■観測技術−海洋観測

たぶん間違っている用語メモ
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2007年9月10日更新

圧力計付き音響潮位計」(PIES)

 音響によって海面までの往復時間を計測するとともに、海底での圧力を計測するのが「PIES」。海面高度は衛星の高度計で非常に高精度に計測される。これとPIESによって、海面までの水温分布、あるいは、塩分躍層の位置を求めることができる。
 ポップアップ式によりデータを回収するか、音響テレメトリでデータ回収できる。海底圧力を長期間、精度よく計測することがポイントとなっており、RALOS社製の非常に高精度で高価な圧力計を用い、事前に長期間の圧力ドリフト計測を行っている。

音響式ドップラー流速計」(ADCP)と「3次元超音波流速計」(3D-ACM)
 4本の音響ビームを海中に発射し、海中懸濁物からの反射波のドップラー・シフトから流向流速のプロファイルを求めるのが「ADCP」。ADCPには船底装備式と海面曳航式があり、また、吊り下げ式(LADCP)と係留式(MADCP)がある。MADCPは上向きで観測する。
 海中の1点における3次元流向流速を超音波で精度よく計測するのが「3D-ACM」。

CTD」と「XCTD」と「プロファイル・フロート
 船上から水温・塩分計を吊り下げるものを「CTD」(Conductivity-Temperature-Depth profiler)。よくあるのはニスキン採水器を放射状(ロゼット)に配置したロゼットサンプラーの中心部にCTDセンサーを装備したものがよく使われている。日本の某所ではSeabird製CTDが人気で、なぜかFSI製CTDは一つ下に見られている。
 投下式(使い捨て)水温・塩分計を「XCTD」という。
 自己昇降型の水温・塩分計を「プロファイル・フロート」という。Argo計画として世界に3000本投入して平均300km間隔にバラつかせる計画が進んでいる。
 塩分精度は、CTDより1ケタ悪いのがXCTD。プロファイル・フロートはCTDと同じものを使用するが、3年以上使用するため、精度はCTDとXCTDの中程度。

投下式水温計」(XBT)と「投下式水温塩分計」(XCTD)と「投下式流向流速計」(XCP)と「投下式乱流計」(XMP)
 航行中の船舶からリード線(エナメル線又は樹脂で被覆された細い銅線)の繋がったプローブ(検出部)を海中に投入し、銅線が切れるまで観測するもの。水温プロファイルを求めるものを「XBT」(eXpendable BathyTermograph)、水温及び塩分(電気伝導度から算出)プロファイルを求めるものを「XCTD」、流向流速を求めるものを「XCP」、乱流成分を求めるものを「XMP」という。
 XCPは地磁気の磁力線を利用してプローブの移動量から流向流速を求める。船体の磁気の影響を逃れるため、海面のフロートからXCPを投下し、フロートから船には無線でデータを送る。赤道付近では不得意。ADCPが登場してからは、あまり使われなくなった。
 XMP(Expendable Microstructure Profiler)は2成分の流速勾配と水温計と圧力計から乱流プロファイルを計測。(Rockland Scientific International社など)

海面漂流ブイ」と「プロファイル・フロート」と「中立フロート」(RAFOS)
 海面付近の流れの軌跡をArgosシステムで求めるものを「海面漂流ブイ(Surface Drifter)」という。海上風の影響を避けるため、フロートは球形でドローグという抵抗を海中に降ろしている。水温も計測する。
 海中の駐留深度(1000〜2000m)で漂流しながら、浮上中に水温・塩分プロファイルを計測し、海上でArgos等にデータ送信し、また沈降することを繰り返すものを「(自動昇降型)プロファイル・フロート」(中層漂流フロート)という。
ARGO計画
 海中を中立浮力で漂流することで、海水の沈み込みなどを求めるものを「中立フロート」という。SOFARチャンネル(音速極小層)に置いた音源からの信号を受信してフロートの位置・深度を記録するものを「RAFOS」という。

係留系時系列観測
 McLane Research Laboratories, Inc.製
Moored Profiler(MMP)/時系列鉛直分布自動計測係留系。係留ワイヤに沿って浮体が上下する間、FSI製)及び流向流速系(FSI ACM)を行う。アルカリ電池又はリチウムイオン電池。30cmホウ素珪酸ガラス球を追加可能。
Remote Acess Sampler(RAS)/時系列自動採水器。採水口・採水ラインをHCL液などの酸性水で自動洗浄後、バルブ切り替え器を通って800mlマイラー/アルミホイル積層の気密試料バッグ(断気性多層膜パウチ)100個に採水・保存。
Time-series Phytoplankton Sampler(WT-PPSS)/時系列懸濁粒子・植物プランクトン採取装置。現場濾過した試料をグルタル・アルデヒド又はHgClで固定
Time-series Submersible Incubation Device(TS-SID)/時系列現場培養装置。C14を添加し、現場の有光層で培養。
Time-series Zooplankton Sampler(ZPS)/時系列動物プランクトン採取装置。ポンプで吸引し、ナイテックス製ロールに封入し保存液タンク内で保存。
Time-series Sediment Trap/全海洋仕様セジメントトラップ。高コーン角のトラップ。チタン構造のフレーム。サンプルボトル12個。デジタル記録式傾斜計(磁気コンパス含む)を追加できる。
Large Volume Water Transfer System(WTS)/懸濁粒子・溶存物質採取用シングルイベント現場濾過器。これは係留系ではなく、何台も繋げて船から吊り下げる。大量の水を吸引し142mmフィルター又は吸着カートリッジを通して採取・吸着。

音響切り離し装置(リリーサー)」
 係留系やOBSなどの海底設置観測機器を船上に回収するためには、それらを海底に繋ぎ止めているバラスト/ウエイトから音響信号で切り離す音響切り離し装置(通称「リリーサー」)が決め手となる。船上から音響コマンドを送っても切り離しが掛からないとか、そもそも応答すらないとかすると「亡失」ということになる。
 日油技研(ガス式:火薬(アジ化ナトリウム)の反応で圧縮空気を作りトリガーを作動させる)、ベントス(モーター式。代理店エス・イー・エー)、エジテック(代理店イーエムエス)等のメーカーがある。
 リリーサーが1つだとリスクが大きいので、どうしてもデータを回収する必要がある場合にはリリーサーをダブルにし、1つが動作しなくても回収できるようにする。ダブルにする方法として、直列にする方法(直列方式)と横置きのダブルにする方式がある。前者だと下側のリリーサーが故障すると上側のリリーサーだけが回収されるが、後者だと、どちらが故障しても両方回収できるような仕組みとなっている。

キンク」と「スイベル」と「フリーフォール
 ワイヤロープやケブラーロープ(ただの吊り下げ用)、ワイヤケーブル(通信や電力供給の可能な同軸ケーブル)などで船上から海中に測器を吊るしたり、逆に海底から測器を係留したりする場合、ワイヤロープ等に捩れが加わった状態で、何かの理由で緊張が緩むとワイヤロープの途中で小さなループができて(「キンク」という。)、ワイヤロープ等が強度や通信等の機能を保つうえで必要な曲率半径を下回ってしまい、場合によっては切断に至ることもある。
 捩れが溜まる原因としては、測器を揚げ降ろしする際に流体抵抗で回転するクセがあったり、ワイヤロープ等の編み方に起因して張力が繰り返し加わる過程で捩れが溜まっていくことが考えられる。

 一度キンクを起こしたワイヤロープ等はその部分を切断して端末処理をし直すので、キンクを起こすたびにワイヤロープ等は短くなっていくことになる。
 キンクを起こさないようにするには、捩れがワイヤロープ等に溜まらないように「スイベル」または「(ダブル)サルカン」という回転する継ぎ手金物を入れる。
 通信や電力供給も可能なワイヤーケーブルやテザーケーブルのうち回転継ぎ手を入れることが難しいものについては「フリーフォール」といって水深の深い海域で測器やROVを付けずにケーブルだけ海中に繰り出し、捩れを解消してから巻き取るということを行う。

 チェーンの場合にも、キンクに似たような捩れが生じ、設計上の破断強度よりも低い繰り返し荷重で切断に至る場合がある。


=>海の不思議(海の知識、海洋調査の歴史、海洋調査船とその仕組み、(財)日本水路協会海洋情報研究センターのサイト)

=>総合海洋辞典(Kiyofumi Nakauchiさんのサイト)*

=>海をしらべる(中西正行さんのサイト)【相互リンク】

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