■上田早夕里

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2004年1月19日更新

●「ゼリーフィッシュ・ガーデン」(2002、上田早夕里(桓崎由梨)、未出版)New
 第三回小松左京賞の最終選考候補作(選評は「小松左京マガジン・第8巻」に掲載)。浮遊型海洋実験都市《ブルー・モジュール》で働く研究者とスタッフの仕事を、専門書ではなく、一般向けの科学雑誌の記事を書いて生活しているサイエンス・ライターが取材するという話。
 《ブルー・モジュール》は、海洋関係の学術調査と、各種の海洋開発・海洋実験を行う実験都市で、研究都市としての側面と、海洋資源開発の経済的発展を促進するという、ふたつの貌を持っている。出資の大半は一般企業に頼っているが、学術方面からの支持と要請があるため、この両側面を成立させるべく、運営に関しては、微妙なバランスが保たれている。
 この実験都市上で働く深海生物研究班の中に、深海のクラゲを研究しているスタッフがおり、彼らが研究している新種のクラゲが、ストーリー展開上の軸となる。深海探査の機器としては、「しんかい6500」をモデルに著者が創作した、有人潜水調査船「かいりゅう」が登場する。その他、深海で調査船のアシスタントとして働く人工知能搭載の無人探査機、レスキュー・ロボット、なども出てくるが、このあたりも、JAMSTECで使われている実在の機器をモデルに、著者が創作している。

●「火星ダーク・バラード』(2003年11月25、上田早夕里、角川春樹事務所)
 第4回小松左京賞受賞。応募総数131作品の中から受賞。
 天蓋で覆った空間を地球化するパラ・テラフォーミングの行われている火星。標高2万1千mのパヴォニス山には軌道エレベータが建設されており、その山頂と裾野をぐるりと取り囲んで天蓋に覆われた観光都市イクエイターがあり、そこから少し南下した先にある迷路のような峡谷に天蓋都市ノクティス・ラビリンサス、そして火星最大の巨大天蓋都市ヴァレス・マリネリス(全長4000km、深さ7km、最大幅700km)がある。各都市は時速600kmのリニアモーターカーで結ばれている。
 当初の火星探査では生命が発見されず、急速な開発が進められることとなったが、その後、地下の永久凍土内に数種類の微生物が凍結状態で発見される(ユーフェミア、イグナティウス、エウセビオス、アグライヤと名付けられる。そしてアグライヤに共生する微生物はエレノアと名付けられる)。火星の地底湖には企業が観光客目当てに地球から持ち込んだ生物が棲息している。
 火星治安管理局第2課第3班の捜査官、水島烈(地球歴で30才、地球生まれの移民)と神月璃奈(火星生まれ)は連続女性殺人犯ジョエル・タニを追いつめ、リニアモーターカーで護送中に異常な状態が発生。神月璃奈は惨殺され、ジョエルは逃走し、無傷の水島烈はジョエルとの共犯を疑われる。そのリニアモーターカーには火星総合科学研究所のデザインド・ベイビーでプログレッシヴと呼ばれるアデリーン(ダークブロンドの髪、地球歴で15才)が同乗していた・・・。

●「ゼウスの檻」(2004, 上田早夕里、角川春樹事務所)
 長編第2作目。木星とエウロパのラグランジュ点に浮かぶ宇宙ステーション<ジュピターI>が舞台。そこには遺伝子操作によって両方の性を持つこととなった人類、ラウンドが唯一住むことの許された特区がある。
 生命倫理の逸脱を糾弾するテロ・グループ<生命の器>が<ジュピターI>の襲撃を予告。火星から警備隊が急遽派遣される。侵入経路が限定される<ジュピターI>でテロリストを迎撃するのは容易と思われたが・・・。
 エウロパそのものは直接舞台とならないが、エウロパ生態系研究者が重要な役どころを果たす。
 両性を持つラウンド同士の性器がどう繋がるかについて、グレッグ・イーガンの「祈りの海」とも異なる方式。

●「ブルーグラス」(2004, 上田早夕里、『小松左京マガジン』第13巻に収録の短編)
 ダイビング・スポットとして有名なO県M岬沖の礁湖。環境悪化による珊瑚の激減が問題となり、保護区域に指定して海洋ドームが建設されることとなった。環境悪化は新型潜水具リブリーザー(閉鎖循環式潜水具)の普及によるダイバーのマナー低下が原因だ。
 「ブルーグラス」は外部の物音に応じて化学反応を利用して成長するインテリア・オブジェ。主人公はかつて自分が礁湖に沈めたブルーグラスを見にM岬を訪れる・・・。

●「真朱の街」〜『異形コレクション・第40巻「未来妖怪」』より(光文社文庫)

●「饗応」〜『異形コレクション・第39巻「ひとにぎりの異形」』より(光文社文庫)(2007年)

●「くさびらの道」〜『異形コレクション・第38巻「心霊理論」』より(光文社文庫)(2007年)

●「魚舟・獣舟」〜『異形コレクション・第36巻「進化論」』より(光文社文庫)(2006年)

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