■恐るべし、小松左京!

 「日本沈没」、「復活の日」、「さよならジュビター」は子供の頃、映画で見た。それで小松左京を知ったつもりでいた。この年になってから小説を読み、その凄さに圧倒された。恐るべし、小松左京!

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2006年3月2日更新

●「日本沈没」**(1973、小松左京、カッパ・ノベルズ(上下巻)、映画、TV)西村屋選
 星雲賞受賞。リニアモーターカー超特急、超音速ジェット機SSTの時代。
 ガソリンを浮力材とするバチスカーフ型深海潜水艇<わだつみ号>(母船:気象庁観測船「第三大東丸」1800トン)、仏深海潜水艇<ケルマディック>が登場。<わだつみ号>が小笠原海溝の水深7000〜8000mの間に、3ノットの底層流、密度飛躍層による内部定常波、多量の重元素イオンを含む深部散乱層(DSL)、乱泥流(タービダイト)の発生を目撃する。次世代バチスカーフとしてリチウム!を浮力材とするもの(フランス・ベルギー共同開発のリチウム・マリン)を想定していたのがおもしろい。
 田所博士の以下の言葉が感動的。
「(略)わしらには地球がある。大洋と大気の中からもろもろの生物を何十億年にわたって産み出し、ついには人類を産み出し、自分の産み出しはぐくんだそいつらに、地表をめちゃくちゃにされながら、なおそれ自体の運命、それ自体の歴史をきざんでいく。この大きな−しかし宇宙の中の砂粒より小さな−星がある。大陸をつくり、山をつくり、海をたたえ、大気をまとい・・・氷をいだき、それ自体の中に、まだまだ人間の知らない秘密をたたえた、この地球がある。
(中略)
−このあったかい、しめった、凸凹の星を・・・あんなに冷たい真空の、放射線と虚無の暗黒に満ちた宇宙から、しめっぽい大気でやさしくその肌をまもり、その肌のぬくみで、こういった大地や、緑の木々や、虫けらを長い間育ててきた、この何か知らんやさしげな星を・・・太陽系の中で、ただ一つ、子供をはらむことのできたこの星を・・・地球はむごたらしいところがあるかもしれん。だが、そいつにさからうことは、あまり意味がない。(略)」

=>(行方不明)公式サイト
=>書評(LepiさんのOwl共和国SFつれづれ帳より)

●「日本沈没」**(2006、樋口真_監督、東宝映画)
 

●「日本沈没」**(2006-07、一色登希彦、週間ビッグコミックスピリッツ連載中、BIG SPIRITS COMICS1〜5巻)
1.地下の竜巻
セミが鳴く11月:海底開発(株)深海潜水艇パイロット小野寺俊夫(デラさん)と結城慎司は新宿の居酒屋「雑種天国」(クロス ブリード パーク)で東京消防庁ハイパーレスキュー阿部玲子、田所雄介博士に出会い、そこで雑居ビルの沈没という異変に遭遇する。
12月:伊豆地方にM6.5の地震、天城山が噴火。廣田五月 官房長官、緒方茂弘 総理、邦枝康雄 総理秘書官、幸長伸彦 M大助教授、山城T大名誉教授、渡老人
「わだつみ9000」の整備中の絵

2.日本海溝
 A新聞の辰野竜一、母船ヌーデブランク、わだつみ9000はしんかい6500の最新高性能型。全長9.5m、全幅2.7m、空中重量26.7トン、H社製感応フィードバック型次世代タイプ極環境マニピュレータ
 深海底行動支援システム”レモラ”(REMOvable Research Assist、コバンザメ)を実験的に搭載。多数のTVカメラと車輪付きREMORA 1(タガメ号)、レフ板付き照明(あるいはLED照明パネル?)で遠隔照明を担当するREMORA 2/Rと2/L(ゲンゴロウ号)の3台から構成され、360度の視野をもたらす。
1万mまで3時間弱。なぜか9580mからさらに数十m潜航。マネキンの首。日本海溝の底は大量の重金属イオンによる密度躍層にしてDSL(深部散乱層)、1万500m以上

3.D計画
 1月1日:伊豆大島の三原山が大噴火。相模湾を襲った津波で死者・行方不明者21万3000人。「相模湾地震大津波」。
 中田一成(心理学/情報科学)。中・長期災害対策委員会A室(気象・地学)、B室(経済対策)、C室(立法準備)、D室/D計画

4.古都消失
 1月11日:京都大地震M8

5.推論、帰結ス。
 一万m級深海潜水艇”ケルマディック”:弱電流で作動する振動素子で推進。居住区を回転可動式にすることによって、潜航速度毎分300m。1万mまで40分足らず。全長9.7m、全幅2.7m、空中重量12.9トン、深海底行動支援システム”レモラ2”及び”レモラ3”を搭載。母船はホバークラフトLCAC改から工作艦「よしの」

 「よしの」:”地球シミュレータシステムII”(TSSII、地球シミュレータより実効性能で千数百%上回る。ピーク性能 500テラフロップス以上、記憶容量200テラバイト、ノード間転送速度205ギガバイト以上)を搭載。マントル錘(コーン)モデル。日本列島を載せた錘が回転しながら相転移で痩せた分だけ沈む。
 ”わだつみ9000”:海底開発株式会社所属。母船ヌーデブランク号(うみうし)
 元旦:相模湾地震津波(死者20数万人)、1月11日:京都大地震(概算死者50万人)
 1日に50基のロボットセンサーを設置。1日に4〜5回の潜航、ショットバラスト、バイザー、342日目で沈没

6.記憶喪失の国、記憶喪失の首都(2007.5.2)
 今回は京都大震災のあと、いよいよ第2次関東大震災が描かれる。
 まず、
日本人は過去の災害をどうしてほどよく忘れてしまうのか?
関東大震災で14万2千人が死んだ場所に、どうしてこんな大都市を作り上げるのか?
どうして今度は想定死者1万1千人で済むなどと言えるのか?(政府の中央防災会議の予測数)
という問い掛けから始まる。

 乗車率数百%の列車(3千人以上が乗車)が1千本単位で走り回り、数百万台の自動車が走り回り、200トンもの重量の飛行機が分刻みで離発着し、揺れが増幅する高層ビルの建ち並ぶ首都圏で何が起こりうるかを問う。
 途中はちょっと書けない。
 終盤、過去の悲劇を忘れまいとしてきた人々による救援活動が描かれている。内容は、
・現地に乗り込んで活動する「前線組」に加えて、後方に留まって情報・人・物資の発信地・中継地となる「後方支援組」という参加方法がある。
・携帯・無線LANの無料開放によるインターネットを活用し、かつ、SNSなど半開放型システムと連携して支援する個人間の案内を可能としている。
・支援ウェブサイトが微に入り細に入り階層化されたマニュアルによって、賛同者がほとんどのケースに対応できる「安心」が得られるようになっている。

=>一色登志彦公式サイト

●「日本列島は沈没するか?」**(2006、西村 一、藤崎慎吾、松浦晋也、早川書房)
 

●「極冠作戦」(1973、小松左京、徳間文庫「本邦東西朝縁起覚書」に収録)
 月は人口30万人で自給自足している時代。地球では大気中二酸化炭素の増加等によって平均気温が7度近く上昇、平均湿度は20%も上昇。「地球の金星化現象(ヴィナサイゼーション)」によって150〜200mもの海面上昇に見舞われる。21世紀半ばに140億人を超えた地球人口は七十数億人に。トウキョウ、オオサカ、ニューヨークなど世界に28ある海上都市。トウキョウ市は人口120万人、6千万トン、核融合型原子炉で約15ノットで航行可能。十勝に新日本市が建設中。地球の高温多湿化は環境の変化だけでなく人類の知的活動の低下をももたらしていた。
 極冠計画とは、使用停止されているのべ数万キロの原油輸送管を中緯度から南北両極まで巡らし、中緯度帯の空気を大量に吸い込んで炭酸ガスを分離し、高圧縮のうえ極地で放出してドライアイス化させる。洪積平野を快復して陸上植物の自然繁殖可能面積を増大させることによってさらに大気組成を変化させる。

●「復活の日」**(1974、小松左京、ハヤカワ文庫SF)
 196X年、−10度Cで増殖を開始、−3度Cで増殖率が100倍に、5度Cになると猛烈な毒性を持ち始めるという<MM-88>ウイルスが密かに持ち出され、それを積んだ小型機が嵐で墜落する。やがて猛烈な感染力のインフルエンザ「チベットかぜ」、神経性の心臓麻痺「ポックリ病」が人々を襲い、「ニューカッスル病」が鶏を襲う・・・。
 南極に生き残った1万人の人類に残された原潜として<ネーレイド号>(6000トン、二重反転プロペラ)と<T-232>が登場する。ウイルスという不思議な存在と、地球上での生物進化の過程が非常に詳しく書かれていて、小松左京の凄さに驚かされる。
 実話として、原子力船「むつ」は当初原子力砕氷観測船として計画されていたが、1967年に特殊貨物船に仕様変更されている。本書ではなんと当初計画のまま原子力砕氷船「知床」として南極観測に就役している設定でビックリ。5トンコンテナを運べるサムソンヘリ3機、ブリストル型大型ヘリ2機を搭載、巡航速力28ノット、砕氷能力8m以上(蒸気砲と動力砕氷器を併用)。

●「人魚姫の昇天」(1980、小松左京、角川文庫「明日の明日の夢の果て」に収録)
 水中40mの海底居住区に住む”水中人種”の第三世代の娘マヤ。”改造イルカ”の水中レスキュー部隊が宇宙船の墜落を告げる。宇宙船パイロットを助けた娘は恋に陥り、自分の体を宇宙に適応させるよう女医に頼み込む・・・。

●「さよならジュピター」**(1982、小松左京、ケイブンシャ文庫/徳間文庫)
 火星で極冠融解作戦「オペレーション・デルタ」が実施され、D6氷床の下からなんとナスカ絵が現れた! 小惑星セレスでの発見に次ぐ大発見だ。
 木星のミネルヴァ基地では、外惑星域での人間活動を支えるため、JS計画(木星太陽化計画)が進められている。木星大気内に長さ140 kmもの未確認物体、木星幽霊(ジュピター・ゴースト=JUDO:Jovian Unidentified Drifting Object)がたびたび観測され、木星大気圏深部探査艇<JADE-III>(Jovian Atmosphere Depth Explorar)が母船<ミューズ12>とともに探査に向かう。
 一方、12、3年前から冥王星軌道外からやってくる彗星の数が急減。その原因を解明するため、核融合推進ロケット「ダイダロス改III型」を積んだ超遠距離高速宇宙船<スペース・アロー号>が彗星源に向かうが・・・。


=>小松左京ホームページ

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