■スティーヴ・オルテン

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2004年11月16日更新

●「メガロドン(MEG)」**(1997、スティーヴ・オルテン、角川書店、角川文庫)
 『メガロドン』という太古の巨大ザメがマリアナ海溝の熱水活動域から、海面に現れて人々を襲う小説。日本の海洋科学技術センター、<かいこう>などの名前がよく出てくる。ディズニーで映画化された? 海溝底での地殻変動を観測するUNIS(無人海底情報探査機)、浮力制御型海中グライダーである一人乗り深海潜水船<アビス・グライダー>が活躍する。また、メガロドン退治のため世界初の原潜<ノーチラス号>が再就役する。
 おかしな点がかなり散見される。
・マリアナ海溝底に熱水活動域があるというのは無理がある。アメリカ西海岸で拡大軸(東太平洋海膨)と北米プレートが衝突していることとの混同か? また、冷水層の下に温水層が安定的に存在し得るか?
・<かいこう>が「1993年に10,739mで壊滅」とある。もしかすると、最初の試験潜航時1994年3月に10,900m付近で発生したブラックアウト(failure)の誤訳? 本物の「かいこう」は、その後1995年3月に再挑戦して10,911.4mの潜航に成功しているが、物語の都合から失敗したままなのはやむを得ない。
・潜航深度6,000mのシークリフがマリアナ海溝で水深9,000mに潜ったのは変。また、その減圧せずに浮上したために2人が死亡とあるが、耐圧殻内は大気圧なので、減圧の必要はない。それとも、潜航深度を増やすために加圧したか・・・。

●「蛇神降臨記」(2001、スティーヴ・オルテン、文藝春秋、文芸文庫2003)
 「MEG(メガロドン)」を書いたオルテンの長編第3作とのこと。「MEG」もマ リアナ海溝底に熱水活動域があるなど設定に一部おかしい点があったものの、グライダー式潜水艇も登場するなど、まあまあの作品。
 本作品はグラハム・ハンコックの「神々の指紋」をモチーフにした宇宙からの侵略SF。「神々の指紋」をモチーフにしたSFはこのほかにカッスラーの「アトランティスを発見せよ」があるが、本作品はむしろジェームズ・P・ホーガンの「星を継ぐもの」に 通じる部分が多い。
 「神々の指紋」は各国でベストセラーを記録し、日本でもTV番組によく取り上げられたが、実は数々の引用改ざんなど極めて悪質な本で、そのせいでこの本にいったい事実がいくらかでも含まれているのかさえも分からなくなってしまった。「神々の指紋」は地球科学予算の獲得にも貢献した作品なので、いささか複雑な心境。
=>「神々の指紋」−真実か?デタラメか?−(ヤギさん)
=>『神々の指紋』批判のページ(みふるだーとさん)
=>「神々の指紋」の超真相(原田 実さん)
 さて内容ですが、6500万年前、オリオン座の方向から直径10kmを越える卵形の飛行体、それを追尾する小型で金色に輝くほっそりした宇宙船が飛来。金星を目指す卵形の飛行体は金色の宇宙船が発射するエネルギー波で損傷し、ユカタン半島に衝突。
 それから時代は2012年に飛び、精神科インターンのドミニク・バスケスはマイケル・ガブリエルという患者を担当することになる。彼は考古学者でマヤ族の伝える4アウハ、3カンキンの日、2012年12月21日に人類が終末を迎えるというのだ。やがてユカタン半島沖海底下の物体が目覚め始める。ついには、全世界のカルスト台地で純粋核融合兵器を爆発させて大気中の二酸化炭素と二酸化硫黄の濃度を高くし、金星の大気のようにするという宇宙人の陰謀が・・・。
 ノーティルの小型版という仏製潜水調査船<バーナクル号>(潜航深度3300m)、エプソンの第五世代セミサブ石油掘削装置<スキュラ>、原子力空母<ジョン・C・ステニス>、ロサンジェルス級原潜<スクラントン>(SSN-756)が登場。
 メキシコのユカタン半島のチチェン・イツァというマヤ遺跡にカスティーリョ(また の名をククルカン/ケツァルコアトルの神殿)というピラミッドがあり、そこの北の階段下に蛇の頭だけの像がある。年に2回、秋分・春分の日にだけ、この北の階段に蛇がうねるような影がピラミッドの上から下に出来て蛇が降臨するように見える(これは本当)のが題名の由来。
=>チチェン・イツァにようこそ


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