜水船の船内では)
・母船から「主索付けた。引き込む」の連絡を待って、「コンソールスティック」を中立
・「コントロールボックス」押しボタンを停止
・「コンソールボックス」切換SWを中立に
・「推進装置選択」SWをOFF

・母船は1〜1.5ノットで船首を最適な方向に維持しつつ、主索を徐々に巻き取りながら、潜水船をA/F直下まで引き寄せる。(母船の船尾端から潜水船船首まで約6m)

(吊り揚げ準備)
・前部ガイド索を手動操作で巻き出し、スイマーがガイド索の先端フックを潜水船突起金物に装着し、ガイド索ウィンチをオートテンションに切り替える(潜水船の上下動に追従するようになる)。 ・ピンチローラーと前部ホイストを作動させ、吊揚金物をガイド索に沿って降下させ、潜水船の突起金物に勘合させる。
・ピンチローラーを開放して吊揚索を巻き込み、張力を1〜3トンに保持する。
 (後部ガイド索・吊揚索も同様)
・前・後部吊揚索の索長を調整し、ホイストを同期操作に切り替え、張力が3トン程度になるまで巻き込む。スイマーは吊揚金物に異常がないか点検後、作業艇に移乗する。
(吊り揚げ)
・ホイストを適宜駆動し、潜水船を水切りし、ショックアブソーバーに当たるまで吊り揚げる。
・最上昇位置に達したら、P/F付き固定装置のプランジャーで吊揚金物を固定。
・吊揚索を少し緩め、プランジャーによる固定を確認。
・ラムテンショナーが一杯に伸びるまで吊揚索を緩める。
(振り込み)
・A/Fを収納位置まで引き込む。その間、P/Fの振れ止め用ディスクブレーキを適宜効かせたり緩めたりする。
(上架)
・潜水船両側に横揺れ防止用の索具を装着。
・ホイストをいったん巻き込んでプランジャーを外してから、ホイストを巻き出して潜水船を台車に降ろす。その間、甲板作業員は左右両側から索具を張り、揺れを防止する。

(潜水船の内部では)
・「台車に降りた」の連絡を受けて、「主推進NFB」、OFF
・「補助推進NFB」、OFF、時刻を記録
・トリムタンクをDOWNに調整
・「主推進首振りサーボアンプ」、OFF
・「DC28V応急電源NFB」、OFF
・「スーパーハーブカメラ」、OFF
・データ収録装置:収集終了、パソコン電源OFF、パソコンケーブル(前方探査ソーナー用パソコン含む)取り外し、データ収集装置をOFF
・「ペイロード」、OFF
・「マニピュレータ」、OFF
・「油圧」、OFF
・「動力NFB」、OFF
・「圧力検出器」、OFF
・「テレビ操作部」、OFF
・「ACCDカメラ」、コントローラOFF

・潜水船を固縛、タラップを掛け、潜水船ハッチを開放。時刻を記録、乗船者は下船。
・作業艇を揚収
・操縦権を船橋に切換え

(吊揚金具外し)
・甲板作業者が潜水船から吊揚索、ガイド索を外す。
・潜水船の清水洗浄ほか格納作業
・A/Fをいったん上昇させて垂直安定ヒレがP/Fに引っかからないようにする(「しんかい6500」ではこの操作は不要)。
・台車と上甲板の間のラッシングを外し、台車を格納庫に移動。
・台車を格納庫内定位置でラッシング。

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