■新サブマリン707教室

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2004年12月31日更新

 海洋SFでは何といっても潜水艦が主役になることが多いが、潜水艦内でどのような言葉が飛び交い、どんな音が聞こえるか、守秘義務も絡んで謎が多い。
 元潜水艦水雷長Sさんの国産潜水艦隊発足当時のお話を中心に各方面の情報をまとめてみましたが、筆者の誤解による部分や、現在の潜水艦では違っている点も多いと思われますので、広く情報をお寄せいただきますようお願いいたします(指摘いただいて追記した部分に下線を付します)。

赤字は「潜航!−ドン亀・潜水艦幹部への道」(2000、山内敏秀、かや書房)より

■潜水艦内の組織?
 ●艦内組織と当直
 SF・戦記作家の林譲治さんのサイトの自衛艦の艦内編成に詳しい。
 これによると潜水艦の場合、仕事上の編制として「船務科」、「航海科」、「水雷科」、「機関科」、「補給科」、「衛生科」の6科が訓令で定められているが、生活上の編制である分隊は以下のように4分隊に分かれている。

・第1分隊「水雷科」:水雷長が分隊長。その下に水雷士、操舵員
・第2分隊「船務科・航海科」:船務長が分隊長。その下に船務士(数名いる)、水測(水測員長(ソーナー員長)、次席、水測員)、電測、通信、電子整備がある。航海科の長が航海長(副長)航海科の先任者を信号長と呼び慣わす
・第3分隊「機関科」:機関長が分隊長。その下に機関士、電気士
・第4分隊「補給科・衛生科」:補給長(経理、補給を担当)が分隊長。調理員長、調理員(正式名称は「給養員」)

 艦長がこれら6科/4分隊の上に位置する。
 副長は航海長(航海科の長)でもある
 艦長は水雷長、船務長、機関長の順に経験する(もちろん副長を経る)。商船では航海士と機関士で昇進ルートがきっちり分かれているのに比べると、潜水艦の特殊事情が伺える。
 このほか、艦長の上に司令が乗船している場合があるが、司令は潜水隊、つまり複数の艦を指揮する。潜水艦は通常単独行動なので、乗艦中の司令の号令により複数の艦が同時に隊運動をすることはまずない。

 ●当直体制
 3直体制であり、「船務科」、「水雷科・航海科」、「機関科」の3分隊の各分隊長が各当直時の責任者、すなわち哨戒長となる。哨戒長は潜航時には艦橋を最後に退き艦橋ハッチを閉める責任がある。哨戒長を補佐する幹部は「哨戒長付き」と呼び、潜航中は「潜航指揮官」を兼ねることが多い。また、「補給科」(第4分隊)は食堂当直員として、当直に入っている
 艦長と副長は当直外とのこと。
 戦闘時は総員配置体制。従って戦闘時に艦長と副長が揃っているのはおかしくない。

 浮上中の艦橋には哨戒長と曹士2名が立つ。
 バラストコントロールパネル(略してバラコン)のベント弁操作、船内全体の安全・気密確保に係る重要機器の操作・監視を行う油圧手(ゆあつて)には下士官トップであるCPO(Chief Petty Officer:海曹長)が第1〜3分隊からそれぞれ1名が指名される。現在では潜訓(「潜水艦乗員の教育訓練」を参照)を出ていれば、第4分隊でも油圧手をやる(現にやっている艦もあり)
 高圧空気の操作を行うのは空気手(くうきて)だが、今の潜水艦にはいない艦内通信系の受話器を取って整備板に状況を表示するのが「IC員」

・3直制の時間割り当ては、午前8時を基点に4時間(A)、4時間(B)、4時間(C)、3時間(A)、3時間(B)、3時間(C)、3時間(A)で24時間。したがってシフトがずれていく。当直サイクルが24時間でないというのが凄い!。
・食事は1日4回
・商船では3直制なら3ヶ月乗船、1ヶ月休暇となるが、自衛官の場合はそのような休暇はないとのこと、寄港地、ドック時に適宜自宅から通ったり家族を呼び寄せたりするとのこと。キッ厳しい!

 ●階級
 各国の過去・現在の階級がフリー百科事典のウィキペディアに詳しい。
=>軍隊における階級呼称一覧

 これから潜水艦の場合を見てみよう。
・現在の海上自衛隊の潜水艦の場合
 大きくは士官(防衛大学校及び一般大学出身+下士官からの登用)と海曹(下士官)と海士(水兵)に分かれる。
 士官クラス:二佐(二等海佐、艦長相当)、三佐(三等海佐、副長相当)、一尉(一等海尉、各科の長相当)、二尉(二等海尉)、三尉(三等海尉)、准尉(准海尉)がある。旧日本軍で言えば中佐、少佐、大尉、中尉、少尉に相当する。
 二佐が艦長、三佐が副長。サブマリン707の速水艦長が「一佐」なのは数々の功績を称えられてのようだ。
 下士官クラス:海曹長(現場のたたき上げ的存在)、一曹(一等海曹)、二曹(二等海曹)、三曹(三等海曹)
 水兵クラス:海士長、一等海士、二等海士(一水、二水が一士、二士に変わった)があるようだ。

・米海軍の場合
 士官クラスでは、一佐はCaptain、二佐はCommander、三佐はLieutenant Commander、そしてLieutenant(一尉相当)、Lieutenant Junior Grade(二尉相当)、Ensign(三尉相当)と続く。
 スタートレックのエンタープライズ号の艦長は「Captain カーク」と呼ばれているから速水艦長のように特別格上なんだろう。米英では艦長はCommanding Officerと呼ばれ、C/O又はC.O.(シーオー)との略称は使われないとのこと(by HMSさん)。
 副長はXO(エックス・オー)と呼ばれているようだ(揶揄して「ペケマル」と呼ぶことあり)。
 下士官クラスにはChief Petty Officer、Technical Sergeant、Staff Sergeantがある。
 兵卒クラスはSeaman。

 ●潜水艦乗員の教育訓練
=>幹部自衛官任用制度

  ・一般の中学を卒業して
 自衛隊生徒(海上自衛隊の場合は江田島の第一術科学校)として採用され(三等海士)、4年間の教育後、卒業すると高卒資格を得るとともに三等海曹に昇任する。幹部に昇進するルートがある。
 優秀な水測員は潜水艦にとって重要な存在。自衛隊生徒としてエリート教育を受けた者が乗り組んでいる場合もある。ただし、艦内でいても2名程度。一人もいない艦もある

  ・学歴問わず18才以上
 任期制自衛官(当初3年事後2年。自衛官となる最も一般的なコース)として採用(二等海士)される。試験を経て海曹となるルートもある。

  ・一般の高校を卒業して
 曹候補士(部隊勤務を通じて養成)、一般曹候補生学生(2年の教育・訓練期間)などとして採用(二等海士)され、卒業すると三等海曹となる。
 海曹からの昇進ルートとしては試験を経て幹部候補生を経て幹部自衛官になるルート、直接幹部自衛官になるルート、准尉を経て幹部候補生になるルートがある。
 防衛大学校(横須賀にある)に入学する(採用される)と卒業時点で幹部候補生となり、幹部候補生学校(海上自衛隊の場合は広島県江田島にある。)で教育・訓練を受け、術科学校、幹部学校を経て昇進していく。

  ・一般の大学を出て
 幹部候補生として採用される。

 以上のように、「サブマリン707」の賢次たちのような未成年の潜水艦乗組員というのは十分ありうるが、潜水艦隊発足当時は水上艦で経験を積んだ者が潜水艦に乗り込むのでだいたい25才以上だったとのこと。
 15年ほど前から、教育隊を修業と同時に海上自衛隊潜水艦教育訓練隊(広島県呉市にある。「潜訓」と呼ばれる。)に行くコースが一般的になり(水上艦を経験してからのコースも残っている)、高校を卒業してすぐに入隊すると、18〜19歳で実習員として潜水艦に着任し(実習期間6ヶ月、曹士なら4ヶ月)、19歳で乗員となることも可能

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