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水平線にひとすじのまぶしいしんじゅ色の光が見えてきました
それは見る間にふくれあがり、夜のやみを追いはらっていきました
空の色が深いぐんじょう色からむらさき、赤、そして昼の見なれた青へと
こくこくと移りかわっていくパノラマがくりひろげられました
そのとき、ネコくんは見たのです
海から大きな大きなクジラが高へまい上がり
そのままどんどん天高くのぼっていくのを
まきちらされた水が、顔を出したばかりの朝日を浴びて
キラキラと虹色にかがやき、クジラの体を包みました
そのたとえようのない美しさは
ネコくんの目にやきついて一生忘れることはないでしょう
あたりがすっかり明るくなったころ、クジラは空のかなたへ消えていきました
クジラさんの体は たくさんの生きものたちをつちかうために
土にかえり、海にかえっていきます
その一部は ネコくんの体の一部にもなりました
それではいったい、クジラさんのたましいはどこへ行ったのでしょう?
海よりももっと広くて深い空の向こうの世界へ旅立っていったのでしょうか?
あるいはもしかしたら、氷の浮かぶはるか南のクジラたちの楽園で
空から仲間たちの幸せそうな姿をながめているのかもしれません
でも、ほんとうのところはネコくんにもわかりません..
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