■グレッグ・イーガン

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2004年1月19日更新

●「万物理論」(1995、グレッグ・イーガン、2004創元SF文庫)西村屋選
 2055年の世界。2020年代末に標準統一理論SUFTが完成している。2036年に工学産藻類と日光で炭化水素を採掘の1/10のコストで造れるようになっている。樹木も潅木も耐渇水性、耐火性で少量の発電を行っている。農産物のほとんどがバイオ企業の特許で占められ、死後復活さえ可能となっている。人間の性は男性、女性、転男性、転女性、汎性、強化男性、強化女性、微化男性、微化女性に分化している。
 SUFTに先立つもっと単純な理論、万物理論TOEについて、ヴァイオレット・モサラ27才、ヘンリー・バッゾ83才、ヤスオ・ニシデ
 人工の島<ステートレス>は南太平洋の中央、南緯32度の公海上、無名の平頭海山に固着していた。温室効果難民をどの国よりも大量に受け入れていたにもかかわらず、オーストラリア、日本、中国、韓国などと対立している。青白い6本足のヒトデのような形。百万人が住んでいる。フィジーとサモアでも膨大な特許料などを払って自前の島を育て始めている。2025年、カリフォルニアのバイテク企業《エンジニュイティ》の社員6人が失踪。2032年に播種され、成長して居住可能となるまで10年近くかかる。親石性バクテリアが水と二酸化炭素を吸収して、炭水化物と酸素を作る。このバクテリアはデオキシリボースのような"脱酸素"炭水化物を作り出し、吸収した二酸化炭素よりも多くの酸素を放出するので、差し引き浮力を増加させる。島の下面は絶え間なく侵食されているが、工学的珪藻類がその修復装置となっている。

 主人公アンドルー・ワースは科学ジャーナリスト、恋人ジーナは風力発電研究所で2百メガワット発電《ビッグ・ハロルド》の研究をしている。
《文化第一主義》、《神秘主義復興運動》:ウェラー、《わきまえろ科学!》:ジャネット・ウォルシュという3大カルト、《人間宇宙論者》(Anthrocosmologist、通称AC)、《エデン主義》(地球/ガイアの与えてくれた"自然のままの"ユートピアが存在し、われわれはみなそこへ還るべきと主張)、《分子生物学者に社会的責任を果たさせる会》MBSR、《汎アフリカ文化防衛戦線》PADF、"テクノ解放主義"(テクノリベラシオン)

《シーネット》社(Sceince Education Entertainment Network)、《テクノラリア》(TL)、《プラネット・ニュース》(通称プラネット・ノイズ)、《アトランティカ》(大学生パートが作っているハイカルチャー・ネットジン)、《プロテウス・インフォメーション》、《緑の知恵(グリン・ヴァイスハイト)》(《神秘主義復興運動》)、《デルフォイ・バイオシステム》社

「自分と周囲のあらゆる人に作用しているその生物学的な力を理解している人々は、少なくとも、望むものを最小限の闘争で手に入れるために知的戦略を用いることが可能だから・・・・・過去の政治哲学者のだれかが唱えていた単なる理想主義的神話や願望的思考に足をとられたりせずに」/「情報の行きわたった無政府状態」

●「ワンの絨毯」(1998、グレッグ・イーガン、SFマガジン 1998_1)/(2005、ハヤカワ文庫SF『ディアスポラ』に収録)
グレッグ・イーガンの超難解SF『ディアスポラ』(2005、ハヤカワ文庫SF)の中の『ワンの絨毯』で海洋惑星の巨大浮遊生物が登場する。
 時代は2975年。人類は電脳世界ポリスに身を置き、ソフトウェア的にを生み出すことも可能となっているが、肉体を持つ肉体人も地球上にいる。
 2996年、わずか百光年先にある中性子星の連星トカゲ座G-1に異常が生じ、既存の理論では説明できない速度で連星の間の距離が縮まっていることが発見される。わずか4日後に強烈なガンマ線バーストが発せられ、地球上の肉体人が絶滅すると予測される。
 ポリス人の2人は地球に向かい肉体人にポリスへの移住を勧めるが誰も承知しない。ついにバーストが発生。悲惨な状態の中で十数名の肉体人を移入ナノウェアで分子メモリに読み込む。
 3000年、63隻の恒星間宇宙船が21の星系に向かって出発する。
 3865年、人工ワームホール〈長炉〉の実験に失敗。4082年、〈距離問題〉が解決。
 4000年、千のクローンが作られ、千の目的地に向って宇宙船が旅立つ。
 4309年、ヴェガの海洋惑星オルフェウスの海には<ワンの絨毯>と呼ばれる浮遊生物が存在していた。それは単細胞生物のコロニーではなく1個の超巨大分子、重さ2万5千トンの二次元ポリマー。二十世紀の数学者、ハオ・ワンが考えたワンのタイルだった・・・。

●「祈りの海」(2000、グレッグ・イーガン、ハヤカワ文庫SF、短編集「祈りの海」収録)New
 ヒューゴー賞/ローカス賞受賞。  二万年前に惑星コブナントに移住し、「聖ベアトリス」を信奉する社会を築いた人類の子孫たち。そこで微小生物の研究を始めた敬虔な信者マーティンが知った真実とは? (短編集「祈りの海」カバー紹介より引用)
 異星に持ち込まれた文化が、異星の環境の下で変化し、生活や精神、肉体までも支配している。現在の社会の鏡になっていると同時に、複数の観点も持ち合わせている作品。ここでは、そのお題が海…という事になっています。(by sayalautさん)
 コヴナント星には陸に住む陸人と海上に住む海人がいる。この星の人類のセックスの仕方には驚き!この星に移住した人類の子孫たちは3千年以上をかけてコヴナント星の環境を創成し、新種の生物を作り出した。しかし、なぜだか不死を放棄し、星々に帰るために必要なテクノロジーを廃棄してしまっている。
 残された数少ないテクノロジーとして、海人はブリーダーの手で育てられた生きた船殻でできた家船に住んでいる。船殻の皮膚は分泌液で保護され、青い燐光を発する。環境創成後のコブナント星の海洋にはプランクトンの『ズーアイト』が大量に存在する。


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