■新サブマリン707教室

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2001年11月21日更新

■海中での動力源は?
 ●「電池」の歴史
 潜水調査船では、もっぱら、再充電の可能な2次バッテリーが使われている。もともと、簡便に充電できる鉛電池が広く使われていた。「しんかい6500」に積んでいる酸化銀亜鉛はもっと性能がよいが、再充電する前にメモリー効果をなくすための完全放電が必要。最近は、ノート・パソコンと同じリチウム・イオン電池が使われるようになって、再充電も簡便になった。

 ●「シュノーケル/スノーケル
 通常の潜水艦は、浮上中はディーゼル発電でバッテリーに充電し、海中では電気モーターで推進する。浮上中に発見される危険を減らすため、セイル頂部から海上に吸排気筒をのばし、大気を船内のエンジンに供給し、排気を大気中に放出する。この吸排気装置を「シュノーケル/スノーケル」といい、海水流入防止機構が付いている。

 荒天時にスノーケル航走すると、波が吸気筒に入るたびに頭部弁が閉まり、一方艦内のディーゼル機関は空気を吸い込み続けるので艦内の気圧が急激に低下する。頭部弁が開けば艦内は一気に大気圧に戻る。風邪などを引いて内耳の空気が抜けにくい時や虫歯内に小さな泡を抱えていると大変つらい状況となる。また、トイレで便を洗浄液とともにサニタリータンクに落とす瞬間にこの負圧に見舞われると逆流することになる。

 707のシンボルである怪物顔のシュノーケルは、海上自衛隊の「はるしお」に触発され、707一世改から装備するようになったのだそうだ。青の6号でも二世で復活する。

 ●「AIP(Air Independent Propulsion)システム
 シュノーケルによる吸排気をなくすため、酸素源として過酸化水素や液体酸素の形で内蔵し、排気は海中に押し出す機関を「AIPシステム」という。
・「ワルター機関」:過酸化水素を触媒分解して酸素を発生させ、燃料を燃焼させて発生したガスでガスタービンを駆動する。旧独のUボートのXXVI型に初めて採用された。
 青の6号に登場するムスカの機関。

・「スターリング・エンジン」:外燃機関の一種。酸素*と燃料で外部から加熱。内部作動気体であるヘリウムを膨張・収縮させてピストンを動かす。排気ガスは船外に排出する***。
 フランスの「SAGA」というロック・イン・ロック・アウト潜水船(LILOS)がスターリング・エンジンを装備していた。実にコンパクトで驚かされた。

スターリング・ホームページ

・「燃料電池」:酸素*と水素**を触媒のもとで化学結合させて生じる電気でモーターを駆動する。
 JAMSTECの巡航型無人機「うらしま」も現在のリチウム・イオン電池から、近い将来、燃料電池に換装の予定。

・「MESMA」(Module d'Energie Sous-Marine Autonome):外燃機関の一種。酸素*と燃料を燃焼させてボイラーで蒸気を発生させ、タービンを駆動する。

・「クローズド・サイクル・ディーゼル・エンジン」:酸素*でディーゼルエンジンを駆動し、排出ガスを海中に放出する***。
 東京大学生産技術研究所の巡航型無人機<R1ロボット>がクローズド・サイクル・ディーゼル・エンジンを搭載している。

*:圧縮空気では貯蔵量が限られるので、液体酸素から酸素を供給する。
**:液体水素から供給するのはなかなか大変。アンモニア(NH3)やメタノール(CH2OH)のような水素化合物を利用したり、より安全な水素吸蔵合金による方法も考えられている。
***:水深が深くなるにつれて、水圧に逆らって船外に排気することによる効率低下が著しくなる。

 ●ラムラム・ホルム・エンジン
 707F及び新707二世改で採用される、水圧からエネルギーを取り出すエンジン。

(続く)


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