・視覚障がい者のためのPC環境整備ガイド(職場向け)
  −就労環境とPC支援

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 次に見落とされやすいのは、職場でPCから流れ込む情報量が自宅でのそれよりはるかに多くなるという点である。健常者は画面上に配置された情報を選択的に読めるが、視覚障がい者はスクリーンリーダーの音声を選択的に聞くことはできない。ヘッドホンで音声を長時間聴くことはVDT作業以上に疲労する。

 単に耳が疲労するだけではない。視覚障がい者は連続的に音声を聞きながらその情報を頭の中で再構成し(「メンタルマッピング」という)、それで内容を把握する。この情報量が多すぎると、メンタルマッピングできなくなってしまう。

休憩
 VDT作業は1時間以内に15分以上の休憩が必要と基準が明確になっているが、視覚障がい者のスクリーンリーダー作業には基準がない。単に読み上げ音声を聴き続けることによる疲労だけでなく、後述のメンタルマッピングの問題も生じる。
 騒がしい職場の場合、ヘッドホーンで大きい音を長時間聴き続ける場合には、難聴、耳鳴りの原因となるので特に要注意。

 さらに、視覚障がい者は、読み上げ音声の意味を頭の中に描く「メンタルマッピング」という作業を行う。流れ込む情報が多すぎると、そのことによる精神的疲労が大変大きなものとなる。

 ここで注意が必要なのは、視覚障がい者にとって、時計を見て何時になったから休憩しよう、というのが難しく、つい気がついたら疲労が溜まっているという状態になり勝ちな点である。周りが休憩時間を教えるようにしよう。初めての就労では本人も自分の限界が分かっていない。十分注意してあげよう。

通勤
 視覚障がい者が外を歩く時、実は杖だけでなくメンタルマッピングにも頼っている。他人が杖を持っている視覚障がい者を避けてくれればよいが、混雑する通勤時間帯に駅等で上下車する場合など、人との衝突により頭の中のマップが狂ったりして、プラットホームから落下するなどの危険性が増大する。このため、可能であれば勤務時間をラッシュ時間を避けすように設定することが望ましい。昼休みの食堂も同様の問題があり、昼食時間の設定にも配慮されるとよい。

イントラネット等の手直し
 業務に必要なさまざまな情報をイントラネットなどウェブで提供する職場が増えている。このウェブはちょっとした手直しで視覚障がい者にも利用しやすくすることができる。詳しくは「バリアフリーなWeb構築ガイド(Web製作者向け)」を参照いただきたいが、簡単にまとめると以下の不具合が見つかればその都度手直しすることを望みたい。

・スクリーンリーダーで音声読みしない箇所の修正:リンクボタンなどの文字をデザイン重視して画像で貼り付けている場合は、代替テキストを添える。

・キーボードで操作できない箇所の修正:プルダウンメニューなどでキーボード操作ができない場合があり、それを手直しする。

・ウェブページの文字数の制限:1ページあたりの文字数が多すぎると、内容の把握が困難になるので、いくつかのページに分割する。

・ウェブページのリンク数、階層数の制限:1ページに含まれるリンクの数が多すぎたり、階層が深すぎたりしても視覚障がい者のメンタルマッピングが大変になる。リンク数が10ぐらい、階層が3ぐらいになるよう手直しする。

キーボード操作の薦め
 その他視覚障がい者がPC操作で困るケースとして、マウスでアイコンをクリックすれば済む問題でも、それをキーボード操作で行う方法が分からないと自分では対処できない。
 もちろんスクリーンリーダーの使用方法については視覚障がい者でなければ分からないが、せめて同僚の中にWindowsをキーボード操作することに慣れている者がいると、ずいぶんと助かるものである。
 目の見える者にとっても、Windowsのキーボード操作法を覚えると非常に効率的にPCを操れるようになるので、ぜひ「Windowsキーボード操作法」を覚えて欲しい。

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