■大石英司の海洋と深海SF

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2003年10月25日更新


●「原子力空母を阻止せよ」(1987、大石英司、中央公論社/1992徳間文庫)
 米原子力空母<カール・ヴィンソン>にソ連ヴィクターIII級攻撃型原潜<V.K.ブリュッヘル>が衝突。原潜は沈没。空母はメルトダウンの恐れがあるにもかかわらず横須賀ドックへと進路を取る。自衛隊の最新鋭潜水艦<わかつき>は<カール・ヴィンソン>阻止に向かう・・・。政治将校以外はすべてイスラム人と少数民族出身者という異色のアクラ級<A.M.ワシレフスキー>と潜水艦捜索艦T-AGOS<イドミタブル>、ロサンジェルス級<ホノルル>、<わかつき>との対決がいずれも秀逸!
○<わかつき>
「ゆうしお」型最新鋭潜水艦で、艦長若月の名をとったニックネーム。乗組員75人、全長76m、公称2250トン(実は2300トン)、シュラウドリング付きスクリュー、無反響タイル、完全な消磁、摩擦抵抗軽減のためのポリマー装置、艦首にZQQ4ハイドロホーン・アレイ、船側にコンフォーマル・ソナー、曳航式のTACTASソーナー、スイムアウト方式のG-RX3魚雷(70ノット、リチウムと六フッ化硫黄の反応熱を利用したクローズド・サイクル・エンジン)、可潜深度800m、蓄電性能30ノットで3時間。ポリマー放出で40ノット。ヒドラジン・ガス発生による緊急ブローが可能。艦長がこれまで乗船してきた潜水艦を「ドンガメ」と呼んでいるところが「サブマリン707」の影響を思わせる。
○<A.M.ワシレフスキー>
ライバル役、別名「イスラム(ムスリム)艦」又は「木片(チュルカ)艦」、8000トン、全長107m、船体がチタン製の設定。3人乗り潜航艇<ソーバリ(黒テン)>(全長6m、幅2m)、650ミリSSN-16対潜ミサイル魚雷、533ミリ有線誘導魚雷、タイプ64航走(ウェーキ)魚雷を搭載。
 コンバージェンス・ゾーン(CZ)、サウンド・チャンネル(SC)、層深(音速最大となる水深)、表面層ダクト、シャドーゾーン、バッフルズ・ゾーン、海底反射(BB)などの音響用語、巨大固定ソーナー網である海遊音響探査網(SOSUS)「コロッサス・ネットワーク」、深海用アルテミス、SURTASS曳航式ソナー(T-AGOS艦より水深400mを曳航。ハイドロホーン長さ5000m)、戦術曳航並列ソナー・システムTACTASS(水深300mを曳航。ハイドロフォンの長さ数十m)、水中固定ソノブイLQT4、曳航式ファンフェア対魚雷デコイ、P-3CのDICASSアクティブソーナーなどの音響機器が続出。親潮と黒潮の潮目、冷水塊、フィリピン海プレート、海山、海台などの海洋学用語も登場。「華厳の滝」(神津島の真西辺り)、「ビクトリア・ホールズ」(野島崎沖300km)、「レッドウッドの森」、「グランド・キャニオン」など海中の地点の呼び名が面白い。
 このほか、国産初の地球観測衛星「もも1号」(MOS-1)、ラファイエット級<ヘンリー・L・スチムソン>、ロサンジェルス級<オリンピア>などが登場。
 登場人物
○<カール・ヴィンソン>
艦長:アルバート・アロー大佐、副長:トーマス・カルビン中佐、操舵員?:ドワイト・チャーチ中尉、報道員:エド、空母戦闘群司令官:エドワード・ベイブリッジ准将、機関長:エンリコ・バローン中佐、損害復旧担当士官:グスタフ・キャッセル少佐、飛行長:フレデリック・ベンディクソン中佐、海軍神父:トーマス・ブライアン中尉
○<わかつき>
艦長:若月千尋三佐45才、副長:麻生貢二佐36才、船務長:三上康介三佐33才、水雷長:相生進34才、電子整備員:北村清三郎二曹、補給科衛生科員:高山優三曹、水測長:鈴木定義曹長33才、水測員?:国嶋悌二三尉、機関長:中山孝夫三佐
○<V・K・ブリュッヘル>
艦長:セルゲイ・ベテフテン中佐、水測長:ワシリー・トレチェク中尉、政治将校:ビクトル・ベリコフ少佐
○<A.M.ワシレフスキー>
艦長:ムスタファ・ブハーリー中佐、副長:ヴォニヤミン・エレンベルグ中佐、政治将校:ユーリー・ポポフ少佐32才、水雷長:ヒロノブ・ハン中尉
○<インドミタブル>
艦長:カール・エクソン中佐、紅海長:マーク・ホーガン操舵員22才、機関長:アンドリュー・スカーフ、ソナー・システム首席監督:ステファン・ヤコブ中尉
○<ホノルル>
艦長:ジョージ・ディクソン中佐35才、副長:ハワード・ドーマー中佐、水測長?:ソーンダイク軍曹

●「シーナイトを救出せよ」(初刷1988、講談社/ハードカバー、ノベルズ、文庫)西村屋選
 大石英司デビュー作「B−1爆撃機を追え」の続編。ハイテク国際謀略モノ。1963年、ケネディー暗殺の直前の時代。英海軍ドレッドノート級原潜、試験艦<ベータ10>4000トンは、ソ連、仏、西独の士官と当時1億米ドルを越えるロシア皇帝の財宝を積んで「ブロッケン・ゾーン」と呼ばれる海域で、50ノットで泳ぐ100トンもの大きさの化け物<ブロッケンの怪物>に襲われ、消息を絶つ。
 1988年、SOSUSに接続されたアルテミス・ネットワーク(深海聴音ソーナー)がレイキャネス海嶺の南端、「ブロッケン・ゾーン」にあるマウント・サンシャイン北側1500mで信号途絶。米深海調査艇<シーナイト>が調査に向かうが、現場で千切れた光ファイバーを発見。金色に輝く巨大な物体に襲われ、3500mの海底で浮上不能となる。支援母船でウッズホール海洋研究所の海洋調査船<スキャンパー>も、全長30m〜40mの金色に輝く化け物を目撃。25年前に沈んだ原潜が発見されることを恐れたソ連、英、仏は捜索活動を妨害するため現場海域に集結する・・・。
○米深海調査艇<シーナイト>
潜航深度4000m、小型プルーブ<ジェイ・ジェイ>搭載。覗き窓は直径20cm。トム・アーロン博士、パイロット:ネルソン・オーエン少佐、コパイ:ヘンリー・グリーンフィールド伍長。
○<スキャンパー>
<シーナイト>の支援母船。2300トン。船首ソナードームの代わりに海中展望室がある。サイドスキャンソーナー、シー・ビーム(商品名)、無人潜水調査ロボット<アルゴ>(やはり<ジェイ・ジェイ>搭載)を装備。艦長:メイナード・ロック、操舵手:アンソニー・フランクリン伍長、ゲーリー・パペット少佐
○<しんかい2000>
 シンジ・サイトウがパイロット。
 熱水活動域の閉鎖生態系、ジュラ紀の『イクチオサウルス』、カンブリア紀の『オパビニア』、『ハルキゲニア』、そして『○○○』も登場。
 なぜソ連、英、仏、西独が金塊を密かに運ぼうとしたかの謎解きも凄いが、なんといっても後半の「しんかい2000」の活躍が痛快! なんとC-5B<ギャラクシー>とCH-53E<スーパースタリオン>で空輸され、圧壊深度3300m(安全率1.5+300m、つまり1.65倍)を越える救難ミッションに挑む!! 腐食しろ2mm上乗せとか真球度の高さでまあ行けないこともないか。むしろ2000mと3500mとでは海水密度の増大による浮力増加分を打ち消すために投棄バラストの増設が必要・・・と思ったら、ちゃんと「しんかい6500」用に開発された高密度ショットバラストに換装となっている。潜航速度を上げるためと書かれていたので最初気付きませんでしたが、つまり投下バラストを増やしたわけ。すると海面での空気タンクも増量する必要ありだけど、乗員の洋上乗り込みは諦めている。つまり最初から乗り組んだ状態でヘリ空輸しており、洋上での浮力不足も構わない設定になっている。洋上での吊り索切り離しにダイバーが対処しており、もう万全!
 イルカとの言語コミュニケーションを図るヤヌス計画(JANUS:協同アナログ方式数値相互理解システム)、米4000m潜水調査船<アルビン号>、6000m潜水調査船<シークリフ>、仏6000m潜水調査船<ノチール>、米潜水艦救難艇DSRV-2<ミスティック>、CIAの<グローマー・エクスプローラー号>の名前も登場する。
(登場人物)
・ヒロフミ・アヤセ:主人公。一人娘のミライは腕と足に生まれながらの障害を持つがオセロの天才。
・ ・ショーン・マッコロー

●「アキレス浮上せず」(1995、大石英司、角川ノベルズ/新書判)
 海洋海中観測潜水船<アキレス>は、処女航海で副長ら反乱グループに乗っ取られる。彼らの目的は海底2000mに沈む巡洋艦「石狩」に積まれた200兆円の山下財宝の金塊。2000mでの潜水作業が可能な96式耐圧潜水スーツ(海上自衛隊と海洋科学センター(誤記ではない)が共同開発)で金塊を奪取しようとするが・・・。
 体長20mを越える鯨型の生物『ギガマウス』と、それを捕食する巨大生物(蛍光性の無数の触手を持つ野球場サイズの座布団状の蔓の化け物。普段は海底下に潜っている。触手は長いもので10m近くに達し、先端には吸盤状の口があって2枚の鋭い牙がある。)が登場する。
 <アキレス>は、6万トン、潜航深度800m。20ノット以上、3カ月の潜航調査が可能。オハイオ級原潜3隻(左舷:ジョージア、中央:ミシガン、右舷:ウェスト・バージニア)を束ねて外殻を追加したもの。外殻内には浮力材が詰められている。両舷のソナーが残されているが、魚雷発射管は撤去されている。センターチューブは推進機関用だった区画に潜水調査用ハッチ、無人潜水艇のランチが収められている。サイド・スキャン・ソナー装備。
○右舷側(ウエスト・バージニア):前からソナー区画、主観測室(水槽、冷蔵庫、100気圧の加圧タンク)、士官区画(海上自衛隊)、原子炉区画、推進装置区画
○センターチューブ(ミシガン):観測機材吊り下げ作業用ハッチ(油漬け?)、発令所、キャビン、原子炉区画、潜水準備室(大気圧潜水服が6体)、無人潜水機用ランチ
○左舷側(ジョージア):ソナー区画、レディース・ルーム、主観測室(水槽、ラボ)、士官区画(海兵隊)、原子炉区画、推進装置区画
 米ウッズホール海洋研究所と日本の海洋科学研究所(誤記ではない)の共同プロジェクト。科学者50人。船員:米側100人、日本側50人。改造費(2000億円以上)の70%を日本が負担という設定が非常にリアル。年間運用費200億円以上。科学目的のものとして実現可能性のある魅力的な案である。観測が主目的の潜水艦が主役なのは<シービュー号>、「海底世界一周」の<ハイドロノ−ト>、<シークエスト>ぐらいであまり多くない。

●「深海の悪魔」(2000、大石英司、中央公論新社 C★NOVELS、上下巻)西村屋特選!
 上下巻が完結しました。いやー、<しんかい6500>や支援母船<よこすか>のクルーがこれだけかっこよく描かれると嬉しくなってしまいますね。このほか、海洋地球研究船<みらい>、自律型無人探査機、中継ケーブルと衛星による深海実況中継など新しい技術も登場します。
 また、地球温暖化と大陸棚斜面のメタンハードレート地層の崩壊、深海の地層内に眠る太古の生物など、地球科学のホットな話題も扱われています。
 80ノットで泳ぎ、器材をも切断してしまう(!)透明な未知の生物。外套膜構造を持つ翼足類(軟体動物だそうな)らしきこの生物は『スピードフィッシュ』と名付けられ、群体として行動し、首都圏を壊滅の危機に陥れる。潜水艦救難艇DSRVの艇長を父親に持つ女子高生とその友人たちが新生児を抱えてパニック状態の首都圏をたくましく生き抜いていくエピソードが織り交ぜられています。

=>大石英司さん本人のサイト

=>大石氏ファンページ(片田健さんのサイト)【相互リンク】

=>黄泉に還る(むねくんのサイト。"大石わ〜るど"がある)


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