■人魚姫伝説

 「人魚」には、肉を食べると不老不死になるとか、話すことが禁じられているとか、愛する人を殺さないと元の姿に戻れないとか、漫画家が堂々と女性の裸を描けるとか、さまざまなモチーフがあり、それが多くの作品を産み出す原動力となっているようです。尻尾があるのが典型ですが、2本足のヒューマノイド型もあります。
 この「人魚伝説」のニュアンスのない水棲人、半魚人(改造もの含む)、沈んだ大陸の末裔、その他海中の知的存在については「深海の知的存在」へ。

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2004年8月25日更新

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●「赤いろうそくと人魚」(1921、小川未明、1921 新潮文庫、1979 ポプラ社、1999 偕成社)
 童話。(小狸工房さん紹介)
=>松岡正剛の千夜千冊

絶版本を投票で復刊!

●「安寿と厨子王丸」(1961、東映漫画映画)
 どこが?と思われるでしょうが、姉の安寿が川に身を投げると「溺れ死ぬ」描写を控えたのでしょう、泡の中で人魚に生まれ変わるんです。幻想的なシーンでした。(JINさん紹介)

●「海底少年マリン」(『ドルフィン王子』/『がんばれ!マリンキッド』、1969、TVアニメ)
 海中パトロール隊の一員であるマリンは、ウエットスーツに水中で呼吸ができるオキシガム、腕につけたブーメラン、かかとに仕込まれたハイドロジェットで悪者と戦うらしい。人魚のネプティーナや白イルカのホワイティが仲間。<P10号>(ピーワンゼロ号)という潜水艇も登場するらしい。
=>サブタイトル一覧
=>オキシガム
=>The Marine Boy Gallery
=>The Marine Boy

●「海のトリトン」**(1972、手塚治虫、NHK放映)/漫画版(原題「青いトリトン」)
 アニメ版トリトンは、アトランティス人の末裔であるポセイドン族とトリトン族が海の覇権をかけて戦うといった設定で・・・人間に育てられた少年トリトンの成長の物語です。(by ひらさん)ピピ子という人魚が登場
=>トリトンの海(うみかほるさんによるファンサイト)
=>少年少女海洋冒険物語(sayalautさん)
=>TRITON DREAM(abechiさんのサイト)

●「水のアマゾネス」(1977、週刊少年ジャンプ、JUMP SUPER AGE『はるかなる朝』に収録):白人金髪の人魚族が登場=星野之宣

●「人魚姫へ・・・・・・」(1979、大和真也、1979奇想天外10月号)
 「僕は君が好き」と告白したのに、ただ笑っただけだった彼女。答えてくれるのを待つ間に体表面が石化してしまった僕・・・。

●「人魚変生」(1981?、山田章博、東京三世社、)
 耽美漫画。(JINさん紹介)

●「スプラッシュ」(1984、米映画)
 ダリル・ハンナ、トム・ハンクス主演のポジティブ人魚さん映画。(JINさん紹介)

●「われら人の声に目覚めるまで」(1984、ルイス・シャイナー、アンソロジー『ミラー・シェード』に収録、ハヤカワ文庫SF)New
 蒼く広がる海の底に見たものは――人魚? 幻と現実のはざまに揺れる人々の心(キャプション) by 木戸英判さん

●「パール・ガーデン」(1985、萩岩睦美、前後編、集英社、りぼんマスコットコミックス)
 「純粋な人魚の少女ぴあの成長と、彼女によって周囲の人々が癒されていくお話」だそうです。 絶版本を投票で復刊!

●「マーメイド トリップ」**(1989、垣野内成美、原作:平野俊弘、アニメージュ文庫)
 水の故郷(くに)に住む水の民(ひと)。湖の浮き島が人間世界との接点となっており、3つの宝玉がその扉を開けてくれる。女王体制。尻尾はない。

●「2100年の人魚姫」**(1989、折原みと、講談社、χ文庫)
 2100年から修学旅行でタイムトラベルしてきた15才の未来少女。ある男と街でぶつかったためにその男の交通事故で死ぬ運命を変え、そのせいで未来少女は4才で死んで存在しないことに。その男が将来の結婚相手と出会い心を通わせる前に、少女は男を殺さなければ、少女は消えてしまう・・・。
 恋した男が他の女性を好きになってしまったために、男を殺さなければ自分自身が泡となって消えてしまう人魚姫物語になぞらえた作品。

●「真珠色マーメイド」(1990、中川佳子、小学館てんとう虫コミックス、全3巻)
 海の底深くにある真珠色の国に暮らす人魚・パールの冒険物語らしい。世界にちらばった真珠色の国の7つのお守りを探して、時を越えて冒険するらしい。 絶版本を投票で復刊!

●「ダーク・マーメイド」**(邪神伝説シリーズ2、1990、矢野健太郎、Gakken、ノーラコミックス)
 人魚とは逆に、上半身が魚、下半身が人間の「魚人(うおびと)」を裏切った漁村の人々。怒った魚人にさらわれた網元の一人娘は、海神の精を受けて・・・。人魚も登場。

●「人魚姫のくつ」**(1994、野中 柊、新潮文庫)
 サーカスの花形スターのまり子は、3人の熱烈なファンと恋をし、妊娠したので3人のうちの一人と結婚。専業主婦となり女児をもうける。恋の成就のあとに迎える妊娠・出産、そして日常生活とは・・・。
 題名は人魚姫物語とシンデレラのガラスの靴から由来するのであろう。幸福な結婚で物語が終わる白雪姫、シンデレラ、眠れる森の美女。声を失い恋が成就することなく泡となって消える人魚姫。これらを対比させることによって、「恋」の先にあるものを描いている。

●「人魚の森」**(1994、高橋留美子、小学館、SUPER QUEST BUNKO)
 人魚の肉を食べたために不老不死となり、500年生きてきた湧太。人魚の隠れ里で生まれて15才まで囚われていた真魚(まな)は、知らずに人魚の肉を食べて不老不死となり、湧太に助け出されて旅に出る・・・。
 人魚の肉を食べてもほとんどは死に、あるいは「なりそこない」という化け物となる。

●「マリンカラー」(1995-98、SUEZEN、角川コミックス)
 デザイナー志望の人魚(女性)パレッティの物語。珊瑚礁、沈船、イルカ、ウミガメ、ジンベイザメ、いるか、など海中シーンたっぷり。オキシ・ガムならぬ「オキシジェン・コンブ」が登場。酢コンブ味でとてもすっぱい。実は主人公が海中アートに使うマリンスプレーの圧縮酸素剤。舞台は南海の楽園、ディテオス環礁ベルサ島。
@ABCD

●「人魚の歌は春風とともに」**(1996、森まどか、Moonlight Romance)
 演劇部に所属する男子高校生。映画「ピンク・マーメイド」の主役に抜擢される。ピンク・マーメイドとは新種のドラッグだが、それを飲む主人公に遥か彼方の海に棲むイルカからの通信が届く。人魚の生まれ変わりである主人公に、ペットショップや水族館に囚われている海水魚を救出して欲しいという・・・。水族館や海の場面はあるが、人魚は登場しない。

●「マーメイド・ぱにっく(1)」**(1996、小泉まりえ、講談社X文庫、1・2巻?)
 超大昔、海の底に沈んだリメインの神殿に住んでいる女性ばかりのマーメイド。そのプリンセスの真珠は、1000年に1度、15才の誕生日に人間となって地上の男性と相思相愛のキスを交わさなければいけなくなった。もし16才の誕生日までに成功しなければ、マーメイドはみんな泡の泡となり、しかもブラックパールを操る海の魔女ウインディアが海を暗黒に変えてしまう・・・。

●「俺の足には鰓がある−悪の改造人間純情編」(1996/03、富永浩史、富士見ファンタジア文庫)
 彼女が悪の秘密結社の改造人間になってしまった。俺も彼女にスカウトされ、秘密結社インバーティブリットの一員として三葉虫の改造人間にされてしまう・・・。

「サウザンドアームズ」(2001、富士見ファンタジア文庫)
 レッソカンパニーのRPGを原作とする。人魚姫がゲストヒロイン。

●「ガラスの人魚」**(1997、宮沢由貴、小学館、FLOWER COMICS)
 水泳部員の少女。遠泳に誘ったライバルが溺死し・・・。人魚は登場せず。

●「深海伝説マーメノイド」(1997-98、TVアニメ、寺田憲史、XING原作)/「MEREMANOID〜マーメノイド〜」(1999、プレーステーション用RPGソフト, (株)エクシング)
 全24話のTVアニメを全12巻のビデオにしたうちのどれか1巻。ちゃんと海中が舞台。男女とも人魚型。ただし海底に立つ時は2本足に分かれる。2話分だけでは内容分からず。
ゲーム

●「エレクトリック・マーメイド」**(2000、桃川春日子、新書館、WINGS COMICS)
 旧式ロボットKA-9<カラス>は、百体以上のロボットを壊して回り、自ら廃棄処分を求める。<カラス>は最新型超高性能ヒューマノイドTSU-3<つぐみ>を壊そうとして人間型に改造され、超高性能ヒューマノイドSU-7<すずめ>のパートナーを命ぜられる。<すずめ>への奴隷機能のために自分を壊すことができない<からす>。自分を救ったのが<からす>であることに気付いた<すずめ>は、<からす>に壊れてはダメだと命ずることを自ら禁じる・・・。
 話すことを禁じられる人魚姫の物語がモチーフとなっている。

●「人魚の切片」**(2000、野田麻生、角川ティーンズルビー文庫)
 高校一年生の少女は、祖母から人魚の血を引いているため、大量の水に浸かると人魚に変身してしまう。ある日、3人の男性(同族の人魚)が血筋を絶やさないためプロポーズに現れる・・・。
 人魚は絶滅に瀕していて、九州のある島に暮らしている。島には20才以下の女はおらず、高齢化が進み、子供が産まれなくなっている。女の人魚だけが真珠を持ち不思議な力を持っている。人魚の寿命は人間とたいして変わらない。人魚の血を引く女は出産すると変身しなくなる。

●「月の人魚姫」*(2001.10.1、榎木洋子、角川ビーンズ文庫)
 500年前、惑星「セブン・シー」に第一期植民者が入植。大規模な火山活動による有毒成分を避けるため、海の民(人魚)となる。第一期植民者の200年後の第二期植民者の陸の民が入植。海底200mの大陸棚に海の宮殿都市「マカリゼイン」がある。

●「海賊と人魚姫」(榎木洋子)
 成人して自らの性別を決められる日が来たら、男を選んで宇宙飛行士になることを夢見る、海王の末っ子・イル。「月の人魚姫」の続編。(yuntaさん紹介)

●「蒼い満月の夜眠りについた海で」(2002、NABE)
=>蒼い満月の夜眠りについた海で (NABEさんの袋小路人情商店街の東小路出版より)

●「人魚狂時代−マーメイド・クレイズ」*(2002、香椎オルカ、秋田書店、ボニータCOMICS)
 妻を亡くして現代医学に絶望した心臓外科医。人魚の肉は不老長寿の妙薬と、大学病院を辞めて人魚の研究に没頭している。19世紀末まで存在していた人魚は、100年にわたる人魚狩り「人魚狂時代」によって姿を消したという・・・。人魚の肉を食べると血が青くなり再生能力が以上に高くなるという。

●「プリンス・マーメイド」**(鬼外カルテ・其ノ九、2002、碧也ぴんく、新書館、WINGS COMICS)
 金髪で蒼い目の男の人魚が尾鰭を脱いで、ある家族の元に現れる・・・。男だけの人魚王国「セイレーン王国」の1年は地上の12年にあたる。16才の誕生日の日から毎年1日だけ地上に出て求婚する(地上時間では12年に12日だけ)。人魚と結婚した女性は「八百比丘尼」として800年以上生きることができる。尾鰭を煮てその煮凝りでできる薔薇の香りの青い「海薔薇のゼリー」が登場。

●「海洋叙事詩 Merveille」(、中村浩一郎、電撃文庫)
 メディアワークスが提供する参加型WEBゲーム&オンライン小説。
=>海洋叙事詩 Merveille

●「人魚王子」(2003、吉原 由起、フラワーコミックス)
=>amazon
 人魚のカツオ(兼ワカメ)は雌雄同体とゆー面白い設定なのです。が、あんまし人魚らしい場面はないのでした。お話自体は読みやすくて面白くてよかったのですけど、人魚見たい人にはハズレかも。(by 乾杏子さん)

●「葉緑宇宙艦テラリウム 瑠璃色の水妖姫(マーメイド)」(2003、ライトノベル)
=>bkl
 これですが、イルカを素体にしたサイボーグの美青年とかは出てくるんですけど、人魚っつーのは比喩だけで出てきません。海洋関連SFものとしては面白いかなー。
 ちゃんと読んでないので(ぉ)論評は差し控えますが、やっぱり人魚モノとしてはハズレと言わざるを得ませんでしょう。(by 乾杏子さん)

●「人魚姫のためらい」(2003、「海の都の伝説」4部作の完結、シルエット・ロマンス)
(乾さん紹介)=>amazon

●「姫魚 シーボルトの人魚」(2003?、香椎オルカ、ミステリーボニータ掲載)
 日本ヒロイン物語。「人魚狂時代−マーメイド・クレイズ−」と同じ作者。(乾さん紹介)

●「青い海のサシミ」(2003、西川伸司、講談社月刊少年マガジンコミックス、1-2巻)
 「じじばばファイト!」の外伝として始まったらしい。海の民”セレ族”の一人である人魚のサシミ(本名ナギサ)は、1時間に一度は声を出さないと人間の姿になってしまう。つまり寝ている間にどいうしても人間の姿となってしまい、それが積み重なると、やがて泡となって消えてしまう。このあたりの詳しい事情は「じじばばファイト!」を読まないと分からないが、サシミはとある村長の息子よしおに惚れて、人魚の魔法使いのおばばの力を借りて人間になれるようになったが、よしおに裏切られて2年以内に人間の誰かと結婚しないと消えてしまうことになったようだ。
 そのサシミは人間の社会から海に戻ったところ、海洋探査を目的とした大型潜水艦<双鯨>(玉本艦長ほか)と衝突して記憶を失ってしまう。<双鯨>に救助されたサシミは妹のツナミから、この運命を変える方法が「海竜神の神殿」という未知の場所にあることを知らされる。そこで<双鯨>のクルーたちとともに神殿を探す航海に。そこにはセレ族、トロ族、ガラ族にまつわる秘密が。海竜神オーヴァの正体は・・・。
 双胴の<双鯨>がなかなかかっこいい。3万年前の超古代文明の滅亡が絡むなど意外に海洋SFしています。下半身だけ人間の姿になるアイテム”魚の目”など登場。
 その他の登場人魚に、セレ族(硬骨魚系):上の姉ミサキ、人間嫌いのフライア、トロ族(軟骨魚/軟体動物系):エレイン、マーレイのレイ姉妹、ハンマーン、神官プルーニョ、巨大なイカ型のクラーケン、ガラ族(甲殻類系):巨大なエビガニ型の戦神ガラザミ、海賊船<フィッシュボーン>:キャプテン・ブルース、レダ、キー坊(キース)。
=>amazon
=>鶴溜とサシミの有床村役場兼寄合所(すめらきさんのサイト)

●「青い珊瑚の伝説」(石神 誠、島影社、2004.2)
 作者は中学校教諭を経て現在小学校勤務。児童向け(たぶん中学生向け)作品。4つの短編だが「青い珊瑚」で繋がっている。

第1話「ユウナの海」:子供の頃に自分の責任で妹と漁師の父を亡くした青年。重傷を負ったイルカを介抱し、快復したイルカはやがて仲間の元へ戻っていく。その後2匹の子犬を海で見つけるが、その子犬たちは青年や村の人を何度も助ける・・・・。沖縄の家に飾られている2匹の犬「シーサー」の由来を物語にしたもの。

第2話「ブルーコーラル」:主人公と幼馴染の有希は幼少の頃に溺れて、うち有希は3日後に奇跡的に助かっている。それから9年後、有希の体に異常が生じる。有希を助けた人魚から分けられた命によって、有希も人魚の体に変化し始めたのだ。それを元に戻すには青い珊瑚が必要だった・・・。

第3話「不思議な転校生」:運動神経も勉強の美少女が転校してくる。しかしいつも長袖を着ていて、水泳の授業にも出ない。実は・・・。

第4話「プログレス」:地球温暖化でほとんどの大都市が海面下に沈んでしまった時代。人類は月面コロニーとテラ・フォーミングした火星と地球の海底都市に暮らす。火星の臓器移植助手の主人公は長期休暇で地球を訪れ、そこで海底都市に住む少女に助けられる・・・。

●「さんごの住む町」(2004, 副島一也、オンライン小説)西村屋選
 深海調査艇<あさせ>と支援母船<とおあさ>が登場するオリジナル作品。<しんかい6500>が引退して1000mまでの海底調査に従事している。いい作品です。*
=>さんごの住む町

●「蒼い呼び声」(2005、乾杏子、オンライン小説)
 主人公が高校二年の深見蓮、深見康明教授と香奈枝夫妻が3才の頃引き取って育てる。同僚の那神洋子とドイツ人ライカ・ワッセルマンの息子。高山助手、同級生の千秋、謎めいた美人サキ
=>蒼い呼び声

●「マーメイド・ヘブン」(2005、長谷川裕一、月刊ドラゴンエイジで連載開始、富士見書房、角川コミックス・ドラゴンJr. 2005.4で単行本化)
 不治の病で人工冬眠を選んだ主人公、獅馬渡は、300年の眠りから目覚めた。そこは地球温暖化で陸地の大部分が水没し、高度な文明が滅びてしまった常夏の世界。目覚めさせたのはキカイ化帆船”大ぼら(ビッグフィッシュ)”号に乗り組む大海賊”血染めの人魚団(ブラッディマーメイド)”の4人の少女、シェルビー・ハーヴァーライト(船長)、”オクトパス”のヤッコちゃん(格闘技専門)、”クラブ(かに)”のハザミ(キカイいじり少々)、”グランパス(しゃち)”のオビュレ(兵士)。
 この世界では海中に沈む”火薬”や”エアボンベ”や”キカイ”や”スーツ”などの遺跡を発掘して利用していたが、それには人工冬眠カプセルに眠る伝説の”玉子人間”の知識に頼らざるを得なかった。シェルビーたちは”ぴゅうた”を操作できる”ぴゅうた使い”を探していたのだった。
 一方、この世界を支配するヴォースも”ぴゅうた使い”を探していた。ヴォースは ”世界を変える力を持つ”7つの旧文明のひとつ”白い遺跡”に封じられていた”水宝珠(アクアオーヴ)”の作り方を一部解き明かしていた。しかしヴォースの真の狙いは世界を滅ぼすこともできる巨大な”水宝珠”を作り出すことだった・・・。

●「私家版魚類図譜」(初出:別冊モーニング2004-06、諸星 大二郎、講談社、KCDX MORNING、2007.3)
第1尾「深海人魚姫」/第6尾「深海に戻る
 人魚姫の物語。男女とも上半身が人、下半身が魚だが、尾びれは垂直である。考えたら水平だと海棲哺乳類となり、鱗とは矛盾するので妥当な設定である。彼ら/彼女らはチューブワームが群生する熱水活動域に棲むが、中層にある酸素極小層に阻まれて、海面に向かうことができない。
 ところがある日、ある若い人魚が熱水活動域に潜航してきた潜水艇の搭乗研究者、海津亮を覗き窓ごしに見て、男が大きな魚に飲み込まれたと思う。そうではないことを仲間から教えられるが、それ以来、海上への憧れが募っていく。
 ついに海上に向けて旅立ち、酸素極小層をコウモリダコの助けでかろうじて乗り越え、あともう一息のところで魚の大群に取り囲まれて気を失う。そこに深海から浮上してきた潜水艇”まりん”が。その時、奇跡が起こる・・・・。

 後編は12年後、記憶をなくした少女が深海生物学者、深水士の養女”まりん”として育てられ、やがて米潜水船”ケルヴィン号”の女性パイロットに・・・。

 多くの深海生物が登場する。ジャイアント・チューブワーム(ハオリムシ)、ユメナマコ、ユノハナガニ、シンカイコシオリエビ、ゲンゲの仲間、カグラザメ(登場せず)、チョウチンアンコウ、ヌタウナギ、地獄の吸血イカ/コウモリダコ、ダイオウイカ、マッコウクジラ、ソコボウズ、イトヒキイワシ、クシクラゲ(絵)、カブトクラゲ(絵)、カノコケムシクラゲ(絵)、ヒゲクラゲの仲間?(絵)、オウムガイ(絵)、リュウグウノツカイ、ウミユリ、ミズダコ、ソコダラ
米ケルヴィン号(アルヴィン号型)、6千m級「まりん」/母船「かいぼん」

第2尾「鮫人
 涙が真珠になるという鮫人を皇帝陛下に献上するため

第3尾「魚が来た
 地底都市

第4尾「魚の学校
 口内保育するアジアアロワナ、カレイ、マグロ

第5尾「魚の夢を見る男
 アノマロカリス、アランダスピス、ユーステノプテロン、イクチオステガ

第7尾「ネタウナギ」  ヌタウナギ、チョウチンアンコウ、ナガヅエエソ(三脚魚)、オオグチボヤ、深海ギボシムシ

●「海の人」(1巻で完結。越智善彦、マジキューコミックス、2006.8)
 ノーチラス号風レトロモダンな潜水艦「ニシキ」と円盤型潜水艇「ワタリ」(マニピュレータ2本)で沈船の財宝を回収している。時代は日本では幕府と官軍が内戦している時代。
 ヒロインは銀の髪、赤い目の美国(お頭)。副長エヴァ・ビクトール、人魚を収集する博物学者ギュスターブ・キュヴィレ、浦島海人。ミスター・ロズウェル、博物館職員マチルダ・トンプソン、錬金術師ネモ、紅嬢、海中要塞アトランティス

●「人魚と提琴(ヴァイオリン)−玩具館綺譚」(2008.2、石神茉莉、講談社ノベルズ)
 人魚モノというと、海中世界が登場するものもあれば、不老不死がテーマのもの、さらには「言葉が話せない」というモチーフだけで海ともまったく無関係な話も多い。この作品も舞台は陸上だが、一応、水棲生物としての人魚が登場する。

 アンゼルセンの童話タイプでも、半魚人タイプでも、上半身が魚で下半身が人間という魚人タイプでも、人面魚タイプでもなく、魚の特徴を備えたヒューマノイド型らしい。不老不死で、セイレーン伝説のように滅びの歌を歌い、普通の人間はそれを聞くと死んでしまう。

 具体的な姿ははっきりしないが、上半身は人間によく似ていて、下半身は金属に似た艶やかな鱗に覆われているが、魚のような尾ではなく、もしかしたら2本足かもしれない。というのは、陸で舞を舞うことができるから。といっても陸上ではゆっくりとしか動けない。

 淡い色のながい髪、どこを見ているか分からないガラス玉のように光る大きな目、口にはギザギザとした細かい歯の列があり、細長く尖った舌がある。口から真珠を吐き出す。結石の一種らしいが、人魚の体内で男の精液が結晶化したという説もある。

 人間の男と交わって子供を生むこともでき、必ず双子を産み、一方が海に帰り、一方が陸に残る。陸に残る子供は誕生直後は肌が鱗に覆われたようにも見えるが、成長すると人間と変わらない。健康だが不老不死ではない。

 さらに”闇のもの”、人魚より深いところに棲むモノも存在するらしいが、こちらは最後まで分からないまま。ひょっとすると人間には知覚できない存在かもしれない。実は、人魚の声は人を大量殺戮もするが、”闇のもの”と闘う武器ともなるのではと匂わせるところもある。

 ストーリーは、二人の不老不死の人魚を土蔵に閉じ込めた村があった。少年が人魚の世話役に選ばれ、年に一度の人魚の祭りがあり、少年が人魚を舞わせて村の運命を占う儀式がとりおこなわれる。
 ヒロインは、歩き始めたばかりの頃にさらわれ、その村にいた過去がある。5才の頃、人魚のお祭りで大火事があり、数少ない生存者の一人として両親の元に戻る。そのヒロインの記憶に、ミナモリという少年のヴァイオリンにあわせて舞う人魚の姿があった。少女はそれから17年後、水守恭司というヴァイオリニストのCDを耳にする・・・。

●「崖の上のポニョ」(2007.7.19、宮崎駿監督、スタジオジブリ制作)
 アンデルセンの「人魚姫」の現代版。ポニョの父フジモトはネモ船長の潜水艦ノーチラス号のアジア少年船員という設定。ウバザメ号を操りm海洋農場〈サンゴ塔〉で生命実験を行う。
 ダイオウイカ、コバンザメ、ネコザメ、デボン紀中期から後期に棲息していたポトリオレピス、デボン紀前期から中期に棲息していたディプノリンクス、架空のデボネンクス

が登場。


=>Garden in Blue(乾杏子さんの人魚・半魚人・水棲人サイト)

=>マーメイド祭り

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