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「ぼくらはみんな自分の身にそなわった道具を使って
親に教わったり、生まれつき知っている方法でえものをとる
えものをとるのも、住みかを探すのも、身を守るのも全部自前さ
シャチだって、するどい歯と持ち前のスピードで狩りをする
天からさずかった自分の力をわきまえているんだ
ところが人間は、ぼくらのような大きな動物をかんたんにつかまえられる
この網や船のような道具を使ってね
こういう網は、ちぎれて流されたり、漁師が捨てたりしたものだ
網があんまり細くて見えにくいものだから
ぼくは泳いでいるうちに うっかり頭をつっこんでしまった
ぼくらの網は空気の網ですぐに消えてしまうけど
人間が作った網は どうしたわけか自然の力でくさったりこわれたりしない
おばけみたいにさまよいながら 生きものたちを殺すおそろしいわなになる
ぼくらクジラやイルカの仲間以外にも
多くの魚たち、海鳥やウミガメ、アザラシたちがこのわなにはまってしまう
ぼくぐらいの年ならまだしも、こどもたちのことを思うと胸が痛むよ
しょっちゅう息を吸いに海面に上がるから 網にかかりやすいし
体力がないからすぐに弱ってしまう」
そういったクジラさんの目はとても悲しそうでした..
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