■新サブマリン707教室

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2005年1月3日更新

■どこまで潜れる?
 ●水圧は?
 10m潜るごとに大気圧と同じだけの圧力が増加する。水深300mなら31気圧。
 1平方cmの面積に加わる力は、10m潜るごとに1kgずつ増え、1,000m潜るごとに100kgずつ増える。1万mの深海は、人差し指の先に1トンの重量(約100MPaの圧力)が加わる世界だ。
 実際の海では、塩分のせいで海面での比重が1.022ぐらい、水深6,000mで1.054ぐらい(プロファイリングフロートの重量調整についての図3.東経130度に沿った現場密度の鉛直断面を参照)。正確には潜水時に計測した水温と塩分と圧力を水の状態方程式(凄くややこしい式。圧力の単位:bar〜mって何だろう?)に放り込むと現場の密度が求まる。その時の水深は、圧力と水面から海底までの平均密度から逆算して求める。
 簡単に求める方法は、平均的な海洋をモデルにしたA Sea Water Equation of State Calculator(UNESCO, IES 80, Fofonoff 1985)に水深と塩分(例えば35 ppt)と水温(例えば1度C)を入れれば、現場の密度と圧力が求まる。
 これだと水深6,500mの圧力は6,646 dbar=677.7 kgf/cm2=656 atm、密度1.057、「かいこう」による地球最深部10,911mでは、11,273 dbar=1,150 kgf/cm2=1113 atm、密度1.075となる。

 ちなみに、チョモランマ(エベレスト、8848m)の山頂の気圧は平地の約1/3。

 シャーロック・ホームズで有名なコナン・ドイルの数少ないSFの一つ「マラコット深海」では、ある水深を超えると、逆に圧力が減少するという仮説を展開している。
 「サブマリン707F」では複合超振動合成波波動被膜からなるドームシェルターを登場させ、9,700mの日本海溝マラカット海淵に1.5気圧かつ視界の開けた「ファイアフライ・ゾーン」を実現している。「エイデネルブ・ミンタル」は、同じ技術により707Fの周りに直径2,000mの負圧フィールドを発生させるもの。これは「マラコット深海」に触発されたものと思われる。

 ●生身の人間が潜ると(環境圧潜水)
 人間の素潜り世界記録(錘で潜降、ブイで浮上)は、1998年のホセ・フェレラス(メキシコ)による156.8m(フランス人の記録は154m)。女性の素潜りでは、カナダ人が136m(2001年夏)。

 加圧した潜水呼吸ガスを用い、完全に周りの圧力と釣り合った状態となる飽和潜水では、海底居住区(ハビタット)を使う方式だと、だいたい水深60mまで。
 ヘリウムと酸素(と水素)を用いた船上加減圧室+水中エレベータ方式だと、300〜450m。1988年に実海域で534m(水素-ヘリウム-酸素を用いた飽和潜水)、1992年に陸上シミュレーション実験で701m(水素-ヘリウム-酸素を用いた飽和潜水)といういずれもフランスの記録がある。
 日本ではJAMSTECが1978年に300m(ヘリウム-酸素飽和潜水)、海上自衛隊潜水医学実験隊(横須賀市久里浜)が450m(ヘリウム-酸素飽和潜水)を記録。
 動物実験では、水素と酸素を用いて1000mの記録だったと思う。

 ●大気圧のまま潜ると(大気圧潜水)
 円筒形の耐圧殻だと、スペースは広くとれるが、チタン製でも水深1000mぐらいが限度と言われ、ロシアのアルファ級原潜がこのあたりまで潜れたらしい。高張力鋼だと400mぐらいか?
 それよりも深くなると、球を繋いだ形の方が有利になるが、船内スペースは制限される。ガソリンを浮力材にした有人バチスカーフの「トリエステ号」が1万mを越える記録を持っている。小松左京「日本沈没」に登場する1万m有人潜水船<わだつみ号>がこのバチスカーフ型。同小説でリチウム金属(比重0.534)を浮力材に使うアイデアが書かれているのがおもしろい。
 浮力材にシンタクチック・フォームを使った近代的な潜水調査船としては、「しんかい6500」の6500mが最高。

■深海に潜るには?
 ●バラスト・タンクと圧縮空気
 潜航時はバラスト・タンクから空気を抜いて沈降し、浮上時は圧縮空気をバラスト・タンク内に吹き込んで海水を排水し、浮上する。圧縮空気は浮上中に補充する。潜水艦の場合はメイン・バラスト・タンクを「メンタンク」と呼ぶらしい。
 新707の緊急ブローアウトで急浮上するシーンはかっこいいですね。
 水深が増大して1000〜2000mにもなると、圧縮空気によるバラスト・タンクの排水は困難となり、特別な高出力なポンプで排水するか、あらかじめ積んだバラスト(ウエイト=重り)を投下する方法によらざるを得ない。

 深海潜水調査船では、2セットのバラストを積んでいる。バラスト・タンクから空気を抜いて沈降し、海底に到達すると、1つ目のバラストを投下して中性浮力になる。浮力の微調整はポンプで行う。浮上時は残りのバラストを投下する。従って、沈降途中又は浮上途中で止まるには、垂直スラスタでホバリングするしかない。

 ●海中グライダーとDeep Flight
 耐圧容器の中のタンク内の油を、耐圧容器外のブラダ(ゴム製の袋)に出し入れすることで、体積を増減させる。これによって浮上・沈下する方式がある。これは消費電力が少ないという利点がある。
 無人ブイで10日毎に水深1000mから海面まで浮沈を繰り返し、計測した水温塩分データを衛星に送信するものを「プロファイル・フロート」という。これを全世界の海洋に約3000個投入して、気候変動の予測精度を上げる「Argo計画」が進行中(前出)。

 このプロファイル・フロートを横倒しにし、翼を付けて、浮沈を繰り返しつつ海中を滑走するタイプも、米スクリプス海洋研究所やウッズホール海洋研究所で開発されている。これを「海中グライダー」という。
 この方式とは別に、浮力制御型の有人グライダーが実用化されている(Kerl StanleyのC-BUG)。

 ところが、これよりもずっと前、17年ぐらい前かな? 浮力変化装置は一切設けず、推進器で海中を進みながら、翼の揚力で深海まで潜っていく方式の潜水艇、「Deep Flight」が考案・実用化されている。これは、低速になると翼の揚力が働かなくなり、浮いてしまうので、海底の一点に留まるにはスラスターでホバリングしなければならない(Hawkes Ocean TechnologiesのDeep Flightシリーズ)。

(続く)


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