■小川一水さんのページ

 

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2004年11月23日更新

●「群青神殿」(2002、小川一水、コバルト文庫)西村屋特選!
 八丈島東方120kmの海上で自動車専用運搬船が消息を絶つ。その4日前には、三陸沖で木材チップバルカーが沈没。
 神鳳鉱産探鉱部所有の中深海長距試錘艇<デビルソード>は、<えるどらど>(3200総トン)を支援母船とするメタンハイドレート試錘用潜水艇(全長11m、空中重量30トン、運用深度1600m、PEFC電池で連続潜航時間250時間)。パイロットの鯛島俊機と探索員の見河原こなみが乗り組む。その<デビルソード>に海上保安庁から潜航調査の協力依頼が舞い込む。沈没船には不可解な破壊孔が・・・。
 内径2m、長さ5.5mの耐圧殻に2人が10日間居住しようとすると当然生ずる心理的問題を、JAMSTECでは不可能なプライベートな方法で解決している。そのほか、海洋科学技術の最新情報とそれを越える卓越したアイデアが投入された見事な作品。
 鉄分を摂取する化学合成生物シーリボン、ニューク、水深7000m以上の海溝底近くを漂う全長1キロにも及ぶ氷板「超深海移動平面」(SDMF:Super Deepsea Moving Plane)、「氷IV」というのが登場する。
=>Phase Diagram of Water/Iceを参照。

●「第六大陸」(2003、小川一水、ハヤカワ文庫)
 南沙諸島のラヤンラヤン島から5km沖合、水深2000mの深海都市「ドラゴンパレス」が登場。直径30mの7つのドームからなる。2021年に5カ国合弁開発公社のもとで建設開始、2025年完成。3隻の深海交通艇<リヴァイアサン>、<クラーケン>、<シーサーペント>は乗客40名、全長21mの円筒型耐圧殻。ロケットエンジンの水素タービン技術を応用した加圧ターボポンプで排水。2基のラダープロペラで推進。
  西暦2025年。この海底都市プロジェクトのはか、サハラ砂漠の緑化、南極、ヒマラヤなどを手掛けてきた御鳥羽総合建設は、巨大レジャー企業より月面結婚式場の建設を受注する・・・。

●「老ヴォールの惑星」(2003、小川一水、SFマガジン2003.8)/短編集「老ヴォールの惑星」(ハヤカワ文庫 JA)
 恒星サラフォルンを70時間周期の楕円軌道で周回するホット・ジュピター、巨大ガス惑星サラーハ。その大気は時速1000kmを越える電離水素の季節風が吹き、核の氷が溶融圧縮された超臨界水の海が存在する。その大気と海の境界に珪素の殻と金属繊維の神経を持つ生物が誕生する。数億年の進化によって彼らは2本の鰭足を海に突き立て、風を呑むことでエネルギーを蓄え、あるいはプラズマジェットを放出して泳ぐ。
 やがて、老ヴォールのように無数の汎眼と水晶体を使って宇宙に自分たちの惑星と同様の天体が存在することを知る者も現れる。ある時、直径15kmの彗星核がサラーハに落下し、3万体の命が失われる。それを契機に天体観測が活発化し、やがては自分たちの知識を他の惑星に伝える方法を考える者が現れる。折しもサラーハの直径の約十分の一の天体が5万5千日後にサラーハに衝突することが明らかになる。彼らは・・・。

 「ギャルナフカの迷宮」:
 極めて複雑な迷路に投獄された囚人たち。手掛かりは一人一人に渡されたそれぞれ異なる地図。一人の地図には一人がぎりぎり生きていくだけの餌場と水飲み場しか描かれていない。生肉食いたちが徘徊するその迷宮で主人公は・・・。

 「幸せになる箱庭」:
 木星の大赤斑で異星被造物が発見される。採取機械たちが集めた集めた木星気体を外宇宙のある方向に光速を超えて射出するカタパルトである。木星の質量が削り取られて他の惑星の軌道が乱されることを防ぐため、このカタパルトで有人交渉船が送り出されるが・・・。

 「漂った男」:
 陸地のまったくない海洋惑星に不時着した男。体温に近い水温と栄養の豊富な海水のお陰で、生存にはまったく問題なし。しかし、GPS衛星もまだ配備されておらず、高次元通信ゆえに逆探知による位置出しも不可能のため、広大な海に漂う男を発見することはまず不可能。高次元通信によるコミュニケーションだけを頼りにただ一人孤独に漂流する男・・・。

●「復活の地」(ハヤカワ文庫JA)西村屋特選!
 太陽アマルテを周回する惑星レンカが舞台。3年前、レンカ帝国がジャルーダ王国(旧王都アルチャナ)を併合し、惑星統一を成し遂げた。ヤモ半島にある帝都トレンカを、市民500万人の約10%が死亡するという未曾有の大地震が襲う。
 帝国の仮想敵国であるダイノン連邦権統国(首都ハリオン)とサランガナン専領国は、これを機にレンカ帝国に一矢報いようとする。
 この立ち直ってもいない首都トレンカを再び大地震が襲うこととなり、政治家や軍に失脚させられた主人公たちがそれ備えるためにいろんな手を打つ・・・。

 この作品を書くため、作者は関東大震災、阪神大震災などのたくさんの資料を調べており、情報が来ないということ、行政機能の喪失、指揮命令系統の混乱、その他さまざまな事態のなかで、いかに機能する救難組織を再構築し、首都を再建していくか、これを支配者である皇族の唯一の生き残りの若い女性をヒロインに、また若くして重い責任を負わされた行政官を主人公に描いている。必読の作品である!

 ただ教訓めいた作品とは違って、この作品はエンターテインメントとしても十分楽しめる作品。なんせ地震の原因というのが旧地球文明の遺した・・・・・・であり、また、皇帝の唯一の継承者となった18歳の皇女と、復興省総裁という重責を担った28歳の内務省高官という反発しあう2人の関係がまたいい。

 (レンカ帝国の組織)
貴族
・皇帝:今上カング高皇、その4女でただ一人の生き残り皇女スミル/姫さま/ハルハミア内親王18才。帝国の摂政となる。
・元老:ただ一人の生き残りヨーシュ・クロノック公爵
役所
・中央官僚:内務省
・ジャルーダ総督府:帝国高等文官イェーツ・シマック提督58才の後継セイオ・ランカベリー(ジャルーダ総督代理、)28才。もと民生参事、のちに復興院総裁。総督府船<アマテル・フレイヤ>(1万3千トン、乗員200名あまり。グラファス・ゴント法制大参事)
・地方官僚:トレンカ帝都庁:都令ジュロー・シンルージ男爵、帝都消防庁
国会
・万民院議員:ジスカンバ・サイテン議員59才

・天軍:軍令部総長カクト・ザグラム少将、ハーヴィット・ソレンス少佐27才
・陸軍:参謀本部スーザック・グレイハン臨時大将
その他
・司祭
・新聞記者
他の星系
・ダイノン連邦権統国:惑星ダイノン。首都ハリオン、レンカ帝国の仮想敵国。多数の人種が共存する民主政治。
・サランガナン専領国:惑星ドラハン、デルガン、バイネルハン、星府サランガナン。タマーリャ・ベローカ第一主席。
・バルカホーン航民国:小惑星マルカット。イル・アシュル・ハーラット国王、
・古イングレス及びゴランティス連合帝国:メイスン卿
 (地震対策)
・大地震が来る日時が分かっていても消火等のための市民を残す
・指揮系統を超えた連携
・共用無線周波数の設定、指揮系統を超えた連携
・所轄救助区域を越えた中域救助区域の設定
・地震直後の第一報による初動の一時保留(地震直後に連絡可能な場所の被害はむしろ軽く、そこで出動してしまうと、あとでより深刻な被害の場所に派遣する要員が足らなくなるため。) ・十時間半にわたる報道規制
・中央組織では事前の救助計画は立てず(現場から遊離する恐れあり)、現場からの要請をもとに行動する。ただし救助の前段階である要員・物資・設備の手配と移動は強力に統制する。
・5分間の静粛時間の設定:埋没者の助けを求める声が聞こえるように交通機関と動力機械を止める時間帯を設ける。
・篤志会による救助活動(特に準備段階と復興段階でより有効)
・補強工事
・火災対策としての旗竿と鐘。
・防災活動者(消防隊員、救急士、医師、警察官、軍人)の横断的な会合
・ライフライン指定建築物の規格制定。
・震災の経験と教訓についての小冊子の全戸配布(配給チケット付き)



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