■林譲治

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2004年1月19日更新

=>林の頁(林譲治さんのサイト)

●『ウロボロスの波動』(1999-、林譲治、SFマガジン1999年5月号-/ハヤカワSFシリーズJコレクション/2005ハヤカワ文庫JA)
 2100年、質量が火星程度の小型ブラックホール「カーリー」が太陽から数十天文単位の距離に発見。のちにそれは数百年から数千年後に太陽に衝突することが判明。その軌道改変とエネルギー利用のため、2120年に人工降着円盤開発事業団(AADD)が発足し、ブラックホールに人工的な降着円盤を作り、取り出したエネルギーを太陽系内に伝送するという太陽系規模のエネルギープラント<チャンドラ・セカール・ステーション>(CSS)の建設が開始される。
 このような壮大な設定のもとでいくつかのエピソードが語られるが、いずれも「謎の信号の受信」というものと、「人間の理解を超えた知的存在」というものが含まれています。

 ・『ウロボロスの波動
 2123年、太陽から10天文単位以上離れたカーリーを取り巻いて、CSS建設の足場となる直径4050kmの巨大環状構造物<ウロボロス>が建造されている。ウロボロスの側に近接して居住ステーション<アムピスバイナ>(全長1728kmの細長い形状)が周回している。アムピスバイナは各惑星から射出されたコンテナの回収も行う。アムピスバイナの回転はウロボロスの回転に同期している。
 そのウロボロスで、グレアム・チャップマン博士の乗ったトロッコ事故が発生。<ウロボロス>の振動制御のための人工知能のシヴァに問題が発生。死亡した博士はシヴァのシステム中枢に何か手を加えたようなのだ。キャサリン・シンクレアとパートナーの川西達也が事件の解明に取り組む・・・。
 ・『小惑星ラプシヌプルクル
 2144年、エネルギー中継システムのノードが設けられている小惑星2143SFラプシヌプルクルが異常な回転を始める。
 ・『ヒドラ氷穴
 2145年、火星の六甲山/パヴォニス山にある軌道エレベータ<通天閣>。AADDに反対する地球のテロリストが落合哲也AADD総裁の暗殺を目論む。ラミア/山崎涼子。
 ・『エウロパの龍
 2149年、『ウロボロスの波動』の達也の腹心である黒川が再登場。天王星の軌道上にCSSが完成しようとしている。人工降着円盤からのエネルギー転送実験の一環として、木星の衛星エウロパの氷の表面に直径100mの穿孔が作られる。ここからエウロパの海中へと生命探査に向かった潜水艇<ソードフィッシュ>が、「助けてくれ!振り切ることができない。こいつは龍だ!」というメッセージを残して連絡を絶つ。主人公らは太陽系内で唯一残されたエウロパ用の潜水艇<コバンザメ>でエウロパの生命探査と遭難原因を探る。
 潜水艇<コバンザメ>は全長10m、先の尖った紡錘形、AIP(外気独立推進機関):液体酸素を酸化剤とするクローズドサイクルディーゼル。3人乗り。鮫型ロボット<サケ>を搭載。アレイ状半導体レーザー素子によるレーザーレーダーとパラメトリックアレーソナーを補完的に用いて海中映像を得る。マニピュレータ大小。超純鉄の耐圧殻、グローブボックスで顕微鏡観察も可能。母船である汎用輸送宇宙船<ダゴン三世号>の一部となる。
 <ソードフィッシュ>は全長50m、反陽子対消滅を熱源、0度C近くのエウロパの海水を冷源とするスターリングエンジン。この<コバンザメ>と<ソードフィッシュ>のエンジンの原理の違いが伏線になっている。
 ・『エインガナの声
 2163年、太陽から90天文単位。AADDの<シャンタク二世号>は太陽の真反対側に配置された地球圏側の<ディスカバリー号>とVLBIを形成して矮小銀河エインガナの精密電波観測を行っている。エインガナはその一部が我々の銀河系と接触しているにもかかわらず異様に暗く、ブラックホールだけで出来上がっている銀河としか説明できない。その銀河からあるフォーマットの重力波信号が・・・。
 プロジェクトリーダーのアトウッド博士は次の『キャリバンの翼』のアグネスの弟子。
 ・『キャリバンの翼
 2146年、つまり『ヒドラの氷穴』事件の翌年。テロリスト紫怨/ラミアが天才少女アグネス博士17歳の護衛として登場。アグネスの指導教官は『ウロボロスの波動』のキャサリン。カーリーは天王道に乗っている。天王星の衛星チタニアはその建設基地となっている。アグネスの指揮でカーリーにナノマシン投入実験が行われ、時空の狭間に不思議な秩序が存在することを発見。また、銀河系が重力波通信で満ちていることが確認される・・・。再実験を却下されたアグネスは・・・。
 その五年後の2151年、『ヒドラの氷穴』紫蘭の娘アグリが登場。チタニアの軌道上で人類初の恒星間無人探査機<リチャード三世>(反物質の対消滅を利用)が建造されていた。
 その13年後の2164年、つまり<シャンタク二世号>事件の2年後、15機の無人探査機が太陽系から送り出されていた。それらによって銀河系が重力波通信で満ちていることが確認される・・・。
 2171年、人類初の有人恒星間宇宙船<キャリバン>(全長3500m)にアグリが篭城する・・・・。
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●『ストリンガーの沈黙』(2005、林譲治、ハヤカワSFシリーズJコレクション)
 待望の連作集「ウロボロスの波動」の続編。連作集に収録されているいくつかの短編が伏線となっているので、前作必読である。太陽衝突軌道にある小型ブラックホールの軌道を改変し、人工的に降着円盤を作ってエネルギーを取り出し、太陽系内に伝送するADDが・カーリーアグネス・マフィアの一人、アグリが恒星間有人宇宙船キャリバンをハイジャックして太陽系を離れてから4年半。なぜか予定軌道から著しく逸脱した恒星間無人探査機プロスペローの観測データを受信し、地球に転送する。そのデータとは
元テロリストの紫怨/ラミア、アグネス、その弟子のアグリ、シャンタク二世号のプロジェクトリーダーのアトウッド博士、ガーディアンの実力者、神田紫蘭も再登場。
  光速に近い速度で太陽系に接近する何モノか、それはコズミックストリングを利用していることから「ストリンガー」と呼ばれる。地球国連軍がついにAADDを攻撃。
・アグネス(反陽子生成システムを考案した天才少女)
・アグリ:アグネスの弟子、紫蘭の娘で恒星間有人宇宙船キャリバンを乗っ取りインディアン座イプシロン星を目指す。
・アトウッド博士:シャンタク二世号の観測プロジェクトリーダー
・グレアム・チャップマン、アグネスの妹リタの三女アイリーン、ウスール、紫帆、団長安藤俊郎(50越え。地球側コンタクトチームの団長。地球の国連を代表)、神田紫蘭(師匠、ガーディアンの実力者、アグリの母)
 恒星間無人探査機プロスペロー、タイタス・アンロドニカス(全長200m超え)、内航船セイレム、哲人シリーズ(実存的AI):AADのラオ・ツェ、シャンタク二世号のチェアン・シェ(荘子)
 反物質タンカー・サプライ号→戦闘用宇宙船/機動船搭載護衛艦カムイ(全長約200m)、サクマ、マクナマラ『正義の権利作戦』、火星に24隻、AADに12隻、シャンタク二世号にカムイを差し向ける。

●「進化の設計者」(林譲治、ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)

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