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「わっ!」
大きな目玉が 海の中からこちらを上目づかいに見つめています
そうです、かれはなんとクジラの背中の上に乗っていたのです
船からではどのくらいの大きさか見当がつきませんでしたが
いざこうして上に乗ってみると、なんというとてつもない大きさでしょう
「うひゃあ、これじゃ缶詰千コでも足りないや!」
うっかり口にしてから、ネコくんはしまったと思ってあわてて口をつぐみました
自分のようにちっぽけなネコなど
クジラさんはきっとひとのみにしてしまうにちがいありません
はずかしさをまぎらすために
かれはしょっぱいのもかまわず 背中をせっせとなめました
クジラさんが笑って体をゆすったため、足の下がゆれ動きました
「あのぉ、あなたがぼくをたすけてくれたんですか?」
ネコくんはこわごわとクジラさんにたずねました
「ぼくは何もしちゃいないよ
きみが波間をただよってきたので、ひょいと背中に乗っけたまでさ
残念ながら、いまのぼくにはきみをたすける力はなくてね
きみの運がよかったんだ
たぶん ネコの神さまが守ってくれたんだろう」
そういえば、クジラさんの声にはなんだか元気がないようです
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