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普通は、回転方向に向かって後方に曲がっている(バックワード・スキュード・プロペラ)。後退翼みたいのもの。
それに対し、回転方向に向かって前方に曲がっているプロペラを「フォワード・スキュード・プロペラ」と言う。通常のプロペラでは内側から翼端に向かって翼面の境界層が発達し、剥離し、キャビテーションが発生する。フォワード・スキュード・プロペラでは、翼端から内側に向かって境界層が発達するので、剥離やキャビテーションが発生しにくいのだそうだ。前進翼機が失速しにくいのも同じ原理とのこと。強度上は大変そう。
最近の「そよ風」を売り物にした扇風機も三日月型・多翼でフォワードスキューになっている。これは騒音(風きり音)低減が主な採用理由とのこと。
フォワード・スキュード・プロペラをダクトなしで使うと、ちょっとのことで浮遊物なんかを巻き込みやすくて怖いため、ダクト付きでしか使われていない。「みらい」のサイドスラスタに使われている。
=キャビテーションとダクト付きプロペラ(Special Thanks:tamura@海技研さん)
曳船や押船のように低速時に要する船のダクト・プロペラは、ダクト内の負圧の合力(揚力)が前進方向に向かうように、ダクト形状がデザインされているが、高速船ではそのようなデザインは難しく、抵抗になってしまうとか、プロペラ負荷が上がるとキャビテーションが起きやすいなど、不利な点ばかりかと思われるが、そうでもないかもしれない。
ダクト内に、回転する動翼だけでなく、整流効果のある静翼も付いているものを「ポンプ・ジェット」(by SiD艦長)といって、最近、採用が増えている。ダクトが長め。ダクト内面にマスキー効果(**)を持たせてプロペラ騒音を押さえているとの説もあるが不明。前述のフォワード・スキュー・プロペラになっている可能性もある。曳航式ソナーなどを曳航しても巻き込みにくい利点もあるかと思われる。
青の6号に登場するムスカが(ダクト・プロペラ風の)ポンプ・ジェット。ウォータージェット推進は、707登場のUX号と、青の1号コーバック号。
騒音をあまり気にしない魚雷でも、最新型のMk46(60ノット)ではダクト付き二重反転プロペラが採用されている。これは、あまりに速くプロペラを回すので、キャビテーションによって進まなくなるため、ダクト付の二重反転にして途中の圧力を上げてやって(ポンプと同じ)、キャビテーションを防ぐもの。(by tamura@海技研)
DSRVや潜水調査船など低速の艇のプロペラに付いているリングは、「シュラウド・リング」というらしい。単にプロペラ・ガードを兼ねているだけで、推力アップには効かない。
アルビンは最初は「しんかい2000」と同じようにただのガード代わりのシュラウドリング付きプロペラ1基が船尾に付いていたが、
=>アルビンの初期状態(2枚目の写真)
その後、小型のダクト付きプロペラ3基に換装された。
=>改造後のアルビン
これは、応答性の悪い大型モーター1基の代わりに、応答性のよい小型モーター+加速型ダクト・ペラを3基とすることで、機敏に運動できるようにしたらしい(船尾だけじゃなく、その他あちこちにも付いている)。静止に近い状態からの運動なので、押し船や曳き船のように加速型ダクト・ペラが有効なんですね。
「しんかい6500」の現在のモーターもスタートして全速になるのに30秒もかかって、それでは自由に制御できないので、多数の小型ダクト・ペラをあちらこちらに沢山付けることの効果を実験的に評価中。といっても、ざらにある1ノット程度の底層流の中で運動を自由に制御するのは至難の業。効果が乏しいのではとの厳しい意見もある。
**:マスキー効果:気泡は音響を吸収する効果があり、これを利用して自船の放射雑音を減らしたり、相手からのアクティブ・ソナーにより探知されにくくすることに使われた。だが、エア・コンプレッサーの騒音のせいか、最近はあまり使われていないかも。気泡を海中にまき散らすとプロペラ・キャビテーションも起きやすくなるのでは。
=>アクアバイオメカニズム(東工大の中島 求さんのサイト)