■ヴェルヌの地底旅行・シムスの地球空洞説

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2007年6月25日更新


●『地軸変更計画』(原題"Sans dessus dessous"(上もなく下もなく)、1889、)
 赤道上のある一点で巨大な大砲を南方に発射して、地軸傾斜角をゼロにする。これによって、現在の北極地方に眠るという石炭資源を開発し、また地球上から季節変化をなくしてしまおうとする。
 地軸変更によって回転楕円体が変化して海水準分布が変わり、地球規模の大惨事が迫る・・・。
 「月世界旅行」(砲弾による月周回計画)の続編にあたる。

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(シムスの地球空洞説)
●「シムゾニア」(1820, ジョン・クリーヴス・シムス(米)、アダム・シーボーンとして執筆)
 作者は、地球の内部に無数の地球が同心円状に連なっていて、北極と南極を貫く穴を通って地球内部と行き来できるという「地球空洞説」の提唱者という。「シムゾニア」は地球内部に純白の肌の人々が住む理想郷を描いたものらしい。(キム・スタンリー・ロビンスン「南極大陸」の解説、巽 孝之)

●『ナンタケット島出身のアーサー・ゴードン・ピムの物語』(1838、エドガー・アラン・ポオ(ポー)、『ポオ全集』1/『ポオ小説全集』2)New
 アーサー・ゴードン・ピム氏がポオ氏に語った南海の冒険の物語。海の冒険に憧れるピム少年は、1827年のある日、友人ピーターズに誘われて捕鯨船に密航する。米東海岸のナンタケット島を出発した二人は、船内での暴動と強風による難破に遭遇し、漂流の身となる。
 危ういところをスクーナー船に助け出され、船は南米沖から喜望峰を巡って南極圏へ。氷原の果ては水温が高く、海流は南へ向かう。訪れた島でスクーナー船は野蛮人に襲われ、辛くも逃れた二人が見たものは、野蛮人と同じ叫び声をあげる不思議な鳥だった‥‥。
 1837〜1838年発表の、ポオ唯一の長編。今日で言うSF度は低いものの、純粋な海洋冒険記として始まり、やがて未知の世界へと辿り着く物語は未完であるが、だからこそ読者の想像力を刺激し、のちのSF作家にその世界観が受け継がれた。「ポオの小説は始まりが退屈で難解だから嫌い」という人にも安心してお勧めできる娯楽小説。
 その続編としてジュール・ヴェルヌの『氷のスフィンクス』(1897)、H・P・ラヴクラフトの『狂気の山脈にて』、ルーディ・ラッカーの『空洞地球』が書かれている。
=>エドガー・アラン・ポオ(a href="http://member.nifty.ne.jp/wooddoor/index.htm">木戸英判のホームページより)

●「氷のスフィンクス』(1897、ベルヌ、 集英社文庫 1994)
 エドガー・アラン・ポーの「ナンタケット島出身のアーサー・ゴードン・ピムの物語」の続編(地球空洞説?)。南極で消息を断ったアーサー・ゴードン・ピムの捜索隊は、途中の氷原で磁鉄鉱で出来たスフィンクスを発見するが・・・。

●「危機のペルシダー」(1915、エドガー・ライス・バローズ)/「地底世界ペルシダー」(1922)/「戦乱のペルシダー」(1929)/「地底世界のターザン」(1930)/「栄光のペルシダー」(1937)/「恐怖のペルシダー」(1944)/「ペルシダーに還る」(1963)
 地球空洞説に基づく。地上から<鉄モグラ>(全長30メートル、回転ドリル付き)で地中を800km掘り進むと、地球中心に発光核が輝き、陸地と海洋が凹面に広がる地底世界ペルシダーに到達。そこには石器時代の人類と恐竜が住んでいた。
 「戦乱のペルシダー」ではコルサール人の首領エル・シドの娘で金髪美女のステララと、イネス皇帝の第一副官ガークの息子タナーとのロマンスが中心。
 「ペルシダーに還る」ではウース王の娘で金髪美女のオー・アアと、イネス皇帝の伝令である疾風のホドンのロマンスが中心。美女ダイアンが飛行船で行方不明になる・・・。ヒューゴ賞を受賞。
=>エドガー・ライス・バローズのSF冒険世界(長田秀樹さんのサイト)>地底世界シリーズ(PELLUCIDAR series)作品データ(1914〜1942)
=>At the Earth's CorePellucidar(英原文)
=>ペルシダーに還れ(オリジナル小説、全長30mの地殻掘削機<鉄モグラ>登場)

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●『地底王国』(1976, 英映画、エドガー・ライス・バロウズ原作)
 地底探検ロケット<鉄もぐら>が地中の世界を発見。そこは翼竜が人間を支配していた・・・。
=>generalworks

●『ムーン・プール』*(1921、A・メリット、ハヤカワ・SFシリーズ)New
 石油掘削船のやぐらの下の開口部に「ムーン・プール」というロマンチックな呼び名が付けられている。本作品はそれとはまったく関係ない。
 ミクロネシアのカロリン諸島ポナペ島の東海岸に集まっている島嶼遺跡群ナン・マタル。その中にあって四方を玄武岩の防壁に囲まれた島にナン・タウアッチ遺跡がある。その宮庭の中庭には満月の夜だけ開く扉「月の岩」があり、その奥の部屋には「月のプール」がある。
 遺跡探検にきたスロックマーチン博士は、妻エディス、乳母トゥラ、同僚スタントン博士を”月のプールの棲息者”に連れ去られ、その後、スロックマーシン博士自身も連れ去られる。友人である植物学者グッドウィンは、ノルウェー人で妻と嬰児を奪われたオラフ船長、アイルランド生まれでアメリカ育ちのラリイ・オキーフらとともにナン・タウアッチの謎に挑む。
 月のプールの向こう、太平洋の下には巨大な地下世界<ムリア>が広がっていた。それは月が地球から飛び出した跡との説も。そこは影のない光に満ち、果てしない断崖に囲まれ、湖水、尖塔、壮麗な庭園、さまざまなパヴィリオン、大路、陸橋があり、オウムガイのような形の車「コリアル」が行き交う。”輝くもの”(月のプールの棲息者)の世界と”沈黙するものたち”(三つのものたち)の世界に分かれている。
 ”輝くもの”の下には、”輝くもの”の女神官(アフィヨ・マイエ)であるヨララ(邪悪な心を持った絶世の美女)と”輝くもの”の声であるラドゥル(赤い侏儒(こびと)、ヨララの情人)、九人の議事会を頂点として大昔の支配者の子孫、金髪族がいる。その次に緑色の侏儒ルグゥルほかの兵士が、最下層に普通の人間、マイア・ラダラ族がいる。金髪族も兵士もマイア・ラダラ族もサモア語系のポリネシア語を話す。
 一方、”沈黙するものたち”の世界には、側使い女ラクラ(黄金の瞳を持った清純な少女)、蛙人間アッカがいる。

●「空洞地球」*(1990、ルーディ・ラッカー、ハヤカワ文庫SF)
 南北両極と鏡像地球(「球地」)がワームホールで結ばれているという新たな発想のもと、エドガー・アラン・ポウの非科学的アイデアをハードSF的にしてしまった作品。過去において論じられていた空洞地球説と南北両極の穴の根拠がおもしろい(回転する惑星の中身は遠心力で外に押し出されて中空になる。小麦の茎も鳥の羽根も土星の輪も中空。大いなる資源の節約。どんな動物も両方の端に穴がある)。


(ヴェルヌの地底旅行)
●『地底旅行』(原題"Voyage au centre de la Terre"、1865, ジュール・ヴェルヌ)
 鉱物学の世界的権威のリデンブロック教授は謎の古文書を見付け、甥のアクセルがその暗号を偶然に解いてしまう。それはアイスランドの死火山スネッフェルスから地球の中心に到達したことが書かれていた。アクセルらは苦労の末、深さ136kmで巨大な空洞と海を発見・・・。
 地球の中心には熱源があり、地底に向かうほど温度が高くなるという説に対し、地表面の金属が大気や水と反応して高温化したもので、地底は熱くないという説が登場。

●『地球中心への旅』(1909、仏映画、監督セルジオ・デ・コモン、わずか59分)
 パット・ブーン主演。英地質学調査隊が噴火口から地底探検に出発する・・・。

●『地底探検』(1959、ヴェルヌ、米FOX映画、監督ヘンリー・レヴィン)
 パット・ブーン主演。英地質学調査隊が噴火口から地底探検に出発する・・・。恐竜はトカゲにメーキャップしたもの。
=>generalworks

●「地底帝国の謎」(1988:映画)
 ジュール・ヴェルヌ原作。ハワイ・オアフ島の死火山にある謎の洞穴を見学していた男女が、地震のため地球の中心に落下、アトランティスの地下都市に迷い込む・・・。
=>generalworks

●「地底探検/アース・エクスプローラーズ」(1999、ジュール・ヴェルヌ原作、米映画)
 地底世界では人類のほか、恐竜が人型に進化していた・・・。
=>感想
=>公式サイト

●「新・地底旅行」(2003、奥泉 光、朝日新聞連載、2004年に単行本、2007年に朝日文庫)
 ジュール・ヴェルヌの『地底旅行』(1864)の続編的作品。
 16世紀の錬金術師アルネ・サクヌッセンムが残した暗号文書をもとに、ドイツ人科学者リデンブロック教授らがアイスランドの死火山から地底に潜り、地底海があって古代生物が生息する巨大な空洞に到達。その後イタリアの火山から地上に奇跡的に帰還する。

 それから約50年後の1909年(明治42年)の日本が舞台。
 帰還したリ教授は、全欧州的名声を獲得したものの、いろんな人が調べても地下世界の入口が見つからず、なんと、リ教授はペテン師呼わばりされたすえ、失意のうちに鬼籍に入ったという設定。

 日本を代表する理学者である稲峰博士は、留学中にリ教授の知己を得て地球空洞説の信奉者となるが、ちょうど一年前の夏、美貌の都美子嬢ととともに冨士山麓、青木ケ原の樹海にある洞穴探検に出かけたまま失踪する。
 博士らは、戦国の頃の修験者、角行が書いた『冨士人穴胎内記』という古文書を見つけ出し、それとリデンブロック教授の甥が書いた手記(『地底旅行』そのもの)にいくつもの類似点があることを発見。地球中心への旅に出かけたというのだ。

 そこで主人公たち、挿絵画家の野々村、まったく信用ならない友人の丙三郎、稲峰博士の一番弟子で都美子嬢を慕う鶏月、稲峰家の女中サトの4人が、博士の残した研究ノートをもとに、博士らの救出に向かう。丙三郎の魂胆は、やはり青木ヶ原の洞穴に隠されているという武田信玄の埋蔵金にあったのだが・・・・。

 以上がいきさつで、ここから先はネタばれになるので書きにくいのですが、「地底旅行」に忠実でありつつ、多くの新機軸が盛り込まれています。
 まず、巨大空洞(高天原)までは、自然にできたとは思えない二重螺旋状のトンネルを下って到達します。その途中には光るコケやサンショウウオやネコという謎の生き物に出会います。
 到着した巨大空洞は、おおむね「地底旅行」の世界にあわせてありますが、なぜか植物と肉食獣しかいません。あとのほうで巨大空洞の構造についての説明がでてきて、これなら地震波トモグラフィーで見つからなくても不思議じゃない説明となっています。

 なぜリデンブロック教授が徒歩でアイスランドから潜ってイタリアの火山から出てくることができたのか、なぜ富士山の下に同じようなものが存在するかもちゃんと説明できる理屈になっているのですが、実はこの新・地底旅行は、さらに地球奥深く、溶鉄の海「外核」にまで至ることになります。
 これをいったいどんな存在が何のために作ったのか・・・・・・。夏目漱石風のレトロな雰囲気とは裏腹に、創造の翼を存分に羽ばたかせた、実にあっぱれなSFです。

 新聞連載当時にあった挿絵は、この文庫版には入っていませんが、ネット上で全作品を見ることができます。http://www.mejirushi.com/chitei/html/chitei.html

(登場人物)
野々村鷺舟:挿絵画家
富永丙三郎/富永綺峰:日本怪奇学会理事
水島鶏月:東京帝大教授
稲峰博士:
稲峰都美子
下村修吉
君島サト:17歳、女中
玉沢亘:陸軍大尉、雑貨屋兼魚屋の息子
龍の口→人穴→蝙蝠の巣→六道の辻(ヒカリゴケの鬼)→賽の河原(湧き水の天然池)→奈落の滝(奈落の底にはヒカリゴケ、温泉、アルネ・サクヌッセンムのルーン文字、間欠泉、二重螺旋のトンネル)→高天原(アイスランド湾大銀杏の森→龍の森→、羊歯、鶏冠のある花魁蜥蜴海獣との戦い首長竜巨大蓮)→龍神の栖(→有尾人/恐竜人猫オルガン
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(その他の地底モノ)
●『海底軍艦(1963、円谷映画、地底人と対決する)=スーパーサブマリン

●『サイボーグ009』*(1967、石森章太郎、2001にTVアニメ化):<ドルフィン号>で地底世界に行く=スーパー・サブマリン

●「地底ドドンパ男<ラブ・ペア・シリーズ番外編(1)>」**(1986、岬 兄悟、ハヤカワ文庫JA)
 「カス人間1号」、「地底ドドンパ男」、「迷子の子猫ちゃん」の3編が収められている。平凡な独身サラリーマン関ひさし、並行世界から現れるオカルト美少女麻美、変態上司の杉山良太郎の3人によるドタバタ・コメディー。
 「地底ドドンパ男」:30年前、杉山の祖父虎衛門は富士山の地下の超古代文明を探すため青木ヶ原樹海で行方不明。モグラ妖怪ゼリー・ゴンドムが現れ、3人を地底ドドンパ帝国に案内する。3人は暗闇でも見えるゴンタック600を飲んで異次元地下巨大ミミズが作った次元の虫食い穴を通っていく。ドドンパ帝国は直径2km、高さ1kmの大空洞で光り苔が明かりとなっている。その途中、蔦ミミズ、巨大松茸、頭がマグロの半魚人、イモ虫の大群、素麺そっくりの糸ミミズの大群、吸血コウモリ、巨大人面グモなどが現れる。
 「カス人間1号」:地底モノに収録されているのでモホール計画のCUSS-1号を意識したものかと驚きましたが、どうやら八千草薫も出演する映画「ガス人間第1号」のもじりですね。

●「ドラゴンスレイヤーズすぺしゃる(24) 地底王国の脅威」(2005.4.25、神坂 一、富士見ファンタジア文庫)
女魔道士リナ=インバースを主人公とする長寿人気シリーズ
=>http://www.mars.dti.ne.jp/~lapis/slayers/slayers.html に、ついに海洋モノと地底モノが登場。
 ・「魔の海のほとりにて」(前・後編)と「今、そこにいる女房」が海洋モンスター もの。
 ある海辺の町で、リナはおんぼろ商船の船長ビルゴ=フォトフから沈んだお宝の引き揚げを持ち掛けられる。魔海で沈んだ船は潮流の関係でこの町の沖合いに流れ着くというのだ。魔海のそば、船から水気術で潜ったリナたちはついに沈船を見つける。そこには160年ほど前に滅びた王国のマヘル金貨があった。ところが黒く巨大な何かが・・・。
 サイズは大海蛇(シーサーペント)クラス、巨大な黒蛇のようにうねるそれの先端には、ひとかかえもある人間の顔がいくつも張り付いている・・・というしろもの。
 「今、そこにいる女房」は後日談で、船長の昔別れた女房がシャチ使い。金貨の引き揚げで金儲けしたと誤解した元妻が大海蛇を操って襲ってくるという・・・。

 ・「地底王国の脅威」(前・後編)がドワーフもの。
 モンスター専用装備品専門店「頭蓋砕き(スカルマッシャー)」で働くこととなったリナたち。この店のオーナーは地底種族で超一級の鍛冶師・工芸師であるドワーフだった。そこに地底から巨大モグラ、大土竜ゲンエンゴンブが暗黒騎士を乗せて現れる。撃退したものの、再び今度は地底から人間を丸飲みできるほどの太さの大ミミズが。
 決着を付けるために地底世界に向かったリナたちは、普通サイズの無数のミミズの雪崩に呑み込まれ・・・、という身の毛もよだつシチュエーション。

●「ノーチラス」(2000, ビデオ、なんと地球中心核までの掘削に挑む!)=ノーチラス号とネモ船長

●「ガイア−母なる地球−」(1990、EARTH, ハヤカワ文庫)


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