1.生命の誕生
浅瀬/干潟起源説:38億年前のストロマトライト状の化石は、浅海のシアノバクテリアが作る構造物に似ていることから、生命は浅海で誕生したと言われた。
ところが、東工大のグループによると、その化石には浅海に特有の陸から流入した粗い粒状物が見られなかったことから、遠洋性、すなわち、中央海嶺の熱水活動域であったと推定された。
=>冥王代のチャートとプレートテクトニクス
高井 研(DEEPSTAR/JAMSTEC)らは、300度Cの熱水噴出から生きている微生物の証拠を得たとしている。これまで熱水中で増殖する微生物としては113度Cが最高だった。おそらく300度Cでは増殖せずに単に生存するだけだと考えられるが、熱水循環系で微生物コロニーが形成される可能性は高まったと考えられる。
しかし、このことは、単に生命がコロニーを成した場所が熱水活動域であったとしても、必ずしもそこが生命誕生の場でもあったとは限らない。
出口(DEEPSTAR/JAMSTEC)らによる高温・高圧の超臨界水の研究では、超臨界状態で無機物は沈殿し、セルロースやキチンなどの溶解しにくい有機物は全て溶解する。また、常温常圧下では高い分散安定性を有するコロイド分散液が、亜臨界・超臨界水中では速やかに凝縮する。このようなプロセスの中で有機物が濃縮される可能性はあるだろうか?
宇宙起源説:生命の起源を解く一つの鍵として、生体構成分子の非対称性がある。すなわち、非対称性を持つ分子ではL型(左手型)とD型(右手型)があり、放電や放射線など人工的に生成したアミノ酸はすべてL型とD型が等量となる。ところが、どういうわけか地球上では、グリシン以外のアミノ酸はすべてL型分子で、糖(デオキシリボース)はD型分子。L型とD型の入り混ざったアミノ酸からは、秩序を持ったタンパク質を作ることができないのだそうだ。
つまり、地球上で、グリシン以外のアミノ酸をすべてL型に、デオキシリボースをすべてD型にした原因は何か? 文献1)では超新星爆発の衝撃波による宇宙起源説を紹介している。地球には彗星の斜め入射による軟着陸が有力という。これが正しいかどうかは、隕石や他惑星の試料から(地球での汚染なしに)アミノ酸のL型過剰を検出できるかどうかにかかっている。
今現在でも地球上で生命が誕生しているか? たとえそうだとしても、豊かな地球の生物相によって食べられてしまうという考えもある。
=>すべては海底の硫化鉄鉱石の中で始まった?
=>Ken Takai, Kentaro Nakamura, Katsuhiko Suzuki, Fumio Inagaki, Kenneth H. Nealson and Hidenori Kumagai, "Ultrmafics-Hydrothermalism-Hydrogenesis-HyperSLiME (UltraH^3) linkage: a key insight into early microbial ecosystem in the Archean deep-sea hydrothermal systems", Paleontological Research, Vol. 10, no. 4, pp.269-282, Dec. 31, 2006
=>YK05-16 調査航海概要.かいれいフィールドにはUltraH3 Linkage が存在する
=>かいれい熱水フィールドにおいて特異な流体をもたらす地質学的要因は何か
=>Methane- and Sulfur-Metabolizing Microbial Communities Dominate the Lost City Hydrothermal Field Ecosystem/pdf
もう一つは、月の存在によって、地球の地軸が安定しているという。もし月がなければ、地軸の揺らぎが大きくなって気候変動がもっと激しくなるかもしれない。すると、人類の文明の誕生はもっと遅れたかもしれない。
潮の満ち引きが大きいお陰で海洋生物の陸上進出が早まったという説もある。しかし、間違えやすいが月はなくても太陽によって1日2回の潮汐は生じる(太陽による潮汐効果は月の効果の半分程度)。
"Lunar Reproduction Cycle"といって、サンゴ虫など新月や満月に繁殖する生物が数多く知られているが、月がなければこれらの生物はどうなっていただろう。
月と太陽の見かけの大きさがほぼ同じで、皆既日食を見ることの出来る惑星の住民は、この広い銀河でも地球ぐらいかもしれない。
安定化させる負のフィードバックとして働く仕組みがあったのだろうか? 現在知られているものとしては、珪酸塩鉱物の風化作用がある。これは、気温が上昇すると、珪酸塩鉱物の化学的風化が増加し、溶け出したカルシウムイオンなどが海水中で炭酸イオンと反応して炭酸塩鉱物を沈殿させるもの。これによって大気中の温室効果ガスである二酸化炭素が除去されて気温が低下する。逆に、気温が低下すると風化が減少して炭酸塩鉱物の沈殿も減少し、大気中二酸化炭素が増加して気温が上昇する。
=>Asteroid/Comet Impact Craters and Mass Extinctions and Shiva Hypothesis of Periodic Mass Extinctions.(by Michael Paine)
=>The Search for Nemesis(2600万年周期)
これがスタグナントスラブ崩壊説だが、別の可能性も考えられる。3,800万年に、アリューシャン海溝に拡大軸が沈み込んでいる。するとどういうことが起こりうるか? プレート沈み込みの原動力としてテーブルクロス説がある。つまり過去に沈み込んだプレートの重さで引きずり込まれていくというのである。ここで拡大軸が沈み込んだらどうなるか? プレートが切れて、沈み込みが弱くなる可能性はないだろうか? これによってそれまで北北西方向に沈み込んでいたのが西北西方向へと急変した可能性が考えられる。
=>シリコン仮説
=>ココリスの衛星画像(「白い悪魔」とも言われるココリス・ブルーム(円石藻の大増殖)の衛星画像)