■田中光二の地球・海洋SF作品紹介
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2005年6月29日更新
- ●「異星の人」(田中光二、角川文庫)
- ・大いなる珊瑚礁の果てに:
- ●「爆発の臨界」**(1974、田中光二、1974祥伝社、1985集英社文庫)
- 映画化もされた。最後の山場でJIMスーツが登場します。(by 永瀬唯さん)
197X年、アラブ首長国連邦から東京に原油を運ぶ20万トン級マンモスタンカー(VLCC)<アラビアン・ライト>はPOFFDOR(資源公正分配推進組織)と名乗るゲリラにシージャックされる。彼らの要求は鹿児島県貴山にある石油貯蓄基地CTS(貯油能力約5百万キロリットル)とコンビナートを破壊すること。それができなければ<アラビアン・ライト>を東京湾内で爆破される。半載状態でイナートガス・システムを備えていない本船が爆破されれば、10万トンの原油が流出し、首都圏は居住不能となる。
その頃、特撮映画「地球1999」で東京が炎上するシーンが撮影されていた。政府は放送関係者と特撮関係者と花火業者を集め・・・。
探鉱地質学者の館次郎35才が主人公。
川西重工海洋機器開発部が開発した大気圧潜水服−。空中重量百キロ以上。閉回路混合ガスシステム、放射性同位体元素を利用したヒーター、保温同位元素回路が組み込まれている。
- ●「わが赴くは蒼き大地」**(1974:SFマガジン、1976.10:角川文庫、1999:ハルキ文庫、田中光二)
- 2205年、地球にエイリアンが来襲し、一部の人類が4つの海中都市、<パシフィック・シティ>、<グレートバリアリーフ・シティ>、<アトランティック・シティ>、<バハマ・シティ>に5万人が生存するばかり。エイリアンにとってある種のインフルエンザ・ウィルスが致命傷となることが判明。その培養に必要な特殊なヨードを含むピラエラという褐色藻を手に入れるため、"オセアノ−ト"、通称"エラ人間"であるチヒロとA級精神感応術者である美少女ジャンが<ノーチラス十世>で冒険の旅に出る・・・。
<ノーチラス十世>は、全長約20m、抵抗を減らすイルカと同じ構造の人工皮膚が張られ、最高巡航速度40ノット、トリチウム増殖リアクター・エンジン、超音波音響テレビ、レーザーホログラフィ装置、超精密近距離ソーナー、テレファックス組み込み深海カメラ、電波テレビカメラ、マニピュレータ、生物水中信号送受信器、電気衝撃銛、麻酔銛、爆薬弾頭ミサイル、核弾頭ミサイル、自律判断型オートパイロットシステム"ラルフ"、テザード・ケーブル式ロボット潜水機<テレファクター>2機を装備。
プレート・テクトニクス、東太平洋海膨や大西洋中央海嶺の火山活動、マンガン団塊が紹介されている(熱水活動と化学合成生態系は登場せず)。
- ●「失われたものの伝説」(1976, 田中光二、1980角川文庫)
- 南西の孤島喜宝島では九州巨大企業のハヤマ観光が一大レジャーランドを建設しようとしていた。そこには17世紀末、盗賊キャプテン・キッドが隠した時価400億円の財宝が眠るという伝説があった。かつて優れた水中カメラマンで素潜りの日本記録を持ち、今はボクシングのスパークリングパートナーである室戸雄、射撃のプロ伊能竜介、乙丸建太郎、登山家の鬼島兵衛、漁師あがりの千吉良三郎といういずれも何か過去に背負うものを持つ5人の男たち。彼らは、正体不明の大金持ちでアマチュア考古学者でもある日高律と、その秘書の千田有愛によって集められた。
個人の海洋調査船<シーライオン>で喜宝島に向かう。目的は古代日本人の起源を明らかにするために鍾乳洞に眠る数千年前の人骨化石を発掘することだった。<シーライオン>の船首にはクストーの<カリプソ号>を真似た水中観察室がある。
- ●「往きてまた還らず」(1977、田中光二、1999徳間文庫、上下巻)
- タイトルのもとになった始皇帝暗殺(未遂)者、荊軻(けいか)の男の美学(「壮士往きてまた帰らず」)なんぞぶっとぶ残酷無類の連続テロ。
概算でもたぶん一万人にはとどく犠牲者をだしたあとの最終目的は、ええと、物語の時代、新島だかに設置された巨大な石油備蓄基地を、米軍から奪った核地雷で爆破。放射能まみれの(おまけに燃えてる)原油で黒潮を汚染、東北沖からアメリカ大陸北西部への潮流経由で、さらに南へ、そして西へと太平洋をぐるっとめぐって汚染を広げ、環太平洋地域諸国を壊滅させようというもので、……あれれ、この究極テロに僧都が使うのは、ううみゅ、記憶だとフランス製と書いてあったような潜水艇でしたね。
なんだ、これも海洋バイオレンスというかサスペンスというか、もうここまでゆくと完全な海洋テーマSFでした。(by 永瀬唯さん)
8月2日、新宿でガソリンスタンドとタンクローリーが爆破。西口一帯が火の海となり死者813人。8月16日、上野駅でタンク車が爆破。駅周辺が火の海となり、2705人もの死者が。9月29日、東名高速でムハシ・インドネシア石油相が高級コール・ガールと爆死。そのスキャンダルでマラッカ海峡の航行禁止が通告される。10月12日、横須賀米海軍基地で弾薬輸送中に核地雷が盗み出される。次の狙いは世界最大の原油備蓄基地、約5000万キロリットルもの原油備蓄されている八丈小島か・・・。
ネタバレになるが、仏製潜水円盤<S.P.3000>は3000m潜航可能、3人乗り。シアナ(2人乗り)をモデルにしているような。仕様問い合わせ先として海洋科学技術センターが登場する。
- ●「エデンの戦士」**(1978.3、田中光二、角川文庫)
- 2600年、地球の磁場が弱まりつつあり、磁場逆転による放射線の大襲来によって人類が滅亡することを避けるため、2人の若い男女を人工冬眠させる。遺伝子操作の乱用、人類と亜人類の対立の中、スーパー・ウィルスの蔓延によって人類は滅亡。プロジェクトの混乱によって2人はハワイとパリに分かれて冬眠することになる。地球磁場が消失した4600年、2人は目覚め、出会いの旅を始める。
- ●「暗黒洋(やみわだ)を越える者」**(UFOハンター・シリーズ、1978、田中光二、S-Fマガジン10臨時増刊号、1981文芸文庫「沈黙の岬 UFOハンター・シリーズ」に収録)
- 15ページ。異星人の侵略によって、汚染地域が世界の人類居住地域の50%を越えた。そんななかで、敵の「母船」と称される大型の精子形宇宙機が大島と野島崎との中間に墜落した。不思議なことに他の宇宙機はいっさい沈没海域に近付こうとしない。
水深2000mに沈んでいる宇宙機を引き揚げるため、深海調査船<アルミノートII>が空輸され、潜水調査が実施される。直径30mの球形の頭部及び長さ50m近い尾からなる宇宙機が発見される。ヒューズ社が建造した大型特殊工作船<グローマー・エクスプローラー号>で引き揚げ作業が実施され、ついに中に乗り込んでいた異星人とのファースト・コンタクトが実現するが・・・。
<アルミノートII>はバッテリー動力、全長25m、最大搭載人員8名、最大潜航深度8000m、48時間単独行動可能。<グローマー・エクスプローラー号>の吊り上げ作業に用いるドリルパイプを「ドリル・ストリングス」と正しく呼んでいるのはさすが。「管索」との訳は実際には存在しない。
- ●「怒りの大洋(わだつみ)」**(1978、双葉社、1980、角川文庫、田中光二)
- 三部作の第一部。世界の沿岸で遊泳者を魚群が襲う事件、魚群の異常な行動による漁船の転覆事故が続発する。貨物船<ぱしふいっく丸>、鉱石運搬船<テキサス・ローズ>が巨大な何物かに襲われ沈没し、キー・ウェスト沖の水深80mの海中研究基地<インナースペース1>が壊滅する。CONSE(新しい社会の敵に対処する機関)のシートピア研究所(根岸研究所)が調査に乗り出す。海上自衛隊の観測船<あかし>が日本海溝に異常な動きをするDSL(深海散乱層)を発見し、亜深海潜水調査艇(メゾスカーフ)<おおしお>による探索が始まる・・・。
なんと、あの懐かしい米国ジェネラル・エレクトリック社製(レイノルズ社製の間違い?)<アルミノート>(⇒アルミノートの記事参照)の改良版との設定。全長30m、乗員8名、最大水中速度5ノット、アルミニウム=モリブデン鋼、最大潜航深度7000m、48時間単独可能なバッテリー、生物探査用レーザー・ホログラフィ装置を装備。支援母船<瑞洋丸>に曳航される。
- ●「大海神」**(1984.3、田中光二、角川文庫)
- 怒りの大洋三部作の第二部。全作の<おおすみ>による"海水生命"との接触から5年後、スーパー・イルカを使って、栽培漁業の脅威となるイルカ群の就餌行動をコントロールする"狩り集め=誘導"計画の実験中、第三紀中新世に棲息していた全長30mの古代ザメ"カルカドン・メガロドン"が出現。海洋開発庁オセアノート局の海洋牧場推進・開発プロジェクトチームに参加している海洋調査士(オセアノート)の沖勇魚(いさな)たちが、メゾスカーフ<おおしお>で調査に向かう・・・。
スーパー・イルカは、バイオテレメトリ、ピンガー、PBS(Programing Brain Stimulator, 脳内電気刺激による情動制御システム)で行動制御できる。
- ●「大漂流」**(1984.12、田中光二、角川文庫)
- 怒りの大洋三部作の第三部。第二部の沖勇魚と鳴海志保の息子の沖洋人(ひろと)が主人公。
1995年、ODOPO(汎太平洋海洋開発機構)が設立され、海洋牧場、海底鉱山開発計画、海洋エネルギー開発計画などが進められている。2015年よりODOPO海中植民計画センターの沖勇魚所長の指揮により、三宅島沖、宇和島沖、石垣島沖で海底植民計画が開始されている。
2001年より、ユダヤ系財閥グループが、"ネオ・エクソダス計画"として、<ポセイドニア>と<トリトニア>というエネルギー自給型・漂流型の洋上居住システムの開発に着手。その20年後にはそれぞれ人口5万人を擁するに至っている。それを爆破しようとするテロリスト集団の陰謀を阻止するため、ODOPO国際管理局UWRT(水中救助部隊)に所属する沖洋人たちが<ポセイドニア>に派遣される・・・。
<ポセイドニア>は、長さ5km、長さ10km、厚さ30mの亀甲型をしていて、太陽熱発電所ユニットを曳航している。
円盤型潜水艇<アージロネット>(直径20m近く、潜航深度500m、燃料電池、巡航速度10ノット、ロックイン・ロックアウト付き、ハイドロジェット推進)、亜深海潜水艇<バラクーダ>、<ブラック・マリーン>、<ブルーシャーク>(速力20ノット以上、潜航深度2000m、ロックイン・ロックアウト)が登場。
- ●「ぼくたちの創世記」(1980、田中光二、角川文庫)
- ・ぼくたちの創世記:5万5千年前のピュルム氷期にテレパシー能力を持った100人の男女がタイムマシンで送り込まれる・・・。
・わだつみの深き淵より:太平洋資源開発機構(PMDO、日本、南北アメリカ、カナダ、オーストラリア等で構成)に所属する海洋調査船<トリトン>(排水量2000トン足らず)が無人潜水艇<エクスプローラーII>でマリアナ海溝の水深5千mで何か巨大な生物に襲われる。その機体には巨大なサメの歯が。そのサイズから推定されるサメの体長はシロナガスクジラ並みの33m。約1千万年前に滅んだとされるカルカロトン・メガロドンと推定された。
深海潜水艇<トリエステIII>(全長30m、潜航深度1万m、4人+オペレータが乗船可能)がPMDOの母船<チャレンジャー号>によって現場海域まで回航され、古生物学の専門家である三木勉博士とシャーク・ファイター、水中闘技のチャンピオンのロイ・クラークが乗り込む。
カルカロトン・メガロドンが登場。
- ●「鉄の巨魚」(1980、田中光二、徳間文庫)
- 原発を隠れ蓑に、米国から購入したパーミット型原潜の改造が密かに行われていた。その原潜<あきつしま>(排水量3000トン近く)は攻撃兵器としてよりもむしろ核戦争勃発時に要人を安全な場所、ノア・ポイントに避難させるためのものだった。その場所とは南大東島の西南にある赤島という無人島。そこには直径150m、高さ300m、千人を収容可能な巨大な地下シェルターが建設されていた。
- ●「大放浪」(1980.12、田中光二、徳間文庫)
- 突如発生した不治の疫病によって全人類が滅亡の危機に。大富豪ロバート・ロバートソン(R.R.)の「ノアの箱船計画」のもと、R.R.に選ばれたエリートたちを乗せた原子力飛行船<タイタンII>が出発するが・・・。
主人公ツトム・カナコア・ホクスワースは、カルフォルニア工科大学の気象工学の学生で、マンモス・コンピュータを使って局地気候改変によりモハーベ砂漠を緑化するシミュレーションに取り組んでいる。
オハイオ級原子力弾道ミサイル潜水艦(水中排水量18,750トン、全長170.69m、多核弾頭ミサイルであるトライデントを24基)<アーマゲドン号>、<アンドロメダ号>、<ベガ号>、ソ連のヤンキー型原子力弾道ミサイル潜水艦<イルクーツク号>が登場する。
- ●「魔の氷山」(1981、田中光二、徳間文庫)
- 南氷洋の氷山をペルシア湾まで引っ張ってくるダハール氷山水資源化計画「オペレーション・オーロラージュ」が計画された。南極のランバート氷河を起源としアメリー棚氷から分離した長さ7km幅2km平均厚さ50mの卓状氷山を12隻のタグボートの「ミラクル1」〜「ミラクル12」で曳航し、指令船の日本海洋開発のヘリ搭載海洋調査船<シートピア>、燃料補給のためのタンカー1隻が随行する。
東北大助教授で古気候学の象潟典子はこの氷山から2万5千年の過去に至るコア・サンプルを採取するが、何物かが氷山の中に閉じこめられていることを知る。超常知覚者たちが邪悪な存在に立ち向かう・・・。
- ●「ヘリック最後の冒険」(1986, 田中光二、光文社文庫)
- スペイサス(宇宙)を往来する能力を持つオリュポスの一族がアルゴス(地球)で自らを神々と称し人間を支配していた時代。オリュポスのゼウスが人間の王国ルキオンのルキア姫に産ませたヘリックを主人公とするヒロイック・ファンタジー全4巻の最終巻。
北極に開いている巨大な穴オケロンに入り、えねるぎぃの擾乱である"大障壁"を通って地底世界オケアノス(冥土)に向かう。そこは薄暮めいた光がみなぎり、オリュピア人の中の権力闘争に敗れたダルダロイ(地底に棲む者)人、またの名をクロトン(クロノスを飼う者)が封じ込められていた。首都ハデスの宮殿では女王ペルセポネがオケアノスを統治している。海の神ディゴンを信仰している。アルゴスの先住民族でオリュポスに駆逐された一つ目の巨人クロノスが生き残っている。
地底海ヌメアには小山ほどの大きさ、八本の足を持つクラーゲンがいる。ヌメアの果ての孤島にあるカリストの城にはオリュポスとダルダロイに掛けられた呪いが封印されていた・・・。
- ●「幽霊海戦[潜水艦イ20浮上せり]」(1988、田中光二、1990徳間文庫)
- トラック環礁モエン島でダイビング・ショップを経営している日系人アキラ・セリザワ。トラック環礁には太平洋戦争中の日本の艦船が70隻近く沈んでいる。戦後50年も経って東水道の北の端、水深40mの海底に潜水艦<イ20>(基準排水量2,198トン)が沈んでいるのが見つかる。アキラたちは日本のテレビ・クルー5人を引き連れて再訪するが、何者かによる海中発破の形跡を残し、イ20は姿を消していた。異常な嵐で漂流中のアキラたちの目前にイ20が霧中から現れ消えていった。
一方、湯河原の養老マンション”ヴィラ東海”の病室で介護されているイ20の元艦長に異変が起きていた・・・。
- ●「異界戦艦「大和」」**(2001.6、田中光二、カッパ・ノベルス)
- 沈船サルベージ用支援船<オーシャン・エクスプロラー号>(排水量5000トン)と潜水作業船<グーフィー>、<アルフィー>、<ミッフィー>(いずれも潜航能力1500m)による「大和」の艤装品のサルベージ・シーンがある。驚くことに、JAMSTECが<大和>探索のためNHKに無人機<ホーネット500>を貸し出したというあまり知られていない話まで載っている。
ヒューズ社が潜水艦引き揚げ用に建造した<グローマー・チャレンジ号>(排水量8000トン)の話が出てくるが、これは、米CIAがヒューズ社の深海鉱物採取船と偽って建造した<グローマー・エクスプロラー号>(排水量63,000トン?)をもじったもの。
=>CIAのProject Jennifer
=>Hughes社のGlomar Explorer号
- ●「聖竜伝説・燃える地球」**(2002、田中光二、光文社文庫)
- モルディブ諸島(チャゴス・ラッカダイブ海嶺)とインド西岸の間で南北に伸びるチャゴス海溝(水深5000m)で、米ロサンジェルス級攻撃型原潜<シャイアン>が未知のエネルギー輻射を受け、深海に引き込まれてしまう。米海軍セイフガード級救難艦<グラプル>搭載のDSRV<グッピー>(全チタン製、6人乗り)は、海溝の淵、水深300mで金属反応を検出し石造遺跡に遭遇する。高さ30mの階段状のピラミッドのうえに謎の球体を発見。
一ヶ月後、米海洋調査会社アクア・プロダクト社が所有する海洋調査船<シー・チャレンジャー号>搭載の水中調査船<アルゴノート>(全長12m、直径2m円筒型。乗員3人ほか計10人乗り、潜航深度500m、バッテリーで10ノット、最大潜航時間6時間、水深80mまでのダイバー・ロックアウト設備を有す)が水中考古学者たちを乗せて潜航調査を開始。ピラミッドの頂上には金色の正方形の台があり、その上に直径約30cmの多面体の球が載っていた。その球をマニピュレータで掴んだ途端、何かの封印が解かれ、強力なエネルギーが<アルゴノート>を襲う・・・。
サイキックものヒロイック・ファンタジー。後半は海洋とは無関係。
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