■新サブマリン707教室

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2007年2月2日更新

■深海の世界とは?
 ●海の面積と海面の高さ
 地球表面の約70%は海である。その平均水深は約3,800mである。まさに「地球」というよりも「海球」というのがふさわしい。
 海面の高さは何千年という時間スケールで見れば一定ではない。地球の46億年の歴史の中で、大陸が徐々に成長してきて、今の割合になった。
 また、海面の高さが変われば、陸と陸の面積比も変わる。地球の気温が低下すると大陸上の氷床が発達して海水の量が減り、海面の高さが低下する。逆に、地球内部のマントル内の活動が活発化すると、海底面が広範囲にわたって上昇し、それによって海面も上昇する。また、海水はマントルとの間でも大きく循環していて、マントル内に入ることのできる海水の量が変化することによっても、海面高さは変化する。

 最近の数百万年でみると、4.1万年又は10万年周期で寒い氷期と暖かい間氷期が繰り返され、それによって海面が150m上昇したり、下降したりする。2万年前の最終氷期では、現在よりも海面が150mも低く、「大陸棚」と呼ばれる部分が海面上に現れていた。このため、海の割合は66%に減っていた。
 1億年前の白亜紀にさかのぼると、マントル活動に伴う海底面の上昇によって、海面が現在よりも250m高かったらしい。これによって、現在の平野(陸地の7割を占める)は全て水没し、海の面積は90%を越えていた。

 地球誕生までさかのぼると、46億年前は海は海でもマグマの海(マグマ・オーション)に覆われていた。40億年前に本物の海が誕生し、27億年前に最初の大陸が誕生、ウル超大陸(南ア、インド、オーストラリア)、ネーナ超大陸(ローレンシア、パルティカ)、アトランティカ超大陸と離散集合を繰り返し、9億年前にロディニア超大陸が形成。
 マントルの温度の低下につれて、7.5億年前に海水が上部マントルに流入するようになり、海面が600mも低下して、一気に大陸面積が拡大している。
 その後、全球が凍結する「雪玉地球」を経て、5.4億年前より、多細胞生物、硬骨格を持つ多様な動物が一斉に出現する「カンブリアの大爆発」が起こる。一方、大陸は離散集合を繰り返し、ゴンドワナ超大陸ローレンシア超大陸パンゲア超大陸を経て、現在の大陸配置となっている。

=>大陸の離合集散

 遠い将来、マントルの温度がさらに低下して、海水が下部マントルまで流入するようになると、海面はさらに数百m以上も低下するかもしれない。

=>地球史資料館>地球史年表−海水の逆流開始(丸山茂徳教授)

 SFでは、海に沈んだムー/アトランティス帝国が定番。ふしぎの海のナディア、コナン・ドイルの古典「マラコット深海」のアトランティス、サブマリン707のムー帝国、カッスラーの「アトランティスを発見せよ」では南極大陸の古代文明が登場する。

 ●海底地形は?
(大陸棚、海底扇状地)
衛星高度計による海底地形
衛星高度計による海底地形(by NOAA)

 大陸周辺には氷期には平原であった土地が、温暖化によって水没した大陸棚(水深200mまで)がある。
 その外側には緩やかな大陸斜面がある。斜面といっても、せいぜい数度までである。この斜面には、メタン・ハイドレートと呼ばれる氷状のメタンを多量に含む地層があり、海底から150m下は地熱によってガス化したメタンのフリーガス層が存在する。メタンハイドレートとフリーガス層の境界を「海底疑似反射面」(BSR;Bottom Simulated Reflector )という。
 大河川の沖合には広大な海底扇状地が広がる。大陸斜面や海底扇状地では時々海底地滑りが生じ、数十km以上にわたって土砂が高速で流れることがある。この現象を乱泥流といい、それが生じた跡にタービダイトと呼ばれる地層を形成する。
 小沢さとる「スキップ・レッド」ではこの乱泥流を起こしてアトム戦車を海溝に沈めている。

(中央海嶺)
 大洋の中央には長大な海底火山の山脈が存在し、新しいプレートがどんどん生み出されている「プレート拡大軸」又は「中央海嶺」が存在する。中央海嶺の頂上は水深3000mぐらいであり、深さ1000mにも及ぶ「中軸谷(リフト系)」が存在し、そこから離れるに従って緩やかに深くなる。中央海嶺は滑らかに連続しているのではなく、いくつもの「トランスフォーム断層」で分断されている。
 太平洋には「東太平洋海膨」、大西洋には「大西洋中央海嶺」がある。インド洋には「ロドリゲス海嶺三重点」がある。

=>中央海嶺
=>トランスフォーム断層
=>プレートテクトニクス
=>Wikipedia

(海山、巨大火成岩岩石区)
 中央海嶺とは別に、マントルからのホットプルームの上昇による単発的な海底火山(ホット・スポット)がある。ハワイ島がその代表である。プレート運動に伴って海底火山が移動し、ホットスポットからのマグマ供給がなくなった海山が列を成すことがある。その代表がハワイ−天皇海山列である。青の本局(青のドーム)が置かれているマラコット海山は、このホットスポット起源と思われる(復刻版上巻p.40)。

 1億年前、巨大な火成活動(スーパープルーム)により大量の玄武岩の噴出があった。それにより形成された巨大な海台を「巨大火成岩岩石区」(LIPs)という。オントン・ジャワ海台がその代表である。

(海溝)
 海洋プレートが大陸プレートの下に沈み込む場所には水深1万mにもなる海溝が存在する。図鑑では誇張して描かれるが、傾斜角はせいぜい数度までである。プレートの沈み込みに伴って陸側を浸食することで傾斜のきつい「浸食型」、陸側に海底堆積物を押し付けていくため傾斜の緩やかな「付加型」などがある。
=>蛇紋岩貫入型沈み込み帯(マリアナ)

 太平洋には北のアリューシャン海溝(7,679m)、太平洋西岸沿いに、千島・カムチャッカ海溝(9,550m)、日本海溝(8,020m)、ここでフィリピン海盆を取り囲むように二手に分かれて、南方に伊豆・小笠原海溝(9,780m)、マリアナ海溝(10,920m)、ヤップ海溝(8,946m)、パラオ海溝(8,054m)。もう一方は日本南岸沿いに相模トラフ、南海トラフ、南西諸島(琉球)海溝(7,460m)、フィリピン海溝(10,057m)でパラオ海溝と合流。
 ニューギニア島の西からニューブリテン海溝(8,940m)、サンクリストバル海溝(8,322m)、北フィジー海盆を取り囲むように東メラネシア(ビチアス)海溝(6,150m)、北ニューヘブリデス海溝(8,340m)、南ニューヘブリデス海溝(7,570m)、ちょっと離れてサモアからニュージーランドの間にトンガ海溝(10,800m)、ケルマディック海溝(10,047m)がある。
 一方、大西洋東岸には、中米海溝(6,662m)、ペルー海溝(6,262m)、チリ海溝(8,170m)がある。太平洋はこれらの多数の海溝で取り囲まれている。
 これに比べて、インド洋にはジャワ海溝(7,125m)、大西洋にはプエルトリコ海溝(8,605m)と南サンドウィッチ海溝(8,325m)しかない。
 房総沖には「房総海溝三重点」といって、そこで日本海溝と伊豆・小笠原海溝と相模トラフが合流している。太平洋プレートと北米プレートとフィリピン海プレートの接点でもあり、何かがありそうで、時々、海洋SFの舞台となる。

 海溝内の最深部を「海淵」という。プレート沈み込みによってできた地形「海溝」の最深部を発見した観測船の船名が付けられたもので、地学的に特別な意味はない。測深当時の数値に誤りも見られ、「海淵」は1968年より国際的な水路測量用語から抹消されている。
 地球最深部は、マリアナ海溝のチャレンジャー海淵が1993年のIOC-IHO GEBCO合同指導者会議で水深10,920m±10mと確定された。最も正確な数値は、「かいこう」が到達した10,911m。なんせ現場の海面から海底までの水温・塩分・圧力プロファイルを実測して水深を求めている。
 その近くのビチアス(ビーチャン、ビーチャジ)海淵はもっと深い数値が報告され、少し前までの文献には地球最深部と記載されていたが、現在では測深に誤りがあったと見なされている。マリアナ海溝が深いのは、プレート沈み込み角度が他の海溝に比べてなぜか大きいという特異性と関連があると思われる。

=>最深部の決着(海上保安庁海洋情報部(旧水路部))

=>海溝3次元表示図をみる(同上)

順位最大水深海溝の名称海域備考
10,920mマリアナ海溝日本のずっと南。マリアナ諸島(サイパン、グアムなど)の東沿いチャレンジャー海淵、ビーチャジ海淵
10,800mトンガ海溝ニュージーランドのずっと北。トンガ諸島東沿いホライゾン海淵
10,057mフィリピン海溝フィリピン東沿いケープ・ジョンソン海淵、エムデン海淵
10,047mケルマディック海溝ニュージーランドとトンガ諸島の間。ケルマディック諸島の東沿い 
9,780m伊豆・小笠原海溝日本南方 
9,550m千島・カムチャッカ海溝カムチャッカ半島〜千島列島東沿い 
9,175m北ニューヘブリデス(サンタクローズ)海溝ソロモン諸島〜バヌアツ(サンタクローズ諸島〜バンクス諸島〜ニューヘブリデス諸島の西!沿い) 
8,946mヤップ(西カロリン)海溝フィリピン東方 
8,940mニューブリテン海溝ニューギニア島東方 
108,605mプエルトリコ海溝カリブ海と大西洋を仕切る西インド諸島の北沿い 
2002年版理科年表(国立天文台)より

(島弧、背弧海盆)
 海溝の背後では火山活動が活発。これはプレートが沈み込む際、堆積物とともに水がマントルに侵入して融点が低下するため。アリューシャン列島、日本列島、南西諸島、伊豆・小笠原諸島などを「島弧」という。島弧では比較的軽い安山岩質の大陸地殻が形成され、大陸が太古から次第に面積を増やしてきた原因となっている。
 その背後の海、ベーリング海、オホーツク海、日本海東シナ海などを「背弧海盆」という。
 背弧海盆の成因はまだ解明されていない。小松左京の「日本沈没」は島弧と背弧海盆の間のダイナミクスによってわずか2年間で沈没する設定。

=>衛星高度計による海底地形図3次元球体

(沈み込んだプレート残骸の滞留と崩落、ホットプルームの上昇)
 このような地球表面の活動と地球内部の活動は相互に関係しあっているらしい。沈み込んだプレートは地表から660kmにある上部マントルと下部マントルの境界あたりに滞留していて、溜まりすぎると下部マントルに落下することがあるらしい。この時には地球に大異変が起こったのかもしれない。天皇海山列が約4000万年前に方向転換したのは、この時らしい。
 プレートの沈み込みは、水や二酸化炭素をマントル内に運び込み、マントル物質の融点を下げて火山活動をもたらす。これによって島弧や大陸が形成されたり、背弧海盆が出来たりする。
 一方、南太平洋やアフリカでは、コア(中心核)とマントルの境界から高温のマントルの巨大な上昇流(ホットプルーム)があるらしい。

=>マントル・トモグラフィー

 ●海流は?
 貿易風や偏西風などの風応力、地球の自転によるコリオリ力、海面の高低差によって海流が生じる。黒潮やメキシコ湾流のように、大洋の西岸で流れが強くなる性質(西岸強化流)があり、速いところで4ノット(時速2km強)ぐらい。

 このほか、北極海や南氷洋では海氷で冷却された海水が深層まで沈降している。これが世界の深海をコンベアベルトのように循環していて、場所によっては1ノット以上になることもあるとか。最近知られたものとしては、日本海溝の陸側斜面の中・深層に2ノット程度の流れが知られるようになってきた(一種の西岸強化流)。

 このほか、不定期な現象ではあるが、前述のタービダイトによる流れは、非常に高速だとのこと。これによって掘られた蛇行した海底渓谷のなかでも、富山深海長谷はなんと500kmにもわたる(富山湾から日本海北部まで)。
 はたして、707に登場するジェット海流はあるのだろうか?

=>ブロッカーのコンベアベルト(1989年)/ブロッカー

=>ストンメルの深層循環(1958年)

=>海洋の大循環−何がそれを決めているのか

=>深層循環(日本海溝〜南海トラフの3000m以深に2ノット以上の流れ)>日本近海の深層循環マップ

=>日本海の深層循環(2000m以深で、最大15cm/s(0.3ノット)を超える流速)>日本海の深層循環マップ

Schmitz. Jr. 1996, Doney Schimel 2001

 ●海底資源は?
(海底石油)
 海底石油は、これまで大陸棚を中心として水深200〜300mまでが開発対象だったが、その先の深海に広がる海底扇状地など水深3000mあたりまで試掘範囲が拡大されている。
 石油の成因は、かつて太古の植物プランクトンによると言われていた。最近の研究では、約1億年前の温暖な白亜紀に、南北両極の海氷が消失してしまい、それまで両極で海水が冷却・沈降することで駆動されていた深層循環が弱まり、酸欠状態となった海洋で大繁殖したシアノバクテリア(真正細菌の一種)よるらしいことが分かってきた。
(メタン・ハイドレート)
 水深数百m以深の大陸斜面には、メタンと水分子が結合した(水和物)「メタン・ハイドレート」が存在する。石油に比べて燃焼時の二酸化炭素排出量が少ないことと、南海トラフなど日本周辺に豊富に存在し、高価な液化天然ガス船を使わずにパイプライン輸送できる可能性があることで注目されている。
 一方、メタン自体は温室効果が大きく、メタンハイドレート地層が崩壊すると津波や温暖化を招くところが今後の開発上の問題となっている。
(マンガン団塊)
 水深数千mの平坦な海底には、ジャガイモのような「マンガン団塊」が広く分布している。
(熱水鉱床)
 中央海嶺や島弧や背弧海盆の水深2000〜3000mには、熱水噴出によって形成される「熱水鉱床」がある。
=>有人潜水調査船「しんかい2000」により伊豆・小笠原弧で大規模な多金属硫化物鉱床を発見
(コバルト・リッチ・クラスト鉱床)
 海山の側面には、皮状あるいはアスファルト舗装のような「コバルト・リッチ・クラスト鉱床」が発見されている。熱水鉱床よりも存在する水深が浅いので、こちらの方が早く開発されるようになるかもしれない。

(続く)


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