2003年11月9日更新
=>ハイドロスフィア
イェン:恒星間飛行してきたただ一人の生き残りの少女
テンクー:<イヴァロ号>自身?:
シェト:<イヴァロ号>を送り出した星の管理局長
イォラ:シェトの部下
オカルト研究会
桜井恭子:主人公(コード名:シャルトリューズ・ジョーヌ、通称シャル)
吉武一三:部長(同じく、シーバスリーガル)
草野新:オレンジ頭の副部長(同じく、ブッカーズ)
ミルドレッド・シノハラ:弓道部員だがオカルト研究会に入り浸っている(同じく、ティアマリア、通称ティア)
生徒会
諏訪部克之:会長でミルドレッド(ティア)に気がある
相馬春花:会長に気がある
島田透;書記
これ以上のあらすじは読んでからのお楽しみですが、「パンゲア」をご存知の方でも「パンサラサ」は知らない方が多いかも。本作品はその「パンサラサ」をモチーフにした貴重な地球・海洋SF作品です。
=>パンサラサの惑星(明日菜さんのサイト)
そのほかの地球科学テーマ・古代文明ではクラカトア火山、ユカタン半島のチチュルブクレーター、1万2千年前、イスラエルの北部のナトゥフ文化、ナスカの地上絵。
生物テーマが一番多いかな。種の多様性、炭素結晶生物、内因性のモルヒネ様物質β−エンドルフィンとその含有ニューロン、神経伝達物質ドーパミン、種族維持的合目的性テレオノミー、バクテリア状エイリアンとの共生、半導体隕石からなる珪素生物、ヤコブソン嗅覚器官、フェロモン、Tiプラスミド、種内淘汰/性淘汰、野生種、ゲシュタルト知覚、光合成によってタンパク質を合成する緑藻類〈氷雪プランクトン〉、粘菌のようにもふるまう特殊なコロイドでできた氷状生物(滝の神)、ジャンクDNAの中からスイッチを入れれば発現するスーパー遺伝子、根粒細菌をもつ農作物、キメラ、ネオテニー(幼形成熟)、アンチセンスRNA、細胞の寿命を決めるテロメアと、それを修復し生殖細胞や肝細胞にしかないテロメラーゼ、海馬、高酸素濃度と巨大昆虫、行動遺伝子、セロトニン強化。
宇宙・天文テーマでは、核爆発による電磁パルスEMPを利用したガンマ線ビーム衛星、ネメシス、オールトの雲、月の潮汐効果、銀河規模の光コンピュータ、ラムダ超核子の波動収束、スーパーストリングス、静止軌道上に建設された全長1085mの仏座像、SETIなどのテーマが登場。
まず天王星や海王星の発見、さらに水星の近日点の移動を説明するため、水星よりも内側を廻る惑星ヴァルカンの探索のエピソードが面白い。
また、月が離れていくことと地球の自転が遅くなる問題、さらには地球中心核の回転速度の変化、うるう秒の挿入の話から月の火山活動あるいは発光現象の観測エピソードが絡み、それがどんどんと複雑なストーリーに発展していく。
時間の流れが一方向ではなく、なんども過去に遡ったりして、一人称で語られる人物もどんどん変わっていくので、時間軸の流れと登場人物リストを作りながら読み取っていかないとなにがなんやら分からなくなるのですが、そこんところを克服すれば、大変面白い作品です。いや、ほんと、凄い。
=>掲載サイト
【登場人物】
・アンドレイ・ベローフ:国際天文学連合、太陽系小天体監視委員会議長-7,31
・マリー・メイアーズ:国連、宇宙空間平和利用委員会-7,31
・タチアナ(ターニャ)・キリーヴァ:カザン大学3年生。ドウベル・ヴィジョンという人工視力装置を着用-9,22
・シーマ・シャハク:35歳、バークレー校所属、イスラエルのテクニオン工科大学の出身。心理学と精神医学で博士号を取得後、ベルリン心理学研究所に在籍中、「虹の入江基地」の医療センターで隊員の精神分析と心理カウンセリングを担当。宇宙船など閉鎖空間における心理過程を研究。2033年度のアクシュータ賞(心理学部門)を受賞。現在は電波天文学に関心を持ち、1977年の「WOW Signal」が月面からの電波が人工衛星マイラー・バルーンに反射したという説を発表。ドクター・アンの要請によりムーン・クリッパーL-19で月に。-12,13,14,25,26,27,29
・ジョイス・ヨー:2010年、北京生まれ。イギリスのレスディング大学の大学院を終了後、2034年からイギリス王立統合軍事研究所で国際テロの分析と対抗措置を研究。2037年からはイギリスのテロ対策特殊部隊「SAS」に移籍、イギリス王立統合軍事研究所の研究グループで大規模な監視カメラをネットワーク化し、高速で画像照合を行う技術を開発。今年に入り、テロ対策用のテレプレゼンス・ロボット技術の研究に取り組んでいる。中央政治局委員の楊紫瓊を叔母に持つ。-16,29
・アリューヌ・トゥーレ:パリ大学医学部。アメリカのハーバード大学医学部で逆ドウベル過程、つまり脳から映像情報を取り出す技術を学び、重度の統合失調症に対する心理療法にこの技術を用いている。-16
・ハーヴェイ・ウッドワード:USAプラネットの科学担当記者-18,19,22
・エヴリン・パヴロヴナ・モスカリョーワ:東欧からの留学生、ニューヨーク大学で美術史を専攻-18
・マイケル(マイク)・チャン博士:台北生まれ。小学校に入る頃に両親の仕事の関係でカナダに移住。ウェスタン・オンタリオ大学の数学科の大学院生、ジョージア州立大学の準教授の職を得て円周率計算を研究。-10,19,20,21,22
・チャド・ベイリー:国立エネルギー研究科学技術計算センターで数列内の何らかの秩序を発見するプログラムを開発。-10,19,20
・クラウディア・コーニック:ベイリーの助手/学生。ショートヘアのブロンド女性-20
・芹沢達治:放射能や細菌、化学物質などを使ったテロ事件の初動捜査を行う警視庁「NBCテロ捜査隊」に所属。化学、英語とフランス語に堪能で、リヨンのインターポール犯罪情報局に出向中。-15
・バリー・マクファーレン博士:セーターの男。ロスアラモス国立研究所で、チャン博士のコンピューター利用を支援していたサポート・サイエンティスト。30代半ばくらいで、厚手の、深い緑のセーターにジーンズ姿。-10,20,21,30
・レイ・ホルト:マクファーレンの上司である科学技術部長-10,30
・レベッカ・コクラン:英王立統合軍事研究所の反サイバーテロ部長。4年半以上にわたり「アナンタ」を追跡-11,22
・アンドレイ・ペシチャストノフ中佐:ロシア共和国保安部テロ対策局局長-22
・孔奧寧(ドクター・アン):「雨の海基地」の医療部門の責任者。40台半ばのはずだか、どう見ても10歳以上若く見える。-13,27,29
・コアング・トゥトゥラム・リガバ:エチオピア中部のオロミア州の農家の出身。マカレ大学地球物理学科。黒人青年。背は高いほうではないが、がっちりした体格で額は広く、やや丸顔で目尻がさがった温厚そうで気品のある顔立ち。日本に留学経験あり-24,28
・美濃良治:原因不明の拘束型心筋症。車椅子と人工知能の音声を利用。地震早期警報システムを開発した日本のミノセック社の創始者を叔父に持つ。母は美濃幸衣子。ミニバラを趣味とする-24,26,27,28
・李肇星:李船長。「嫦娥10号」で月面『虹の入江』着陸。-16,32
・徐甬祥:月探査計画の最高責任者である中国科学院の院長
・ジェイムズ(ジム)・ヴィンセント・タイラー:「虹の入江基地」で地質調査を担当。イギリス陸軍所属。額には細かい皺と大きな抜糸跡があった。頬にはわずかに髭が残る。中東とアフリカで3度ほど戦闘に加わる。深刻なアルコール依存症を経験。妻をアフリカで亡くし、ひとり娘ジュリアはオクスフォード大学で天体物理学を学んでいる。-25,32
・マイク・オーウェン:アメリカ大統領-23
・エレノア・ハンセン:次期大統領候補である共和党のアラバマ州知事。
・クリス・クロフォード:米大統領科学補佐官。人口知能の専門家。ジョンズホプキンス大学脳神経学科で、脳の学習・自己組織化過程の数学モデルの研究を行っていた。-23
【年表】
2031/2/20:シーマの最初の月訪問
--4/11 22:02:ジム・タイラー中佐が事故により死亡
--11月:シーマが「雨の海」の一角に位置している「虹の入江基地」で心理カウンセリングを担当。李肇星中佐に出会う。
2034/4月:イラン核輸出危機を李肇星中佐が阻止
2036:マシンQ完成
2037/6月:「地球物理研究ジャーナル電子版」号に"The Next 50 Years of Climate Changes"が公表。
2038/5/18:パリ市内アンペール通りの地下55m生物兵器の貯蔵所で銃撃戦
--6/7、訓練中のジョイス・ヨーのもとに、母親が交通事故で入院との知らせが入り、ロンドン市内ロイヤルパーク病院向かいのアーネスト銀行で銃撃戦。良治と出会う。
2039/1/1 00:00 0秒:直前にも「うるう秒」、23時59分60秒が挿入された。
--3月:チャン博士が円周率の論文掲載。月の北極近くに設置された月面天測望遠鏡が、月の自転に奇妙な変動を検出
--8/2:マイク(チャン博士)がチャド・ベイリーの研究を再開
2040/2月:月震の震源が上昇し、かつアリスタルコス台地に移動しつつあることが観測される。
--5/8(火)9時30分:クリス・クリフォードがCAPの「今後の人口調整策を含みますか」の問いにYes
--9/14:ハーヴェイ記者、匿名の手紙によりアリゾナのユーマ砂漠の下180mに作られた「対バイオ兵器研究所」への核テロ?を報じる。
--10/23:良治が地球を発つ。
--11月に入る頃:チャン博士の研究が完成間近。クラウディア・コーニックから呼び出し。
--11/13:シーマがWOW!シグナルについて学会発表。
--11/1912時00分:チャン博士がマシンQ。
--11/19の夜半過ぎ:コーカサス天文台に旅客機が衝突
--11/20午前2時頃:マクファーレン博士からの電話、罠
--11/21:チャン博士の捜索依頼
--11/23:アトランタ・デイリー・ネットワークがチャン博士の失踪事件を報じる。
--11/29正午:チャン博士がハーヴェイ記者に会う。
--11/30:チャン博士の車が貯水池で発見される。
--12/4 19:08:ハーヴェイ記者の同僚8人がエレベータ墜落事故
--12/5:バリーの同僚レナード・モリスが自動車の転落事故
--12/16 15:48:シーマが「虹の入り江基地」を再訪。
--12/16 22:55頃:アリスタルコスの地下20kmでマグニチュード5.1の月震が発生。
--12/17 21:25:良治がアリスタルコスで事故に遭遇。
--12/18:バリー・マクファーレン博士とレイ・ホルトは、ロスアラモス国立研究所の地下に設置されたマシンQからCAPというプログラムを削除
--12/20 14:53 27秒:地球上空爆発の1.4秒前にアリスタルコスで発光現象
--12/20 世界時14:53:DOD-4013がインド洋上空で爆発して大流星群が降り注ぐ。